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ウコン


ウコン鬱金欝金宇金郁金玉金)は、ショウガ科ウコン属多年草学名 Curcuma longa [ syn. C. domestica ]。英語ターメリック (turmeric)[1]インドが原産であり、紀元前からインドで栽培されている。「鬱金」の原義は「鮮やかな黄色」。呉音「ウッコン」が転訛しウコンとなった[2]

東南アジア諸国には、インドネシア原産でクルクミンの含有量が多く薬効が強い変種ジャワウコン(Javanese turmeric)があり[1]、現地名のクニッツや別名クスリウコンという呼び名で日本でも流通している。ヒンディー語ウルドゥー語グジャラーティー語ハルディ (Haldi) でも知られる他に、沖縄方言のウッチンインドネシア語マレー語クニッツ (kunyit)、ハワイ語オレナ (Ōlena) などでも知られる。タイ語では、カミンチャン。

伝統医学アーユルヴェーダインド料理に使われ[1]、また、根茎に含まれるクルクミンは黄色い染料の原料としても広く用いられてきた。今日でもスパイスとして用いられている[1]。日本では、カレー粉に用いられるほか、クルクミンの肝機能への影響を期待して二日酔い対策ドリンク[3]の原料にも用いられる。

類似種と呼称

次の「ウコン」は同属別種である。

  • 春ウコン: キョウオウ (C. aromatica)。生薬名は姜黄(キョウオウ)。主用途は健康食品など。黄ウコンワイルド・ターメリックとも。苦く黄色で、ミネラルや精油成分が豊富。
  • 紫ウコン: ガジュツ (C. zedoaria)。生薬名は莪朮(ガジュツ)。主用途は中医学漢方など。白ウコン夏ウコンとも。ただし、白ウコンは同科ショウガ属ハナショウガ (ランプヤン、Zingiber zerumbet) を指すこともある。

これらと区別するために、本来のウコンは秋ウコンまたは赤ウコンともいう。生薬名は鬱金(ウコン)で、主用途は食材であり、苦みが無くオレンジ色である。

  • ジャワウコン (Javanese turmeric, Curcuma xanthorrhiza) [1]

中国では、日本でのウコンをキョウオウ、日本でのキョウオウをウコンといい、日本と逆になっている。つまり中医学漢方の生薬分類上、春ウコンと秋ウコンの根茎を姜黄(キョウオウ)、塊根を鬱金(ウコン)としているが、日本に漢方が書物により伝来し普及する過程で、これら情報が混乱し正しく伝わらなかったためである。故に中国から輸入のウコン類生薬は、中国の定義に基づいた名称のものもある。

生産加工

ファイル:Turmeric.JPG
インドのウコン畑
ファイル:Curcuma longa roots.jpg
ウコンの根茎と粉末

インドがウコンの生産量輸出量ともに世界一である。ウコンには現在、約50種類ほどあり、インドだけで30種類を越える新しい品種が育てられている。

地下に肥大した濃黄色の根茎を持つ。この根茎を水洗して皮を剥き、5-6時間煮た後2週間ほど天日で十分乾燥させて細かく砕き、使用する。沖縄県では煎じたものを飲料として用いる。県内では缶入りの「うっちん茶」も多くのメーカーから発売されている。

成分組成

ウコンには約5%前後の精油成分(エッセンシャルオイル)、と約5%前後のポリフェノール類(クルクミン)が含まれている[4]

  • クルクミンは、ウコンの活性成分であり、別名でC.I. 75300、Natural Yellow 3などの名称がある。(またIUPAC名では、(1E,6E)-1,7-ビス(4-ヒドロキシ- 3-メトキシフェニル)-1,6- ヘプタジエン-3,5-ジオン;(1E,6E)-1,7-bis (4-hydroxy-3-methoxyphenyl) -1,6-heptadiene-3,5-dione となる。)クルクミンは少なくとも2つの互変異性体(tautomeric form)、ケト・エノール体が存在し、固相時にはケト体を、溶液中ではエノール体をとる。クルクミンはpHによる変色域を持つことが知られている。pH7.4以下の酸性~中性溶液下では黄色を呈す一方、pH8.6以上の塩基性(アルカリ性)溶液下では明るい赤色に変化する。
  • 精油成分としては、ターメロン(胆汁分泌促進)、シネオール(胆汁・胃液の分泌の促進)、α―クルクメン(コレステロールを溶かし、高脂血症に有効)、クルクモール(抗がん作用)、β―エレメン(腫瘍予防の効果)、カンファー(健胃・殺菌効果)、テルペン類などが知られている(各成分の後ろの括弧内はこれまで報告されている、各成分での効果候補である)

また、クルクミンと精油成分の、各々の含有比率は、秋ウコンと類似種の春ウコン、紫ウコンで異なる。秋ウコンはクルクミン含有量が豊富で精油成分には乏しく、春ウコンは精油成分が比較的豊富である。紫ウコンはクルクミンに乏しく精油成分のみの組成になる。上記にあげた、主な有効成分の他にウコン根茎には、ミネラル(鉄分)などの微量元素や、食物繊維、デンプン、カリウム、ビタミンC、および、カロテンなどが含まれている。特に秋ウコンには鉄分が豊富に含まれており、ウコンをそのまま利用する場合に、ミネラルの豊富さが生体に影響を及ぼす場合がときおり報告されている。

利用

  • 黄色の着色料としても使われ、キゾメグサの異名がある。カレーの黄色はウコンの色であるほか、からしたくあん黄袋などにも用いられる。黄色の色素成分はクルクミン (curcumine)である。
  • 沢庵漬け
  • 湿潤効果や発毛抑制作用があるとされ外用剤として使用される。
  • ヨーロッパでは、マーガリンチーズの着色に使われている。また、サフランのかわりとして利用された。インドや東南アジアでは、スパイス、染料、切り傷の外用薬、化粧用のパウダーとして利用されている。インドネシアの結婚式では、花嫁、花婿が鬱金で腕を染め、黄色に炊き上げた米飯が振る舞われる[5]

期待されている薬効

俗に肝機能を増進するといわれ、二日酔いの抑止効果があるかのような宣伝を行う錠剤ドリンク剤が多数発売されている。沖縄の鬱金茶は、二日酔いを防ぐということで、飲酒の前後に飲まれている。また、居酒屋では、鬱金の粉末が常備され、泡盛などに入れて飲まれている[6]

国立健康・栄養研究所のデータベースによると、ドイツで消化不良の有効性が承認されていて、ほかに高脂血症やそう痒に有効性が示されるが、さらなる検証が必要としている[7]

炎症を軽減するという主張は、強い根拠に基づくものではない[1]

かつて、デザイナーフーズ計画のピラミッドで2群に属しており、チャやタマネギと共に、2群の最上位に属する高い癌予防効果のある食材であると位置づけられていた[8]

副作用

危険性情報としては、摂取量、摂取期間、また、摂取した対象者は不明であるが、薬剤性肝障害22例のうちウコンによるものが11例ある等が述べられている。また日本肝臓学会の診断基準を満たした薬剤性肝障害症例(14施設 84症例)のうち、ウコンによる薬剤性肝障害は25%を占めたとされた。なお医療機関で処方される医薬品漢方薬の中には、ウコンを含有するものは存在しない[9]。クルクミン大量摂取による肝臓の脂肪変性も報告されている[10]

また、秋ウコンの根茎は、クルクミンの他にもミネラル分(鉄分)が豊富に含まれているものがある。例えばC型慢性肝炎患者(あるいはその他の肝炎患者)は、罹患した時点ですでに鉄過剰を起こしやすいことから、鉄制限食療法が推奨されている[11][12]。そのような場合には、ウコン含有の鉄分(栽培地や栽培方法によってミネラルの含有量が高くなる場合がある)が肝臓に過剰な影響を及ばす可能性があり、注意が必要といわれている。

また、鉄分および精製されたクルクミンなどの成分についてはいくつかの報告[13][14]があるが、ウコン根茎そのものには、それ以外にも多様な成分を含んでおり、個々の成分単体で得られた結果がウコンとしての生理活性にどの程度反映されるのかは明らかではない(精製されたクルクミン原体の場合は含有ミネラルの問題は起こらないが、ウコン根茎の場合は更なる検証が必要である)。

ウコンの有効性および安全性は、まだ十分に検討され尽くしていないため、今後もウコンやその成分についての様々な検討が必要であり、その点について研究が進められている状況である[15]

また、以下の場合は、ウコン(秋ウコン)の摂取を控えるべきとされている。特に肝障害患者においては、サプリメントとして市販されている通常量で重篤な状態に陥った例が少なからず報告されている。またウコン(秋ウコン)によって自己免疫性肝炎を併発した可能性のある症例の発表もある[16][17]。 

ウコン(秋ウコン)を含有した外用薬によるアレルギー性皮膚炎も報告されている[18]

以上のように、しばしば「ウコン(秋ウコン)は肝臓によい」と言われているものの、肝疾患患者への投与は推奨されておらず、状態を改善させるどころか、死亡例(2人:2004年)[19][20][21]を含んだ重篤な副作用の報道・報告があり、安易な内服は慎むべきとされている[22]

脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 Herbs at a Glance - Turmeric (Report). アメリカ国立補完統合衛生センター. (2016-11-30). https://nccih.nih.gov/health/turmeric. 
  2. 小曽戸洋「『日本薬局方』(15改正)収載漢薬の来源」、『生薬学雑誌』第61巻第2号、2007年、 p.69、 ISSN 00374377NAID /40015616633
  3. 例えば、ハウス食品の二日酔い対策ドリンク「ウコンの力」など。
  4. “Turmeric--chemistry, technology, and quality”. Crit Rev Food Sci Nutr 12 (3): 199–301. (1980). doi:10.1080/10408398009527278. PMID 6993103. 
  5. 日本のハーブ事典 村上志緒 東京堂出版P85
  6. 日本のハーブ事典 村上志緒 東京堂出版
  7. アキウコン(ウコン) - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所) 更新日2018/07/12、閲覧日2018年9月26日
  8. 大澤 俊彦「がん予防と食品」、『日本食生活学会誌』第20巻第1号、2009年doi:10.2740/jisdh.20.11
  9. 水野瑞夫:ウコン.日本薬草全書,新日本法規,pp74-76,2000
  10. 石田 聡他:健康食品による薬物性肝障害,肝胆膵48(6):747-755,2004
  11. Iwata K.,et al.2006."Iron content and consumption of health foods by patients with chronic hepatitis C." J Gastroenterol. 2006 Sep;41(9):919-20.(PMID 17048058)
  12. Iwasa M, Kaito M, Ikoma J, Kobayashi Y, Tanaka Y, Higuchi K, Takeuchi K, Iwata K, Watanabe S, Adachi Y.(2002) Dietary iron restriction improves aminotransferase levels in chronic hepatitis C patients. Hepatogastroenterology. 2002 Mar-Apr;49(44):529-31.
  13. Isawa M.,et al.(2010)Restriction of calorie and iron intakes resuluts in reduction of visceral fat and serum alanine aminotransferase and ferritin levels in patients with chronic liver disease. Hepatol Res.2010 Dec;40(12):1188-94(PMID 20880065)
  14. Jun-ichi NAGATA and Morio Saito (2005) Evaluation of correlation between amount of curcumin intake and its physiological effects in rats. Food Sci. technol. Res.,11(2), 157-160,2005
  15. 健康・栄養ニュース第15号P5(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
  16. 木村 吉秀 「ウコンによる薬物性肝障害により影響を受けた自己免疫性肝炎の1例」 ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA 46(1), 26-32, 2005-01-25
  17. 中本譲 「う金(ウコン)の人体に及ぼす影響及び副作用についての検討」 日本栄養・食糧学会総会講演要旨集 巻:49th 頁:206
  18. 矢島 純 「Database of side effect cases. New trial of presentation of drug information. Dermatological medicines. A case of allergic contact dermatitis by external-use drug containing curcuma」 診断と治療 巻:84頁:760 特殊号:増刊号
  19. ウコン摂取で、肝機能障害、悪化し死亡
  20. ウコン摂取で肝障害 肝硬変の60代女性、症状悪化し死亡 「産経新聞」2004年10月19日
  21. 伊藤 弘康 臨床医の立場から見た肝臓(肝障害)と健康食品について 生物試料分析, 32(1) : 66, 2009
  22. 小島裕治 「健康食品, 特にウコンによる肝障害の検討」日本消化器病学会雑誌, 101 : 607, 2004

関連人物

関連項目

外部リンク