JR四国5000系電車
5000系電車(5000けいでんしゃ)は、2003年(平成15年)10月1日に営業運転を開始した四国旅客鉄道(JR四国)の直流近郊形電車。
概要
本四備讃線(瀬戸大橋線)の快速「マリンライナー」の輸送改善を目的とし、これまで使用していた213系を置き換えるために新製された。
川崎重工業(5000形、5200形)および東急車輛製造(5100形)でM編成3両編成6本(18両)が製造され、通常は西日本旅客鉄道(JR西日本)岡山電車区配置の223系5000番台P編成2両編成(2007年- 2010年は暫定的にサハ223形2000番台を組み込み3両編成となっていた)7本計14両と共に運用されている(運用については後述)。なお、川崎重工業・東急車輛製造とも本系列までJR四国とは取引がなかった。5100形はJR四国の車両としては最初で最後の東急車輛製造製となった。
車両構造は、213系では各1両設定されていたグリーン席と指定席車を1両に統合して2階建てとし、JR東日本E217系電車の2階建てグリーン車をベースとして、また普通車(自由席)はJR西日本の223系5000番台と連結する必要から、223系2000番台をベースとして設計された。
編成は、岡山側から 5000形(Mc, 制御電動車) - 5200形(T, 付随車) - 5100形(Tswc, 制御車)のMT比1M2Tで構成され、通常は岡山寄りに223系5000番台2両編成を併結した5両編成で運転される。そのため、システムも223系5000番台の母体となった223系2000番台と同一で、VVVFインバータ制御(東芝製)を採用している。JR四国では会社発足後に新製した車両に配置区所の略号を標記しないが、本系列は配置区所である高松運転所の略号「四カマ」の標記がある。5100形は車体側面にJR東日本仕様で、5000・5200形は妻面にJR西日本仕様で標記される。
223系5000番台と共通仕様であるため、JR西日本の通勤・近郊形車両と同じ旋律のミュージックホーンが搭載されている。
瀬戸大橋線のみを走行する「マリンライナー」専用車とされ、狭小限界トンネルがある予讃線観音寺駅以西への乗り入れは考慮されていない。
特徴
平屋建て車(5000形、5200形)と223系2000番台との形態上の差は、運転台部分が幌で常時貫通できる構造とされ、先頭部の形状が若干変更されたのと、側窓の非常時の換気用内開き窓が廃され、223系1000番台とほぼ同一の構造となった程度で(これは瀬戸大橋からの眺望性を考慮したものとされ、後に223系2000番台5次車以降(宮原所属の6000番台を含む)・2500番台3次車も同様の構造に変更されている)、車体の配色もアーバンネットワークで使用されているものと同一である。223系5000番台との差も車体に貼付されたJRマークの色(コーポレートカラー)、排障器(スカート)の形状の違い(5000形のスカートは強化改造が行われておらず、223系登場時の原形を留めている)、JR西日本が福知山線脱線事故を受けて2013年までに全車両に設置された運転情報記録装置(223系の場合、運転台下部にある監視カメラのようなもの)が設置されていない、JR四国が2006年から運転席に設置を進めている停車駅接近警報装置の形状や機能が同社で標準のもの(停車駅が近づくと「次駅停車」のランプが点灯する)で、JR西日本のものとは異なる。座席についても223系2000番台とほぼ同じ転換式クロスシートと収容式座席が設置されている。また、岡山方の先頭車は弱冷車になっている。永らくJR四国の所有する車両では、唯一転落防止幌が設置されている車両であった[1]。
本系列を特徴づける高松方の先頭車5100形は、2階をグリーン席、1階を普通席(いずれも指定席)としたダブルデッカーで、223系2000番台を基本とした平屋建て車と異なり、E217系のグリーン車を基本としてそれに運転台を付加した形となっている。運転台側の連結器は5101のみ電気連結器が装備されているが、それ以外は密着連結器のみである。ただし、電気連結器を装備するスペースは確保されている。また、高松寄り運転台後部には平屋席のパノラマシート1列4席(グリーン指定席)、岡山寄り車端部には車椅子対応の普通指定席2席やトイレも設置されているなど、多様なニーズに対応している。平屋部分以外の座席は自動転換装置があり、折り返し車内整備の際に使われる。なお、高松寄りのデッキはグリーン車の一部とみなされるためここでの立席乗車はグリーン料金が発生する。
グリーン車も普通車指定席も、ともに横4列のリクライニングシートで座席の前後間隔も30mmしか差がないが、普通車指定席には背面テーブルが省略されているほか、リクライニング角度がグリーン席よりも浅いなど、細部において差別化が図られている。また、グリーン席・普通指定席ともに網棚が設置されていない。
車体配色も他車と全く異なる独自のものとなっており、5101〜5103号は青系、5104〜5106号は赤系とされ、各車に岡山県の民話『桃太郎』にちなんだ3種のエンブレム(「桃太郎とイヌ」 (5101, 5104) ・「桃太郎とサル」 (5102, 5105) ・「桃太郎とキジ」 (5103, 5106) )が描かれている。
この5100形は、2004年(平成16年)度のグッドデザイン賞(財団法人産業デザイン振興会)およびブルーリボン賞(鉄道友の会)を受賞しているが、両賞の受賞はJR四国の発足以来初である。なお、会員による投票数をもとに選出する後者は特急形車両に授与されることが比較的多く、特急料金などを授受しない列車での運用を目的とした(運用開始以来、定期列車では快速「マリンライナー」のみに使用されている)5100形の受賞は、JRにおいては比較的珍しい。
車両の製造を公表した当初(2002年)にJR四国から発表されたプレスリリースでは、223系0番台と同じ正面形状とするなど2階建車両のデザインが大幅に異なっていたが、後に現在のデザインが発表された。
- JR Shikoku 5100gata.jpg
5100形電車
(2005年10月31日 / 讃岐府中駅) - 5100gata-2kai.JPG
5100形の2階席車内
(グリーン車指定席) - JR Shikoku 5000 series EMU 001.JPG
5100形の1階席車内
(普通車指定席)
- JRS5000-5003 1.jpg
5000形電車
(2008年2月3日 / 高松駅) - 5000gata-syanai.JPG
5000形の車内
(普通車自由席)
運用
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全車両がM編成としてJR四国の高松運転所に配置され、基本的にJR西日本岡山電車区電車センター配置の223系5000番台2両編成(P編成)と連結して5両編成で快速「マリンライナー」として運用されている。早朝、深夜の一部列車はP編成のみやM編成のみ、また朝ラッシュ時にはM編成1本とP編成2本による7両編成(3両+2両+2両)での運用もある。
また年末年始・大型連休・お盆休み等の多客期には終日にわたって9両編成での運用のほか、過去にはM1編成の5101号を中間に連結してM編成2本とP編成1本による8両編成(3両+2両+3両)で運用されたこともあった(当時P編成には中間車が組み込まれていなかった)。
2007年6月下旬からラッシュ対策としてP編成に網干総合車両所から貸し出されたサハ223形2000番台が組み込まれ、3両編成化された。 しかし、近年に入り利用者が減少していることから、2010年(平成22年)1月19日から1月23日までの間に順次編成を減車した。これにより、3両編成の運用10本のうち5本が2両編成に、6両編成の全63本が5両編成に、9両編成の全2本が7両編成となった。
登場直後の2003年10月11日〜13日には、全車指定席の臨時快速「マリンライナー京阪神ホリデー号」として、京都駅(留置回送としては草津駅まで)まで乗り入れたこともあった。