既約多項式
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代数学において既約多項式(きやくたこうしき、英: irreducible polynomial)とは、多項式環の既約元[1]のことである。より冗長には次のようになる。R を単位元をもつ可換環とし、その単数全体を R×、一変数多項式環を R[X] とおく。多項式 ƒ ∈ R[X] が2条件
- ƒ ∉ R×
- ∀ g, h ∈ R[X] ƒ = gh ⇒ g ∈ R× or h ∈ R×
を満たすとき既約であるという。そうでないとき可約であるという。
係数環 R が整数環や実数体、複素数体のような一意分解整域の場合には既約多項式は多項式環における素元でもあるので、これは整数環における素数の類似物である。
Contents
例
- 整数環上の一変数多項式 X2 + 1 は既約多項式である
- 整数環上の一変数多項式 X2 − 1 は X2 − 1 = (X + 1)(X − 1) より可約多項式である
- 有限体 F2 上の一変数多項式 X2 + 1 は X2 + 1 = (X + 1)2 より可約多項式である
- 円分多項式 Φd(X) ∈ Q[X] は既約多項式である
判定法
可換環 R の素イデアル P とモニック多項式
- [math] f(X) = X^n + a_1X^{n - 1} + \dotsb + a_n \in R[X] [/math]
をとる。このとき2条件
- a1, …, an ∈ P
- an ∉ P2
を満たすならば多項式 ƒ は既約である(アイゼンシュタインの既約判定法)[2][3]。
たとえば素数 p と自然数 m に対して整数環上の一変数多項式 Xm − p は既約である。ただし、これは既約である必要条件ではない。実際、例にある X2 + 1 ∈ Z[X] はこの判定法で既約性を判定できない。
体上の既約多項式
位数 q の有限体上モニックな n 次既約多項式の総数は次の式で与えられる[4]。
- [math]\frac{1}{n}\sum_{d \mid n}\mu\left(\frac{n}{d}\right)q^d[/math]
ただし μ はメビウス関数を表す。
脚注
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_citation }}の語法では「固有既約元」のこと
- ↑ 永田 1995, 定理 8.1.11.
- ↑ van der Waerden 2003, Exercise 18.11.
- ↑ Sunil K. Chebolu, Jan Minac (2011), Counting irreducible polynomials over finite fields using the inclusion-exclusion principle