銭
銭(せん、中国語: 錢/钱 拼音: チエン、朝鮮語: 전 チョン)は、東アジアのいくつかの国の通貨である。
「銭」(旧字体「錢」)は元は農具の「鋤」を意味する漢字だったが、鍬形の貨幣があったことから貨幣の意味に転じた。通貨としては複数の意味があるが、主に
の2つの系統の意味がある。
日本
古代から江戸時代までは、銭貨1枚の価値を表した。つまり、文あるいは0.001貫に等しい。銀に換算すると1700年のレートでは銀0.015匁にあたり、銀1銭(1匁)の価値である中国の銭とは2桁異なる。
1871年(明治3 - 4年)に新貨条例により円・銭・厘が新通貨として導入され、「銭」には新たな意味を与えられた。この銭は、0.01円・10厘に等しい。1両=1円の切り替えレート(および1両=4000文のレート)から換算すると、銭(新)=40銭(旧)となる。1953年(昭和28年)に小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律により銭・厘単位の硬貨や紙幣が全て通用停止となり、現金単位としては役割を終えた。
現在の日本では「銭」の使用は金融分野にほとんど限定され、株価・為替レートなどの、1円未満の端数表示に使われる。
朝鮮
チョン | |
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各種表記 | |
ハングル: | 전 |
漢字: | - (錢) |
発音: | チョン |
ローマ字: | chon/jeon |
朝鮮語では「錢」を 전(チョン)と読む。英字表記は、2000年からの韓国では jeon、北朝鮮および2000年までの韓国では chon である。なお、ウォンと同様に、現在は南北ともに公式な漢字表記はない。
南北双方でチョン=1⁄100ウォンである。ただし現在の韓国では、チョンの使用は日本の銭と同様、金融分野にほぼ限られている。北朝鮮では現在もチョン硬貨が鋳造されているが、ほとんど使われていないようである。
1892年、1⁄10両(ヤン)にあたる補助通貨として導入された。5両=圜(ファン)だったので、銭=1⁄50圜に等しい。
1902年、圓(ウォン)の導入に伴い、銭=1⁄100圓と改められた。切り替えレートは圓=5両(=圜)なので、銭(新)=2銭(旧)となる。
日本統治時代には基本通貨が圓(エン)、補助通貨が銭(セン)となった(切り替えレートは導入時・廃止時とも1:1)が、レートは変わらず銭=1⁄100圓だった。1953年から1962年までの韓国では基本通貨が圜(ファン)に戻ったが、補助通貨は変わらず銭=1⁄100圜だった。ただし、1953年の圜導入時に100倍、1962年の新圓導入時に10倍のデノミネーションがあったため、それに伴い銭の価値も一定ではなくデノミネーションされている。
中国
1⁄10両に等しかった。「銀1銭」、つまり、質量1銭の銀の価値だった。
ちなみに今の1元の1⁄10は角、1⁄100は分である。
ベトナム
ベトナム語では「錢」を tiền(ティエン)と読む。
阮朝 (1802–1945) 後期に、1⁄10両、あるいは銀1銭に等しい価値の通貨として使われた。
時期は不明だが、安南国では1錢=1⁄100両だったともされる[1]。
アメリカ合衆国
「銭」が小額貨幣の呼称で、かつアメリカ合衆国の貨幣単位の「cent」と音が似ていたことから、戦前のアメリカの日系移民の間では銭の単位を流用し、アメリカの「セント」を「米銭」と表記することがあった。