成田国際空港 (企業)
成田国際空港株式会社(なりたこくさいくうこう、英語: Narita International Airport Corporation; NAA)は、2004年(平成16年)4月1日に施行された成田国際空港株式会社法により、成田国際空港(成田空港)の設置および管理を目的として設立された特殊会社(株式会社)。通称は「成田空港会社」。
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概要
特殊法人新東京国際空港公団の業務及び資産・負債を承継した特殊会社で、全株式を日本国政府(国土交通大臣 90.01%, 財務大臣 9.99%)が所有する。略称である NAA は、空港公団の英字略称 (New Tokyo International Airport Authority)と同じである。
成田国際空港株式会社法に基づき、日本国政府から無利子貸付、出資や債務保証を受ける事ができる[1]。一方で、営業年度毎の事業計画や新株発行・社債の募集・資金の借入、代表取締役の選定・定款の変更等については、国土交通大臣の認可を要する[2]。
日本国政府が100%出資する会社のため、配当金として連結最終利益の3割程度が毎年国庫に納付される[3](なお、2016年6月27日の同社株主総会で決議された配当額は、72億7800万円[4])。この他に、株式会社化する際に、新東京国際空港公団の政府出資金等3016億円のうち1496億5300万円が政府の無利子融資として振り替えられたため、その負債返済を継続している[3][5][6] (2017年度に完済予定)。
会社の事業の範囲には、成田国際空港周辺における航空機の騒音等により生ずる公害の防止や、損失補償のための諸事業が含まれている[7]。
株式会社化して以降、空港ターミナルビルに入居している飲食店・ショップ・航空会社事務所といったテナントによる賃貸収入等を「非航空系収入」と称して売上の強化を図っており、公団時代の主な収入であった空港使用料の「航空系収入」に依存しない経営体質を目指している。2015年(平成27年)度決算では、航空系収入が45に対し非航空系収入が55という比率になった。
なお、2015年度における成田国際空港のターミナルビル全体の店舗売上は1169億円に上り、ショッピングセンターとしては、御殿場プレミアムアウトレット(891億円)やラゾーナ川崎プラザ(788億円)を押さえて日本一の売上収入を誇る[8]。
事業
事業目的
成田国際空港の設置及び管理を効率的に行うこと等により、航空輸送の利用者の利便の向上を図り、もって航空の総合的な発展に資するとともに、我が国の産業、観光等の国際競争力の強化に寄与する。(成田国際空港株式会社法第1条)
法令等で定められた事業
成田国際空港株式会社法第5条や定款第2条で定められた主な事業は以下のとおり。
- 成田国際空港の設置及び管理
- 成田国際空港における航空機の離陸又は着陸の安全を確保するために必要な航空保安施設の設置及び管理
- 航空旅客及び航空貨物の取扱施設、航空機給油施設その他の成田国際空港の機能を確保するために必要な航空保安施設の建設及び管理
- 事務所、店舗その他の成田国際空港を利用する者の利便に資するために成田国際空港の敷地内に建設することが適当であると認められる施設の建設及び管理
- 成田国際空港の周辺における航空機の騒音等により生ずる障害を防止し、又はその損失を補償するために行う事業(移転補償、騒音防止工事等)
- 成田国際空港の周辺における生活環境の改善に資するために行う事業(空港周辺における環境評価、自治体への交付金交付等)
事業部門
同社では事業部制を採用しており、事業を「空港運営事業」「リテール事業」「施設貸付事業」「鉄道事業」の4つに分類している。
周辺対策交付金
NAAは空港の円滑な運営を図るため、航空機騒音等により生じる障害の防止及び空港周辺整備の費用に充てるものとして、千葉県・茨城県の10市町(成田市・富里市・香取市・山武市・神崎町・多古町・芝山町・横芝光町・稲敷市・河内町)に成田国際空港周辺対策交付金を交付している。
2016年度までの交付総額は約1214億円であり、同年度は約41.6億円を交付した。
交付金の使途としては、防音工事を行った公共施設の維持費並びに空港周辺道路・公園・消防施設・農業施設等の整備のための費用に充てられる[9]。
沿革
- 2004年(平成16年)
- 2005年(平成17年)
- 2006年(平成18年)- 反対同盟(熱田派)代表であった熱田一と土地売買契約を締結
- 2008年(平成20年)- 空港開港30周年
- 2009年(平成21年)
- 3月23日 - フェデックス80便着陸失敗事故発生
- B滑走路の2500m化工事完了、供用開始
- リーマン・ショック及び新型インフルエンザによる航空需要減少に対し、航空会社支援策として着陸料の一時引き下げ実施
- 2010年(平成22年)
- 2011年(平成23年)
- 4月 - 「エコ・エアポートビジョン2020」策定。
- 6月23日 - 「成田空港 空と大地の歴史館」オープン
- 2013年(平成25年)- 夏ダイヤからオープンスカイが適用
- 2014年(平成26年)- デルタ航空と格納庫のリース契約を締結[10]
- 2015年(平成27年)
- 2016年(平成28年)
- 4月 - 「エコ・エアポートビジョン 2030」を策定[11]
- 2018年(平成30年)
- 5月20日 - 空港開港40周年
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成田空港 空と大地の歴史館
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デルタ航空 成田テクニカルオペレーションセンター
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第3旅客ターミナルビル 出発ロビー
事務所
- 本社・成田国際空港 千葉県成田市古込字古込1番地1(成田市成田国際空港内NAAビル)
- 2007年4月1日までに、第2ターミナルビルに隣接する旧全日空マネジメントセンタービルへ本社機能を移転した。
- 東京事務所 東京都千代田区丸の内二丁目2番1号 岸本ビルヂング11階
- 千葉港頭事務所 千葉県千葉市美浜区新港234番地
- 四街道事務所 千葉県四街道市山梨字松山2351番地
旧本社ビル
1996年7月から第1ターミナルビル前の旧日本航空オペレーションセンタービル跡をNAA本社ビルとして使用してきたが、移転後に旧本社ビルは解体され、跡地は2008年より空港利用者用の立体駐車場(P5駐車場)となった。
旧本社ビルは、日本航空のオペレーションセンタービルとして、空港開港の1978年当時から存在する建物であった。ドラマ「スチュワーデス物語」のロケ地などにも使用された経緯がある。
不祥事
官製談合事件
2005年11月18日に旧新東京国際空港公団発注の成田空港電気設備工事で、空港公団主導による受注調整など官製談合の疑いが浮上し、関わった電機企業各社と成田国際空港会社が東京地検特捜部の捜索を受けた。この官製談合疑惑では、成田国際空港の社員2人(懲戒解雇処分)が競売入札妨害の疑いで逮捕されるなど、一連の談合疑惑は官製談合事件へと発展した[12]。
俳優のクレジットカード伝票の無断撮影
2013年(平成25年)9月16日、俳優の玉木宏が同社の子会社、成田国際空港の制限区域内にあるNAAリテイリングの免税店を訪れ、土産をクレジットカードで購入した。その際に接客した女性派遣社員(当時23歳)が、玉木のサインやカード番号(下3桁は非公表)が書かれたクレジットカード伝票を無断で撮影し、8名の仕事仲間にLINEでその画像を送信した。その内、女性パート店員(当時19歳)が、Twitterに「玉木宏さんが来店しました」というツイートを送信された画像とともに投稿した(該当の画像はネットユーザーの指摘を受けて削除された)[13]。
これを受けてNAAリテイリングは、玉木の所属芸能事務所に謝罪をした上で、女性パート店員を懲戒解雇処分、女性派遣社員を派遣契約解除の処分にした[14]。
汚職事件
2017年7月5日に、成田空港関連の事務用品などの随意契約をめぐり現金60万円を受け取ったとして、成田国際空港の元上席執行役員が成田国際空港株式会社法違反(収賄)、千葉県香取郡多古町の建設会社「オフィスときわ」社長とその妻も同法違反(贈賄)容疑で警視庁捜査2課に逮捕され、同日成田国際空港会社が家宅捜索を受けた。その後7月26日、元上席執行役員が同法違反(収賄)の罪、オフィスときわ元社長が同法違反(収賄)の罪で起訴された。元社長の妻は不起訴処分になった[15]。
同年10月25日、東京地裁にて、元上席執行役員は懲役1年6カ月執行猶予3年を有罪判決を言い渡された[16]。2018年5月7日にはオフィスときわ元社長も懲役1年2月執行猶予3年の有罪判決を言い渡された[17]。
贈賄容疑で逮捕された2人が経営に携わる会社は、2013年4月以降、成田国際空港の出入り口で使う、通行止めゲートや空港事務所の事務機器用品を成田国際空港会社に販売していた[18]。元上席執行役員が起訴された社長以外の業者からも借金をした上、共謀して成田国際空港に対し水増し請求をしていたことも分かっている[19]。
元上席執行役員の部下の男性社員も、同様の行為をしていたことが判明し、諭旨免職処分を受けた[19]。
関連会社
連結子会社
同社の連結子会社は以下のとおり(2016年3月31日時点)。
- エアポートメンテナンスサービス株式会社 - 100%出資。施設に設計・工事・管理・保守点検。
- 株式会社成田エアポートテクノ - 66.7%出資。ターミナルビルの保守管理。2014年4月1日にネイテック防災株式会社と合併。
- 株式会社NAAエレテック - 100%出資。エレベーター・手荷物搬送装置・ボーディングブリッジの保守管理。
- 株式会社NAAファシリティーズ - 100%出資。空港諸施設の保守管理。
- 空港情報通信株式会社(AICS) - 100%出資。航空保安無線施設保守管理、フライト情報配信サービス、通信ネットワーク・空港内電話保守管理、ソフトウエア開発。
- 株式会社NAAコミュニケーションズ - 100%出資。セキュリティー設備・運用管理用設備等の保守。IDカード発行。
- 成田空港給油施設株式会社 - 100%出資。給油施設の維持管理・保安防災。
- NAAセーフティサポート株式会社 - 100%出資。警備・消火救難。
- 株式会社成田空港ビジネス - 100%出資。ターミナルビルでの手荷物カートサービス。
- 株式会社NAAリテイリング - 100%出資。ターミナルビルでの免税品・食品・贈答品・電化製品販売及び飲食店経営。2015年4月1日に成田空港サービス株式会社を吸収合併。
- 株式会社グリーンポート・エージェンシー - 95.5%出資。ターミナルビルでの損害保険代理店、宅配サービス、乗車券販売、両替、広告媒体販売、イベントの企画・運営、賃貸、空港周辺用地の管理等。2015年4月に株式会社メディアポート成田、臨空開発整備株式会社と合併。
- 成田空港ロジスティックス株式会社 - 100%出資。自動販売機での飲料販売
- 芝山鉄道株式会社 - 68.5%出資。第一種鉄道事業(芝山鉄道線)。
- 成田高速鉄道アクセス株式会社 - 53.7%出資。第三種鉄道事業(京成成田空港線)。
持分法適用関連会社
同社の持分法適用会社は以下のとおり(2016年3月31日時点)。
- 日本空港給油株式会社 - 20%出資。成田空港を発着する航空機への給油業。
- 株式会社 Japan Duty Free Fa-So-La 三越伊勢丹 - 27.5%出資。市中の空港型免税店での免税品販売業。
キャラクター
- 「クウタン」
- 成田国際空港株式会社の民営化1周年を迎えた2005年(平成17年)4月に作られた。キャラクターの設定は、性別は男。年齢は不詳。夢はヒーローになる事。趣味は深夜の滑走路散歩。
脚注
- ↑ 成田国際空港株式会社法 第15条
- ↑ 成田国際空港株式会社法 第9・10・11・13条
- ↑ 3.0 3.1 成田国際空港株式会社の経営について - 会計検査院 平成23年度 決算検査報告
- ↑ 成田国際空港株式会社『2016年3月期 有価証券報告書』
- ↑ 2016年3月期決算説明会資料 - 成田国際空港株式会社
- ↑ “成田国際空港株式会社法施行令(法令データ提供システム)”. 総務省行政管理局 (2014年3月28日). . 2017閲覧.
- ↑ 成田国際空港株式会社法 第5条
- ↑ 繊研新聞 2016年8月10日 6面
- ↑ “成田空港~その役割と現状~ 2017年度(175頁)”. 成田国際空港株式会社. . 2018閲覧.
- ↑ デルタ航空、成田空港に「成田テクニカルオペレーションセンター」をオープン - デルタ航空日本支社ニュースリリース 2014年12月1日
- ↑ “成田空港~その役割と現状~ 2016年度 (PDF)”. 成田国際空港株式会社 (2016年11月). . 2017閲覧.
- ↑ 旧公団 空港会社部長を逮捕 成田官製談合 業者に予定価格漏えい 天下り状況で発注調整 2005年12月6日(火)「しんぶん赤旗」
- ↑ 玉木宏“ツイッター被害” 店員に署名&カード番号アップされ… zakzak by 夕刊フジ 2013年9月21日
- ↑ 玉木宏の伝票をツイッター投稿の土産物店員ら解雇 スポニチSponichi Annex 2013年9月26日 。
- ↑ “成田空港会社元幹部ら起訴 東京地検特捜部”. 産経新聞 (2017年7月26日). . 2017閲覧.
- ↑ “成田空港元幹部に有罪判決 贈収賄事件で東京地裁”. 朝日新聞. (2017年10月25日) . 2017閲覧.
- ↑ “成田空港汚職、贈賄側も有罪判決 東京地裁”. 産経新聞. (2018年5月7日) . 2018閲覧.
- ↑ “成田空港の元役員、収賄容疑で逮捕 取引先から60万円”. 朝日新聞 (2017年7月5日). . 2017閲覧.
- ↑ 19.0 19.1 “成田空港汚職で起訴の元役員、別業者からも借金”. 産経新聞 (2017年9月29日). . 2017閲覧.
関連項目
- 成田国際空港
- 成田国際空港株式会社法 - 根拠法。
- 新東京国際空港公団 - 前身の公団。
- 成田空港高速鉄道 - 10パーセントの株式を保有している。
- 東京国際空港ターミナル - 設立時に出資している。
- 吉田文代 - 元社員。地元出身の陸上選手で、2008年に入社している。
- ナリタ5番街
- 成田テレビ中継局