アスクレーピオス

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アスクレーピオスの座像。左にシンボルの蛇。
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アスクレーピオスの杖

アスクレーピオス古希: Ἀσκληπιός, Asklēpios)は、ギリシア神話に登場する名医である。ラテン語ではアイスクラーピウスÆsculapius / Aesculapius)という。長母音を省略してアスクレピオスアスクラピウスとも表記される[1]

優れた医術の技で死者すら蘇らせ、後にの座についたとされることから、医神として現在も医学の象徴的存在となっている。ユーロ導入まで発行されていたギリシャの旧10000ドラクマ紙幣に肖像が描かれていた。

神話

アスクレーピオスはアポローンコローニスの子。コローニスはテッサリアラピテース族の王プレギュアースの娘で、アポロンは一羽のカラスを使いとしてコローニスとの連絡係にしていた。このカラスは言葉を話し、その羽は純白だった。あるとき、カラスがコローニスの浮気を告げたために、怒ったアポローンはコローニスを矢で射殺した。このカラスの報告は道草を食っていた言い訳に付いた嘘だったという説と、カラスがうっかり者で早とちりをしたという説がある。いずれにしても、アポローンはカラスを罰して言葉を取り上げ、白い羽を真っ黒に変え、天空に曝して償わせた。このカラスの姿が現在のからす座である。一説には、からす座のすぐ近くにコップ座があるにもかかわらず、そのくちばしは永遠にコップの水に届かないという。コローニスは身ごもっていることを告げて死んだため、アポローンは胎児を救い出してケンタウロスの賢者ケイローンに養育を託した。この胎児がアスクレーピオスである。

ケイローンのもとで育ったアスクレーピオスは、とくに医学に才能を示し、師のケイローンさえ凌ぐほどであった。やがて独立したアスクレーピオスは、イアーソーン率いるアルゴー船探検隊(アルゴナウタイ)にも参加した。その医術の技はますます熟達し、アテーナーから授かったメドゥーサの右側の血管から流れた蘇生作用のある血を使い、ついに死者まで生き返らせることができるようになった。アスクレーピオスはカパネウスリュクールゴスアテーナイテーセウスの息子ヒッポリュトステュンダレオースヒュメナイオスミーノースの子グラウコスらを蘇らせたという。冥界の王ハーデースは、自らの領域から死者が取り戻されていくのを“世界の秩序(生老病死)を乱すもの”とゼウスに強く抗議した。ゼウスも、人間が治療の術を獲得して互いに助け合いをすることをよしとしなかったためこれを聞き入れ、雷霆をもってアスクレーピオスを撃ち殺した。[2]だが、アスクレーピオスは功績を認められ、死後天に上げられてへびつかい座となり、神の一員に加わえられることとなった。

逆に収まらなかったのは子を殺されたアポローンであった。ゼウスに対して直接の非難はできなかったため、アポローンはゼウスの雷霆を作っていた巨人族で一つ目のキュクロープスたちを腹立ち紛れに皆殺しにしたという。アポローンはゼウスに罰せられ、ペレースの子でテッサリアのペライの王アドメートスのもとで羊飼いとして家畜の世話をさせられたという。

医学の守護神

古代ギリシアにおいては、病院を「アスクラピア」と呼んだ。アスクレーピオスの子どもたちはいずれも医術にかかわっており、息子にはともに医学の知識に長け、トロイア戦争で活躍したマカーオーンポダレイリオスが、娘には衛生を司るヒュギエイアや治癒を司るパナケイアがいる。ヒポクラテスは彼の子孫であるとも言う。

アスクレーピオスの杖

杖にヘビの巻きついたモチーフは「アスクレーピオスの杖」(蛇杖)と呼ばれ、医の象徴として世界的に用いられている。詳細は当該項目を参照のこと。

系図

テンプレート:シーシュポスの系図

脚注

  1. ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説”. コトバンク. . 2018閲覧.
  2. アポロードロス(高津春繁訳)『ギリシア神話』、第3巻10.3(岩波書店、昭和28年)

関連項目