性的虐待
性的虐待(せいてきぎゃくたい)とは、上下の発生する関係性において、上位の者がその力を濫用もしくは悪用して、下位の者の権利・人権を無視して行う、性的な侵害行為のことである。性虐待(せいぎゃくたい)ともいう。広義には強姦、セクシャルハラスメントなどが含まれる。
一般には児童性的虐待を指すことが少なくないが、実際には性的虐待ならば児童のみならず高齢者、配偶者(内縁関係を含む)、障害者に対するものについても認識されている。さらに、人間のみならずペットや家畜などの動物に関しても用いられる。
Contents
被害者の性別
男性
男性に対する性暴力。日本では強姦についても「強制性交等罪」で男性を被害者として認めている他、アメリカでも男性も強姦の被害者として認めている。
女性
女性に対する性暴力。性犯罪の被害者はほとんどが女性であり、例えば2016年に認知された強制わいせつ罪の被害者の96%が女性であった。
第4回世界女性会議(1995年、北京)で採尺された行動綱領は、「人への暴力は、人間の普遍的人権と基本的自由を侵害するものである」と書き起こされている。
2017年にアメリカ合衆国でセクハラの大規模告発が起こったことに伴い、翌年タイムズ・アップ支援基金が発足した。被害者とされる人には男性もいたが、この件でフェミニズムが注目された。
弱い被害者
子供
家庭の内外を問わず子供が被害者になる場合がある。家庭内の方が重くなるケースは多いが、家庭外であっても被害が深刻なケースは多い事にも注意しなくてはならない。いずれにせよ、幼児期に性的虐待が行われたケースでは、その体験が被害者に心的外傷となって残るため、被害者のその後の性格形成や人生に深刻な影響を及ぼすケースが少なくない。
日本では「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」が2000年5月に成立し、第2条で「児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること」として、性的虐待を定義した。この法律は家庭内のものに限ったものである。
老齢者
高齢者の性的虐待に関しては、全体に対する比率としての調査は行われていないが、事例は多く存在する。日本の「高齢者の福祉施設における人間関係の調整に係わる総合的研究」(1994年6月、調査内容は家庭内虐待)では、過去半年間で3人、「特別養護老人ホームにおける高齢者虐待に関する実態と意識調査」(2000年3月)では過去1年間で16人とされたが、虐待の多くが密室で行われることや、痴呆を起こしている入居者も多いため、その詳細に関しては不明な点が多い。
日本では2006年4月1日より「高齢者の虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)」が施行され、「高齢者にわいせつな行為をすること・又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること」として、性的虐待を定めている。
障害者
障害者は非常に性的虐待に遭いやすいことが分かっている。このような虐待事件は日本では水戸事件で社会的に認知され、テレビドラマ「聖者の行進」にも取り上げられた。
動物
動物に対しても獣姦などの性的虐待は行われている。イヌのペニスは人間のサイズに近いため、こうした動物などが被害に遭う。また、近年の獣医学では動物であっても人間と同じような外傷性の精神障害が現れることが分かっている。
加害者と被害者の関係
親子
2017年に刑法第179条に「監護者わいせつ罪」と「監護者性交等罪」が新設され、警察がその行為についてだけで対応できるようになった。
配偶者
一般には配偶者に対して、身体的虐待をする例がよく知られている。だが日本では、性的虐待を受けているとされる配偶者としての女性は「女性に対する暴力調査」(1997年)では20.9%に上っている。その心理的苦痛にもかかわらず、妻という立場のためか社会的な認知は非常に受けづらい。輪姦や監禁などといった極端な例で逮捕される例こそあれ、一般には沈黙を強いられている場合が多い(なお、ドメスティック・バイオレンスの家庭で育った子供達は、その後の性被害率が高いことでも知られる)。
取引先
教師と学生
教師と生徒の性的関係はかつては事実上無視されていた。日本では21世紀に入って懲戒免職のような対応が進んでなされることになった。
聖職者と教区民
- 参照: カトリック教会の性的虐待事件
影響
レイプなどの性的虐待は、被害者にさまざまな影響が見られることが知られている。
- 虐待防止に取り組むアメリカのある団体[注釈 1]が1986年に行った調査によれば、抑うつ状態・自殺念慮・分裂性障害・多重人格障害などの精神衛生上の治療を受けている女性のうち、60%がレイプされた経験があるという(男性は36%)。
事例
- 1968年、ジョン・ゲイシーが、少年への性的虐待の罪で服役。
- 1973年、近親姦を強制され、子供を産まされ続けていた娘が父親を殺害した事件で、尊属殺重罰規定違憲判決が下る。
- 1980年、神奈川金属バット両親殺害事件発生。警察内部で、母親と息子の近親姦の発表議論がなされたという話が飛び交うが、警察はノーコメント。
- 1989年、東京で、少年達による残虐なレイプ殺人事件である女子高生コンクリート詰め殺人事件発生。またホラーマニアの男が幼女を次々に誘拐し、猥褻行為を行った後に殺害した東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件が発生。またこの事件の報道余波として、マスコミによるホラーマニア・オタクへのバッシングが発生。
- 1995年1月1日、妹や娘、母などとセックスしていたシリアルキラー、フレデリック・ウェストが刑務所で首吊り自殺。米兵による小学生に対するレイプ事件沖縄米兵少女暴行事件発生。障害者に対するレイプ事件・水戸事件発覚。
- 1996年 ベルギーで少女監禁レイプ殺人事件が起こり、6人が誘拐され、そのうちの4人が殺害され、生存はザビーヌ・ダルデンヌら2人のみ。リトル・ミス・コロラドに選ばれていた少女が性的暴行を受け殺害されたジョンベネ殺害事件が発生。
- 1997年 女性教師メアリー・ケイ・ルトーノーによる、教え子に対するレイプ事件発覚。彼女は2回妊娠し、2005年に少年と結婚した。
- 1999年 オーストラリアで、女性教師による性的暴行事件・クイーンズランド性的暴行事件発生。
- 2000年7月、奈良長女薬殺未遂事件が発覚。加害者が実の父に近親姦を行わされていたことを証言する。
- 2002年1月、ボストン・グローブ誌でカトリック教会の大規模な性的虐待を報道。被害を受けた人の多くが少年であった(カトリック教会の性的虐待事件)。2月、伊勢崎市同居女性餓死事件が発覚し、姉と弟の近親姦があったらしいと騒がれる。
- 2003年、男児に対しサディスティックな猥褻行為を行った後に殺害し補導されたが、当の補導された少年自身も性被害者であった長崎男児誘拐殺人事件が発生。
- 2004年2月、ジャニーズ事務所においてジャニー喜多川が所属男性タレントに対して性的虐待を行ったということを週刊誌が報道した件に対して、損害賠償を求めた訴訟で同性セクハラ行為に関しては名誉棄損にならないとした判決が確定。3月、高崎小1女児殺害事件発生。4月、アブグレイブ刑務所における捕虜虐待が発覚。11月、奈良小1女児殺害事件発生。アメリカではフロリダ性的暴行事件が発生。
- 2005年 タスマニア州で女性教師による連続レイプ事件オーストラリア連続少年暴行事件発生。南オーストラリア州ではリバーランド性的暴行事件発生。日本では男性が女性たちを性奴隷化した北海道・東京連続少女監禁事件発覚。11月、広島小1女児殺害事件発生。
- 2006年8月、女性保育士による性的暴行事件埼玉児童性的虐待事件発覚。10月、福岡中2いじめ自殺事件(ズボンを脱がそうとしたとして少年たちが送検された)。11月、新潟県神林村男子中学生自殺事件が発生。
- 2007年3月、和歌山少年暴行事件・尼崎小学生女児暴行事件が報道される。
脚注
注釈
出典
関連項目
- 少年への性的虐待 - 女性による性的虐待
- 兄弟姉妹間の虐待
- 近親相姦
- 機能不全家族
- 毒親
- 性的いじめ
- ドメスティックバイオレンス
- 婦女暴行
- 子供の性
- 急性ストレス障害
- PTSD - 複雑性PTSD
- 抑圧された記憶
- 虚偽記憶
- 保育園などでの性的虐待の可能性に対する社会的恐怖
- 悪魔的儀式虐待
- 女性護身術
- 集団
外部リンク
- JUST(日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン) - 性的虐待を受けた人々が沈黙を強いられないような活動をしている特定非営利活動法人。