貨物船

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貨物船(かもつせん)とは主に貨物輸送を行う船舶である。 航空機に比べて速度は遅いが、低い運賃で一度に大量の貨物を運ぶことが出来る。また、巨大な構造物をそのまま運搬することも可能である。

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九州の離島航路に就航している、ロールオンロールオフ型の貨物フェリー。船体中央部から突き出ているのは、マストであり、クレーンでは無い。
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貨物用コンテナや自動車を積み込み前の状態。船尾ランプウェイの珍しいタイプ。
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ランプウェイ拡大
ファイル:航送許可証IMGP0584.JPG
車両航送送り状。有は有人航送・ドライバー同乗の記号?
ファイル:貨物船内部IMGP0627.JPG
フロントガラスに送り状が貼られている。
ファイル:貨物フェリー内部IMGP0626.JPG
出航時内部。重機車両とコンテナ。奥は船尾ランプウェイを収納・格納した状態。
ファイル:貨物フェリー内部IMGP0629.JPG
同じく船尾を左舷側より。
ファイル:共同IMGP0586.JPG
運転手、ドライバー用の客室

貨物船の運航形態

定期船(ライナー、Liner)
一定の航路を、定期的に航行する船舶。
不定期船(トランパー、Tramper)
特定の航路を定めず、貨物の有無によりその都度運航される船舶。

定期船と不定期船のいずれにも対応出来るように作られた「ライパー」と呼ばれる船がある。

貨物船の種類

在来型貨物船 (Cargo Ship)
汎用の船舶。荷役に時間はかかるが、特殊な設備を持たない分運賃は安い。船艙に障害物がないので、特殊な形状の貨物を運ぶのに適する。
ロールオン・ロールオフ貨物船 (roll-on/roll-off ship)
セミトレーラーのような車輌やそれに乗っている貨物コンテナを運搬するための船。車輌は自走によって船艙内に入るため、迅速に荷役を済ませることができる。一般にRORO船(ローローせん)と標記される。カーフェリーと異なり客室がない。規則によって旅客定員12人まで旅客運搬することが可能で、客室を持つRORO船もあるが、多くが一般旅客を乗船させることはなく貨物運搬専用で運航する。
ロールオン・ロールオフ・コンテナ貨物船 (roll-on/roll-off Container ship)
自動車のロールオン・ロールオフ荷役とコンテナのクレーン荷役をできる船。
混載自動車専用船 (CGC)
自動車と一般貨物のロールオンロールオフ荷役をできる船舶。
自動車専用船 (Pure Car Carrier; PCC)
自動車を運搬するための船舶。船積みの効率化を図るために、ランプウェイや船艙内の各階の高さなどが最適化されている。
鉄道連絡船(鉄道車両のみ航送する車両渡船が貨物船に該当。)

鉄道車両と旅客自動車を航送する車載客船については

鉄道車両を航送するための船舶。鉄道車両を航送できるように車両甲板に線路が敷かれている。また、自動車航送設備を有するものもある。
コンテナ船(Container Ship)
「貨物コンテナ」を輸送するための船。
フル・コンテナ船(Full-container Ship、フルコン船)
規格化された貨物コンテナだけを輸送する船ロールオン・ロールオフ貨物船に比べて荷役時間は少し長いが、従来型の一般貨物の荷役方法と比べれば4分の1以下の時間で済む。貨物の積付効率が高いために輸送効率は高く、陸上でのトレーラーや鉄道輸送との連携による効率化も合わせて、海上貨物輸送の主要な地位を占めている。規格に沿った大きさの貨物コンテナを効率的に積付ける「セル構造」を持つ船がほとんどである。港ではガントリー・クレーンと呼ばれる大型のコンテナ荷役用クレーンを備えた専用コンテナ埠頭を利用するため、自らはクレーンを持たない船がほとんどである。
セミ・コンテナ船(Semi-Container Ship、セミコン船)
規格化された貨物コンテナとコンテナ以外の一般貨物を輸送する船で、コンテナ専用の積載設備を備えるもの。コンテナ積載用の設備を備えない一般貨物船がコンテナを運搬してもセミ・コンテナ船とは呼ばれない。クレーンのない港湾での荷役用に自らクレーンを備えていることがある。
コンバルカー(Con-Bulker)
従来型の一般貨物船の船艙内に貨物コンテナと他の貨物とを混載する船。多用途貨物船の一形式。貨物コンテナ専用のセル構造を備えたコンバルカーも例外的に存在したが、バルクとコンテナは同時には搭載しない設計であった[1]
多目的船 (Multi-purpose Cargo Ship)
多目的に使える船舶。車両のロールオンロールオフ荷役やコンテナや一般貨物のクレーン荷役などをできる。
重量物運搬船(Heavy Lifter, Heavy load carrier)
重量物を運搬するための船。船艙や甲板、クレーンが強化されている。ヘビー・デリックを使い重量貨物を搭載するLOLO(Lift on / Lift off)方式や、車輌を船艙内に乗り入れることで搬出入するRORO(Roll on / Roll off)方式、自ら甲板を水面下に沈めて浮かぶ貨物を搭載するFOFO(Float on / Float off)方式の船がある。
冷凍・冷蔵運搬船(リーファー、Refrigerated Cargo Carrier)
断熱材で囲われた船艙と冷蔵冷凍設備を持つ船。
木材専用船(Log Carrier, Lumber Carrier)
原木や製材などの木材を専門に運搬する船。
ばら積み貨物船(Bulk Carrier、Bulker)
バラ積みによりそれぞれ専用の貨物を運搬する船。巨大な貨物を積載するために船艙を全開することのできる船は、オープンハッチ・バルカーと呼ばれる。新聞紙やパルプ、製材といった林産品は、貨物に直接釘を打つことができない。オープンハッチ・バルカーならば、船倉がでこぼこのない箱型であるので、貨物をぎっしり詰め合わせることで荷崩れを防げる。UFOキャッチャーのようなガントリークレーンを装備しており、鉛直方向に貨物を積んでゆける。かつては保有する船会社が少なかったので、それらが輸送を寡占していた。ギアバルク、en:Star Shipping など。
穀物運搬船(Grain Carrier)
比重の小さい粉流体である穀物を専門に運搬するための船。
鉱石運搬船(Ore Carrier)
比重の大きい鉱石の荷役のための専用設備を持つ船。鉄鉱石を専門に運搬する鉱石運搬船が多いが他にも、ニッケル鉱、ボーキサイト、銅鉱、燐鉱石などを専門に運搬する船がある。
チップ専用船(Chip Carrier)
木材パルプの原料となる木材チップを専門に運搬する船。
セメント・タンカー(Cement Carrier)
セメントをバラ積みで運搬するための船。
ばら積み兼用船(Combination Carrier)
全く性状の異なる貨物をどちらでも積んで運搬できる船。
鉱炭兼用船(Ore Coal Carrier)
可燃物である石炭の安全な運搬・荷役のための専用設備を持つ船。
鉱油兼用船(Ore Oil Carrier)
比重の大きい鉱石と石油類を専門に運搬するための船。
石油タンカー(油槽船、Tanker、Oil Carrier)
原油や燃料油などの液体可燃物を荷役・輸送するための設備を持つ船舶。20万トンをこえるものをVLCC,30万トンをこえるものをULCCと呼ぶ。
ケミカルタンカー (Chemical Tanker)
危険性の高い化学薬品を安全に荷役・輸送するための装備を持つ船舶。
LPGタンカー(LPG Tanker、LPG Carrier)
LPG(液化石油ガス)を安全に輸送するための配管、タンク、保安装置を持つ船。
LNGタンカー(LNG Tanker、LNG Carrier)
LNG(液化天然ガス)を輸送するための船。液化天然ガスを低温のまま輸送するための断熱構造タンクか、加圧によって輸送するための加圧タンクを持つ。
バージ・キャリア(Barge Carrier)
数十艇の「バージ」(Barge、はしけ)を積んで運搬する船。船尾にリフト機構を備え、水上のバージをFO方式で引き上げる。次に屋根のない船艙内にある1層から3層程度の格納部にレールで横移動させて搭載する。LASH(Lighter Aboard Ship)やSeeBeeが主な形式である。
プッシャー・バージ(Pusher Barge)
一から十数艇程のバージを押して進む船。バージを含めた全体は「バージ・ライン」と呼ばれる。欧州の河川や運河を進む小型のものから、外洋を渡る全体で数万トン級の「オーシャン・バージ」まである。

運賃と契約

主な海上運送の契約方法は、定期貨物船を使った個別荷物を運ぶもの(個品運送)と、不定期貨物船をチャーターすることによって運ぶ方法がある。

  • LCL:20フィート貨物コンテナに満たない量の貨物(LCL、Less than Container Load)の場合には1トンいくらで計算し、容積トンと重量トンの大きなほうを採る場合が多い。
  • FCL:貨物コンテナに積める貨物(FCL、Full Container Load)の場合には20フィートや40フィートサイズの貨物コンテナの個数によって計算される。

個品運送の場合やコンテナ運送の場合には個別の契約書は作らずにB/L裏面の約款に従う場合が多い。 契約に際しては、どこからどこまでの運送なのかを明確にしておく必要がある。積込作業と荷揚作業の費用についても含まれているかどうか明確にしておく。積卸しの船内荷役費用を含む運賃条件はバースターム(Berth Term)と呼ばれ、荷主が荷役費を別途負担するものはFIO(Free in and out)と呼ばれる。荷主が積込みの荷役費を負担するものをFI(Free in)、 荷揚の荷役費を負担するものをFO(Free out)と呼び、それぞれは船会社側から見たFreeである点に注意する。

貨物コンテナでの輸送の場合には、LCLでは積地CY(Container Yard)から揚地CYまで、FCLでは積地CFS(Container Freight Station)から揚地CFSまでの運賃と荷役費用がすべて海上運賃に含まれる。ただし、積地CFS内と揚地CFS内でコンテナに詰めたり取り出したりする作業にかかる費用はCFSチャージとして荷主に別途請求されるのが通常である。 CYでの作業も同様にTHC(ターミナル・ハンドリング・チャージ)やCYチャージとして荷主に別途請求されることがあるので確認する必要がある。

チャーターの場合には、2つの契約形態がある。

  • 航海傭船契約:1トン当りで契約する
  • 船腹傭船契約:船1隻分の傭船契約

貨物の種類と数量、運賃と積地と揚地、積地への回船日と揚地での解約日、停泊期間(Lay days)、船内荷役料の負担者、滞船料(Demurrage)、早出料(Despatch money)等を記載した傭船契約書を作成して契約する。

歴史

日本の江戸時代においては、菱垣廻船樽廻船が大坂などの上方から江戸まで回航された。

出典

  • 池田宗雄著 「船舶知識のABC」 成山堂書店 第2版 ISBN 4-425-91040-0
  • 拓海広志著 「船と海運のはなし」 成山堂書店 平成19年11月8日改訂増補版発行 ISBN 978-4-425-91122-6
  1. 渡辺逸郎著 「コンテナ船の話」 成山堂書店 18年12月18日初版発行 ISBN 4-425-71371-0

関連項目

外部リンク

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