香椎線
香椎線(かしいせん)は、福岡県福岡市東区の西戸崎駅から同区の香椎駅を経由し、同県糟屋郡宇美町の宇美駅に至る九州旅客鉄道(JR九州)の鉄道路線(地方交通線)である。
西戸崎駅 - 香椎駅間は、海の中道を通っているため、この区間には「海の中道線」(うみのなかみちせん)という愛称が付けられている。
概要
福岡市への通勤・通学路線となっているが、元々は糟屋炭田の石炭を西戸崎港へ運ぶために建設された。また1985年4月以降、日本国有鉄道(国鉄)/JRで唯一、起終点両方の駅で他路線との連絡が全く無い路線である[1]。
雁ノ巣駅 - 海ノ中道駅間では砂丘の真ん中を線路が貫いているため、線路際に防砂壁が設けられるなど、防砂対策が施されている。
全線が旅客営業規則の定める大都市近郊区間の「福岡近郊区間」、およびIC乗車カード「SUGOCA」の利用エリアに含まれる。また2011年10月31日までは北部九州地区の磁気乗車カード「ワイワイカード」が奈多駅 - 長者原駅間の各駅と須恵中央駅・宇美駅で利用可能となっていた。
JR九州の一般向け列車位置情報システム「どれどれ」は、導入当初は香椎駅停車中の列車のみ「鹿児島本線」のページから見ることができたが、サービス開始に遅れて2017年2月28日に香椎線全線の列車位置情報の提供が開始された[2]。これは2017年に香椎線がCTC化され、閉塞方式が特殊自動閉塞式(電子符号照査式)から特殊自動閉塞式(軌道回路検知式)へ更新されたことに伴い、リアルタイムでの在線情報が取得できるようになったためである。
路線データ
- 管轄(事業種別):九州旅客鉄道(第一種鉄道事業者)
- 路線距離(営業キロ):西戸崎駅 - 宇美駅25.4km
- 軌間:1067mm
- 駅数:16(起終点駅含む)
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化区間:なし(全線非電化)
- 閉塞方式:特殊自動閉塞式(軌道回路検知式[4])
- 交換可能駅・信号場:7(中道(信)・雁ノ巣・和白・香椎・土井・酒殿・新原)
- 運転指令所:博多総合指令センター
- 最高速度:85km/h
全区間が本社鉄道事業本部直轄となっている。
歴史
香椎線は、糟屋炭田から産出される石炭を西戸崎港に輸送するため、博多湾鉄道(後の博多湾鉄道汽船)により建設された鉄道路線で、1904年に西戸崎 - 須恵間が、翌年に宇美までが全通、さらに1909年には貨物支線が志免に延長され、さらに1915年には旅石に延長された。
1919年には、筑前参宮鉄道(後の西鉄宇美線→国鉄勝田線)が開業し、宇美と貨物線の志免で接続した。1924年には、同じ博多湾鉄道汽船の貝塚線が開業し、和白駅で接続している。
1942年には、陸上交通事業調整法により、博多湾鉄道汽船は九州電気軌道に合併し、西日本鉄道を形成、同社の糟屋線(かすやせん)となった。1944年には、同じく西日本鉄道に合併されていた旧筑前参宮鉄道の宇美線とともに戦時買収され、国鉄香椎線となっている。
なお、博多 - 香椎 - (香椎線) - 酒殿 - (貨物支線) - 志免 - (勝田線) - 吉塚でデルタ線を形成しており、後年、特急列車の方向転換に利用された。
年表
- 1904年(明治37年)1月1日 博多湾鉄道が西戸崎 - 須恵を開業、西戸崎・奈多(初代)・香椎(既設)・土井・長者原(初代)・酒殿・須恵の各駅を新設
- 1905年(明治38年)
- 1908年(明治41年)10月1日 長者原(初代)を伊賀に改称
- 1909年(明治42年)8月1日 酒殿 - 志免の貨物支線を開業、酒殿駅を再開
- 1915年(大正4年)3月11日 志免 - 旅石の貨物支線を延伸開業
- 1920年(大正9年)3月25日 博多湾鉄道を博多湾鉄道汽船に社名変更
- 1924年(大正13年)7月3日 香椎宮前仮停留場を新設
- 1935年(昭和10年)
- 1940年(昭和15年)7月10日 航空隊前仮停留場を新設
- 1941年(昭和16年)
- 1942年(昭和17年)
- 7月1日 (貨)上唐原仮停車場を廃止
- 9月19日 博多湾鉄道汽船が合併により西日本鉄道となり、同社の糟屋線となる
- 月日不明 奈多東口・香椎宮前・長者原(2代)・下須恵の各停留場を廃止
- 1944年(昭和19年)5月1日 買収・国有化により西日本鉄道糟屋線から国有鉄道の香椎線となる[5]。奈多(初代)を雁ノ巣に改称、和白を簡易停車場から駅に変更
- 1946年(昭和21年)11月21日 白浜信号場を廃止
- 1960年(昭和35年)
- 8月1日 奈多(2代)駅を新設
- 12月15日 志免 - 旅石の貨物支線を廃止、(貨)旅石駅を廃止
- 1981年(昭和56年)7月30日 酒殿 - 宇美の貨物営業を廃止
- 1984年(昭和59年)2月1日 西戸崎 - 香椎の貨物営業を廃止
- 1985年(昭和60年)1月1日 酒殿 - 志免の貨物支線を廃止、香椎 - 酒殿の貨物営業を廃止
- 1987年(昭和62年)4月1日 国鉄分割民営化により九州旅客鉄道が承継
- 1988年(昭和63年)
- 1989年(平成元年)3月11日 須恵中央駅を新設
- 1994年(平成6年)3月1日 舞松原駅を新設
- 2015年(平成27年)3月14日 - ANSWERシステムの導入に伴い、「Smart Support Station」として長者原駅・香椎駅を除く12駅を無人化[6]。
- 2017年(平成29年)
駅一覧
- 福:特定都区市内制度における「福岡市内」の駅
- 全列車が普通列車で、全旅客駅に停車する。中道信号場での行き違いは下り列車が停止し、上り列車が停止せず通過する。
- 線路(全線単線) … ∨・◇:列車交換可、|:列車交換不可
- 全駅福岡県内に所在
愛称 | 駅名 | 駅間営業キロ | 累計営業キロ | 接続路線 | 線路 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
海の中道線 | 福 西戸崎駅 | - | 0.0 | ∨ | 福岡市 | 東区 | |
福 海ノ中道駅 | 2.1 | 2.1 | | | ||||
中道信号場 | - | 3.0 | ◇ | ||||
福 雁ノ巣駅 | 4.4 | 6.5 | ◇ | ||||
福 奈多駅 | 0.9 | 7.4 | | | ||||
福 和白駅 | 1.8 | 9.2 | 西日本鉄道:NK 貝塚線(NK08) | ◇ | |||
福 香椎駅 | 3.7 | 12.9 | 九州旅客鉄道:鹿児島本線 | ◇ | |||
福 香椎神宮駅 | 1.3 | 14.2 | | | ||||
福 舞松原駅 | 0.6 | 14.8 | | | ||||
福 土井駅 | 1.6 | 16.4 | ◇ | ||||
伊賀駅 | 1.8 | 18.2 | | | 糟屋郡 | 粕屋町 | ||
長者原駅 | 1.0 | 19.2 | 九州旅客鉄道:篠栗線(福北ゆたか線) | | | |||
酒殿駅 | 1.4 | 20.6 | ◇ | ||||
須恵駅 | 1.3 | 21.9 | | | 須恵町 | |||
須恵中央駅 | 1.2 | 23.1 | | | ||||
新原駅 | 1.0 | 24.1 | ◇ | ||||
宇美駅 | 1.3 | 25.4 | | | 宇美町 |
貨物支線(廃止)
- (貨)は貨物駅であることを示す。事業者名等は廃止直前当時のもの。
駅名 | 駅間営業キロ | 累計営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|
酒殿駅 | - | 0.0 | 日本国有鉄道:香椎線 | 糟屋郡 | 粕屋町 |
志免駅 | 1.6 | 1.6 | 日本国有鉄道:勝田線 | 志免町 | |
(貨)旅石駅 | 1.5 | 3.1 | 須恵町 |
輸送実績
2017年7月31日に公表された「路線別利用状況」(区間別の平均通過人員〈輸送密度〉)、旅客運輸収入は以下の通り[7][8]。
区間 | 営業キロ | 平均通過人員 (人/日) |
旅客運輸収入 (百万円/年) | |
---|---|---|---|---|
1987年度 | 2016年度 | 2016年度 | ||
西戸崎 - 宇美(全線) | 25.4 | 3,299 | 6,019 | 761 |
西戸崎 - 香椎 | 12.9 | 2,921 | 4,394 | |
香椎 - 宇美 | 12.5 | 3,690 | 7,697 |
脚注
- ↑ 1985年3月までは弥彦線が同様の状態だった。弥彦線は部分廃止により他路線との連絡のある駅が終点となり、同時に当路線は勝田線の廃止により宇美駅での連絡が無くなった。
起終点両方の駅でJR線と連絡が無い路線としては当路線の他にも新幹線開業による並行在来線の経営移管に伴うもので大湊線(JR東日本)と七尾線(JR西日本)が存在している。 - ↑ 2.0 2.1 ~ 運行情報のご案内を充実 ~ 「JR九州アプリ」の列車位置情報に香椎線を追加します (PDF) - JR九州、2017年2月27日。同日閲覧。
- ↑ 3.0 3.1 『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』JTB 1998年
- ↑ 4.0 4.1 引用エラー: 無効な
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タグです。 「交通新聞2017-02-13
」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません - ↑ 「運輸通信省告示第185号」『官報』1944年4月26日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ↑ 「JR九州ダイヤ改正、香椎線の"ANSWER"とは? 香椎駅・長者原駅除く14駅無人化」2014年12月24日(マイナビニュース)
- ↑ JR九州、区間別の利用状況を初公表 路線維持へ地元議論促す - 日本経済新聞(2017年7月31日 23:30配信)
- ↑ “交通・営業データ(平成28年度)”. 九州旅客鉄道. . 2017-8-18閲覧.