天草エアライン
天草エアライン株式会社(あまくさエアライン、英: AMAKUSA AIRLINES CO., LTD.)は、熊本県を拠点とするコミューター航空会社。公式略称はAMX[1]。航空会社コードはAHX。
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概要
1998年(平成8年)に熊本県(出資比率53.31 %)、天草市(同22.92 %)、上天草市(同2.73 %)、苓北町(同1.2 %)等が出資する第三セクターとして設立され、2000年(平成12年)3月に、天草飛行場開港と同時に運航を開始した。現在は、天草飛行場 - 福岡空港、熊本空港線、熊本空港 - 大阪国際空港線を運航している。以前は神戸空港や松山空港にも就航していた。
福岡空港線は、陸路で4時間30分前後かかるところを30分前後の飛行時間で運用していることから需要の高い路線となっている。また、九州新幹線が2011年3月12日に、鹿児島中央駅から熊本駅・博多駅間で開業し、さらに新大阪駅までの直通運転も始まる事から、これに対して所要時間で有利な熊本空港 - 大阪国際空港(伊丹空港)の空路に新たに就航した。
運航開始後、赤字が重なって債務超過寸前まで陥ったが、日本航空の熊本支店長も務めた奥島透が社長に就任し、2009年に黒字転換を果たした。[2]
運航開始以来、保有機材1機のみでの運用を続けている。2014年に機材を更新している(詳細後述)。
2015年4月からは全便が日本航空とのコードシェア便となった。
2015年11月15日には自社Facebookページにおいて、IATAのコード「MZ」を取得したことを発表[3]。MZは、自社の旅客機の愛称「みぞか」から付けたもので、他に三つあった希望から第一希望を取得したものある。
天草エアラインの2レター航空会社コード「MZ」は、かつてはインドネシアの国営航空会社であったメルパチ・ヌサンタラ航空が使用していた。
人口減少社会で利用者の減少が進み、2017年には国土交通省持続可能な地域航空のあり方に関する研究会(座長竹内健蔵東京女子大学教授)で機体の共同保有や、将来の経営統合などを内容とする報告書が出された[4][5]。
沿革
- 1998年(平成10年)10月12日 : 設立。
- 2000年(平成12年)3月23日 : 天草飛行場 - 福岡空港、熊本空港線就航。
- 2004年(平成16年)10月1日 : 熊本空港 - 松山空港線就航。
- 2006年(平成18年)4月18日 : 累計搭乗者数50万人達成。
- 2008年(平成20年)9月1日 : 熊本空港 - 松山空港線休止。
- 2008年(平成20年)9月4日 : 熊本空港 - 神戸空港線就航。
- 2010年(平成22年)
- 2011年(平成23年)9月1日 : 天草住民割引の取扱いを変更[6]。
- 2012年(平成24年)
- 2013年(平成25年)
- 2014年(平成26年)
- 2015年(平成27年)
- 2016年 (平成28年) 2月19日 : ボンバルディアDHC-8-100が退役。翌日からATR42-600 による定期便運航を開始[15][16]。
就航路線
2018年4月1日現在、全便が天草エアラインの機材・乗務員を用いる日本航空 (JAL) とのコードシェア便[12][13]。
基本的に毎日運行だが、保有機材が1機しかないこともあり(連日「天草→福岡→天草→熊本→大阪/伊丹→熊本→天草→福岡→天草→福岡→天草」の旅程をこなしている)、熊本線・大阪/伊丹線と福岡線1往復は不定期に(月2-3回程度)運休している。航空機の重整備を行う場合、DHC-8で運航していた当時は1か月近く全ての便が運休していた。ATR42へ機材更新後は自社保有機の重整備を行う期間は日本エアコミューターで運航している同型機を借り入れることとなり、長期間の運休が解消されている[17][18]。しかし、運航機材はが1機なのは整備期間も一緒でその1機が運航中損傷などトラブルが発生した場合は損傷修復、整備の間は数日欠航する事もある[19]。
天草 - 熊本間と熊本 - 大阪/伊丹間は厳密には別路線扱いだが、同日乗り継ぎ(熊本での途中降機不可)に限り適用される「特別乗継割引運賃」が設定されており[20]、天草 - 大阪/伊丹間で一連の搭乗が可能となっている。
運航機材
旅客機と防災消防ヘリコプターをそれぞれ1機ずつ運用している。他に日本エアコミューター (JAC) との共通事業機が1機ある。
- 自社所有のみぞか号(2代目、機体記号:JA01AM)と、JAC との共同事業機(機体記号:JA01JC)が存在する。座席数は共に48席。
- 「みぞか号」は2016年2月20日より定期便として商業運航を開始した[15]。親子イルカの描かれた初代「みぞか号」DHC-8のデザインを踏襲している[16]。
- JAC・AMX共通事業機は、JAC が導入したATR 42-600の初号機(ハイビスカスを基調とした特別塗装が施されている)を、みぞか号の中整備中にAMXがリース受けするもので、JACとAMXは、2015年度から整備の合理化などにおいて協力体制を構築しており、リース中にはJACとAMXの協力体制を表現したデカールが貼り付けられる[17]。
- ひばり 機体記号:JA15KM
- 天草エアラインが整備・運用を行っている、熊本県防災消防航空隊の消防防災ヘリコプター[21]。
機材更新について
2011年度には2億3900万円の整備費がかかっていた当時の使用機(DHC-8)が、2014年にはさらに整備費が大幅に増加する時期を迎える為、機材更新の検討に入ったことが2012年12月12日に報じられた。機材の選定にあたっては、DHC-8や、リージョナルジェットと比べ、低騒音、省燃費、機体価格の安さをセールスポイントとしているATR社製・ATR 42が候補に挙がり、2014年5月にATR42-600(48人乗り)の購入と2016年就航が発表された[10]。
機材の購入費用については熊本県天草市の安田公寛市長(当時)は、「熊本県と協議はするが、天草市単独でも購入する覚悟がある」と話しており、財源には合併特例債の基金を検討している[22]。一方、筆頭株主である熊本県の蒲島郁夫知事は「機材更新は地元、空港整備は県ということで協議してきた。これまで通りの方針で進めていただきたい」と述べ、購入費の県負担を否定している[23]。
2014年7月22日にデンマークのノルディック・アビエーション・キャピタル社とリース契約。2015年8月13日に受領(機体記号JA01AM)。8月16日にトゥールーズからフェリーフライトし21日に熊本空港に到着。2016年2月20日より定期便運航に導入した[15][16]。
退役機材
- みぞか号 機体記号:JA81AM。座席数は39席。
- 2000年3月の運航開始当初より使用している機材。当初運輸省(現国土交通省)が最低1,300m(天草空港の滑走路は1,000m)の滑走路が必要とされていた中、日本トランスオーシャン航空の協力で1,000mの滑走路でも問題ないことを運輸省に説得を行った[24]。
- 2013年2月より、「みぞか号」として機体塗装を変更した。機体塗装は、跳ねるイルカのシルエットと、海と空をイメージした波模様。BSフジで放送されている番組『小山薫堂 東京会議』で天草エアラインの新塗装デザインを公募した。デザイン料も整備費として熊本県が補助した。[25]
- 2016年2月19日で新機導入の為、退役した。退役後はノルウェーのフライバイキング(機体記号:LN-FVC)で使用している。
予約システム
2010年3月1日より、予約システムが大幅に変更された。天草エアラインでは、就航当初から電話による予約が主で、天草エアラインの社員が個別に対応していた。料金の支払い方法も、クレジットカードの番号を口頭で伝えるか、空港の天草エアラインカウンターでの現金決済が大半を占めており、予約データの管理も、手作業で行っていた。新予約システムでは、天草エアラインのインターネットサイトから、空席照会や予約、クレジットカード決済などが可能になった。現在では携帯電話用のモバイルサイトからも予約等が出来る。
運賃
インターネットで予約可能な運賃は、「普通運賃(大人・小児)」・「早勝28」(熊本〜大阪間のみ)・「早勝7」・「早勝1」・天草住民割引となっており、照会時点で設定のある運賃のみ表示され、一度の予約では、9席まで予約が可能。搭乗日の2ヶ月前の同一日午前9時より受付され、ゴールデンウィーク・夏期多客期・年末年始は、一斉売出しをする場合がある。通常の予約締切りは、該当便出発の20分前まで。小児(3~11歳)を同伴する大人が、普通運賃を利用の場合、大人と小児を同時に予約が可能だが、割引運賃の場合は、予約後、天草エアライン予約センターへ連絡し、同伴する小児の座席を予約する必要がある。インターネット、携帯サイトでの運賃支払いは、クレジットカード、またはコンビニエンスストア決済が可能となっている。
マイレージサービス
日本国内の航空他社とは、マイレージサービスの面ではいずれも提携しておらず、「AMXポイント」として独自にポイントカードを発行している。現在では、天草エアラインのインターネットサイトからも申し込みが可能になった。「天草~福岡(片道)」「天草~熊本(片道)」を1ポイント、「熊本~大阪(片道)」を2ポイントとして加算し、10ポイントからAMXの航空券と交換出来る。但し、ポイントの有効期限は前回利用日から1年間となっている。日本国内に在住している人のみ、AMXポイントカードの申し込みが可能。 なお、2018年6月より「みぞかポイント」に名称変更・リニューアルされた[26]。
貨物
貨物取扱は、天草〜福岡間で行っている。「通常貨物」「貴重品」「生きた動物、遺骨、危険品」のカテゴリーに分けられて料金設定されており、貨物受付場所は、福岡空港ではJAL・日本航空・国内貨物カウンター(貨物ターミナル)、天草飛行場では、天草飛行場カウンターで、搭載予定便の出発時刻60分前まで受付けている[27]。
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その他
- 天草飛行場以外での空港業務は、JALグループに委託している。委託空港での予約・発券は当日の便に限られる。
- 他の航空会社とは連帯運送契約を締結していない[28][29] が、JALグループ各社とフジドリームエアラインズ(FDA)便の乗り継ぎに限り手荷物を目的地まで預けることが可能である。乗り継ぎ便の航空券提示が原則となるが、チケットレスの場合は出発地の地上係員が乗り継ぎ便が購入済みであることを確認できた場合に利用できる。その他の航空会社便に関しては、一旦到着空港にて手荷物を受け取り、再度乗り継ぎ便へ預ける必要がある。
- JALグループ各社・FDAとの乗継ぎには30分以上の乗継時間が必要となっている。その他の航空会社は福岡空港においては60分以上を目安に取るように案内されている。
- 『天草住民割引』がある。搭乗日における現住所が、熊本県天草市・上天草市・天草郡苓北町の乗客が利用可能で、航空券購入時、およびチェックイン時に、現住所が証明できる公的な書類(運転免許証・保険証・住民票等)の呈示が必要となっている。設定当初は住所を確認の上「天草住民割引カード」を発行していたが、2011年9月1日より発行・更新手続きは行っていない。
- 旅行代理店とは違った、独自の団体割引運賃の設定がある。利用条件は、同一便利用の10名以上(ただし12歳以上で、責任ある代表者によって引率されるグループ)で、予約受付期間は、搭乗6ヶ月前〜14日前まで。
- 2014年1月27日 - 3月20日の平日に限って、「1日親子イルカ号パラダイス運賃」を設定していた。飛行機マニアとして知られるパラダイス山元とのコラボレーションとして、天草エアラインの全行程10区間(または福岡始終着の8区間)を完乗するもので、運賃は10区間が15000円、8区間が10000円。途中降機した場合は全搭乗区間の普通運賃を支払わなければならない[30]。2018年1 - 3月にも「乗るだけ運賃」として同様の企画が復活、運賃は10/8/6区間とも一律10000円に設定された[31]。
- 国際連合の付属機関である国際民間航空機関(ICAO)において割り当てられている航空会社コードはAHXであり、AMXはメキシコのアエロメヒコ航空に先に割り当てられていた。既存の航空会社コードが他の航空会社に重複付与される事は無く、天草エアラインが使用しているAMXコードは、日本国内線を運航するにあたって便宜上使用している略称である。
脚注
- ↑ 国際民間航空機関 (ICAO)より航空会社コード"AMX"を割り当てらた航空会社はアエロメヒコ航空だが、天草エアラインとは一切関係がない。
- ↑ 鳥海高太朗 (2016年3月25日). “「天草エアライン」が、たった1機で起こす旋風”. 東洋経済オンライン. . 2017閲覧.
- ↑ 天草エアライン - Facebook
- ↑ 「地方航空会社の協業策、国交省が報告書 経営統合も検討朝日新聞デジタル2017年6月2日19時10分」
- ↑ 持続可能な地域航空のあり方に関する研究会国土交通省
- ↑ 天草住民割引の取扱変更について - 天草エアライン 2011.08.29
- ↑ AMX☆コロプラきっぷ発売! コロカなど新しいデザインになりました! - 天草エアライン 2014.03.23
- ↑ “親子イルカ、愛称決まる 天草エア機新デザイン”. くまにちコム/熊本日日新聞. . 2013-1-31閲覧.
- ↑ 天草エアライン、facebookで新塗装の整備作業を紹介 - Flyteamニュース(2013年2月13日付)
- ↑ 10.0 10.1 “仏製新機体、16年1月に導入方針 天草エア”. くまにちコム/熊本日日新聞. . 2014-5-20閲覧.
- ↑ NAC signs LOI with Amakusa Airlines for Japan’s first ATR 42-600 Nordic Aviation Capital 22nd July 2014
- ↑ 12.0 12.1 “日本航空とのコードシェアを開始”. プレスリリース/天草エアライン. . 2015-2-10閲覧.
- ↑ 13.0 13.1 “天草エアラインと日本航空、4月1日よりコードシェアを開始”. 日本航空プレスリリース. . 2015-2-10閲覧.
- ↑ 新機材ATR42-600機の受領について
- ↑ 15.0 15.1 15.2 天草エア新機が就航 天草と福岡、熊本、大阪結ぶ - 西日本新聞 2016年2月20日
- ↑ 16.0 16.1 16.2 新親子イルカは「音静か」 天草エアATR機就航 - 熊本日日新聞 2016年2月20日
- ↑ 17.0 17.1 “JAC、天草エアにATR42リース 期間限定、重整備での運休回避”. . 2018閲覧.
- ↑ 【お知らせ】JAC社共通事業機運航期間について
- ↑ 【お詫び】6月30日/7月1日、2日、3日、4日の欠航便について(落雷に伴う整備作業)
- ↑ 運賃適用条件のご案内 (PDF) - 天草エアライン
- ↑ 天草エアライン 会社概要
- ↑ “天草エアライン、機体更新を検討 候補に仏機”. くまにちコム/熊本日日新聞. 2012年12月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2012閲覧.
- ↑ “地元2市1町が全額負担へ 天草エア新機体購入”. くまにちコム/熊本日日新聞. . 2014-5-26閲覧.
- ↑ 黒木亮 (2017年1月29日). “島のエアライン/10”. . 2017閲覧.
- ↑ “【書評】倒産寸前の小さな航空会社を救った、団塊世代社長の奇跡”. . 2017閲覧.
- ↑ 【お知らせ】AMXポイントカードのリニューアルについて
- ↑ 貨物 - 天草エアライン
- ↑ 日本航空では「JALグループと天草エアラインとの間で連帯運送契約を締結している」と案内している。
- ↑ 時刻表 天草エアライン
- ↑ 天草エアライン「1日乗りっぱなしフライト」を体験! 最後に大どんでん返し!?(日経トレンディ、2014年3月18日)
- ↑ 1日全便連続搭乗「乗るだけ運賃」の発売! - 天草エアライン・2018年1月15日
外部リンク