夢魔
夢魔(むま)は、古代ローマ神話とキリスト教の悪魔の一つ。淫魔ともいう。夢の中に現れて性交を行うとされる下級の悪魔。
夢魔のうち、男性型のインクブス(羅: Incubus、英語読みでインキュバス)は睡眠中の女性を襲い精液を注ぎ込み、悪魔の子を妊娠させる。女性の姿をした(もしくは女性に変身した)夢魔は、スクブス(羅: Succubus、英語読みでサキュバス)といい、睡眠中の男性を襲い、誘惑して精液を奪う。それぞれラテン語の「のしかかる(incubo)(上に乗る)」、「下に寝る(succubo)」に由来しており、これはスクブスは女性型、インクブスは男性型の夢魔であることを明確にあらわしている。以下、インキュバス(男夢魔)、サキュバス(女夢魔)と表記する。
古くはアウグスティヌス『神の国』第15巻23章に、森の精霊シルウァヌスやファウヌスはインクブスと呼ばれ、しばしば女性を襲って欲望を満たす、という当時の俗信についての記述がある[1]。
どちらも、自分と性交したくてたまらなくさせるために、襲われる人の理想の異性像、服を着ず下半身は裸で現れる。そのため、その誘惑を拒否することは非常に困難だった。人の形態をとるだけでなく、標的となった人間の寝室には蝙蝠に化けて侵入するともされている。ただし、これらの姿を変える能力を剥がした正体は醜い怪物とも語られている。
一説にはインキュバスとサキュバスは同一の存在であり、自身に生殖能力が無いため、人間男性の精液を奪って人間女性を妊娠させ、繁殖しているとされる。
ヨーロッパのある地方では「枕元に牛乳があると、サキュバスはそれを精液と間違えて持ってゆく」と言われ、悪魔よけに小皿一杯の牛乳を枕元に置いて眠るという風習があった。
ルネサンス時代には「インキュバスは実際に女性を妊娠させるのか?」という議論が真面目に行われていた。というのも、この時代は生活環境の変化によって人々が性に奔放になり、都市部の若い(時には少女とも呼べるほどの年齢の)女性が父親不明の私生児を抱える例が多かったのである。
女性が望まぬ子供を孕んだときには“インキュバスの仕業だ”とされることもあり、不義密通の言い訳として大変役立ったようである。
サキュバスに襲われた男性は、いわゆる夢精をした状態となり、夢精はサキュバスの仕業と信じられていた。
Contents
普遍的な「夢魔」
キリスト教以外にも、夢魔によく似た存在(特に男性の夢に現れ精を奪うもの)が現れる宗教・伝承は多く、世界中に見られる。
- サキュバス以外で「夢魔」の特徴を持つもの
夢魔が登場する作品
作品タイトル、作者、登場キャラの順。キャラでインキュバスやサキュバスなど、固有名詞のない者は種族名のみの作品。
夢魔
漫画
ゲーム
- 『マジック:ザ・ギャザリング』 - Nightmare(日本語版のカード名が「夢魔」)
- 『Magical Marriage Lunatics!! 〜マジカル マリッジ ルナティクス〜』(コンピューターゲーム)
- 『ウィザードリィ』
インキュバス
コンピュータゲーム
- 『魔導物語シリーズ』『ぷよぷよシリーズ』 - インキュバス
- 『女神転生シリーズ』 - インキュバス
- 『いじわる My Master』 - リュカ(正体はインキュバス)
- 『Fate/GrandOrder』 - マーリン(半分夢魔)
漫画
- 『よんでますよ、アザゼルさん。』 - インキュバス
小説
- 『ご愁傷さま二ノ宮くん』 鈴木大輔 - 月村 美樹彦、奥城 たすく
サキュバス
漫画
- 『純潔のマリア』石川雅之 - アルテミス
- 『夢喰いメリー』牛木義隆 - メリー・ナイトメア
- 『ロザリオとバンパイア』池田晃久 - 黒乃 胡夢
- 『ロッテのおもちゃ!』葉賀ユイ - アスタロッテ・ユグヴァール
- 『憂鬱くんとサキュバスさん』さかめがね - サキュバス
- 『亜人ちゃんは語りたい』ペトス - 佐藤早紀絵
- 『デビルエクスタシー』 メルル - 押見修造
小説
- 『ご愁傷さま二ノ宮くん』 鈴木大輔 - 月村 真由、奥城 いろり
- 『この素晴らしい世界に祝福を!』 暁なつめ - サキュバスリーダー、受付サキュバス、ロリサキュバス
- 『ストライク・ザ・ブラッド』 三雲 岳斗
コンピュータゲーム
- 『ヴァンパイアシリーズ』 - モリガン・アーンスランド、リリス
- 『悪魔城ドラキュラシリーズ』 - サキュバス
- 『歌月十夜』『MELTY BLOOD』 - レン
- 『魔導物語シリーズ』『ぷよぷよシリーズ』 - サキュバス
- 『女神転生シリーズ』 - サキュバス
- 『ワイルドアームズ アドヴァンスドサード』 - ベアトリーチェ