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コバルト

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ケイ酸コバルトによって青くなった瓶

コバルト (: cobalt: cobaltum) は、原子番号27の元素元素記号Co鉄族元素の1つ。安定な結晶構造は六方最密充填構造 (hcp) で、強磁性体。純粋なものは銀白色の金属である。722 K以上で面心立方構造 (fcc) に転移する。

より酸化されにくく、塩基にも強い。

歴史

1735年スウェーデンイェオリ・ブラント (Georg Brandt) により発見[1]。コバルトという名称と元素記号は、ドイツ語で地の妖精を意味するコーボルト (kobold または kobalt) に由来する。コバルト鉱物は冶金が困難なため、16世紀頃のドイツでは、コーボルトが坑夫を困らせるために魔法をかけたものと考えられていた。

2016年に人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、年間産出量の53%を占めるコンゴ民主共和国に積極的に投資[2]して硫酸コバルトや酸化コバルトなどコバルトの精製品の8割近くを生産している中華人民共和国の企業がコンゴで児童労働などで得たコバルトをアップルマイクロソフトサムソンソニーダイムラーフォルクスワーゲンなど多国籍企業に供給していると批判して国際的な問題となった[3][4][5]。また、中国の洛陽欒川モリブデンEnglish版はコンゴ最大のコバルト鉱山テンケ・フングルーメを買収しており、レアアースをめぐるレアアース貿易摩擦English版の例もあったことからリチウム[6]とともに中国によるコバルトの独占的支配を懸念する見方も出ている[7][8][9]

産出地

この金属は、日本国内において産業上重要性が高いものの地殻存在度が低く供給構造が脆弱である。日本では国内で消費する鉱物資源の多くを他国からの輸入で支えている実情から、万一の国際情勢の急変に対する安全保障策として国内消費量の最低60分を国家備蓄すると定められている。

主要産出国は以下の通り(2011年実績)[10]

用途

合金材料

単体金属としてのコバルトの用途はほとんどないが、合金材料として重要であり工業的に利用される。初期のコバルト合金は、高速度工具鋼にコバルトを添加したコバルトハイス鋼に用いられた。また切断工具材料としてそれまでの合金に添加されることで、コバルトの需要は増していった。

ニッケルクロムモリブデンタングステン、あるいはタンタルニオブを添加したコバルト合金は高温でも磨耗しにくく、腐食にも強いため、ガスタービンジェットエンジンといった、高温で高い負荷が生ずる装置などに用いられているほか、溶鉱炉石油化学コンビナートなどでも十分に役割を果たす。

またステライトに代表される、コバルト・クロム・タングステンあるいはモリブデン炭素を使った4元系の合金は、磨耗に強く、表面強化が必要となる工業分野において幅広く利用され始めている。この合金は、鋳型として使用するほか、粉末として吹き付けることや溶射して利用することも可能であり、利用技術の発達によって、航空機の表面にコーディングすることなどをはじめ、広い分野で実用化が始まっている。

  • コバルト-モリブデン-ケイ素合金は、耐摩耗性を有し摩擦係数が小さい(滑らかな)性質を示し、ベアリングの特徴を併せ持つなど、有用な特性を持った合金も開発されている。
  • コバルト-クロム-モリブデン合金コバリオンなど)や、コバルト-クロム-タングステン-ニッケル合金は腐食しにくいため歯科医療や外科手術(人工関節)などでも使われている。
  • ニッケル-コバルト-モリブデン鋼は、非常に強い強度と高い靭性を持ち、多くの分野での応用が期待されており研究が進んでいる。

加えてコバルト合金は他にも磁気材料として鉄とともに最も重要な役割を果たしてきた。コバルトを添加することにより、磁性やキュリー値が上昇するなど磁気材料としての性能が高まる。コバルトを使った合金のひとつであるアルニコ合金はかつては最も幅広く用いられていた永久磁気材料であった。サマリウムコバルト磁石はコバルトとサマリウムの金属間化合物で、強い保磁力がある。

化合物

同位体

放射性同位体コバルト60は、γ線源として用いられる。医療分野での放射線療法ガンマ線滅菌、食品分野での食品照射ジャガイモの発芽防止)、工業分野での非破壊検査などに広く利用されている。

コバルト爆弾

コバルト爆弾とは、核開発への警告としてレオ・シラードが発表した核爆弾の一種。原子爆弾もしくは水素爆弾の周囲をコバルトで覆ったものであり、具体的にはタンパー(核反応が充分に進行しないうちに核物質が四散して爆発が不完全に終わることを防ぐ、重金属製の覆い。日本語でタンパーと称される締固め用機械とは無関係である。)にコバルトを用いる。

原子量が59であるコバルトが、核分裂反応に伴って放出される中性子を取り込むことでコバルト60が生成され、これが爆弾の爆発と共に広範囲へまき散らされる。コバルト60は半減期が約5.27年でγ線を放射するため、コバルト爆弾は放射線兵器となる。しかし、半減期の長いコバルト60による汚染は味方にも被害がおよぶうえ、被災地の占領も困難であるなどの理由から、実用化されることは無かった。

SF作品の第三次世界大戦など、核戦争で世界が破滅するジャンルには、中性子爆弾と並んでよく登場する。また、その際には爆弾自体の破壊力も非常に高く描写されており、作品によっては地球を消滅させるという設定すら盛り込まれている(1970年の映画『続・猿の惑星』など)。

出典

  1. 桜井弘 『元素111の新知識』 講談社1998年、151頁。ISBN 4-06-257192-7 
  2. Hon, Tracy; Jansson, Johanna; Shelton, Garth; Liu, Haifang; Burke, Christopher; Kiala, Carine (January 2010). "Evaluating China's FOCAC commitments to Africa and mapping the way ahead" . Centre for Chinese Studies, Stellenbosch University.
  3. 世界のバッテリー支配狙う中国、コバルト供給牛耳る”. ウォール・ストリート・ジャーナル (2018年2月13日). . 2018閲覧.
  4. コンゴ民主共和国:巨大企業 コバルト採掘での児童労働問題を放置”. アムネスティ (2017年11月29日). . 2018閲覧.
  5. コンゴ民主共和国:スマートフォンの裏に児童労働”. アムネスティ (2016年1月25日). . 2018閲覧.
  6. 中国のリチウム独占、永遠には続かない”. ウォール・ストリート・ジャーナル (2018年5月18日). . 2018閲覧.
  7. China plays long game on cobalt and electric batteries FT
  8. 中国:洛陽モリブデン集団、DRコンゴ銅・コバルト鉱山買収
  9. 中国がコバルト市場を牛耳ったらどうなるか”. JBPress (2018年3月30日). . 2018閲覧.
  10. 「Mineral Commodity Summaries 2012[1]」p47、USGS


関連項目

外部リンク

テンプレート:コバルトの化合物