夏時間

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夏時間(なつじかん)またはサマータイム: summer time)、デイライト・セービング・タイム: daylight saving time (DST)、直訳: 日光節約時間カナダオーストラリアでも用いる)とは1のうちを中心とする時期に太陽が出ている時間帯を有効に利用する目的で、標準時を1時間進める制度またはその進められた時刻のこと。ただし、オーストラリアロード・ハウ島では夏時間と通常の時間の差が1時間でなく30分である。

現在の主な実施地域では実施期間が7 - 8か月なので計算上通常時間より夏時間の期間のほうが長くなる。一般に、昼間の明るいうちに仕事をし、夜の余暇時間を長く持つことができる。緯度が高く夏の日照時間が長い欧米諸国などで多く導入されている。

目的と効果

ファイル:Begin CEST.svg
夏時間開始の際には、時計を1時間進める。
ファイル:End CEST.svg
夏時間終了の際には、時計を1時間戻す。

以下のような効果が期待できると考えられている。

  • 明るい時間を有効に使えるので照明節約になる。
  • 交通事故犯罪発生率の低下。
  • 活動時間が増えることによる経済の活性化。
  • 午後の日照時間が増えることによる余暇の充実。

夏時間導入に対する反対論

歴史

18世紀ベンジャミン・フランクリンが提唱したとされるが、これは時計の針を動かすことなく市民の早寝早起きを推奨したのみであり、フランクリンの時代にはどちらも実現しなかった。現在の方式のサマータイムを提唱したのはイギリス建築業者であったウィリアム・ウィレットEnglish版である。実際に採用されたのは第一次世界大戦中のドイツ1916年4月30日から10月1日まで、同じくイギリスが1916年5月21日から10月1日まで採用したのが始まりである。

アメリカ合衆国では1918年1919年に各7か月間、夏時間が導入されたが、大変に不評のため廃止になった。その後第二次世界大戦中に資源節約目的で復活し、今に至る。1986年までは現地時間4月最終日曜日午前2時から10月最終日曜日午前2時までの間、それまでの時刻に1時間を加えたタイムゾーンを採用する「1966年方式」が主に使われていた。その後1986年より、開始日は4月第1日曜日となり、2007年からは「包括エネルギー法案」の可決により期間が約1か月延び、開始日は3月の第2日曜日、終了は11月の第1日曜日となった。なお、議会で法案が通れば、その自治体は夏時間を使用しなくてもよいため、2008年現在、低緯度のハワイ州は州全体、アリゾナ州では大半の自治体で夏時間を採用していない。なお、2005年まで大半の自治体で夏時間を採用していなかったインディアナ州は、2006年から州全域で夏時間を採用している。

日本では、占領軍の施政下にあった1948年昭和23年) - 1951年(昭和26年)の間のみ実施されていた(後述)。

稀な事例だが、二段階のサマータイムが実施された例がある。連合国占領下のドイツ1945年1947年に実施された(de:Sommerzeit)。1945年の場合は、独ソ戦終了前から通常のサマータイムが実施されていたが、5月の独ソ戦終了まもなくから9月まで、ソ連占領地域ベルリンにおいて+2時間のサマータイムが実施され、当時サマータイムを導入していなかったモスクワと同じ時刻になった(通常のサマータイムは11月まで)。1947年の場合はドイツ全土において、4月6日に第一段階のサマータイム(+1時間)を開始、5月11日から6月29日まで二段階目(+2時間)を実施し、10月5日にサマータイムを終了した。

主な地域の実施時間

2011年現在

  • アメリカ合衆国(一部除く)
  • カナダ(一部除く)
    • 上記2ケ国では、3月第2日曜日午前2時〜11月第1日曜日午前2時(現地時間基準[2]
  • メキシコ(一部除く)
    • 4月第1日曜日午前2時〜10月最終日曜日午前2時(現地時間基準[2]
  • ヨーロッパ各国(一部除く)
    • 3月最終日曜日午前1時 - 10月最終日曜日午前1時(UTC基準)
  • オーストラリア(北部は実施なし、西部は2006年度から3年間試行)
    • 10月第1日曜日午前2時 - 翌年4月第1日曜日午前3時(現地時間基準、2008年から)
  • ニュージーランド(一部除く)
    • 9月最終日曜日午前2時 - 翌年4月第1日曜日午前3時(現地時間基準)
  • ブラジル(一部除く)
    • 毎年10月第3日曜日午前0時 - 翌年2月第3日曜日午前0時(現地時間基準)

国別実施状況

サマータイムを実施していたが廃止した主な地域

サマータイムを実施したことがない地域

日本における夏時間

連合国軍占領期

1949年4月3日より実施されたサマータイム

日本において夏時間は、太平洋戦争敗北後の連合国軍占領期GHQ指導下で公的に導入され、1948年昭和23年)4月28日に公布された夏時刻法に基づき、同年5月2日の午前0時から9月11日にかけて初めて実施された[3]。以後、毎年5月(ただし、1949年(昭和24年)のみ4月)第1土曜日24時(= 日曜日0時)から9月第2土曜日25時(= 日曜日0時)までの間に夏時間が実施されることとなったが、残業増加や寝不足を引き起こすなどとして不評を呼び、1951年(昭和26年)度はサンフランシスコ講和条約が締結された第2金曜日の9月7日で打ち切られ[3]、翌1952年(昭和27年)4月27日の占領終了と同月28日の条約発効による日本の主権回復に先立ち、夏時刻法は同年4月11日に廃止された。

なお、当時の人々やマスコミはサマータイムではなくサンマータイムと呼んだ[3]

平成における制定過程

前述の通り、日本での公的な夏時間の実施は1948年から4回(4シーズン)だけで終わったが、1995年平成7年)頃からは省エネルギーなどを名目としたサマータイムの再導入が一部議員を中心に検討され始めた。

衆参両院超党派の100名超の国会議員らにより2004年(平成16年)8月に「サマータイム制度推進議員連盟」が設立された。会長は第一次小泉内閣経済産業大臣だった平沼赳夫(経産省は電力などを管掌)。2005年(平成17年)に法案提出の動きがあったができなかった。平沼自身は、郵政選挙で自民党を離党し、政治権力の中心から離れるとともに“反自民”の象徴となった。以降この議連による動きは止まったままである。

2007年(平成19年)春には、日本経済団体連合会(日本経団連)が自由民主党に対して夏時間の導入を提案した。同年8月1日から8月31日までの1か月間、日本経団連は経団連会館内で、始業・終業時刻を通常より1時間繰り上げる(早める)「サマータイム勤務」(エコワーク)を実施した。

福田康夫内閣は地球環境(特に地球温暖化対策)と生活者の重視を旗印にしており、自民党2008年(平成20年)4月に地球温暖化対策推進本部を立ち上げた。会長は野田・元自治相であり「(国民の)地球温暖化対策に対する意識変化を国民運動的に求めていく」として、サマータイムを政府のなすべき温暖化対策・環境対策の切り札として位置付けていた。2008年(平成20年)5月13日、自民党地球温暖化対策推進本部は、サマータイム法制化・完全導入への作業を本格的に開始した。

麻生太郎内閣2009年(平成21年)6月28日の日韓首脳会議後、日韓同時にサマータイムを導入すれば経済効果が高いと認識を示していた。

2009年(平成21年)9月9日に鳩山由紀夫内閣との日韓首脳会議で日韓同時導入を韓国が提案する方向で検討していると発表した。

サマータイム制への批判

前述の通り、日本では過去にサマータイム制を導入しながらも廃止した経緯がある。NHKオンラインが2005年(平成17年)8月12日に実施したアンケート[4]では、反対派が賛成派をわずかに上回った。具体的な意見は脚注を参照。

  • 日本列島は東西に細長いため、東日本西日本日の出日の入りの時刻に大きな差があり、全国一律にサマータイムを導入するには不適。
  • 日本は湿度が高く、日没後も蒸し暑いため、帰宅後の冷房需要が他国と比べて大きい(特に関東以西の地域ではそれが顕著)。
  • 日本の周辺国の多くはサマータイム制を導入していないので、欧米のサマータイムに合わせる必要性が薄い。

北海道サマータイム

緯度である北海道の日中時間が日本一長いため、北海道全域を中央標準時より1時間又は2時間加えることによって、明るい時間を有効に利用しようという「北海道サマータイム特区構想」にからんだ社会実験として実施されている。

最終的には北海道全域に限り4月第1日曜日から9月最終日曜日までの期間、1時間又は2時間時計を進める仮構想が提唱されている[5]

札幌商工会議所は、2004年(平成16年)7月の1か月間、北海道内の企業、官公庁に対し、就業時間を1時間繰り上げる(早める)よう呼びかける「北海道サマータイム月間」を実施。2005年(平成17年)は6月20日から7月31日までの期間内で実施。企業へのアンケートでもおおむね好評[6]で、夏のイベントとしての定着が進められている。しかし、北海道サマータイムは時計をいじらず、出退勤時間を1時間早めるという時差出勤の一種であり、本来の「サマータイム」とは異質な制度である。 なお2007年(平成19年)以降は実施する企業が激減し、景気低迷の長期化でエネルギー消費量が減っているために「省エネ」の効果が出にくくなっているとの理由から、2010年(平成22年)はサマータイムを実施しないことに決定した。また、2011年(平成23年)は7月の1カ月間に限って実施したが、傘下の企業への参加呼びかけは行わなかった。

滋賀県庁

2003年(平成15年)7・8月には、滋賀県庁で職員を対象にサマータイム導入実験が行われた。

奥州サマータイム

2006年(平成18年)6月 - 8月にかけ岩手県奥州市において、水沢青年会議所が主導となりサマータイム導入実験が行われた。

奈良県庁

奈良県庁は節電や、仕事と生活を調和させる「ワーク・ライフ・バランス」につながるとして、2012年に導入。 7・8月は開庁時間を30分前倒ししてきた。 ところが2016年に実施したアンケートで、サマータイムを「やめるべきだ」と答えた職員は43%、「見直すべき」が23%となり、不評だったため、2017年はやめることを決めた[7]

コンピュータにおける扱い

以前は、夏時間の期間に入るまたは終わる度に手動でコンピュータに内蔵されている時計の時刻を合わせていたが、近年のオペレーティングシステムは、自動的に内蔵時計を修正する機能をもっている。ファイルタイムスタンプの扱いは、使用するファイルシステムおよびオペレーティングシステムによって異なる。例えば、FATのようなタイムスタンプの記録にローカルタイムを利用するファイルシステムの場合、夏時間内で修正されたファイルを、夏時間外で読み込んだ場合、時刻が1時間ずれる。一方、NTFSのような、タイムスタンプをUTCで記録するファイルシステムを利用している場合、このような問題は起きない。

時刻の内部管理にUTCを使うことにより、夏時間を意識せずにファイルの読み書きができるものの、オペレーティングシステム上での取り扱いは、各システムによって異なる。Windows系の場合、Windows XP以前のOSでは、時刻は現在有効な標準時に合わせて表示される。例えば、夏時間の期間中にタイムスタンプが9時であった場合、期間外では10時と表記される。この方式では表示される時刻が実際の時刻と異なることがある。一方で、夏時間の期間の前後で時刻に不連続が発生しなくなるという利点がある。また、時代・地域による期間・調整時間の差異や、未来の時刻を取り扱う時に実施当日までに変更される可能性がある夏時間規則を考慮する必要がない。一方、WindowsでもWindows 7以降およびmacOSの場合は、期間中に9時であったものは、期間外になっても9時と表記される。この方式の利点・欠点は前者の逆である[8]

LinuxBSD系オペレーティングシステムではtz databaseを用いて夏時間を管理している。

デジタルカメラなどの画像ファイルで使われるEXIFではGPS関連の項目を除いてUTCやタイムゾーンなどは考慮されていないので、夏時間を採用している地域では、画像を読み込む時期によって撮影時刻が1時間ずれる。

関連項目

脚注

  1. ICBC’s top five smart driving tips for Daylight Saving Time Insurance Corporation of British Columbia
  2. 2.0 2.1 開始日には午前2時が午前3時となり、終了日には午前2時が午前1時となるため、開始日の1日が23時間、終了日は逆に25時間になる
  3. 3.0 3.1 3.2 『大衆文化事典』「サンマータイム」の項(鷹橋信夫)、pp.299-300
  4. http://www.nhk.or.jp/toppage/enquete2005/050812.html
  5. http://www.sapporo-cci.or.jp/summer/index.html 北海道サマータイム 札幌商工会議所
  6. http://www.sapporo-cci.or.jp/summer/pdf/summer-houkoku-2005.pdf 『2005北海道サマータイム月間』アンケート調査結果(PDF) 北海道サマータイムサイト内
  7. YOMIURI ONLINE サマータイムやめます 職員に不評  2017年6月02日
  8. Chen, Raymond 「11.1 夏時間が直観的でないのはなぜか」『Windowsプログラミングの極意 歴史から学ぶ実践的Windowsプログラミング!』 アスキー、2007年(原著2006-12)、217-218。ISBN 978-4756150004。

外部リンク