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エウローペー

ファイル:Liberale da verona, rapimento di europa, 1470 ca..JPG
リベラーレ・ダ・ヴェローナによるカッソーネ板絵『エウロペの略奪』(1470年頃)。ルーヴル美術館所蔵。

エウローペー古代ギリシア語: Εὐρώπη, Eurōpē, ラテン語: Europa)は、ギリシア神話に登場する女性である。ラテン語ではエウローパ日本語では長母音記号を省略しエウロペエウロパとも表記される。地名のヨーロッパや、木星衛星エウロパの名の由来である。

フェニキアの古代都市テュロスの王アゲーノールテーレパッサの娘で、カドモスキリクスポイニクスタソスと兄弟。ゼウスとの間に3人の息子ミーノースラダマンテュスサルペードーンをもうけた[1]。エウローペーは本来ミノア系の大地の女神だったと考えられているが[2]、元々神話中の人物だったエウローペーがクレータ島にいた女神と同一視され崇拝されるようになったという説もある[3]

概要

テュロスの王女として生まれたエウローペーは美しく成長した。あるとき、彼女を見たゼウスは一目で恋に落ち、彼女を誘惑するために自身を白い牡牛に変え、エウローペーが侍女と花を摘んでいるときに近づいた。そして白い牡牛を見つけたエウローペーがその背にまたがると、白い牡牛は海を渡ってエウローペーをクレータ島へと連れ去った[1][4]。そこでゼウスは本来の姿を現し、エウローペーとの間にミーノース、ラダマンテュス、サルペードーンをもうけた。その後、クレータ王アステリオスEnglish版が3人の息子たちの義理の父になった[1]

ゼウスはエウローペーにタロースと必ず獲物をとらえる猟犬となくなる事のない投げ槍の、3つの贈り物を与えた。その後ゼウスは再び白い雄牛へと姿を変え、星空へと上がり、おうし座になった。またエウローペーが海を渡った西方の地域は彼女の名前から「ヨーロッパ」 (Europa) と呼ばれるようになった[5]。なお、エウローペーの兄弟たちは彼女を捜索する旅に出たが発見することが出来ず、それぞれが赴いた土地の支配者となった。特に有名なのはカドモスで、トラーキアにとどまったのち[1]ギリシアに渡り、テーバイ市を創建した[6]

西洋美術におけるエウローペー

エウローペーは古代ギリシアローマ時代には壺絵モザイクフレスコ画などで描かれた。それらの多くは牡牛に変身したゼウスによってエウローペーが連れ去られる場面を描いている。この点はルネサンス期においても同じだが、しばしば祝婚、海上進出、領土拡大、子孫繁栄などの意味ともに描かれた。祝婚の例としては、リベラーレ・ダ・ヴェローナEnglish版が描いたカッソーネEnglish版の板絵が挙げられる(15世紀後半)。カッソーネとは婚礼用の家具で、その細長い側面に海を渡る牡牛とエウローペーの姿が描かれている。1566年には、コジモ1世の子フランチェスコジョヴァンナ・ダズブルゴとの結婚を記念する祝賀パレードの山車にエウローペーが描かれた。その一方、ジョルジョ・ヴァザーリパラッツォ・ヴェッキオの室内装飾で計画した「ユピテルの間」のタペストリーのように、政治的な意味を伴うこともあった(1555年頃)。このタペストリーにはエウローペーが描かれたが、その意図についてヴァザーリはコジモ1世がピオンビーノを占領したことによって、フィレンツェエルバ島に進出したことを表すと説明している[7]

エウローペーはオウィディウスの『変身物語』をはじめとする文学作品に挿絵として描かれ、ルネサンス以降、西洋絵画においてもエウローペーは人気のある主題となった。絵画の多くはオウィディウスから主題を取っており、『エウロペの略奪』(Rape of Europe)あるいは『エウロペの誘拐』(Abduction of Europa)などと題されている。最も有名な絵画作品はヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオの『エウロパの略奪』だが、ここに描かれたエウローペーのポーズは文献的、図像的に説明することが困難であるため、画家の独創によると見なされている。同じヴェネツィア派のパオロ・ヴェロネーゼは異時同図法を用い、牡牛がエウローペーを連れ去る過程を前景・中景・後景の3つに分けて描き込んでいる。また他にもよく知られたものとしてグイド・レーニレンブラント・ファン・レインクロード・ロランギュスターヴ・モロー、20世紀に入ってからはフェリックス・ヴァロットンヴァレンティン・セローフといった画家がこの主題を描いている。

ギャラリー

系図

テンプレート:ミーノースの系図

出典

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 アポロドーロス、3巻1・1。
  2. 呉茂一訳『イーリアス(下)』534頁。
  3. 里中満智子 『マンガ ギリシア神話2 至高神ゼウス』 中央公論新社 2000年、236頁。
  4. オウィディウス『変身物語』2巻。
  5. ヘロドトス『歴史』4巻45。
  6. アポロドーロス、3巻4・1。
  7. 細野喜代『ティツィアーノ作《エウロペの掠奪》の意味および形態の源泉』。

参考文献

関連項目

  • 5ユーロ紙幣: 2013年5月より発行される紙幣に描かれている。