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ヨーロッパグリ (Castanea sativa) は、ブナ科の顕花植物である。マロンと呼ばれる実が食用になることで有名である。当初は南東ヨーロッパと小アジアに自生していたが、現在ではヨーロッパ中に広く分布している。本種の樹は耐寒性で長寿である。セイヨウグリとも言う。
概要
ブナ属やシイ属などの幅広い種類が含まれるブナ科の中のクリ属の木である。1768年にフィリップ・ミラーによって初めて記載された[1][2]。
ヨーロッパグリは、中型から大型の落葉性の樹木で、高さは20 - 35m、幹の直径は2mに達する。葉は楕円形から皮針形で、鋸歯が発達し、長さは16 - 28cm、幅は5 - 9cmである。
どちらの性の花も10 - 20cmの直立した尾状花序で、雄花は上に、雌花は下につく。北半球では6月下旬から7月に咲き、雌花は秋には3 - 7個の茶色い実が入ったとげのある殻になり、10月頃になると落ちる。殻についたとげは、捕食者から種子を守るのに役立つ[3]。栽培種の中には、殻の中に1つだけの実をつけるものも存在するが、食用になるサイズの実を2つから4つつけるのが平均的である。樹皮にはしばしばらせん状に深い溝を持った網状の模様がある。
良好な成長と果実の収穫のためには、温暖な気候と適切な湿度が必要である。年度成長は晩春や早秋の霜に敏感に影響を受ける[4]。森林では、日陰には比較的耐性がある。
葉は、リンゴピストルミノガを含むチョウ目の昆虫など、一部の動物の食糧となる。
この種は南ヨーロッパのおそらくバルカン半島が原産である。食糧や観賞用として西ヨーロッパに導入され、その後他の大陸にも持ち込まれた[2]。
利用
この種は、食用の果実を得る目的で広く栽培されている。古代ローマの時代に北方まで移入され、後に修道院の庭でも育てられた。今日では、樹齢100年以上の樹がイギリスや中央、西、南ヨーロッパで見られる。トルコ、ポルトガル、フランス、ハンガリー、イタリア、スロベニア、クロアチア、スロバキア、ボスニア、そして特にコルシカ島では盛んに育てられている。
果実の周りには堅い皮があり、渋い。この皮は、熱湯にくぐらせて裂け目を入れることで比較的容易に剥くことができる[5]。ローストすると、サツマイモとは異なった甘い香りと粉状の食感になり、美味である。調理されたクリは、菓子、プリン、デザート、ケーキ等に用いられる他、そのままでも食べられる。パン、シリアル、コーヒー、スープ等に用いられることもある。また、砂糖を抽出することもある[4]。コルシカ島のポレンタは、クリの粉から作られる。コルシカ島の牛肉料理にも材料としてクリが用いられる。バニラ、マロンクリーム、クリのピューレ、マロングラッセを混ぜた甘いペーストも販売されている[6]。ローマの兵士は、戦闘に行く前にクリの粥を支給された[3]。
クリの葉の茶は呼吸器疾患の際に、特に百日咳の治療薬として用いられた[4]。葉と殻の滲出液からシャンプーも作ることができる[4]。
イギリス等では、現在でもクリの樹の林を定期的に根元まで刈り取ることを行っており、利用や成長率に合わせて20 - 30年ごとにタンニン分を多く含む良質な樹を生産している。タンニンは若い樹に耐久性を与え、屋外での利用を可能にするため、ポスト、柵、柱等に適している[7]。枝はクリ材として市販される。材は淡い色で堅い。家具、(バルサミコ用の)樽、南ヨーロッパの屋根梁等にも用いられている。樹齢の古い木材は割れたり曲がったり脆くなったりしやすいため、大きい材としてはあまり用いられない。枝は560kg/m3の密度を持ち[8]、地面への接触の耐久性から、柵等の野外での利用に用いられる[8]。さらに屋外の利用には向かないが、良い燃料にもなる[4]。
タンニンは、含水率10%の木材では、樹皮に6.8%、木材に13.4%、殻に10 - 13%程度含まれる。葉にもタンニンが含まれている。
クリの樹はイングランドの、特に18世紀、19世紀の景観に大きく関わっている。イギリスでは花期は6月から7月である。古代ローマの占領の時代にイギリスに入ったと考えられ、古代の使用例も多く記録されている[3]。
種から育った樹は果実をつけるまでに20年程度かかるが、移植栽培では植えてから5年程度で収穫できる。
ギャラリー
- Illustration Castanea sativa0.jpg
ThomeのFlora von Deutschland, Osterreich und der Schweiz, 1885年に描かれたヨーロッパグリ
- Chestnut03.jpg
森林の中のヨーロッパグリ
- Maroni2.jpg
ヨーロッパグリ
- Chestnuts02.jpg
- Chestnuts on tree.jpg
- Castanea-sativa.JPG
ヨーロッパグリの樹
- Esskastanie fg01.jpg
ドイツのライン谷
- Sweet chestnut DSCF0160.JPG
網状の樹皮
- Ancient coppice of a sweet chestnut DSCF0322.JPG
古代のヨーロッパグリの切り株
- Large Castanea Sativa.jpg
大きなヨーロッパグリの樹
関連項目
出典
- ↑ 引用エラー: 無効な
<ref>
タグです。 「Miller
」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません - ↑ 2.0 2.1 Flora Europaea: Castanea sativa
- ↑ 3.0 3.1 3.2 Kew Gardens - Rhizotron & Xstrata Treetop Walkway - Castanea sativa
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 “Plants For A Future” (PFAF http://www.pfaf.org/database/plants.php?Castanea+sativa and book.
- ↑ http://hedgewizardsdiary.blogspot.com/2006/10/peeling-chestnuts-easy-way-chestnuts.html an easy way of peeling the pellicle, or pithy skin.
- ↑ Lori Alden. 2006 The Cook's Thesaurus. nut pastes
- ↑ Oleg Polunin. Trees and Bushes of Britain and Europe. Ed Paladin, 1973, pp. 51, 188 and 195).
- ↑ 8.0 8.1 Chestnut. Niche Timbers. Accessed 19-08-2009.
- Rushforth, K. (1999). Trees of Britain and Europe. HarperCollins ISBN 0-00-220013-9.
- http://www.fao.org/DOCREP/006/AD235E/ad235e00.htm#Contents
- http://cesonoma.ucdavis.edu/hortic/pdf/chestnut_99.pdf