阿武隈川
阿武隈川(あぶくまがわ)は、福島県および宮城県を流れる阿武隈川水系の本流で、一級河川[1]である。水系としての流路延長239kmは、東北地方で北上川に次ぐ長さの川である。古くは大隈川と呼ばれていた。
Contents
地理
那須岳の1つ三本槍岳のすぐ北に位置する福島県西白河郡西郷村の甲子旭岳に源を発し東へ流れる。白河市に入り西白河郡中島村付近で北に流れを変えると、須賀川市・郡山市・福島市と福島県中通りを縦貫して北に流れる。
福島県と宮城県の境界付近では、阿武隈高地の渓谷を抜ける。この区間を並走する国道349号は、待避所のある1車線の険しい道路となっている。宮城県伊具郡丸森町で角田盆地に入り、角田市を流れて仙台平野に出る。現在は岩沼市と亘理町の境で太平洋に注ぐが、古代の旧河口は現在の鳥の海である。
勾配がゆるやかな川で穏やかな印象があるが、増水時にはあふれやすく洪水被害の絶えない暴れ川でもある。1986年には台風による増水で大規模な洪水が起こっているほか、2011年には津波の逆流により大規模な海嘯が発生している。
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那須岳の手前が阿武隈川源流がある旭岳
流域の市町村
- 福島県
- 西白河郡西郷村、白河市、西白河郡泉崎村、中島村、石川郡石川町、西白河郡矢吹町、石川郡玉川村、岩瀬郡鏡石町、須賀川市、郡山市、本宮市、安達郡大玉村、二本松市、福島市、伊達市、伊達郡桑折町、国見町
- 宮城県
- 伊具郡丸森町、角田市、柴田郡柴田町、亘理郡亘理町、岩沼市
流域の観光地
並行する交通
鉄道
道路
アミメカゲロウの大発生
阿武隈川の中流域、福島盆地内では、1980年代から毎年9月ごろになるとアミメカゲロウが大発生している[2]。カゲロウが橋上へ大量に落下し、車がスリップするなどの事故が発生する危険があるため、通行する際には注意が必要である。国土交通省福島河川国道事務所は周辺の橋梁に集虫灯を設置し、また橋上に死骸が落下するのを最小限に抑える対策として晩夏初秋には橋の夜間照明を消灯する橋がある。
歴史
かつては河川舟運が盛んに行われていた。
きっかけは1664年に福島県の伊達郡、信夫郡一帯が天領になり、年貢米(御城米)を江戸へ移送する必要が生じたことによる。移送を請け負った江戸商人、渡辺友以は天領と仙台藩の境にあった難所を拡幅し、長良川で使用されていた小舟(小鵜飼船)を導入したことにより舟運を可能にした。その後、1671年には幕府の依頼により河村瑞賢がさらなる河川改修を行っている[3]。元禄時代以降は、福島から丸森までは小型船で、丸森で荷を移し替えて下流へは大型船による運行という棲み分けができた。明治時代に入ると、さらに河道改修が行われ、丸森で乗り換えは要するものの蒸気船が運行されるようになった。明治17年当時の運行会社である逢隈川汽船会舎のチラシによれば、朝6時に福島を出発し、藤場(岩沼)で乗合馬車に乗り換え、夕方6時に仙台に着く行程が設定されていた。同区間には、陸路で馬車が運行されており競合相手となっていたが、いずれも東北本線が開通すると姿を消した[4]。
また、江戸時代に阿武隈川河口から名取川河口の間に木曳堀と呼ばれる水路が開削され、物流に用いられた。阿武隈川や白石川流域で伐採された木材が、木曳堀を経由して仙台の城下郊外まで運搬されたのだろうと推測されている[5][6]。明治時代に、木曳堀を含めて仙台湾沿岸の運河整備が行われ、貞山運河、東名運河、北上運河が完成し、阿武隈川はこれらの運河群を通じて、松島湾の塩竈や、鳴瀬川、北上川と結ばれることになった[7]。1960年代後半、仙台港の建設のために貞山運河の一部が埋め立てられたため、現在、阿武隈川から貞山運河で通じているのは七北田川河口部までである[8]。
阿武隈川水系の主要河川
- 福島県
- 釈迦堂川
- 笹原川
- 大滝根川
- 逢瀬川 - 日本のロックバンド「音速ライン」の楽曲名に用いられている。
- 五百川
- 六角川
- 荒川
- 松川 - 1600年に起きた「松川の戦い」で知られる。
- 摺上川 - 古くは北流して現在の伊達市梁川町五十沢(福島盆地の北端)で阿武隈川と合流していたが、
- 広瀬川
- 塩野川
- 小国川
- 宮城県
橋梁
- 甲子大橋
- 雪割橋
- 逢隈橋
- 追原橋
- 折鶴橋
- 真鶴橋
- 鶴生橋
- 岩根橋 - 福島県道281号増見小田倉線
- 下熊倉橋
- 羽太橋 - 福島県道37号白河羽鳥線白河羽鳥レイクライン
- 長坂橋
- (橋) - 東北自動車道
- 第1阿武隈川橋梁 - 東北新幹線
- 白河橋 - 国道4号、陸羽街道、奥州街道
- 金勝寺橋
- 田町大橋 - 国道294号(旧陸羽街道)
- (橋) - 東北本線
- 羅漢橋
- 鹿島橋 - 福島県道139号母畑白河線
- 搦目橋
- 鷹の巣橋
- 大正橋 - 福島県道279号高萩久田野停車場線
- 芦の口橋
- 白河大橋 - 西白河東部広域農道
- 細倉橋
- 蕪内橋
- 常陸橋 - 福島県道44号棚倉矢吹線
- 吉岡橋
- 滑津橋 - 福島県道137号泉崎石川線
- 明神橋 - 福島県道139号母畑白河線
- 川の目橋 - 福島県道284号曲木中野目線
- うつくしま大橋 - 福島県道42号矢吹小野線、あぶくま高原道路
- 玉城橋 - 福島県道42号矢吹小野線
- 成竜橋
- 乙字大橋 - 国道118号
- 乙字橋
- 男滝橋
- 大仏大橋 - 福島県道63号古殿須賀川線、川東バイパス
- 小作田橋 - 福島県道138号母畑須賀川線
- 雲水峰大橋
- 江持橋 - 福島県道54号須賀川三春線
- 下江持橋
- 阿武隈川橋梁 - 水郡線
- 御代田橋 - 福島県道110号田村安積線
- 第2阿武隈川橋梁 - 東北新幹線
- 永徳橋
- 第3阿武隈川橋梁 - 東北新幹線
- 日ノ出橋
- 金山橋 - 国道49号
- 中央大橋
- 細表橋
- 行合橋 - 福島県道65号小野郡山線
- 安原橋 - 美術館通
- 阿久津橋 - 福島県道57号郡山大越線
- 阿武隈川橋梁 - 磐越東線
- 逢隈橋 - 国道288号、磐城街道
- 富久山大橋 - 国道288号郡山東バイパス
- (橋) - 磐越自動車道
- 小和滝橋 - 福島県道115号三春日和田線
- 鬼生田橋
- 第4阿武隈川橋梁 - 東北新幹線
- 阿武隈橋
- 平成大橋
- 上ノ橋 - 福島県道73号二本松金屋線
- 安達橋 - 福島県道28号本宮三春線
- 昭代橋 - 福島県道118号本宮岩代線
- 安達太良大橋 - 安達太良ドリームライン
- 菅田橋
- 舟形橋
- 高田橋 - 国道459号
- 安達ヶ橋 - 福島県道62号原町二本松線
- 第5阿武隈川橋梁 - 東北新幹線
- 智恵子大橋 - 安達広域農道
- 新舟橋 - 福島県道117号二本松川俣線
- 新飯野橋 - 福島県道39号川俣安達線
阿武隈川橋梁- 川俣線(廃止)- 逢隈橋 - 福島県道51号霊山松川線
- 上蓬莱橋
- 蓬莱橋
- 弁天橋 - 国道4号、国道115号
- 天神橋
- 大仏橋 - 国道4号、国道115号
- 松齢橋 - 福島県道308号山口渡利線
- 渡利大橋 - 国道114号
- 三本木橋
- 文知摺橋 - 国道115号、中村街道
- 鎌田大橋
- 月の輪大橋 - 福島県道387号飯坂保原線
- 第一阿武隈川橋梁 - 阿武隈急行線
- 伊達橋 - 国道399号
- 大正橋 - 福島県道125号保原桑折線
- 昭和大橋
- 伊達崎橋 - 福島県道31号浪江国見線
- 徳江大橋
- 梁川大橋 - 国道349号
- 兜橋 - 福島県道104号川前梁川線
- 羽出庭大橋
- 第二阿武隈川橋梁 - 阿武隈急行線
- 丸森橋 - 国道113号
- 丸森大橋 - 国道113号舘矢間バイパス
- 枝野橋
- 角田橋 - 宮城県道44号角田山元線
- 東根橋 - 宮城県道14号亘理大河原川崎線
- 槻木大橋 - 宮城県道28号丸森柴田線
- 阿武隈川橋梁 - 常磐線
- 阿武隈橋 - 国道6号
- 新阿武隈橋 - 国道6号、仙台東部道路
- 亘理大橋 - 宮城県道10号塩釜亘理線
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脚注
- ↑ 国土交通大臣が一級河川として指定した区間は、左岸が福島県西白河郡西郷村大字鶴生字江森山3番地先、右岸が福島県西白河郡西郷村大字真船字寺下3番のイ地先から河口まである。そのうち、福島県の管理区間は、岩瀬郡鏡石町と西白河郡矢吹町境から左岸が須賀川市大字前田川字滝下、右岸が石川郡玉川村大字滝崎までで、国の管理区間は、須賀川市前田川字深田22番の1地先の国道橋から宮城県河口までである。
- ↑ カゲロウが大発生する模様は、1985年8月29日に『NHK特集』で「カゲロウ大発生 〜'85秋・阿武隈川異変〜」と題して放送された。
- ↑ 亘理町『亘理町史』p283
- ↑ 岩沼市『岩沼市史』p723
- ↑ 『仙台市史』通史編3(近世1)328-330頁。
- ↑ 『岩沼市史』717頁。
- ↑ 『仙台市史』通史編6(近代1)104頁。
- ↑ 『仙台市史』特別編9(地域史)197頁。
参考文献
- 岩沼市史編纂委員会 『岩沼市史』 岩沼市、1984年。
- 仙台市史編さん委員会 『仙台市史』通史編3(近世1) 仙台市、2001年。
- 仙台市史編さん委員会 『仙台市史』特別編9(地域史) 仙台市、2014年。
関連項目
- 阿武隈 (軽巡洋艦) - 帝国海軍の長良型軽巡洋艦の6番艦。1925年就役。
- あぶくま (護衛艦) - 海上自衛隊のあぶくま型護衛艦の1番艦。1989年就役
外部リンク