公認会計士 (日本)

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公認会計士(こうにんかいけいし)とは、内閣総理大臣から資格を認められ[1]、公認会計士名簿に登録し[2]、他人の求めに応じ報酬を得て財務書類を監査または証明することを業とする者[3]。略称は「CPA(シーピーエー。Certified Public Accountant)」[4]

公認会計士は財務諸表監査を独占業務としていることから「資本市場の番人[5][6][7]と呼ばれる。公認会計士は「監査法人」を設立することができる[8]


概要

公認会計士は、監査及び会計の専門家[9]として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを使命としており[10]、監査対象たる会計主体からの独立性に特徴がある。

なお、公認会計士の独占業務は財務諸表監査であり、会計・経理業務自体は法律上、誰でもできる自由業務とされる[11]

正式に公認会計士となるには公認会計士試験に合格後、監査法人などで二年以上の実務経験を積み、修了考査に合格することが求められる。以前は公認会計士試験の合格者は会計士補として登録ができたが、法律上、これは廃止された。現在、修了考査を通過していない公認会計士試験合格者のうち、監査法人に勤務している者は、「公認会計士試験合格者」あるいは「公認会計士協会準会員」[12]などの肩書を名乗り、監査補助者として監査に従事している。

業務

公認会計士の業務は、法律上、監査証明業務、非監査証明業務、その他の業務に大別される。

監査証明業務

監査証明業務とは、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることである(2条1項)。公認会計士は、独占業務として財務書類の監査・証明業務(通称1項業務)を行える。

財務諸表監査は、金融商品取引法によって上場企業などに義務付けられている。また、会社法上の大会社学校法人社会福祉法人なども財務諸表監査を受けなければならない(法定監査)。

非監査証明業務

非監査証明業務とは、監査業務の外、公認会計士の名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の調製をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応ずることである(2条2項)。公認会計士は、財務書類の調整、財務に関する調査・立案、財務に関する相談等の業務を行うこと(通称2項業務)ができる。但し、監査業務との同時提供については、「自己監査は監査に非ず」の法諺のとおり、他の法律においてその業務を行うことについて様々な制限が設けられている。

監査法人において公認会計士が提供する2項業務は、以下のようなものが含まれる[13]。また、いわゆる企業内会計士としての業務も含まれる。

その他の業務

公認会計士は、税理士及び行政書士に関しては無試験で登録を受けることができ(税理士法3条4号、行政書士法2条4号)、各団体に登録すれば、それぞれの名をもって各業務を行える[14]。一方、司法書士並びに弁護士の業務を公認会計士が行うことはできない[15]

また、以下のような地位に就任することも多い。

活動領域

従来は、公認会計士のほとんどが監査法人か会計事務所に所属して活動していたが、徐々にその活動領域は広がりつつある[20]

監査法人

公認会計士の独占業務である財務諸表監査を業務の中心とする。株式上場支援業務内部統制関連業務、資産査定、事業再生なども行う。現状では、大半の試験合格者が、数千名の人員を抱えるいわゆる4大監査法人に就職する。

税理士法人・税理士事務所

上述の通り、公認会計士は無試験で税理士登録をできるため、税理士登録をした上で税理士の業務に携わる者も多い。独立開業する者もいる。

FAS

FAS(財務アドバイザリーサービス)を提供するファームでは、財務デューデリジェンスや事業再生アドバイザリー、不正調査などの分野で会計士が業務に携わることがある。

事業会社

会計業務の複雑化にともない、一般の事業会社においても公認会計士が採用されることが多くなってきた。企業内会計士には、経理部や財務部などの部署において、連結決算業務や原価管理内部統制業務などの専門的な知識が求められる業務に携わることが期待されている。

金融機関

融資業務や事業再生コンサルティングなどにおいて、会計の知識が求められることから、公認会計士が採用される。

官公庁

官公庁における会計監査や複式簿記による企業会計ベースの財務報告の作成に公認会計士が従事することがある。また、警察の刑事部捜査第二課などにおいて会計士が捜査に従事する事例がある。また、公認会計士・監査審査会では公認会計士がレビュー業務などにあたっている。

沿革

  • 1927年 計理士法が施行され、公認会計士の前身となる計理士資格が誕生する。
  • 1948年 計理士法を廃止する代わりに公布された公認会計士法によって公認会計士制度が確立。当時、企業会計や税務を担当していた計理士のうち、特別試験に合格したものについて計理士業務に加えて監査業務をさらに行うことができる資格として公認会計士資格が計理士資格に替えて与えられた。公認会計士法公布以前は、企業内部の会計監査人が公認会計士と類似した業務を執り行っていたが、独立外部性をより必要としたことから、会計監査人を企業から独立した公認会計士へと限定された。[21]
  • 2006年5月 会社法施行にともない、公認会計士・税理士は会計参与という株式会社の機関のひとつとして、その会社が会計参与を設置する場合は、会社に参加しうることになった。

識見の範囲

日本国によって担保される識見の範囲を把握するためには、公認会計士試験の受験資格、出題基準、合格基準が参考となる。詳細は、公認会計士試験を参照されたい。

外国公認会計士

各国において日本の公認会計士に相当する資格を有する者のうち内閣総理大臣による資格の承認を受け、かつ、日本公認会計士協会による外国公認会計士名簿への登録を受けた者は、外国公認会計士と呼ばれ、公認会計士と同様の業務を行うことができる(16条の2)。

コンバージェンス

公認会計士に相当する職能資格よる監査制度は、証券市場における投資家からの直接金融制度には欠かせない制度であり、多分に共通要素がありながらも、各国における経済諸事象を反映して個々別々に発展している。他方、経済の国際化と情報通信技術の急速な発展に伴い、会計基準と同様に国際的コンバージェンスが課題とされることがある。詳細は、公認会計士制度或いは次に掲げる個々の職能資格を参照されたい。

著名な公認会計士・会計士補

監査法人関係者

経営者

学者

政治家

その他

脚注

  1. 公認会計士法3条
  2. 公認会計士法17条
  3. 公認会計士法2条1項
  4. 公認会計士とは-CPAを選ぶということ”. 日本公認会計士協会近畿会. 2018年1月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2018閲覧.
  5. 森公高公認会計士業界が直面する課題とその対応 会計・監査の基盤強化へ向けて」(『テクニカルセンター会計情報』Vol. 449、2014年)
  6. 金融庁(2016年9月21日閲覧)。
  7. 市場の番人としての監査法人(JIPs DIRECT、日本電子計算株式会社)
  8. 公認会計士法第34条の2の2
  9. 公認会計士法1条
  10. 公認会計士法1条
  11. 第46回国会衆議院大蔵委員会議録第54号、日本税理士会連合会編『新税理士法要説』、自治省行政課矢島孝雄『地方自治』昭和59年9月号
  12. 準会員会について日本公認会計士協会準会員会)
  13. 公認会計士制度委員会研究報告第6号(監査法人の提供業務について)」 (日本公認会計士協会、2008年7月17日)
  14. 2013年から日本税理士連合会は会計士の税理士登録には問題があるとして反対を表明し、これに日本公認会計士協会が反論していた。2016年に公認会計士に税法に関する一定の研修を義務付けることで、従来通り無試験での登録を可能とする合意が形成された(税理士と公認会計士が「日経新聞」でバトル 「資格の自動付与」めぐり意見広告の応酬および日本税理士会連合会会長コメント)。
  15. 昭和25年7月6日民事甲第1867号民事局長回答(法務省民事局長通達)では司法書士の業務のうち「会社等の設立手続の委嘱を受けた場合、その附随行為として登記申請書類の作成及び申請代理をしても差し支えない」とされ、昭和35年3月28日民事甲第734号民事局長電報回答にて追認されていた。しかし東京高裁平成7年11月29日判決により、司法書士の業務は弁護士法に定める一般の法律事務でもあるとされ、また最高裁昭和33年9月12日判決では司法書士法違反と弁護士法違反が別個に問われることもあるとされたことから、公認会計士が付随行為として設立登記申請をすることが可能であるかどうかの確定的な司法判断はなく、逆に否定する裁判例が散見されるため、可能とは言いきれない。
  16. 会社法333条1項により、公認会計士・監査法人または税理士・税理士法人であることが必要とされる。
  17. 会社法嗜好貴族121条8項により、監査役等が「財務・会計に関する相当程度の知見を有しているもの」である場合、その事実を事業報告に記すこととされている。これは実質的に公認会計士や財務担当役員の経験者などの会計専門家を社外監査役等に就任することを奨励しているものであると考えられる(弥永真生『コンメンタール会社法施行規則・電子公告規則』商事法務2007年、pp.683-884)。
  18. 弁護士・公認会計士・税理士といった専門職の社外取締役就任は増加傾向にある(社外取締役の教科書 【第13回】「士業が社外取締役に就任する際の注意点(その1)(栗田祐太郎、Profession Journal、2015年12月10日))。
  19. 地方自治法252条の28、1項・2項の規定によって、公認会計士・税理士・弁護士および政令で定める者(国・地方公共団体で会計監査・検査に従事していた者)のみが外部監査契約を締結できる。
  20. 広がる公認会計士のフィールド公認会計士・試験合格者の活躍フィールド
  21. 公認会計士監査制度の一本化,邱艶梅,現代社会文化研究,2003-07

関連項目

外部リンク