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ヤシ



テンプレート:APGIII相関図 ヤシ(椰子)は、単子葉植物ヤシ目 ヤシ科に属する植物の総称である。熱帯地方を中心に亜熱帯から温帯にかけて広く分布する植物で、独特の樹型で知られている。実用価値の高いものが多い。ヤシ科は英語でパルマエ (Palmae) といい、ラテン語のpalma(掌、シュロ)の複数形に由来する[1]。基準属Arecaに基づくArecaceaeも科名として用いられる[1]

特徴

ヤシは、単子葉植物ヤシ科に属する植物を広く指して言う呼称である。単子葉植物としては珍しく木本であり、多くは幹は木質化して太くなるか、つる状となり、一部の種では小型で草質の茎をもつものもある[1]。高木で大きいものでは30 mになるが、低木のものや茎が立ち上がらないもの、草本並みの大きさのものもある。

はふつう常緑で互生し大型のものが多く、羽状複葉か掌状、あるいは扇状に裂けており、小葉はしばしば山型あるいは谷型に折りたたまれている[1]。基部はを抱き、鞘が茎を包んだり、繊維を茎にまといつかせる。茎に沿って多数の葉を並べるものもあるが、茎の頂部に輪生状に葉が集まるものが多く、ソテツ類に似た独特の樹型を見せる。

両性または単性で、雌雄異株[1]。花はふつう小型で、穂になって生じる。花序の基部には大型の鞘状の総包があり、多くは円錐状である[1]花びら(花被片)は6個あり、小さく目立たず、雄しべが6個ある[1]子房は上位につく[1]果実液果または核果で、大型になるものがある[1]。なかでも種子の重さが25–30 にもなるオオミヤシ(フタゴヤシ)は、植物界最大のものとして知られており、成熟するまでに8–10年かかる[2]

熱帯地方を中心に253属、約3333種がある。日本にもシュロなど6属6種が自生する[1]観葉植物としての栽培が多く、見かける種数は多い。

生育環境は日陰にも耐えるが、日当たりの良いところを好み、単幹性の種類は日光が当たる方向へと生長していく[3]。多くの種は約20–25℃前後の環境下で生育するが、耐寒性は種類によってかなり差があり、カンノンチク属などの一部の種は0℃以上で越冬できる[3]。栽培されているヤシは美観を保つため、下部から葉が枯れてきたものは葉柄の基部から切り取られ手入れされる[3]

利用

熱帯地域では資源植物として重要であり、古来より多くの種がさまざまな方法で利用されている[1]。最も有名なのはココヤシで、ヤシ油をとって食用や石鹸に利用したり、果実の中心にある透明な液を飲料としたりする[1]。また、アブラヤシの実からはパーム油の採取したり、そのほかの種でも食用、デンプンや砂糖の採取、タバコ代わりの嗜好品、条虫駆除薬、繊維利用、屋根葺きの材料など利用法は多岐にわたる[2]。また、ヤシ科植物は鑑賞用の植物としてなくてはならないものとなっていて、庭園樹や室内観葉植物として利用されているものもたくさんある[4]

食用など

多くの種の果実が食されている。また、アブラヤシ属等の果実からは、食用油・工業油も採れる。

ココヤシアサイーなどの新芽は、ハート・オブ・パーム(ヤシの芽、パルミート、パルミット)と呼ばれ、野菜としてサラダなどに利用される。ナツメヤシ、ココヤシ、サゴヤシなどの樹液を煮詰めると、パームシュガー(ヤシ糖)ができる。また、樹液を醗酵させて酒を作ることもできる。

園芸

  • ヤシの独特の樹型は熱帯的で、温暖な地方では街路樹として用いられる。本州南岸以南では、カナリーヤシ(フェニックス)・シンノウヤシ・ワシントンヤシ(ワシントニアパーム)がよく街路樹として用いられ、特に観光地では南国ムードを高めるために頻繁に使用される。
  • トウジュロワシントンヤシモドキは、戸外で庭園樹などに利用されている[2]
  • 小型種ではチャメドレア属などが観葉植物として室内で栽培されるものが多い。カンノンチクシュロチク古典園芸植物として、江戸時代から様々な品種が栽培された。大正昭和期には投機の対象となり、何度かブームを起こしている。

薬用など

  • ビンロウ(ビンロウジュ)は、果実を染料として利用するほか、コショウ科のキンマの葉に包んでから口の中で噛む習慣があり、タバコに代わる嗜好品とする[1]。生薬の檳榔子(ビンロウジ)は熟した種子を乾燥したもので、条虫駆除薬として用いられており[1]中華人民共和国湖南省では、煮て甘草などで味付けし、虫下しの効果がある嗜好品としている。
  • ノコギリパルメット(ソー・パルメット)の果実はインディアンが強壮作用のある食料として用いていたが、エキスには前立腺肥大の抑制作用があることが知られている。
  • キリンケツヤシ(Daemonorops draco)の実を加工したものを麒麟竭(きりんけつ)といい、漢方薬に用いるほか、民間薬としては外用にも用いるという。

建材、工芸材料など

木炭

  • ココヤシなどの果実の殻を、水蒸気賦活し、椰子殻(やしがら)活性炭が作られ、脱臭タバコタール等の除去、浄水、の吸着分離などに用いられる。また、椰子殻を原料とした木炭であるヤシガラ炭は東南アジア全般で広く製造されている。ヤシ殻の丸まった形では燃料として扱いにくいため、木炭化したものを粉砕し、タピオカ澱粉などで固めてオガ炭のような薪状に成形されて販売されている。

その他

  • ヤシの実を穿孔して土笛のようにし、楽器とされている。一例として兵庫県神戸市玉津田中遺跡から弥生時代のものが出土している。
  • 天然ココナッツ繊維:この繊維をロープ状にして、ほぐして強度をつけ、ラテックスを塗布し固める。通気性が良く適度な硬さがあり、腰痛に良いとされる。
  • キリンケツヤシから採った麒麟竭(上述)は赤い色をしており、各種塗料や紙の着色などに用いる。
  • 日本においては、「台湾季語」として水牛と並んで特に人気の高い題材であったが、「椰子の花」は台湾ではをイメージさせるものであったのに対して[5]島崎藤村が「名も知らぬ遠き島より流れよる椰子の実一つ 故郷の岸を離れて汝(なれ)はそも波に幾月」と詠んだように晩夏の季語のように使われることが多かった[6]

分類・系統的位置づけ

ヤシ科はほとんどの分類体系で、単独でヤシ目を構成する。分類の難しい科で、研究者により種や属の捉え方に差があり、150属1500種から236属3400種と幅がある[1]

新エングラー体系は、ヤシ科が単子葉植物の中で最初に分岐したという説から、ヤシ科が(単独で)属する目を Principes (直訳すると「第一」)と名づけた。

しかしAPGでは、ヤシ目より先にショウブ目オモダカ目キジカクシ目ヤマノイモ目ユリ目タコノキ目が分岐しており、ヤシ目は進化した単子葉類であるツユクサ類に含まれる。また2016年に公表されたAPG IVではそれまで所属目が設定されていなかったダシポゴン科がヤシ科の姉妹群としてヤシ目に置かれた[7]

分類

亜科・連[8]

ヤシ科は5亜科に分かれ、それぞれがいくつかのに分かれる。連によっては数十の属が属する。

主な種

日本産

日本国内には以下のような種を産する。

外国産

他にも、有名なものが多々ある。

脚注

参考文献

  • 土橋豊 『観葉植物1000』 八坂書房、1992-09-10。ISBN 4-89694-611-1。

関連項目