キヤノン

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キヤノン株式会社[注 1]英語: Canon Inc.)は、カメラビデオをはじめとする映像機器、プリンタ複写機をはじめとする事務機器、デジタルマルチメディア機器や半導体露光装置(ステッパー)などを製造する大手電気機器メーカー[1][2][3]

芙蓉グループ東証一部およびニューヨーク証券取引所(ティッカー:CAJ)上場企業であり、TOPIX Core30の構成銘柄の一つ。

製販が分離しており、マーケティング・販売業務は、地域統括販売会社(キヤノンMJ (CMJ)、キヤノンUSAキヤノンヨーロッパキヤノン中国キヤノンオーストラリア)を中心に展開されている。

Contents

概要

1937年設立のOA機器の総合メーカー。主な事業内容として、オフィスビジネスユニット(オフィス向け複合機、レーザー複合機、レーザープリンターなど)、イメージングシステムビジネスユニット(レンズ交換式デジタルカメラ、コンパクトデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、交換レンズ、インクジェットプリンターなど)、産業機器その他ビジネスユニット(半導体露光装置、フラットパネルディスプレー露光装置、医療画像記録機器など)を展開している。米州、欧州など海外売上高比率が極めて高い。16年12月に医療用機器を手掛ける東芝メディカルシステムズ(TMSC)を子会社化した。 1949年の上場以来、年間での赤字は一度も無い。TOPIX Core30の構成銘柄の一つでもある[4]

経営状況

連結業績のセグメント別売上高構成比は、オフィス53.1%、イメージングシステム32.2%、産業機器その他17.2%。地域別売上高では、国内より欧米市場など海外が大きなウエートを占めており、国内が20.8%、海外が79.2%となっている。海外生産比率は同60%。 17年12月期第3四半期累計(17年1~9月)の連結業績(米会計基準)は、売上高2兆9,597億円(前年同期比21.5%増)、営業利益2,524億円(同69.8%増)だった。第3四半期(7~9月)に限ると、売上高9,945億円(前年同四半期比27.7%増)で、営業利益は805億円(同2.0倍)。レーザープリンターの回復が継続し、カメラは新製品を中心に堅調に推移。フラットパネルディスプレー露光装置、有機EL蒸着装置の大幅な伸長、TMSCの新規連結影響も寄与した。損益面では、継続的なコストダウン活動が奏功している。17年12月期の連結業績は、売上高4兆800億円(前期比19.9%増)、営業利益3,500億円(同52.9%増)を計画。第3四半期決算発表時に売上高で300億円、営業利益で200億円それぞれ上方修正した。為替前提の円安への見直し、TMSCの寄与などが要因。

特許戦略

海外での特許出願も重視しており、2014年末時点での特許・実用新案の保有件数は、世界全体で約9万2,000件。 海外出願に際しては、地域ごとに事業戦略や技術・製品動向を踏まえて出願戦略を綿密に立て、必要な国や地域を見極めた上で出願し、なかでも、ハイテク企業が多く、市場規模も大きい米国での出願に注力している。結果として近年登録数が増加し、2014年には日本企業として初めて4,000件を突破した。米国特許取得件数における日本企業中のキヤノンのランキングは11年連続1位を獲得している。

社名

由来

キヤノンの前身は、1933年11月12日頃に内田三郎、吉田五郎(吉田は翌年の9月末までに退所)によって創立された精機光学研究所[5]観音菩薩の慈悲にあやかりたいという気持ちから、1934年に完成した国産初の精密小型カメラの試作機を「KWANON」(カンノン)[6]、そのレンズを「KASYAPA」(カシャパ)と命名した[7]。KASYAPAは、釈迦の弟子のひとりである大迦葉(マーハ・カサーパ)に由来している[8]

1935年、世界で通用するカメラのブランド名として、Canon(キヤノン)が採用された[6]。「正典」「規範」「標準」という意味を持ち[9]正確を基本とする精密工業の商標にふさわしいことと、KWANONに発音が似ていることが、この名称を採用した理由とされている[6]。1956年に右上テンプレート内の形になり、1974年から色がキヤノンレッドになっている[10]

正式な表記

日本語における正式な表記は、「キノン」であり、小字を用いた「キノン」ではない。拗音の「ヤユヨ」を小さく書かないのはかつて(第二次世界大戦前から終戦直後にかけて)は当たり前の表記法だったが、現在では一般的でない。この表記を続ける理由は、バランスを考慮して、小字の「ャ」の上の空白によって穴が空いたように感じられることを避けたためである[11]

歴史

沿革

ライカが輸入され始めて間もない1932年吉田五郎はライカII型を購入し、その模倣品を製作した。1933年10月に、それを持って義弟であった内田三郎の元を訪ね、ライカに匹敵する高級カメラ製造事業化を熱心に勧めたが、この時点で内田三郎は山一證券の外務員として、法人相手の大口証券取引を扱っておりカメラ製造には全く興味を示さなかった。しかし証券売買で知り合った鮎川義介の事業観「資源が少ない我が邦では、材料の原価に占める割合が少なく、例えば光学精密機械とか純度の高い化学工業が有望である」に接して一転カメラ製造を決意し、3年の研究期間を設定し1933年11月研究所を立ち上げた。この研究所がキヤノンのルーツで、吉田五郎の発案で「精機光学研究所」という名称が決められた。場所は吉田五郎が乃木坂の自宅から歩いて数分の場所であった東京市麻布区六本木町62番、2012年現在ホテルアイビス六本木が建っている場所に存在した新築洋風三階建ての「竹皮屋ビル」を見つけて来てその一角を借りた。竹皮屋とは、オーナーの家系が江戸時代から竹の皮で被り笠を編んでいたことに由来する。日本光学工業(現ニコン)から精度にうるさい金子富太郎、型削り盤を扱う油山が移り、また腕が悪くて困り者であった旋盤工の加藤が最初期の従業員であった。そのうち外装部品の調達や金銭管理が必要になり、内田三郎が山一證券から部下であった前田武男を連れて来た。

カメラ開発は吉田五郎に一任され、内田三郎は言われるまま金を工面した。部品の外注は吉田五郎がトーキー製造をしていた頃に親しくなった一の橋の和田兄弟がやっていた機械工場や、狸穴の坂口時計歯車店に依頼していたが、図面で渡すより現物渡しで依頼したほうがかえってうまく行ったという。1933年、国産で初めての35ミリフォーカルプレーンシャッターカメラ「Kwanon(カンノン)」を試作した。開発は難航し吉田五郎在職中に1台も販売できていないが、アサヒカメラ1934年6月号には有名な「潜水艦ハ伊號 飛行機ハ九二式 カメラハKWANON 皆世界一」というコピーで広告を出した。7月号、8月号、9月号にも広告を出したがカメラの仕様が吉田五郎の試作機に対応して少しずつ変わっている。

吉田五郎がこだわった、コンタックスI型のようなボディー前面巻き上げ方式はベベルギアが必要になるが、坂口時計歯車店では歯切り機が良くなくうまく切れなかった。吉田五郎が夏の暑い日にフォーカルプレーンシャッター幕のべとつきで苦労していると、内田三郎は知人で第一師団麻布歩兵第一連隊中隊長だった山口一太郎大尉を連れて来て、山口一太郎は輸入物で軍用航空写真機用ゴム引き布幕を1反程持って来た。この布幕について小倉磐夫は小西六(コニカを経て現コニカミノルタホールディングス→コニカミノルタ)から持って来たと推定している。その他にも連動距離計、撮影レンズ、ヘリコイドの工作と問題山積の1934年11月、経理担当の前田が5000円の使途不明金があった旨内田三郎に告げ、吉田五郎は濡れ衣を着せられて退職した。吉田五郎の退職と前後し内田三郎は山口一太郎の指導を受け、手作りによる試行錯誤の手法から脱し設計図に従って試作し改良する手法へと転換した。光学系も日本光学工業の監督官をしていた次兄内田亮之輔のつてで日本光学工業の取締役顧問であった堀豊太郎を紹介してもらい、1934年9月内田三郎と前田武男は日本光学工業を訪れてレンズと距離計を依頼した。営業課課長山本茂治と民需品担当の浜島昇係長が応対してこれを引き受け、レンズ設計者の砂山角野を電話で呼んだ。軍需製品では実際の設計者の功績は明らかにされず軍人が評価されることが多いことに不満を感じていた砂山角野も乗り気となり、1935年始めにはニッコール50mmF3.5とニッコール50mmF4.5が完成した。なお、カメラの心臓部とも言える連動式焦点調節機構やヘリコイドの設計・制作は日本光学工業で民需品の設計を担当していた山中栄一の手によるものである。

1935年(昭和10年)には「キヤノン」「Canon」を商標登録し[12]、無名でかつ販売ルートを持たないため近江屋写真用品と独占販売契約を結んでそのブランドであるハンザを冠し最初のカメラ製品、ハンザキヤノン標準型ニッコール50mmF3.5付きを1936年2月発売したが、ちょうどその時目の前の第一師団麻布歩兵第一連隊も舞台の一つとして二・二六事件が起こり、山口一太郎も収監された。驚いた精機光学は1936年6月目黒区中根町に移転した。

年表

  • 2000年(平成12年 )- ニューヨーク証券取引所に上場
  • 2001年(平成13年 )- 「グローバル優良企業グループ構想」フェーズIIスタート
  • 2002年(平成14年 )- 35mmフルサイズ、約1,110万画素CMOSセンサーを搭載したプロ用最高級デジタルAF一眼レフカメラ「EOS-1Ds」発売
  • 2003年(平成15年 )- 世界最高倍率の100倍ズームTVレンズ「DIGISUPER 100 xs」発売
  • 2004年(平成16年 )- 初の個人投資家説明会を開催
  • 2005年(平成17年 )- 下丸子本社に先端技術研究棟を開設
  • 2006年(平成18年 )- 「グローバル優良企業グループ構想」フェーズIIIスタート
  • 2007年(平成19年 )- 5,000万画素CMOSセンサーの試作に成功
  • 2008年(平成20年 )- 一眼レフカメラ生産5,000万台を達成,コンパクトデジタルカメラ生産1億台を達成
  • 2009年(平成21年 )- EFレンズ生産5,000万本を達成
  • 2010年(平成22年 )- APS-Hサイズで世界最高の約1億2,000万画素CMOSセンサーの開発に成功
  • 2011年(平成23年 )- 「グローバル優良企業グループ構想」フェーズIVスタート
  • 2012年(平成24年 )- 御手洗冨士夫、キヤノン株式会社代表取締役会長兼社長CEOに就任
  • 2013年(平成25年 )- 業務用30型4Kディスプレイ「DP-V3010」を発売し、4K映像制作ディスプレイ市場に参入
  • 2014年(平成26年 )- デジタルカメラ生産2億5,000万台を達成
  • 2015年(平成27年 )- ネットワークカメラ事業の強化に向けてスウェーデン・ アクシス社を連結子会社化
  • 2016年(平成28年 )- 「グローバル優良企業グループ構想」フェーズVスタート 東芝メディカルシステムズを連結子会社化

歴代社長

氏名 在任期間
初代 御手洗毅[12] 1942年 - 1975年
2代 前田武男[13] 1975年 - 1977年
3代 賀来龍三郎[14] 1977年 - 1989年
4代 山路敬三[15] 1989年 - 1993年
5代 御手洗肇[15] 1993年 - 1995年
6代 御手洗冨士夫[15] 1995年 - 2006年
7代 内田恒二[16] 2006年 - 2012年
8代 御手洗冨士夫[16] 2012年 - 2016年
9代 真栄田雅也[17] 2016年 -
  • 2016年4月 御手洗冨士夫に代わり、真栄田雅也が社長に昇格[18]

不祥事・事件

主な事業・製品

入力機器

原点である銀塩カメラデジタルカメラ写真レンズを中心に、デジタルビデオカメラ双眼鏡液晶プロジェクタなどを加えた映像機器の開発・製造・発売を手がけている。デジタル一眼レフ市場ではシェア1位の地位を時にニコンに逆転されるなど、熾烈な戦いが展開されている。 放送・業務用ビデオカメラ用レンズ分野では世界トップシェアを誇り、一時参入していたニコンの追随を許さなかったほどである。その他にも業務用として、XL-H1シリーズを始めとしたHDVカメラや監視カメラ用のCCTVレンズ、テレビ会議・Web会議システム、ネットワークカメラでも高いシェアを誇っている。 近年ではディスプレイ事業への進出を目指し、SED有機EL、薄型リアプロジェクションテレビの開発も行っている。このほか、中小型有機ELメーカーの日立ディスプレイズに出資している。

デジタル一眼レフカメラ

キヤノンは創立以来、究極の一眼レフカメラを追求し、自社開発のレンズ、CMOSセンサー、映像エンジンなどの革新的技術から生み出されるイノベーティブな製品が高画質画像で、世界をリードしている。レンズ交換式カメラのシェアは2015年末に44%で13年連続の1位。静止画向けとして、有効画素約1.2億画素の一眼レフカメラも開発。

交換レンズ

キヤノンの交換レンズは、35mm判に対応する一眼レフ用のEF、TS-E、MP-Eレンズがそれぞれ49本、4本、1本、コンバーター類が3本。APS-Cサイズ一眼レフ専用のEF-Sレンズが13本、APS-Cサイズミラーレスカメラ用のEF-Mレンズが5本の、合計75本もの陣容を誇る。

コンパクトデジタルカメラ

コンパクトカメラは1961年の「キヤノネット」に始まる。2008年にはコンパクトデジタルカメラ生産1億台を達成。近年はデジカメの販売台数は縮小傾向。

デジタルビデオカメラ

高速データ処理、小型化、省電力化を実現した高品質フルHDビデオカメラを生産している。

デジタルシネマカメラ

2015年にはキヤノンは4K動画撮影に対応したビデオカメラの新シリーズ『XC10』を発表。 8K映像の撮影/表示が可能な業務向け「CINEMA EOS SYSTEM」のカメラやディスプレイも開発中。

放送機器

記者会見・ニュース撮影など報道用途や屋内外のロケなど、番組制作のさまざまな場面で使用される。2015年末現在国内シェア1位を獲得している。 2020年の東京オリンピックに向けた取り組みを実施している。

ネットワークカメラ

カメラと事務機に次ぐ3本目の柱として進められている事業の一つ。 ネットワークカメラの世界シェアトップであるアクシスを子会社化。これまでにもビデオ管理システムを持つマイルストーンを買収するなど法人向けのネットワークカメラビジネスについて体制を整えている。

医療機器

医療機器分野では、眼科用測定機器(眼底カメラ)、X線写真撮影機器(デジタルラジオグラフィ)、医療画像記録機器の開発・製造を手がけている。 2016年12月に東芝メディカルシステムズ(現・キヤノンメディカルシステムズ)を子会社化[25]

スキャナー

フィルムや写真、文書などをデジタルデータ化するスキャン技術には、高精細スキャンを追求するキヤノンの高度な光学技術、電子デバイス技術、ソフトウェア技術などの独自技術が数多く盛り込まれている。現在はスキャナーを備えた複合プリンターが多くCCDモデルとCISモデルの2機種が販売されている。

出力機器

各種プリンター (PIXUS、Satera、imagePROGRAF、SELPHY) や複写機/複合機(PIXUS、Color imageRUNNER、imageRUNNER、ファミリーコピア、ミニコピア、Satera MULTI FUNCTION PRINTER、imagePRESS)、イメージスキャナ/ドキュメントスキャナ (CanoScan、imageFORMULA)、プロジェクタファクシミリ(キヤノフアクス)等といったOA機器やコンピュータ用周辺機器、関連ソフトウェアを開発・製造・発売している。なおファクシミリについては個人用を2006年12月に販売終了し、現在は業務用のみとなっている。さらに、オランダ・オセ社が傘下に入り、基幹系プリンター、連帳プリンター、オンデマンドプリンターなどのラインナップが強化されているほか、業務用フォトプリンター(DreamLabo)などの新規ジャンルも増やしている。

インクジェットプリンター

ファイル:Canon PIXUS 560i expand.jpg
キヤノンインクジェットプリンター PIXUS560i

1980年代にインクノズル内のヒーターを加熱して発生させた泡(バブル)の圧力によりインクを噴出させることにより精密なイメージを印刷可能にした「バブルジェット方式」(サーマル方式インクジェット)を開発、1985年からこの方式を採用した「BJプリンタ」を発売。オフィスから家庭まで幅広く普及し、現在のキヤノンの売上げの大きな核となった。 現在ではピクサスブランドで展開、日本市場ではセイコーエプソンカラリオと激しいトップシェア争いを繰り広げている。また現在では、PictBridgeなどに対応し、カメラからのダイレクトプリントも可能なものがある。なるべく独自技術の特許を他社に開放せず、技術を囲い込む戦術はキヤノンの特徴的なマーケティング戦略であると言える。また、ポスター等の印刷を行う大判プリンターは「imagePROGRAF」ブランドとして販売している。imagePROGRAFは、「綴プロジェクト(文化財未来継承プロジェクト)」の出力機器として使用されている。高速・大量の写真・アルバムの印刷を行う業務用フォトプリンターは「DreamLabo」ブランドとして販売している。インクジェットプリンタ/複合機「PIXUS」と機動戦士ガンダムのコラボレーション、「PIXUS GUNDAM PROJECT」の"機動"として、シャア専用カスタマイズキット付きの限定モデルを販売した。

大判インクジェットプリンター

基本性能である高速出力・高画質・低コストをさらに進化させ、ソフトウエアを拡充することで、生産性と出力ワークフローの利便性が向上している。CAD/GIS図面を出力する建築、土木、製造、官公庁などの大規模ネットワーク環境から中規模ワークグループだけでなく、高品位ポスターを出力する流通業や小売店、教育現場など、幅広い大判プリントニーズに対応している。大判機の中心に据える水性インクジェットタイプは、世界シェアが台数ベースで2014年末現在27%で2位。

業務用フォトプリンター

リテイルフォト業界向けとして新展開する業務用フォトプリンター「DreamLabo」には、家庭用インクジェットプリンターから業務用デジタル複合機まで、幅広い製品開発をつづけてきたキヤノンのプリンター技術が投入されている。一般的なプリンターはCMYKの4色、画質を重視する業務用プリンターでも6色での印刷が主流だが、キヤノン「DreamLabo 5000」は、CMYKの4色に加え、更にフォトシアン、フォトマゼンタ、グレーを加えた7色のインクで印刷を行う。これにより、従来のカラーレーザー印刷では表現できなかった写真画質が表現できるようになった。銀塩方式の「立体感」「重厚感」とインクジェット方式の「透明感」。それぞれの強みを融合したインクジェットならではの広い再現色域を活かして、より豊かな深みのある色表現を実現している。

レーザープリンター・複合機

ファイル:Canon ir2270.jpg
オフィス向け複合機 iR2270

1960年代に複写機の開発を開始。それまで米・ゼロックスが特許を盾に市場を独占していたがゼロックスの特許を全く使わずに、独自の電子写真方式「NP方式」の開発に成功、1969年に初の製品を発売した[注 2]。以後複写機の分野ではゼロックスと並ぶシェアを占めた。 現在ではほとんどの製品がデジタル複合機に移行し、「imageRUNNER(イメージランナー、iR(カラーはiRC))」「imagePRESS(イメージプレス)」のブランドで発売している。また、電子写真技術をもとにレーザープリンター (LBP) を開発し、かつては「LASER SHOT(レーザショット)」、現在では「Satera(サテラ)」のブランドで発売している。なお、レーザープリンター商品はオンデマンド定着式[26]を採用しており省エネに貢献している。 これら製品に関連し、文書管理やプリンター管理、帳票設計などのソフトウエア製品群を、「imageWARE(イメージウェア、iW)」ブランドで開発・販売している。

オフィス向け複合機

オフィスドキュメントの入出力・保管・送受信など、あらゆる業務をこなす複合機。ネットワーク技術をはじめ、ドキュメント処理技術やソフトウェア技術など、キヤノンの先進の技術が投入されている。レーザープリンター、オフィス向け複合機、デジタルプロダクションプリンティングシステムなどは、同じ原理でプリントを行っている

デジタルプロダクションプリンティングシステム

デジタルプロダクションプリンティングシステム「imagePRESS」は、キヤノン初のプロフェッショナル向けカラーオンデマンド機で、オフセット印刷に迫る高画質・高精細を実現し、少部数印刷にも対応できる生産性と優れた耐久性・信頼性を備えている。

プロジェクター

従来より小型化・軽量化に成功した業務用4Kプロジェクター『4K500ST』を2015年から発売している。解像度は4,096×2,400、輝度は5,000ルーメン。シミュレーターやデジタルサイネージ、医療、美術館など高画質を望む市場をターゲットにしている。

露光装置

製造機器分野では、半導体露光装置(ステッパーなど)および液晶基板露光装置の開発・製造を手掛けており、キヤノンの半導体製造装置は世界の企業の 半導体・製造装置メーカー売上高ランキングで08年度は6位につけている。

半導体露光装置

半導体露光装置市場でキヤノンは、オランダのASML(ASML.AS)とニコン (7731.T)との技術競争に出遅れて市場シェアが低迷している。2014年最先端の半導体製造技術を持つ米国モレキュラーインプリント社(テキサス州)を買収し次世代装置の投入で巻き返しを図る。製品の量産化は2015年以降になる。

フラットパネルディスプレイ(FPD)露光装置

大型液晶テレビに使用される液晶パネルは、大型ガラス基板に微細な画素回路を露光する技術でつくられるが、キヤノンのFPD露光装置は、57型ワイドテレビの一括露光も可能。2015年末現在この装置のトップメーカーとなっている。

その他製品

要素技術

光学コンポーネントを開発・製造・販売している。また、バーチャルリアリティ技術の一種である拡張現実/複合現実en:Mixed reality)を実現する機器(ヘッドマウントディスプレイ)やプラットフォームを開発している。[29]

共通基盤技術

  • カラーマネジメントシステム  -(入出力機器において高画質かつ統一感のある色を再現するための技術)
  • 映像認識技術  -(映像データの内容を理解するための認識技術)
  • ユーザーインターフェース  -(使い手の目的や意図を的確にくみ取り、使いやすさを追求するための技術)
  • 通信ネットワーク技術  -(高画質映像を「簡単・セキュアかつ高速・省電力」で高品位に伝送するための技術)
  • クラウドサービス基盤技術  -(クラウドサービスへの対応と短期間でのサービス構築するための技術)
  • セキュリティ技術  -(製品・サービスの安全性を確保するための技術)
  • 画像検索技術  -(欲しい画像をすばやく的確に検索するための技術)
  • OS技術  -(デジタルカメラをはじめとした、数多くのキヤノン製品に採用されているOS技術)
  • システムLSI統合設計環境  -(ハードウェア・ソフトウェアのシステム全体を1チップに搭載するための技術)
  • ソフトウェア設計・検証技術  -(設計されたソフトウェアの動作モデルが正しいことを数学的に検証する技術)
  • ディペンダビリティ -(安全で信頼できるサービスをユーザーに提供する技術)
  • インプロセス可視化技術 -(製品の動作メカニズムを明確にする技術)
  • シミュレーション技術 -(製品開発段階で、製品内で起きる現象を分析する技術)
  • 超音波モーター -(USMを世界で初めて実用化した、超音波振動で駆動するモーター技術)
  • エンコーダー -(角度や移動距離を測定するセンサー技術)
  • レーザードップラー速度計 -(レーザー光を照射し、移動・回転している対象物の速度を非接触で計測する技術)
  • ガルバノスキャナー -(レーザー光の位置決めをして穴あけやカッティング、トリミングなどを行う装置)

環境配慮技術

  • 高機能バイオマスプラスチック  -(環境負荷の低減に有用な材料技術)
  • 揮発性有機化合物の代替技術 -(VOCs(揮発性有機化合物)の排出量の削減技術)
  • クリーナーレス現像技術 -(感光ドラムの現像ローラーによる残トナーの回収を安定させる技術)
  • オゾンレス帯電技術 -(感光ドラムのローラーに交流と直流を重畳した電圧をかけて感光ドラムを帯電させる技術)
  • トナー定着技術 -(フィルムを介してトナーに熱を与えて画像を定着させる技術)
  • トナーカートリッジリサイクル技術 -(再び新品のトナーカートリッジとして使用可能にする技術)

品質技術

  • 人間・生理計測評価技術 -(脳波や筋電位、血流・汗・視線などの生理的な反応を測定する技術)
  • 化学物質安全性評価技術 -(VOC (揮発性有機化合物)、粉じん、オゾン、微粒子などの放散化学物質の測定技術)
  • LSI故障解析技術 -(IR-OBIRCH法による電子部品評価・解析技術)

生産技術

  • トナーカートリッジ生産システム -(カートリッジ生産の100以上もの工程を24時間365日稼動する自動化ライン技術)
  • ケミカルコンポーネント技術 -(機能をバランスよく発揮させる素材の独自開発技術)
  • 金属高精度切削技術 -(数十マイクロメートルといった高精度加工を実現する技術)
  • 加工・計測装置技術 -(ナノメートルオーダーの独自の加工・計測装置の開発技術)
  • IBF -(Ion Beam Figuring)加工技術 -(原子サイズの精度が要求される多層膜ミラーをつくる技術)
  • モールド技術 -(高精度の非球面レンズ、DOレンズの金型製造技術)
  • 高密度実装技術 -(半導体の微細化、機器の小型化、軽量化技術)
  • 仮想試作技術 -(機器全体の駆動機構解析を実施するための技術)

関連会社の事業

キヤノン株式会社からの事業移管、あるいはグループ会社の自主事業として、関連領域のビジネスを展開している。

情報機器

キヤノンが世界で初めてテンキー式入力の電卓の製品化に成功した。現在は、キヤノン電子が、ハンディターミナルを、キヤノン電産香港有限公司電卓電子辞書などのパーソナル情報機器を、キヤノンファインテックニスカRFIDカードプリンターを、それぞれ開発・製造・販売している。電子辞書はwordtank(ワードタンク)シリーズとして好評を博している。

ITサービス

キヤノンMJグループ をはじめ、キヤノン電子グループ、Canon Information and Imaging Solutions(キヤノンUSAグループ)などの関係会社が、インターネットサービスやSI、各種ソフトウェアの販売、エンベデッドBPOなどのITサービス事業を展開している。また、画像処理やネットワーク接続技術(BluetoothやIEEE.802.11)を得意とするキヤノンアイテックおよびキヤノンイメージングシステムズでもエンベデット事業を手掛けているほか、キヤノン製品の開発関連会社[30]にも、ソフトウエア開発に携わる企業が多くある。

製造装置

真空技術やメカトロ技術をコアに、半導体をはじめディスプレイや太陽電池、ストレージなどのさまざまな製造装置を開発・製造・販売している。これらのビジネスは、キヤノンマシナリーキヤノンアネルバキヤノントッキの各社が中心となって展開されており、キヤノングループの生産自動化や内製化の推進にも貢献している。また、キヤノンMJ では、RAVE社やmattoson、Zygoなどの日本国外メーカーの関連装置を輸入・販売している。

コンポーネント機器

モータ、TMFセンサ、産業用磁気ヘッド、コンタクトイメージセンサ、電子回路などのコンポーネント製品を開発・製造・販売している。これらのビジネスは、キヤノン電子キヤノンプレシジョンキヤノン・コンポーネンツなどが展開している。

医療機器

眼科機器や遺伝子診断機器、血圧計などの医療機器を開発・製造・販売している。これらのビジネスは、OPTOPOL Technology S.A.やU.S Life Science、Virtual Imaging、キヤノンライフケアソリューションズエルクエストなどが展開している。また、キヤノンMJがフィリップス社製AEDの販売を行っている。2016年12月には東芝メディカルシステムズを完全子会社化し、東芝メディカルシステムズは2018年1月4日にキヤノンメディカルシステムズへ商号変更。

その他

イオンビーム (IBE) 関連装置、業務用生ごみ処理装置、スピーカーなどの開発・製造・販売を行っている。

撤退した事業

  • 強誘電性液晶ディスプレイ (FLCD)
  • ワープロ(キヤノワード)
  • 業務用DTP専用機 (EZPS)
  • パーソナルコンピュータ
    • Macintosh 512Kを日本語対応化したDynaMacMSX規格機、AX規格機、DOS/V機(INNOVAシリーズ)、キヤノン・キャットのようなオフィス専用機、またNeXTからハードウェア部門を買収して、PowerPC用のチップセット事業も行っていた。
    • PERSONAL STATION NAVI
      • 独自OS搭載のタッチパネル画面GUIインターフェース型モノクロパソコン。電話機、FAXも一体型で搭載し、グリーンCRT使用。初代機種は各界からデザインの秀逸さが評価され、通産省グッドデザイン賞を受賞。コミックス「コブラ」作者で知られる寺沢武一など著名イラストレーターにも重宝された(初代機種 解説HP1初代機種 解説HP2)。最終機種となる二代目機種はデザインが大幅に変更され、ラップトップパソコンに近くなっている。
    • NECPC-9801シリーズに乗っかろうとしてか、下丸子工場でPC98互換機をつくっていた。
      • 完成度はかなり良く、PC-98のソフトウェアの80%は完全起動していた。
  • パーソナル向けファクシミリ(ファクスホン)
  • デジタル印刷機(DPシリーズ)
  • フォント
    • TrueTypeフォント「FontGallery」シリーズを発売していた(Windows3.0時代にはWIFEフォントとして発売された)が、2007年1月31日で販売終了した。安価な割にデザインが良い事に加え、他のフォントベンダーに比べ使用条件が緩い。中でも「FG角ゴシック体Ca」「FG丸ゴシック体Ca」は、販売終了した現在でもテレビ番組テロップ表示で多く使われている。使用場面も多く、一部の放送局では標準のニューステロップとして採用している例もある(後継フォントとしては、フォントワークスのニューロダンがよく採用される)。また、数多くのバラエティ番組アニメ番組でも使用されており、過去には「サザエさん」を始め(現在は平成角ゴシック体を使用)、特に2000年代のアニメでは使用例が多く見られた。また、「角ゴシック体Ca」が東京ドームのスコアボードに採用されている。

組織

事業所

事業所は関東地方に集中しており、とりわけ東京都・神奈川県境の多摩川沿いに集中している。関東地方以外では、大分県、静岡県に事業所がある。

ファイル:Gas bashi.jpg
ガス橋からのぞむキヤノン本社
過去
  • 新宿本社(東京都新宿区西新宿)
  • 目黒事業所(東京都目黒区中根)
  • 新川崎事業所(神奈川県川崎市幸区鹿島田)
  • 中央研究所(神奈川県厚木市森の里)
  • エコロジー研究所(京都府相楽郡木津町)

主な連結子会社

製造会社

・日本

販売会社

・日本

研究開発・ソフトウエア会社

・日本

その他関係会社

・日本

広報・広告

コーポレート・ステートメント

現在
  • make it possible with canon(日本 “それ、キヤノンで出来るようにしましょう”の意)
  • Delighting You Always 感動常在(日本以外のアジア)
  • image ANYWARE(北アメリカおよび南アメリカ)
  • you can(ヨーロッパ)
  • advanced simplicity(オセアニア)
過去
  • 光と電子を未来に結ぶ
  • 映像と情報のワンダーランドへ
  • 世界のブランド

CM

現在の提供番組

2018年4月現在のもの。

CM出演者

キヤノンではCMイメージキャラクターを「コミュニケーションパートナー」という名称で呼んでいる。

CMソング

契約スポンサー

現在
過去

その他

スポーツ

関連する人物・企業

  • 昭栄(東証一部上場) - 「みずほ信託退職給付信託キヤノン口再信託受託者資産管理サービス信託」として保有している[32]。また、1944年にキヤノンの前身である精機光学工業は昭栄が前年1943年に買収した大和光学製作所を合併した[33]
  • アキハバラデパート - 創業者の吉田五郎が雑用係として働いていた。
  • オハラ - セイコー系の光学レンズメーカー。キヤノンが取引面での関係強化から資本介入に踏み切った。
  • 鉄道ファン (雑誌) - 1977年から共同で「鉄道ファンフォトコンテスト」を主催。優秀作品には賞品に同社のカメラが贈呈される。

脚注

注釈

  1. 読みは「キャノン」。
  2. このときの田中宏、丸島儀一を中心とした攻防が「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」(NHK)、「キヤノン特許部隊」(光文社新書・丸島儀一(著))で紹介された。
  3. なお、2014年11月は番組編成の都合上テレビ朝日系の場合「世界の街道を行く」以外の2番組のレギュラー提供を見合わせその代わりに「全日本大学駅伝」(2014年11月2日放送)と「フィギュアスケートグランプリシリーズ2014第3戦中国大会・女子ショート・男子ショート」(2014年11月7日放送)に振り替える他BS朝日で編成する特番などに振替。

出典

  1. インダストリー製品 キヤノン公式ページ 09-10-17閲覧
  2. ビジネス製品 キヤノン公式ページ 09-10-17閲覧
  3. パーソナル製品 キヤノン公式ページ 09-10-17閲覧
  4. TOPIXニューインデックスシリーズ及び東証規模別株価指数の構成銘柄”. 日本取引所グループ. . 2015閲覧.
  5. キヤノンのいまができるまで キヤノン公式ページ 09-10-17閲覧
  6. 6.0 6.1 6.2 ロゴの由来 キヤノン公式ページ 13-12-05閲覧
  7. カメラ最初の試作機「カンノン」誕生から80周年 キヤノン株式会社、2014年8月19日
  8. キヤノンカメラミュージアム カンノン(試作機) キヤノン株式会社
  9. 英語のcanonの意味三省堂提供英和辞典
  10. 高橋書店編集部『思わず話したくなる ロゴの秘密』
  11. キヤノンロゴ”. . 2014閲覧. キヤノン株式会社
  12. 12.0 12.1 誕生から創業 キヤノン公式ページ 09-10-17閲覧
  13. 第一次5カ年計画を策定 キヤノン公式ページ 09-10-17閲覧
  14. 第一次優良企業構想スタート キヤノン公式ページ 09-10-17閲覧
  15. 15.0 15.1 15.2 グローバル企業構想(5カ年)スタート キヤノン公式ページ 09-10-17閲覧
  16. 16.0 16.1 「グローバル優良企業グループ構想」スタート キヤノン公式ページ 09-10-17閲覧
  17. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。 「example」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません
  18. 日本経済新聞、2016年1月27日
  19. 朝日新聞、2006年7月31日
  20. 朝日新聞、2006年10月18日
  21. 「『抜け殻』正社員:派遣・請負依存経営のツケ」日経ビジネス2007年4月2日号
  22. 「「偽装請負」労働が製造業で横行」朝日新聞、2006年7月31日
  23. 「偽装請負への思い、国会で訴えへ キヤノン工場の男性」朝日新聞、2007年2月21日
  24. 「キヤノン請負労働者「生身の人間。正社員と同じ賃金を」朝日新聞、2007年2月22日
  25. キヤノン、東芝メディカル買収を発表 6655億円で - 日本経済新聞 2016年3月17日
  26. キヤノンビデオスクエア
  27. キヤノン用紙 香りペーパー
  28. キヤノン 香りペーパーSpecial Site
  29. Reality Media Lab.
  30. キヤノン:キヤノン株式会社 会社情報|開発関連会社
  31. テレビ番組スポンサー表 @ wiki - CX系朝400?昼1200
  32. 昭栄株式会社”. 2005年3月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2013閲覧.
  33. 昭栄株式会社”. 2005年3月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2013閲覧.

参考文献

関連項目

外部リンク


  • テンプレート:JOCオフィシャルスポンサー(2015-2020)