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二次方程式

数学の特に代数学において二次方程式(にじほうていしき、: quadratic equation[注釈 1])は、二次多項式函数零点集合English版を記述する。多変数の二次方程式については(特に実数係数のものについて)その零点集合に対する幾何学的考察が歴史的に行われ、よく知られている(二元二次方程式については円錐曲線を、一般の多変数二次方程式については二次曲面を参照するとよい)。

初等代数学における二次方程式未知数 x および既知数 a, b, c を用いて [math]ax^2+bx+c=0\quad (a\ne 0)[/math] の形に表されるものをいう。既知の定数 a, b, c をこの方程式の係数と言い、またとくにこれらを区別して呼ぶときはそれぞれ二次の係数 (quadratic coefficient)、一次の係数 (linear coefficient)、定数項 (constant)(あるいは零次の係数 (free term))と呼ぶ[1]。この場合の二次方程式は未知数を一つしか持たないから、「一変数English版」である[注釈 2]。またこれは未知数 x の非負整数冪であるような項しか持たないから確かに多項式方程式であり、かつ最大の冪指数が 2 であるから特に二次の多項式方程式 (second degree polynomial equation) であることが直ちに見て取れる。

一変数二次方程式を解くための求根法 (factoring, factorising) として平方完成English版を利用する方法、二次方程式の根の公式二次函数グラフを利用する方法などがよく知られている。二次方程式を解くことに等しい問題に対する解法は、紀元前2000年ごろには既に知られていた。

歴史

アッバース朝時代に活躍した中世イスラムの数学者フワーリズミーは二次方程式に2つの根があることを発見した。フワーリズミーの著作『インドの数に関して、アル=フワーリズミー』(ラテン語訳『アルゴリトミ・デ・ヌーメロ・インドルム (Algoritmi de numero Indorum)』)はラテン語に翻訳され、ヨーロッパに伝わった。フワーリズミーは2次方程式における未知数を「shay'」(シャイ=とあるもの)という言葉で表現したが、フワーリズミーの著作がヨーロッパに伝えられる段階で、「x」を「sh(シ)」と読むポルトガル語を通過する際に、shay'の「sh」が「x」に置き換えられたといわれる。未知なるものを「x」と呼ぶことには、このような背景があるとされる。[2]

定義

二次方程式とは、次数 2 の代数方程式のことである。定義に従えば、

(*) [math]ax^2 + bx + c = 0[/math]

a ≠ 0, b, c は定数)と表される。これを二次方程式の一般形 (generalized form) という。さらに二次方程式について、いくつかの特徴をもつ特殊な形が考えられる。本項では便宜的に以下の用語を用いる。

2 次の項の係数が 1 の方程式

(**) [math]x^2 + px + q = 0[/math]

p, q は定数)を二次の整方程式あるいは二次方程式の正規形 (normal form) と呼ぶ。一般形の方程式 (*) の両辺を a ≠ 0 で割り、正規形にすることができる(正規化):

(***) [math]p = \frac{b}{a},\ q = \frac{c}{a}.[/math]

またさらに、見かけ上 1 次の項のない方程式

[math]k(x + l)^2 + m = 0[/math]

k ≠ 0, l, m は定数)を二次方程式の標準形 (standard form) と呼ぶ。これは変数を t = x + l と変換すれば t に関して実際に 1 次の項を持たない方程式 kt2 + m = 0 である。

平方完成

二次式において[math]\left( x - \alpha \right)^2[/math]の形の項を作り出す変形のことを平方完成(基本変形)という。

標数 2 でない体においては、平方完成により正規形の方程式 (**) は標準形にすることができる。二次式

[math] x^2 + px + q[/math]

に対し、公式[math]\left( x + y \right)^2 = x^2 + 2xy + y^2[/math]を利用するため

[math]x^2 + 2\left(\frac{p}{2}\right)x + q[/math]

とみなし、(p/2)2を加えて引くことで

[math]\left\{x^2 + 2\left(\frac{p}{2}\right)x + \left(\frac{p}{2}\right)^2\right\} + \left\{-\left(\frac{p}{2}\right)^2 + q\right\}[/math]

としてからまとめると

[math]\left(x + \frac{p}{2}\right)^2 - \left(\frac{p^2}{4} - q\right) [/math]

となる。したがって、[math]t = x + \frac{p}{2}, m = \frac{p^2}{4} - q[/math] と置いてやると

[math]x^2+px+q = 0 \iff t^2 - m = 0[/math]

となり、変数 t に関する標準形の方程式が得られる。

平方完成の技法は、この他にも、円錐曲線の標準化などに用いられる。

二次方程式の根

  • 正規化された標準形二次方程式 x2 - m = 0 の根は m平方根と呼ばれる。任意に選び出された 1 つの根を √m で表すことがある。特に x2 + 1 = 0 の根、すなわち -1 の平方根は虚数単位と呼ばれる。
  • 根と係数の関係:正規形の方程式 (**) の根が α, β であるとき
    • [math]-p = \alpha + \beta,\ q = \alpha\beta.[/math]
  • 体や整域でない一般の環においては、二次方程式の根の数は2つとは限らない。
  • 有理数係数の二次方程式の根となる無理数二次の無理数と呼ぶ。有理数体に二次の無理数を添加した体を二次体という。

解の公式

二次方程式は以下のようにして一般に解くことができる。これは、標数 2 でないで一般に通用する。二次方程式 ax2 + bx + c =0 に対し、

[math]\begin{align} a\!\left(x+\frac{b}{2a}\right)^{\!2}+c-\frac{b^2}{4a}=0 & \iff \left( x+\frac{b}{2a}\right)^2=\frac{b^2-4ac}{4a^2}\\ & \iff x+\frac{b}{2a}=\pm \frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\\ & \iff x =\cfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a} \end{align}[/math]

を得る。これが二次方程式の解の公式である。さらに b = 2b′ とおくと

[math]x=\frac{-b'\pm\sqrt{(b')^2-ac}}{a}[/math]

と書くこともできる。

実数係数の二次方程式

虚数単位と複素数

実数係数の二次方程式

[math]x^2 + 1 = 0[/math]

は、実数の範囲で解を持たない。その根として、実数でない新たな数 i を導入することによって、全ての実数係数二次方程式が根を持つようになる。

実数 x, y を用いて x + i y と書けるような数を複素数と呼ぶ。全ての複素数係数の代数方程式は複素数の範囲で必ず根を持つこと(代数学の基本定理)が示される。

二次の判別式

代数方程式に対して、その根全体からつくられる差積 Δ の平方式 Δ2 は判別式と呼ばれ、多項式が重根を持つか否かを判別することができる。二次多項式 ax2 + bx + c = a(x − α)(x − β) (a ≠ 0) の根からなる差積とはこの場合、差 Δ = β − α であり、判別式 Δ2 = (β − α)2 は根と係数の関係により係数 a, b, c の有理式として

[math]\Delta^2 = \frac{b^2 - 4ac}{a^2}[/math]

で与えられる。この Δ2 を用いると、二次方程式の根の公式は

[math]x = \frac{-b}{2a}\pm\frac{\sqrt{\Delta^2}}{2}[/math]

と書けるため、二次の場合の特殊事情として、実数係数の二次方程式に対してはそれが実数の範囲で解けるか否かをこの判別式 Δ2 を用いて判別できる(三次方程式の場合も類似の結果がある)。

判別式 Δ2 による根の種類の判定は、その符号に従って

  • Δ2 > 0 の場合:異なる 2 実根
  • Δ2 = 0 の場合:実数の重根
  • Δ2 < 0 の場合:異なる 2 虚根

として述べることができる。ここで、0 でない実数 a の平方 a2 が常に正であることから、判別式 Δ2 の符号の決定は分子 D = b2 − 4ac の符号を決定することに帰せられる。ゆえに D を以って二次方程式の判別式と呼ぶ場合も多い。正規形 x2 + px + q = 0 に対しては Δ2 = D = p2 − 4q となるからそもそも区別を要しない。

進んだ話題

一般係数の二次方程式

根の公式およびその導出は、係数 a, b, c複素数やより一般に標数2 でない任意のにおいても有効である(標数が 2 のときは 2a が零元に等しく、従ってそれで割ることはできない)。ただし、公式に表れる記号 [math]\pm \sqrt {b^2-4ac}[/math] は「その平方が b2 − 4ac に等しくなるような元が存在する場合には、そのような二元のうちの何れか一方」を意味するものと理解しなければならない。体によっては、平方根を全く持たない元と二つ持つ元とが存在する(標数 2 でない限りただ一つの平方根を持つのは零元のみである)。ある元の平方根を持たない体を考えている場合でも、そのような平方根を含む二次拡大体は常に存在するから、そのような拡大体における式と見なせば根の公式は常に有効ということになる。

標数 2 の体

根の公式は 2可逆であることが利いていたから、標数 2 の体では公式は満足されない。標数 2 の体上のモニックな二次多項式 [math]x^{2} + bx + c[/math] を考えるとき、b = 0 ならば方程式は平方根を開くことに帰着されるから、[math]x = \sqrt{c}[/math] は解であり、[math]-\sqrt{c} = -\sqrt{c} + 2\sqrt{c} = \sqrt{c}[/math] であるから、これが唯一の解であることがわかる。すなわち、[math]\displaystyle x^{2} + c = (x + \sqrt{c})^{2}.[/math] 有限体における開平方についての更なる情報は平方剰余の項を参照。

他方、b ≠ 0 の場合には相異なる二つの根が存在するのだが、多項式が既約ならば係数体において係数の平方根を用いて根を記述するのは不可能である。そこで多項式 x2 + x + c の(この多項式の分解体に属する元としての)根として c2-根 (2-root) R(c) を定義する。このとき R(c) + 1 もまた根となることが確かめられる。この 2-根を用いれば、モニックとは限らない二次式 ax2 + bx + c の二つの根は [math]\frac{b}{a}\,R\!\left(\frac{ac}{b^2}\right),\quad \frac{b}{a}\!\left(R\!\left(\frac{ac}{b^2}\right)+1\right)[/math] で与えられる。

例えば、位数 4 の有限体 F4 において、その単元群の生成元を a とするとき(すなわち、a および a + 1F4 上の多項式xテンプレート:Exp + x + 1 の根)、(a + 1)テンプレート:Exp = a ゆえ、a + 1 は二次方程式 xテンプレート:Exp + a = 0 の唯一の解である。他方、多項式 xテンプレート:Exp + ax + 1F4 上既約だが、F16 上分解して、二つの根 ab および ab + a を持つ。ここで bF16 における xテンプレート:Exp + x + a の根である。

これはアルティン–シュライヤー理論の特別の場合である。

注釈

  1. 「方形」あるいは「平方」を意味するラテン語: "quadratus" に由来
  2. 一般に n 個の変数 x1, …, xn に関する方程式 [math]0 = \sum_{i=1}^n \sum_{j=1}^n a_{i,j}x_i x_j + \sum_{k=1}^n b_k x_k + c[/math]n-変数二次方程式、n-元二次方程式などと呼ばれる。ここに、ai,j, bk, c は既知の定数であり、この二次方程式の係数と言う。ただし、すべての ai,j + aj,i0 のときは、これは一次方程式となるから、ふつうは少なくとも一つが 0 でないものと仮定する。

出典

  1. Protters & Morrey: " Calculus and Analytic Geometry. First Course"
  2. http://www.aii-t.org/j/maqha/thaqafa/arqam.htm

関連項目

テンプレート:代数方程式