アジ

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アジ)は、アジ科アジ亜科 Caranginae に含まれる魚の総称。日本ではその中の一種マアジ Trachurus japonicus を指すことが多いが、他にも多くの種類がある。世界各地の熱帯・温帯域で食用に漁獲されている。

形態

体側の側線上に鋭い突起をもつ稜鱗(りょうりん: Scute)が発達することでアジ科の他の亜科と区別される。稜鱗は、日本では「ぜんご」「ぜいご」という俗称で呼ばれることが多く、学術的には楯状鱗と呼ばれることもある。種類によって稜鱗の並ぶ長さや幅は異なり、同定の手がかりになる[1][2][3][4]

全長は15cmほどのミヤカミヒラアジ Alepes kleinii から、150cm以上になるロウニンアジ Caranx ignobilis まで種類によって異なる。体は著しく側扁し広葉樹の葉のような形状のものが多いが、ムロアジ属のように断面が円に近く前後に細長い紡錘形のものもいる[5]。マアジ等では同種内で二通りの体型に分かれ、その中間の体型のものも存在する。体色は、背側は鳥類など上方からの捕食者を撹乱するために暗い色、腹側は大型肉食魚のような下方からの捕食者を撹乱するために明るい色になっている。しかし、瀬付きやあまり回遊しない個体には背側も明るい色になっている個体もいる。

生態

全世界の熱帯・温帯海域に多くの種類が知られ、日本でも南西諸島沿岸でインド太平洋産の種類が多く見られる。カッポレ Caranx lugubris は全世界の熱帯・亜熱帯海域に分布する汎世界種である。マアジは日本では馴染み深い魚種だが、その分布は北海道から南シナ海までとあまり広くない。

生息域は種類や地域個体群によって異なり、沿岸の岩礁・サンゴ礁域に居付くもの、砂泥底周辺に生息するもの、沖合いを回遊するもの等がいる。また幼魚期には汽水域や淡水域に入るものもいる。一般に遊泳力は高く、動きは素早い。食性は肉食性で、小魚・甲殻類・貝類・頭足類等の小動物を捕食する[3][5]。敵は人間の他にもサメ類、マグロ類、ブリ類、カジキ類等の大型肉食魚がいる。

利用

世界各地で釣り定置網底引き網等の沿岸漁業で漁獲され、食用に利用されている。身質はピンク色で脂も乗っており、赤身と白身の味を併せ持つ。

日本ではマアジが重要な食用魚となっており、様々な加工品や料理が作られる。日本の朝食にはアジの干物がつき物であるように、食生活に古くから深い関わりがある。その他にもムロアジは鯵節やくさやの原料となるし、関東地方以南の南日本ではカイワリギンガメアジ等扁平な体型をしたアジ類を「ヒラアジ」「メッキ」等と称して煮魚から揚げ等の総菜に用いている。またマアジの居付き型やシマアジは高級食材として利用される[1][6]

釣り方

アジ類の釣りは、日本では主にからにかけて行われる。マアジなどの小型種は釣りの入門魚としても親しまれ、港内や防波堤では胴突きのサビキを用いたファミリーフィッシングも盛んに行われている。船釣りではイワシのミンチやアミエビをコマセ(寄せ餌)として使うビシ釣りや魚群探知機で魚群を探して魚の反応を確認したところでサビキで釣る“追っかけアジ”釣りが盛んである。防波堤釣りでも船釣りでも比較的釣りやすく、親しまれている対象魚の一つだが、大物に狙いをつけた釣りも行われる。外道にイワシサバカワハギブリサヨリイシダイ等が掛かることもある。また、ルアーフィッシングの対象魚にされることもある。なお、釣ったアジを餌にブリ類等の大型肉食魚を狙うこともある。

食中毒

  • ギンガメアジ属等でシガテラ中毒も報告されているので、サンゴ礁域で漁獲された大型個体は食べないように注意が呼びかけられている。
  • アニサキスは、アジに寄生することもある。24時間以上冷凍しない生のアジを調理した場合には、アニサキス症を発症するリスクがある[7]

日本の2002年度アジ類陸揚量

語源

日本語の「アジ」は味が良いことに由来するといわれる[8]。「魚」に「参」と書く漢字が当てられるが、この由来は諸説あり、「ソウ(魚偏に「喿」)」の字の写し間違いであるとする説[8]、「おいしくて参ってしまう」の意であるとする説、最も美味の季節が旧暦の3月に当たるので旁に数字の「参」が使われたとする説などがある。

分類

系統

次のような系統樹が得られている。ヨロイアジ属は多系統的である[9]





カイワリ



シマアジ属





メアジ属




クロホシムロアジ




マアジ属




Caranx rhonchus



ムロアジ属











Carangoides dinema イトヒラアジ




オキアジ属




クロアジモドキ




Carangoides ferdau クロヒラアジ



Carangoides orthogrammus ナンヨウカイワリ









イトヒキアジ属




Carangoides otrynter



ヒラマナアジ属





他のヨロイアジ属 Carangoidesクボアジを含む)






Carangoides praeustus




マブタシマアジ属マテアジコガネシマアジを含む)





ホソヒラアジ




クラカケヒラアジ属



モンツキヒラアジ属





ギンガメアジ属オニアジを含む)







脚注

  1. 1.0 1.1 蒲原稔治 『魚』 保育社〈エコロン自然シリーズ〉、1996年8月ISBN 4586321091 
  2. 檜山義夫 『魚』 (改訂版) 旺文社〈野外観察図鑑〉、1998年ISBN 4010724242 
  3. 3.0 3.1 岡村収; 尼岡邦夫編 『日本の海水魚』 山と溪谷社〈山渓カラー名鑑〉、1997年ISBN 4635090272 アジ科解説:木村清志。
  4. 岩井保 『魚学入門』 恒星社厚生閣、2005年ISBN 4769910126 
  5. 5.0 5.1 Rainer Froese and Daniel Pauly (2009年11月). “FAMILY Details for Carangidae - Jacks and pompanos”. FishBase. . 2009閲覧.
  6. 石川皓章 『釣った魚が必ずわかるカラー図鑑』 永岡書店、2004年ISBN 4522213727 
  7. 食中毒アニサキス生の魚介類で猛威 毎日新聞(2017年5月8日)2017年5月9日閲覧
  8. 8.0 8.1 フリーランス雑学ライダーズ編 『あて字のおもしろ雑学 : 意外な驚き・知的な楽しさ』 永岡書店、1988年、45頁。ISBN 4522011601 
  9. Santini, Francesco, and Giorgio Carnevale (2015). “First multilocus and densely sampled timetree of trevallies, pompanos and allies (Carangoidei, Percomorpha) suggests a Cretaceous origin and Eocene radiation of a major clade of piscivores”. Molecular phylogenetics and evolution 83: 33-39. doi:10.1016/j.ympev.2014.10.018. 

参考文献

  • 江戸家魚八 『魚へん漢字講座』 新潮社〈新潮文庫〉、2004年、35-37頁。ISBN 4-10-116061-9 

関連項目