ダイヘン

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株式会社ダイヘン英称:DAIHEN Corporation)は、大阪市淀川区に本社を置く日本電気機器メーカーである。重電8社(日立製作所東芝三菱電機富士電機明電舎ダイヘン日新電機東光高岳)の一角。

変圧器パワーコンディショナなどの電力機器、溶接機、産業用ロボット、プラズマ発生用電源、クリーン搬送ロボットなどを手がけるメーカーである。電力向け小型変圧器は日本国シェアトップ、アーク溶接機、アーク溶接ロボットなどは日本国シェアトップで世界大手の一角[1]

主力製品

  • 電力機器(変圧器、受変電システム、パワーコンディショナ、など)
  • 溶接機、切断機(CO2/MAG溶接機、TIG溶接機、MIG溶接機、プラズマ溶接機、など)
  • 産業用ロボット(アーク溶接、スポット溶接、ハンドリング、搬送、レーザ切断、など)
  • クリーン搬送ロボット(ウエハ搬送ロボット、フラットパネル搬送ロボット、など)
  • プラズマ発生用電源・自動整合器(高周波マイクロ波
  • ワイヤレス給電システム(AGV用ワイヤレス給電システム、など)

製品開発の経緯

創業時(1919年)の製品は柱上変圧器である。品種を単相50kVA以下に限定し、フォード生産方式(専門製作による大量生産)による高品質な製品の短納期・低価格での提供を実現した。

1923年に発生した関東大震災により関東圏の配電機器に甚大な被害が及んだが、関東の電気機器製造メーカーの多くが製造できない状態だったため、発電所である東京電灯から大阪電灯を通じて関西の電機メーカーに対して緊急の柱上変圧器製造要請があった。ダイヘン(当時社名:大阪変圧器株式会社)への製造割り当て台数は初回3000台であり、幾度かの追加注文を経て合計5000台が発注され、これを無事納品して変圧器メーカーとしての地位を築いた。

変圧器の技術を応用して、1934年に溶接機事業をスタートした。翌1935年に交流アーク溶接機の1号機を京都帝大電気工学教室に納入し、さらに翌1936年、海軍工廠に納入して以降、交流溶接機の販売台数を伸ばしていった。交流溶接機に加えて抵抗溶接機、サイアーク溶接機、サブマージアーク溶接機を上市し、変圧器事業に次ぐ溶接機事業を確立した。

時を経て1979年、国内自動車メーカーより自動アーク溶接機開発の依頼があり、これがアーク溶接ロボットの原型となって1980年にアーク溶接ロボット「ソアー」を市場投入した。溶接線の直線補間、円弧補完機能を有し、当時としては独自の技術だった。「ソアー」とは北欧神話に出てくる雷神の意味だが、米国で商標権の問題があったため、その後登場する新しいシリーズのロボットは「アルメガ」と称した。アルメガはギリシャ語最初の文字α(アルファ)と最後の文字ω(オメガ)からなる造語で、「最初から最後まで」溶接の全てに対応するという意味から命名した。

1985年にアーク溶接ロボットの技術をシリコンウェハー搬送向けに転用した搬送装置、オートローダーを開発した。その後、クリーンルーム内で使用される大気環境用、真空環境用シリコンウェハー搬送ロボット、さらに液晶市場向けに液晶基板搬送ロボットを開発した。

一方、半導体製造工程におけるプラズマエッチングのための高周波電源装置の開発依頼を受け、溶接機電源のインバータ技術を応用して1986年に評価機を納入した。1989年には高周波電源装置、マイクロ波電源装置のシリーズをラインナップした。

クリーンロボットと高周波・マイクロ波電源は同じ半導体製造業界を市場に持つことから半導体関連機器事業が発足し、クリーン搬送ロボット、プラズマ発生用電源の開発が続いている。

上記の経緯により、大別して電力機器、溶接メカトロ、半導体関連機器分野の製品を開発し現在に至る。

電力機器分野は柱上変圧器から大形変圧器、制御機器を経て電力の送配電全般に向けて製品を供給している。

溶接メカトロ分野は溶接機・ロボットの製品開発を継続し、2010年に市場投入したインバータ溶接機「Welbee」シリーズでは自社開発の溶接制御LSIを搭載している。

半導体関連機器分野では、2010年ムラテックオートメーションよりウェハ搬送ロボットの事業譲渡[2]を受けラインナップを拡大した。

これら3分野の製品は継続して開発し、市場投入を行っている。

開発の傾向

従来は顧客ニーズに沿った製品開発が中心であったが、最近では開発強化の方針を打ち出し新分野向けの製品の市場投入が進んでいる。製品例としては非接触で電力供給を行うワイヤレス給電システム、自律走行可能なAI搬送ロボットなどのファクトリーオートメーション分野向け製品や各種電力機器を組み合わせたエネルギーマネジメントシステムなどがある。

既存のフォークリフトに搭載したワイヤレス給電システム 
最適経路を判断し、目的地まで搬送するAI搬送ロボット 

沿革

主な事業所所在地

  • 十三事業所 - 大阪市淀川区田川2-1-11
  • 六甲事業所 - 神戸市東灘区向洋町西4丁目1番
  • 三重事業所 - 三重県多気郡多気町東池上800番地

関連会社

出典は有価証券報告書[5]

国内関連会社

  • 四変テック株式会社 (香川県仲多度郡多度津町 1946年8月設立)
  • 株式会社キューヘン (福岡県福津市 1959年10月設立) - 九州電力との共同出資。
  • 中国電機製造株式会社 (広島市南区 1962年7月設立、2015年7月子会社化) - 中国電力との共同出資。
  • ダイヘン産業機器株式会社 (鳥取県鳥取市 1970年10月設立)
  • ダイヘン電機システム株式会社 (大阪市淀川区 1997年11月設立)
  • 株式会社ダイヘンテクノサポート (神戸市東灘区 2018年7月設立)
  • ダイヘンヒューズ株式会社 (大阪府泉大津市 1951年6月設立)
  • ダイヘン青森株式会社 (青森県弘前市 1992年5月設立) - ダイヘンヒューズ株式会社の子会社。
  • ダイヘンスタッド株式会社 (神戸市東灘区 1974年12月設立)
  • ダイヘン電設機器株式会社 (大阪市淀川区 1983年8月設立)
  • 株式会社南電器製作所 (香川県仲多度郡多度津町 1967年8月設立)
  • ダイヘンテック株式会社 (大分県杵築市 1984年8月設立)
  • ダイホク工業株式会社 (北海道恵庭市 1969年10月設立)
  • ダイヘンビジネスサービス株式会社 (大阪市淀川区 1999年3月設立)
  • ダイヘン物流株式会社 (大阪市淀川区 2001年2月設立)
  • 株式会社ダイキ (大阪市淀川区 1980年7月設立) ‐ ホームセンターダイキとは無関係。
  • ダイヘンエンジニアリング株式会社 (大阪市淀川区 1975年11月設立)
  • 株式会社ダイヘン厚生事業団 (大阪市淀川区 1965年5月設立)
  • 阪神溶接機材株式会社 (岡山県岡山市) - 神戸製鋼所との共同出資。
  • 大一精工株式会社

海外関連会社

  • DAIHEN,Inc. (アメリカ 1979年3月設立)
  • OTC DAIHEN EUROPE GmbH (ドイツ 1983年10月設立)
  • OTC DAIHEN Asia Co.,Ltd. (タイ 1989年4月設立)
  • DAIHEN ELECTRIC Co.,Ltd. (タイ 1989年8月設立)
  • DAIHEN Advanced Component,Inc. (アメリカ 1996年5月設立)
  • 牡丹江OTC溶接機有限会社 (中国 1997年11月設立)
  • 台湾OTC有限会社 (台湾 1998年4月設立)
  • OTC機電(上海)有限会社 (中国 2001年8月設立)
  • DAIHEN KOREA Co.,Ltd. (韓国 2002年5月設立)
  • OTC機電(青島)有限会社 (中国 2003年4月設立)
  • ダイヘンOTC機電(北京)有限会社 (中国 2006年10月設立)
  • ダイヘン精密機械(常熟)有限会社 (中国 2009年12月設立)
  • OTC DAIHEN Bangkok Co.,Ltd. (タイ 1995年12月設立)
  • OTC DAIHEN INDIA PVT.LTD. (インド 2011年6月設立)
  • PT OTC DAIHEN INDONESIA (インドネシア 2012年7月設立)
  • DAIHEN VARSTROJ welding cutting and robotics d.d. (スロベニア 2014年5月設立)
  • DAIHEN MEXICO S.A. de C.V. (メキシコ 2016年10月設立)

外部認証

本社ビルの敷地は、第三者認証としてJHEP認証を受けている。

出典

  1. 会社四季報
  2. ダイヘン、半導体搬送ロボ事業を買収 村田機械から”. 日本経済新聞 (2010年10月12日). . 2018閲覧.
  3. デミング賞受賞者リスト”. 日本科学技術連盟. . 2018閲覧.
  4. ダイヘン、中国で小型産業用ロボを量産”. 日本経済新聞 (2014年8月18日). . 2017閲覧.
  5. 第152期有価証券報告書 (平成27年4月1日 - 平成28年3月31日)”. 金融庁. . 2017-2-27閲覧.

参考文献

  • 滝本誠一, 向井鹿松 共編 『日本産業資料体系』
  • 株式会社ダイヘン編纂 『ダイヘン八十年史』 2001年

関連項目

外部リンク