有限責任監査法人トーマツ
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有限責任監査法人トーマツ(ゆうげんせきにんかんさほうじんトーマツ、英文名称:Deloitte Touche Tohmatsu LLC)は、デロイト トーマツ グループの一つで、監査、マネジメントコンサルティング、株式公開支援、ファイナンシャルアドバイザリーサービス等を提供する日本で最大級の会計事務所。いわゆる「4大監査法人」の一つ。大蔵省の監査法人の必要性の提言のもと、等松農夫蔵の等松監査や青木大吉の第一公認会計士事務所ほか複数の事務所が合同して設立した。
海外の大手監査法人を指す「big4」の一つ、デロイト トウシュ トーマツ(w:Deloitte Touche Tohmatsu)のメンバーファームであり、「big4」の中で、日本の会計事務所の名前が使用されている唯一の監査法人である。
Contents
概要
- 主な業務 - 会計監査、IFRSサービス、株式公開支援、ERS、年金コンサルティング、知的財産コンサルティングサービス、ライセンス契約マネジメント、グローバルサービス
- 国内ネットワーク - 札幌、名古屋、大阪、福岡事務所など30カ所
- 連絡事務所 -高崎、長崎など9カ所
- 海外ネットワーク- アメリカ、アジアパシフィック、ヨーロッパ、中東
- 海外駐在員派遣 - ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、北京など約50都市
- 人員 - 2018年(平成30年)2月末日現在6,682名
- 監査関与会社 - 2017年(平成29年)5月末日現在 3,399社
大口クライアント
有価証券報告書より、最近の監査報酬が1億円超のクライアントを列挙。
- 素材・エネルギー
- LIXILグループ、ブリヂストン、出光興産、DOWAHD、ユニチカ、日本碍子、大同特殊鋼、UACJ
- 医療・化学
- 大塚HD、DIC、エーザイ、ダイセル、花王、シスメックス
- 食品・アグリ
- サントリーHD、日本たばこ産業、日本ハム、サントリー食品インターナショナル、日清製粉グループ本社、日清食品HD、宝HD、ハウス食品グループ本社
- 自動車・機械・部品・エレクトロニクス
- クボタ、JVCケンウッド、日清紡HD、オムロン、ダイキン工業、デンソー、村田製作所、ブラザー工業、アマダHD、HOYA、横河電機、パイオニア、ニコン、三菱ロジスネクスト、ローム、ジーエス・ユアサコーポレーション、ユニプレス、アズビル、SUMCO、ホシザキ、古河電気工業
- 不動産・建設・レジデンス
- 大和ハウス工業、鹿島建設、大東建託、千代田化工建設
- 物流・インフラ
- 東海旅客鉄道、日本郵船、関西電力、ヤマトHD、ANAHD、SGHD、九州電力、九州旅客鉄道
- 生活・サービス
- ベネッセHD、平和、ワコールHD、エイチ・アイ・エス、パーソルHD、東宝、パソナグループ
- 情報・通信
- ソフトバンクグループ、ヤフー、GMOインターネット、スカパーJSATHD、日本経済新聞社、伊藤忠テクノソリューションズ、インターネットイニシアティブ
- 卸売・小売・外食
- 三菱商事、イオン、伊藤忠商事、三井物産、ユニー・ファミリーマートHD、ローソン、伊藤忠エネクス、スズケン、TOKAIHD、日鉄住金物産、ビックカメラ、三菱食品、DCMHD、吉野家HD、ユナイテッド・スーパーマーケットHD、ファーストリテイリング
- 金融・保険
- 三菱UFJFG、三菱UFJ銀行、三菱UFJ証券HD、三菱UFJ信託銀行、SBIHD、新生銀行、りそなHD、イオンフィナンシャルサービス、クレディセゾン、あおぞら銀行、りそな銀行、日本政策投資銀行、三菱UFJリース、コンコルディアFG、九州FG、アコム、ほくほくFG、興銀リース、JA三井リース、関西みらいFG、めぶきFG、アプラスフィナンシャル
特徴
法人及びクライアントの特徴として以下の点が挙げられる[1]。
- 創業者の等松農夫蔵や富田岩芳が旧日本海軍主計の出身ということもあり、営業力に強く、体育会の色が濃い法人として一線を画してきた。
- 昔から外資系的要素を多く取り入れ、海外展開にも積極的であった。もっとも外資色が強い点については、アーサー・アンダーセンと提携していた頃の朝日(現あずさ)や、現在のPwCあらたも同様である。
- IPO分野の強さに定評がある。しかし近年は新日本の後塵を拝すこともある[2]。
- 企業グループの中では、三菱グループに比較的強い(新日本やあずさと分け合っている)。
- 製造業(重化学工業)のクライアントが少ない。自動車メーカーのクライアントが大手監査法人で唯一存在しない。一方で情報分野や卸売・小売分野、金融分野は圧倒的に強く、第三次産業の比重が大きい。五大商社の過半数を占めている。
- 地方では、宮城県・四国・九州に強い。
- 他法人よりもコンサルティング業務向きであり、業務収入に占める非監査報酬の割合が大きい。
沿革
- 1968年(昭和43年)5月 - 監査法人等松・青木・津田・塚田・青木・宇野・月下部事務所設立。
- 1968年(昭和43年)12月 - 監査法人丸の内会計事務所設立
- 1969年(昭和44年)2月 - 監査法人等松・青木・津田・塚田・青木・宇野・月下部事務所から等松・青木監査法人に名称を変更
- 1969年(昭和44年)8月 - 監査法人西方会計士事務所設立
- 1973年(昭和48年)3月 - 監査法人サンワ事務所設立
- 1974年(昭和49年) - 監査法人誠和会計事務所設立
- 1975年(昭和50年)5月 - 等松・青木監査法人、トウシュ・ロス・インターナショナル(TRI)へ加盟
- 1975年(昭和50年)12月 - 監査法人丸の内会計事務所 東京事務所が同監査法人から分離独立し、監査法人東京丸の内事務所が発足
- 1976年(昭和51年)4月 - 監査法人サンワ事務所と監査法人東京丸の内事務所が合併し、監査法人サンワ東京丸の内事務所が発足
- 1976年(昭和51年)4月 - 監査法人札幌第一会計設立
- 1983年(昭和58年)5月 - サンアイ監査法人設立
- 1985年(昭和60年)6月 - デロイト・ハスキンズ・アンド・セルズが監査法人三田会計社を設立[3]
- 1985年(昭和60年)9月 - 監査法人サンワ東京丸の内事務所が監査法人サンワ事務所に名称を変更
- 1986年(昭和61年)10月 - 等松・青木監査法人と監査法人サンワ事務所が合併し、サンワ・等松青木監査法人と名称を変更
- 1988年(昭和63年)4月 - 監査法人丸の内会計事務所と合併
- 1988年(昭和63年)10月 - 監査法人西方会計士事務所および監査法人札幌第一会計と合併
- 1990年(平成2年)1月 - デロイト・ハスキンズ・アンド・セルズ・インターナショナルとトウシュ・ロス・インターナショナルが合併。国際名称をデロイト ロス トーマツ インターナショナル(DRTI)に変更
- 1990年(平成2年)2月 - 監査法人三田会計社と合併し、監査法人トーマツと名称を変更
- 1992年(平成4年)6月 - 国際名称をデロイト トウシュ トーマツ インターナショナル(DTTI)に変更
- 1998年(平成10年)1月 - 国際名称をデロイト トウシュ トーマツ(DTT)に変更
- 2000年(平成12年)6月 - デロイト トウシュ トーマツのインテグレーションステージに参画
- 2001年(平成13年)4月 - サンアイ監査法人と合併
- 2002年(平成14年)7月 - 監査法人誠和会計事務所と合併
- 2002年(平成14年)12月 - デロイトトーマツコンサルティング(株)(現・アビームコンサルティング(株))と資本関係を解消し、完全分離
- 2004年(平成16年)4月 - 英文名称をDeloitte Touche Tohmatsuに変更
- 2009年(平成21年)6月 - 有限責任監査法人として、金融庁において登録がされる
- 2009年(平成21年)7月 - 有限責任監査法人トーマツとして業務開始
- 2017年(平成29年) - 決算期を9月から5月へ変更
- 2019年(平成31年)春 - 本部事務所を丸の内二重橋ビルディングへ移転、品川・八重洲・有楽町に分散している事務所を集約予定[4]
歴代包括代表
代 | 氏名 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 川北博 | 1990年6月 - 1993年5月 | 陸軍士官学校(58期)・中央大学商学部卒、サンワ・等松青木監査法人会長から横滑り |
2 | 田近耕次 | 1993年5月 - 1999年5月 | 中央大学商学部卒 |
3 | 高岡次郎 | 1999年6月 - 2001年5月 | 東京大学経済学部卒 |
4 | 阿部紘武 | 2001年6月 - 2007年5月 | 中央大学商学部卒 |
4 | 佐藤良二 | 2007年6月 - 2010年11月 | 慶應義塾大学経済学部卒 |
5 | 天野太道 | 2010年11月 - 2015年7月 | 早稲田大学商学部卒 |
6 | 小川陽一郎 | 2015年7月 - 2015年10月 | 慶応義塾大学商学部卒 |
7 | 觀 恒平 | 2015年11月 - 2018年5月 | 横浜国立大学経営学部卒 |
8 | 国井 泰成 | 2018年6月 - | 明治大学経営学部卒 |
グループ会社等
- デロイト トーマツ合同会社
- デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
- デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
- デロイト トーマツ税理士法人
- DT弁護士法人
- デロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社
- デロイト トーマツ行政書士法人
- デロイト トーマツ リスクサービス株式会社
- デロイト トーマツ サステナビリティ株式会社
- デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社
- トーマツ イノベーション株式会社
- デロイト トーマツ アンカー マネジメント株式会社
- デロイト トーマツ PRS株式会社
- デロイト トーマツ サービシーズ株式会社
- トーマツチャレンジド株式会社
- デロイト トーマツ サイバーセキュリティ先端研究所
- デロイト トーマツ 企業リスク研究所
出来事
金融庁による処分
- 2006年(平成18年)3月30日 - 法人本体と法人の元社員7名が公認会計士法の規定に基づく処分を受ける。株式会社エムティーシーアイ、株式会社サワコー・コーポレーション、株式会社ナナボシの3件の監査証明に係る審理体制と教育研修体制について法人は戒告を受け、元社員はそれぞれ1ヶ月から3ヶ月の業務停止処分を受けた。
情報漏洩
同法人への損害賠償訴訟
- 前述のナナボシの経営破綻について、ナナボシの管財人がトーマツに対し損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こし、同地裁は2008年(平成20年)4月18日に、訴えを認め、公共工事の受注を装った売上計上を虚偽と見抜くべきだったと指摘、約1,700万円を支払うようトーマツに命じる判決。上場企業の会計監査を巡り、監査法人の過失を認めた判決は前例が無いという[5]。
大王製紙事件
- 大王製紙の創業家一族が子会社に巨額の借り入れを行わせ私的消費した事件において、適正意見が出されていた繰延税金資産計上額・固定資産売却取引・株式の減損・貸付金への引当金をめぐり過年度の決算5年分が遡及修正された[6]。当時会計監査を実施していたトーマツは金融庁の調査を受けたが、処分や戒告はなされなかった。大王製紙の監査は高松事務所と松山事務所の合同で行われていたが、この事件を受け地方事務所の再編強化等を行い[7]、会計監査人を退任した。2013年3月期以降の後任監査人はあらた監査法人(現:PwCあらた有限責任監査法人)である。
関連人物
脚注
- ↑ 監査法人の未来像:監査法人の研究 - 柴田秀樹(弘前大学)著、2010年。
- ↑ 2015年・監査法人IPOランキング!トーマツが首位陥落、新日本がトップに!(公認会計士ナビ) - 株式会社ワイズアライアンス、2016年3月1日。
- ↑ わが国監査法人の展開 - 原征士(法政大学)著、1995年
- ↑ デロイト トーマツ グループ旗艦オフィスを2019年春にグランドオープン - デロイト トウシュ トーマツ、2017年11月6日。
- ↑ “監査法人トーマツに賠償命令 「粉飾見抜けず損害」認定”. asahi.com (朝日新聞社). (2008年4月18日). オリジナルの2008年4月21日時点によるアーカイブ。
- ↑ オックスフォード・レポート 日本の経済社会に対するIFRSの影響に関する調査研究(金融庁)
- ↑ 大王製紙会長による特別背任事件の事例研究 樋口晴彦(警察大学校)著, 2013.