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イタリア料理(イタリアりょうり,伊:cucina italiana)は、イタリアを発祥とする料理法で、世界の多くで好まれ多くの地域で料理されている。
2010年、ギリシャ料理、スペイン料理、モロッコ料理と共に、イタリア料理を「地中海の食事」として国連教育科学文化機関(UNESCO)の無形文化遺産に登録された。
Contents
概要
日本では「イタリアン」「イタ飯(いためし)[1]」等の呼び名で親しまれている。日本で認識されている特徴としては、オリーブ・オイルやオリーブ、トマトが使われる事が多いということが挙げられる。しかしこれはナポリなどの南イタリアの特徴であり、北イタリアでは隣接するフランスやスイス同様バターや生クリームを利用した料理が多い。イタリア東部ではオーストリアやスロベニアの影響が見られる。またシチリアなどの北アフリカに近い地域では、アラブ人やベルベル人の料理の影響を受けていてクスクスやアランチーニなどの料理が食べられる。
地中海に面する地域は魚介類を用いた料理も多く、地中海岸諸国以外のヨーロッパでは食べられることのほとんどないタコやイカが食材として使用される。一方で北部や内陸の地域では肉や乳製品を使った料理も多く食べられる。総体としては、素材を生かした素朴な料理が多い傾向にある。
このようにイタリアの料理は各地方によって、それぞれ特徴を持っている。「イタリア料理などという料理は存在しない」と言う見方もある[2][3]。これは南北に長いイタリアは地理的にも多様な特徴があること、イタリア王国による統一まで多数の独立国家があり、その国ごとにまったく特徴の異なる、例えば、ナポリ料理、ジェノヴァ料理といった具合に郷土料理が発達しているためである。
パスタはイタリア各地で好まれ様々な形で料理されている。トマトの多用も特徴の一つであるが、トマトはラテンアメリカ原産であり、イタリアに広まったのは16世紀以降である。それ以前の特徴としてはアンチョビの形で魚醤を多く用い、見た目も質素であった。トマトの流入でヴァリエーションも増え、色彩も鮮やかになったが、反面それ以前の特徴の多くが失われたとの指摘もある。
歴史
現代イタリア料理の基盤は大変古く、古代ローマ帝国までさかのぼる。当時のローマ人は、食事にかける時間をとても大切にし、当時から1日3食の構成をとり、1食をコース料理にして2~3時間もかけて食事をする習慣があった。また、彼らは、満腹になると、鳥の羽で咽喉を刺激し、作為的に嘔吐をして、空腹になるとまた食べたという。セネカは、「ローマ人は食べるために吐き、吐くために食べる」と評している。さらに裕福なローマ人たちの間で、腕利きの料理人を呼んで料理を客に披露することが流行だった。料理人達はそれぞれ競って腕を磨いて新しい料理作りに励んだことで、周辺の国々の追随を許さない優れた食文化が誕生し、これがローマ帝国の発展とともにヨーロッパ各地へと広がっていった。具体例をいくつかあげると、ローマ軍の遠征兵士のスタミナ源として携帯されたことが契機となり、同様に欧州各地に広まったチーズやメロン、牡蠣などもそうである。
イタリア料理は、フランス料理の原型でもある。1533年、フィレンツェの名門貴族であるメディチ家のカテリーナがフランスのアンリ2世に嫁いでパリに移り住む際、大勢のイタリア人料理人や香料師を連れてイタリア料理や氷菓、ナイフ・フォークの使用といったものをフランスに持ち込んだ。それをきっかけにして、当時粗野だったフランスの宮廷料理やテーブルマナーが洗練された。ちなみにフォークの爪は4本だが、これはナポリ王国国王フェルディナンド4世の宮廷でパスタがよくからんで食べやすいように爪の数を増やしたとされている。
このように、西洋を代表して世界三大料理に数えられているフランス料理は、イタリア料理の影響を受けて成長した。ローマ時代から続くイタリアの食文化が西洋料理の母的存在といわれるのは、こうした歴史によるものといえる。
スパゲッティソースやピザソースに使われるトマトはメキシコ原産でありトマトがヨーロッパに持ち込まれたのは16世紀からとされ、食用に一般的に利用され始めたのは18世紀に入ってからになる。それ以前のスパゲッティはチーズなどで食していた。
食事作法
いったん口に入れた果物の種や皮などを再度口から出す行為は印象が悪い。
果物やパンにかぶりついて食べることもマナーが悪く、大きな塊で給仕されたスイカ等はナイフで小さく切ってから食べる。
食事の際の口直しや皿のソースを拭って食べるためパンが供される。一般的にピザはコース料理には入らず、ピザを食べる際はパンは供されない。ただし、トラットリア格以下ではピザとコース料理の両方をメニューに載せているレストランも多く、どの料理を食べるか、どの順番で給仕してもらいたいかは客が自由にウエイターに頼むことができる。
レストラン[4]ではこれらのすべてを注文しなければならないわけではない。レストランにおいてデザートやコーヒーは食後に再度ウエイターが注文を取りに来ることが一般的である。
イタリア料理のコースでは料理の出る伝統的な順番が存在する。メニューも一般的にこの順序で記載されている。
- 1. アペリティーヴォ (aperitivo)
- 食前酒。食欲を増進させるため、アマーロ(イタリア語で「苦い」の意)のような薬草入りの酒、カンパリ、スプマンテ(発泡ワイン)などを飲む。レストランに行く前にバールなどでビール等をアペリティーヴォに取ることが多い。
- 2. アンティパスト (antipasto)
- 前菜として作り置きの料理が多い。ハムやチーズ、燻製、カルパッチョなど。プリモ・ピアットが出来るまでの時間稼ぎともいえる。
- 3. プリモ・ピアット (primo piatto)
- 主菜。直訳すると第一皿となるが、一皿だけとは限らない。サラダやパスタ、リゾット、ポレンタ、スープなどが分類される。サルデーニャではクスクスもプリモ・ピアットとして供される。
- 4. セコンド・ピアット (secondo piatto)
- 主菜。直訳すると第二皿となる。大きく魚料理と肉料理の二種類に分類される。魚料理、肉料理の両方がコースに含まれる場合まず魚が給仕される。
- 5. コントルノ (contorno)
- 副菜、サイドディッシュ。ミニサラダや野菜(焼き野菜や煮野菜)。付け合わせ。通常セコンド・ピアットの料理には日本の様な付け合わせの野菜がつかないため、野菜を取りたいときはコントルノを別に注文する必要がある。伝統的なメニューではセコンド・ピアットといっしょにサラダが出るということになっている。品物によってはセコンド・ピアットと同じ皿に載っている。
- 6. ドルチェ (dolce)
- デザート。 果物やドルチェ(菓子)、チーズが供される。
- 7. カッフェ (caffè)
- コーヒー。基本的にエスプレッソ・コーヒーである。カフェ・ルンゴ(長いコーヒー)と注文した場合、若干のお湯で割ったものが出る(日本のブレンドコーヒーと同程度の濃さ)。カップッチーノ(エスプレッソコーヒーの上に泡立てたミルクを載せたもの)やラテ・マキアット(染み付きミルク、泡立てない温かい牛乳の上にエスプレッソコーヒーを注いだもの)などミルクの入ったものは満腹でないことを意味するので避けるのが無難。イタリア人は食後にカプチーノは飲まないが、カフェ・マキアット(染み付きコーヒー、エスプレッソコーヒーの中に少量の泡立てたミルクを垂らしたもの)は食後にもよく注文される。
- 8. ディジェスティーヴォ (digestivo)
- 食後酒。グラッパやリモンチェッロなどのリキュール類が小さなグラスが供される。
飲食店の種類
イタリア料理の飲食店は、各種形態があり高級店から列挙するとおおまかに以下の順序。
- リストランテ(Ristorante)
- コース料理を中心の高級料理店。現在では、リストランテクラスの高級店ながら、オステリア・トラットリア、エノテーカ(居酒屋)と名乗り、カジュアルな印象を持たせたりする場合があり、店名だけで判断しにくくなってきている。
- オステリア(Osteria)
- 軽食堂、居酒屋で、歴史をもち高級な料理店。アルコール類も楽しめ、アラカルト料理を中心とする。
- トラットリア(Trattoria)
- 大衆食堂。地方料理や家庭料理を出す個人経営、家庭経営の店。アルコール類も楽しめ、アラカルト料理を中心とする。
- タヴェルナ(Taverna)
- トラットリアとほぼ同様。調理済みメニューを出す簡易店もある。
- 専門店
- 以下のピザ、パスタ、ワイン専門店の他に、ビール、カクテル、ジェラートを専門に扱う店もある。
- バール(Bar)
- カウンター席を持つ軽食店。アルコール類中心とは限らず、軽食、エスプレッソ、パン、ジェラートなどをだす店もある。
- カフェテリア(Caffetteria)
- 喫茶店。バールと混ざった形態もある[5]。
イタリア料理の分類と一覧
パスタ
パスタ料理は第一皿に分類される。小麦粉を練って作った種々の形態の麺類(パスタ)とソースの組合せが基本である。パスタは、サラダに入れたりスープの具にしたりしても用いられる。グラタンもパスタ料理の一種である。デザートで「パスタ」の名がつくものがあるが、これはペースト状の菓子の意(パスタ参照)。
ピザ
ピザ(pizza=ピッツァ)は平たくのばしたパン生地の上に具材を載せて焼いた一品料理で、軽食として供されることが多く、イタリア本国ではリストランテ格の店では商品化していない店が多い。イタリアでは安く簡単に素早く食事をすませるといえばピッツェリアでピザを食べることが一般的である。最も伝統あるピザがナポリピッツァである。イタリア各地で味付けや生地に差があり、ミラノのピザが最も薄い。ローマのピザはナポリとミラノの中間の厚さであることが多い。なお、アメリカのピザは味付けや具材などがイタリアのものとは大きく異なる。
米料理
米料理と言えばリゾットが有名だが、米は小型のパスタと同様に扱われることも多い。米をデザートに用いるのも一般的である。イタリアは欧州一の米どころであり、料理ごとに最適な種類の米を使い分ける。
パン
料理が給仕されるまでの空腹を紛らわせるため、また食事とともに口直しや、皿のソースを拭って食べるのに用いられる。軽食として具材を乗せたり挟んだりして一品の料理として食べることもある(パニーノ)。
- ロゼッタ
- グリッシーニ - トリノで有名な細長く硬いパン。
- フォカッチャ - 平らなパン。
- ピアーダ、ピアディーナ - エミリア=ロマーニャ州の平らな無醗酵パン。
- パーネ・カラザウ - サルデーニャ島伝統の薄い醗酵パン。
- パーネ・トスカーノ - トスカーナ州の塩の入っていない大きなパン。
- タラーリ
- ニョッコ・フリット
パン料理
スープ
- ミネストローネ - 野菜や豆、パスタ等を入れたごった煮風スープ。
- アクアコッタ - 野菜ならび残り物を使ったスープ料理で、元々はトスカーナ地方の郷土料理である。
- ズッパ・ディ・ペシェ - 魚のごった煮。
- ズッパ・ディ・パーネ - パンを入れたスープ。
肉料理
- ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ - フィレンツェ風Tボーンステーキ
- カルパッチョ - 生の牛肉を薄切りにしたもの。ヴェネツィア料理。
- コトレッタ・アッラ・ミラネーゼ - ミラノ風カツレツ。
- サルティン・ボッカ - ローマ料理。仔牛肉の包み焼。
- オッソ・ブーコ - 仔牛の骨付きスネ肉の煮込み。
- ピカタ
- ランプレドット
サラミ、ハムなどの肉製品
- プロシュット・ディ・パルマ(パルマハム)
- プロシュット・ディ・サン・ダニエーレ
魚料理
- アクアパッツア
- フリット - フライ。通常、イカやエビを用いる。
- サルデ・ア・ベッカフィーコ - イワシの香草パン粉焼き。
野菜料理
酒類
ワイン
その他の酒類
蒸留酒
リキュール
ビール
カクテル
チーズ
デザート(菓子)
飲み物
- コーヒー
- ミネラルウォーター
- 清涼飲料水
その他
イタリアの料理人
イタリア料理研究家
日本におけるイタリア料理
歴史
日本最古のイタリア料理店は、1880年に新潟市でピエトロ・ミリオーレが開業したイタリア軒である。イタリア軒は、日本に現存する最古の西洋料理店とされている。また、明治末期にはじめてマカロニが輸入された記録もある。しかし、本格的なイタリア料理の普及は、第二次世界大戦後に日本に残されたイタリアの元軍人や軍属によって行われた。彼らは、日本人と結婚し日本に永住するにあたって料理店を開いたのである[6]。しかし、全国的にイタリア料理として親しまれるようになるのは、ピザやパスタが注目されるようになった1970年代からであり、日本人のめん類嗜好と重なって定着したとされる[7]。
日本にあるイタリア料理チェーン店
その他
- デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・プロテッタ(DOP、D.O.P.)
- デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・コントロッラータ(DOC、D.O.C.)
- デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・コントロッラータ・エ・ガランティータ(DOCG、D.O.C.G)
- [it:Indicazione geografica protetta](IGP)
- [it:Specialità tradizionale garantita](STG)
- [it:Vino da Tavola](VdT)
- Indicazione Geografica Tipica(IGT)
関連項目
参照
- [https://theryugaku.jp/1261/ イタリアの食品に付いてる「DOP」「IGP」マークとは?イタリアで安心した食事をするための豆知識 | THE RYUGAKU ザ・留学
脚注
- ↑ 女性雑誌『Hanako』が俗称として名付けた。
- ↑ 西村暢夫、地中海学会編、 「イタリアの地方料理」、『地中海文化の旅(2)』 (河出書房新社)216頁、1990年。ISBN 4-309-47194-3。
- ↑ 日仏料理協会 編 『フランス 食の事典(普及版)』 白水社、2007年、45頁。ISBN 978-4-560-09202-6。。“料理も『イタリア』と呼べるものはあまり存在しない。”
- ↑ イタリア語ではリストランテ(ristorante)と呼ぶ。英語の"restaurant"と同じ語源である。
- ↑ 川上文代 『イチバン親切なイタリア料理の教科書』 新星出版社、2007年7月。ISBN 4405091528。
- ↑ 澤口恵一(2012)「日本におけるイタリア料理の産業史とコックのライフ・ヒストリー研究:その序論的考察」『大正大学研究紀要』97: 143-154
- ↑ 木戸星哲(1988)「イタリア料理」『世界大百科事典』平凡社