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(概要: 英国キリスト教社会主義運動について、「白十字キリスト教社会主義研究会」の調査結果をもとに詳述。)
 
(ページの作成:「キリストきょうしゃかいしゅぎ christian socialism キリストの教えと精神に基づいて,社会主義的な共同社会を実…」)
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{{社会主義}}
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キリストきょうしゃかいしゅぎ
{{社会的キリスト教}}
 
'''キリスト教社会主義'''(キリストきょうしゃかいしゅぎ)は、[[キリスト教]]内における[[社会主義]]思想。[[宗教社会主義]]の一種である。広義では、[[解放の神学]]と[[社会的福音]]がこの部類に入る。
 
  
== 概要 ==
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christian socialism
19世紀の[[資本主義]]の広がりに対して、キリスト教の多くは[[ブルジョアジー]]と妥協しがちであったが、早くから資本主義の矛盾に気づき、特に[[産業革命]]以後の工場における[[労働者]]への非人間的待遇に目をむけた者がいた。
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キリストの教えと精神に基づいて,社会主義的な共同社会を実現しようという思想と運動。社会運動史的には 19世紀中期イギリスで産業資本主義の発達に伴う社会矛盾の進行に対して J.[[モーリス]],J.ルッドロー,国教会牧師 C.キングズリーらが提唱。種々の労働者生活改善事業を行なった。おもなキリスト教社会主義者として,日本では[[安部磯雄]],片山哲,賀川豊彦などがあげられる。また現代では,K.バルト,R.ニーバーなどが著名。
  
[[イギリス]]では[[F. D. モーリス]]、[[J. M. ラドロー]]、[[チャールズ・キングズリ|チャールズ・キングズリー]]などがキリスト者の社会的責任を強調した。1848年のパリ[[2月革命]]を経て、急進的な[[革命]]ではなく、「社会主義のキリスト教化」を標榜するとともに、現世を肯定的に捉える[[受肉の神学]]に基づくキリスト教社会主義運動を始めた。実質的な指導者であったモーリスは人間精神の内面を「掘る」ことを重視した結果、労働者のための教育に傾倒した。そのために、彼らのキリスト教社会主義運動は1854年頃に終焉する。しかしながら、労働者のためのシステムを「構築」することを目指したラドローは、[[協同組合]]を通じた[[社会改良]]を試みた。この流れは、19世紀末に至る系譜として、国際的な[[協同組合]]運動の根幹を成している。また、一旦は終焉を迎えたキリスト教社会主義運動ではあったが、1877年に[[スチュアート・ヘドラム]]が[[聖マタイ・ギルド]]を創設、その後、1880年代には[[チャールズ・ゴア]]率いる[[キリスト教社会連合]]が結成され、20世紀以降の[[イギリス国教会]]の中で確固たる思想的地位を確立することになった。
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[[社会主義]]
 
 
[[ドイツ]]では19世紀にヴィヘルム・エマニュエル・フォン・ケテラー(Wilhelm Emmanuel von Ketteler,1811-77)などの[[反ユダヤ主義#キリスト教社会運動|キリスト教社会運動]]があった<ref name="sak">[[#桜井 2010|桜井 2010]]</ref>。[[反ユダヤ主義]]で知られるウィーン市長でオーストリア・キリスト教社会党の[[カール・ルエーガー]]もキリスト教社会運動の影響を受けていた。[[アドルフ・ヒトラー]]はルエーガーの影響を受けていた。このほか、[[カール・バルト]]や[[パウル・ティリッヒ]]が[[プロテスタント]][[神学者]]の立場から社会主義を深めた。ティリッヒは[[国家社会主義ドイツ労働者党|ナチス]]を避けてアメリカに亡命した。[[ナチス左派]]の[[オットー・シュトラッサー]]の父ペーターはキリスト教社会主義者だった。
 
 
 
[[カトリック教会]]においては[[教皇|ローマ教皇]][[ピウス9世 (ローマ教皇)|ピウス9世]]が[[1864年]]にピウス9世が『[[誤謬表|近代主義者の謬説表:ピオ9世の数多くの訓話、回勅、書簡による大勅書(誤謬表)]]』を発し、信教の自由、自由主義神学、社会主義、共産主義、世俗法の教会法に対する優越などが過ちであるとされた。[[1891年]]、[[レオ13世_(ローマ教皇)|レオ13世]]が[[回勅]]『[[レールム・ノヴァールム]]』で旧来の職業組合が破壊され、労働者が残酷で無軌道な競争に翻弄されているとし、他方の社会主義は富裕層を憎悪するよう貧困層を駆り立てるところが過ちであると批判した<ref name="ito"/>。回勅では、国家が分配的正義を適用して労働階級を守るべきであり、労働組合によって貧困を軽減すべきであるとされた<ref name="ito"/>。
 
 
 
[[アメリカ合衆国]]では[[ドロシー・ディ]]、[[マーティン・ルーサー・キング・ジュニア]]、[[コーネル・ウェスト]]がいる。[[ラインホルド・ニーバー]]は第二次世界大戦前には[[社会的福音]]を説いて[[アメリカ社会党]]を指導したが、戦後はキリスト教的リアリズムから[[反共主義]]となった。カナダでは[[トミー・ダグラス]]が、ブラジルには[[レオナルド・ボフ]]が、[[エクアドル]]には[[ラファエル・コレア]]、
 
などがいる。
 
 
 
日本では[[安部磯雄]]、[[村井知至]]、[[河上清]]、[[賀川豊彦]]、[[中島重]]、[[田中一]]、[[石川三四郎]]、[[九津見房子]]、[[片山哲]]がいる。
 
 
 
 
 
現在、キリスト教社会主義(キリスト教のみならず[[宗教社会主義]]全般を含む)の国際組織として{{仮リンク|宗教社会主義国際連盟|en|International League of Religious Socialists}}があり、[[社会主義インターナショナル]]の協力組織となっている。
 
 
 
== カトリック社会主義(社会的カトリシズム) ==
 
[[フランス]]の[[カトリック]]では19世紀後半にカトリック社会主義(socialisme catholique)という用語があった<ref name="ito">[[#伊達 2013|伊達 2013]]</ref>。しかし、「社会主義」が忌避されるようになり、社会的カトリシズム(catholicisme social)と言い換えられるようになった<ref name="ito"/>。このほか、当時のフランスではプロテスタントの活動を指す社会的キリスト教(christianisme social)という用語もあった<ref name="ito"/>。
 
 
 
カトリックと自由主義の協力を主張した[[フェリシテ・ド・ラムネー]]に対して、[[教皇]][[グレゴリウス16世 (ローマ教皇)|グレゴリウス16世]]は[[1932年]]の回勅『ミラリ・ヴォス』で破門を宣告した<ref name="sak"/>。ラムネー以外にもラコルデール、モンタランベール、マルク・サンニエなど自由主義的カトリシズムがあるが、フランスの社会的カトリシズムの主流は[[王党派]]のアルベール・ドマンやラトゥール・デュパンなどで、[[反革命]]、反個人主義、[[反資本主義]]の立場であった<ref name="ito"/>。
 
 
 
== 理念 ==
 
{{出典の明記|date=2018年1月|section=1}}
 
* 「隣人を自分自身のように愛しなさい」という[[レビ記]]の19章18節と、「人にしてもらいたいと思うことはなんでも、あなたがたも人にしなさい」という[[マタイによる福音書]]の7章12節を、キリスト教徒としての行動原理とする。
 
* [[格差社会|格差問題]]や、経済的不均衡による社会的疎外階層と貧困階層問題を解決するための、[[神学]]的模索と宣教的実践を追い求めなければならない。
 
* 経済的疎外と貧困問題が個人の問題ではなく、社会的な問題である事を認識して、その解決を個人の決断にのみ頼るのではなく、共同体的関心と社会的責任の2つによって成り立たなければならない。
 
* 創意的生産を促進させる個人の自由と自律を土台にした[[市場原理主義]]の競争を認めるが、[[自由主義|自由]]と[[完全競争|競争]]が少数が市場を[[独占]]するといった問題の原因にならないように牽制しなければならない。
 
* 分配と参加を通じて、平等と均衡的分配が成り立たなければならない。
 
* 生産と分配の物質的土台と手段が、個人や国家または特定の集団の独占所有物になることを警戒して、すべての物質の所有権は神にあり、人間は神の思惑通りに物質を管理しなければならない。
 
* [[唯物論]]と[[唯心論]]を二者択一の観点では見ずに、宗教的覚醒と訓練を通じて精神と物質、魂と肉身の調和の成り立った人々が、生産と分配の調和を成して、人類平和共同体を具現する。
 
 
 
== 共産主義とキリスト教社会主義 ==
 
現代的な意味でのキリスト教社会主義とは異なるが、[[カール・マルクス|マルクス]]は[[共産党宣言]]の中で「キリスト教社会主義」に言及しており、キリスト教の主張が社会主義的であることを指摘した上で、キリスト教社会主義は貴族階級の不満を聖化するための聖水に過ぎないとしている。[[フリードリヒ・エンゲルス|エンゲルス]]は初期の著作で、「イギリスはある階級が社会のどん底にあればあるほど、無教養であればあるほど、ますます多くの未来をもつという奇妙な事実を示している。これはあらゆる革命期の特徴である。特にこれはキリスト教を生み出した宗教革命の際に示された通りだ。幸いなるかな、貧しき者よ」と述べている。
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
 
 
=== 注釈 ===
 
{{Reflist|group="*"}}
 
 
 
=== 出典 ===
 
{{Reflist}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
*{{Cite journal |和書 |author = 桜井健吾 |title = 近代ドイツのカトリック社会運動の歴史的前提|date = 2010 |publisher = 滋賀大学経済学会 |journal = 彦根論叢 |volume = 386 |issue = |naid = |pages = |ref = 桜井 2010}}
 
*{{Cite journal |和書 |author = 伊達聖伸 |title = 「2つのフランスの争い」のなかの社会的カトリシズム ―マルク・サンニエ「シヨン」の軌跡 1894 ~ 1910―|date = 2013-02-28 |publisher = 上智大学 |journal = 上智ヨーロッパ研究 |volume = 5|issue =20 |naid = 110009552495 |pages = |ref = 伊達 2013}}
 
 
 
== 文献案内 ==
 
*[[谷川稔]]「二月革命とカトリシズム」[[阪上孝]]編『1848 国家装置と民衆』ミネルヴァ書房、1985年
 
*[[河野健二]]編『資料フランス初期社会主義――二月革命とその思想』平凡社、1979 年。
 
 
 
== 関連項目 ==
 
* [[宗教社会主義]]
 
* [[宗教左派]]
 
* [[反ユダヤ主義#キリスト教社会運動|キリスト教社会運動]]
 
* [[キリスト教共産主義]]
 
 
 
== 外部リンク ==
 
*[http://www.yukinoshita.or.jp/original/history26.htm キリスト教と社会主義](キリスト教史を学ぶ会)
 
 
 
{{キリスト教と政治}}
 
 
 
{{christ-stub}}
 
{{Poli-stub}}
 
{{DEFAULTSORT: きりすときようしやかいしゆき}}
 
[[Category:キリスト教社会主義|*]]
 
[[Category:キリスト教関連の思想|しやかいしゆき]]
 
[[Category:社会主義]]
 
[[Category:社会主義の歴史]]
 

2018/7/31/ (火) 20:33時点における版

キリストきょうしゃかいしゅぎ

christian socialism

キリストの教えと精神に基づいて,社会主義的な共同社会を実現しようという思想と運動。社会運動史的には 19世紀中期イギリスで産業資本主義の発達に伴う社会矛盾の進行に対して J.モーリス,J.ルッドロー,国教会牧師 C.キングズリーらが提唱。種々の労働者生活改善事業を行なった。おもなキリスト教社会主義者として,日本では安部磯雄,片山哲,賀川豊彦などがあげられる。また現代では,K.バルト,R.ニーバーなどが著名。

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