リバーシブルレーン
リバーシブルレーン(可逆車線、英: Reversible Lane)は、渋滞緩和のため全幅3車線以上の道路において中央線(センターライン)の位置を時間帯によってずらし、交通量が特に多い方向の車線を特定の時間帯のみ増やす交通規制のことで、中央線変移(中央車線変移)と称される(バスレーン規制とセットで実施されることもある)。
しかし、正面衝突の危険性(現実に事故は多く発生している)や、運転者にとっては速度を出す道路中央寄り通行帯が時間によって対向車線になったり、自動車や二段階右折対象外の原付が右折する時に通るべき車線を間違えるなど、現地の道路事情に通じていないと危険である。日本ではそれほど普及していない。
Contents
設備
リバーシブルレーン区間の前後と区間内には次のような設備が備わっていることが多い。これらは主に警察の交通管制センターで遠隔制御される。
可変標識板
通行できる車線とセンターラインの位置を表示する。通行できる車線は主に矢印と進入禁止、または○と×で表示される(×印標示はメーカーにより点滅と点灯の二通りある)。メーカーは主に小糸工業(×印は常時点灯)・三工社(×印は常時点滅)、名古屋電機工業の3社体制である。また、通行できない車線に信号機の灯火器を利用して「赤い×」の表示をさせる場合もある。
道路鋲
路面にランプを埋め込み、明滅させることでセンターラインとする。道路標識、区画線及び道路標示に関する命令別表第6の「中央線 (205)」によると、「三 道路の中央以外の部分を道路の中央として指定するとき」の「(ニ)日又は時間を限って指定するとき」に該当し、「標示筒、標示さく又は黄色の灯火のついている道路鋲」により標示される。ただし、同命令では標示の設置区間の基準については同別表第5の「道路の中央を示す必要がある道路の区間」としか規定されていない。危険防止のためには、規制対象の全区間を灯火道路鋲により標示すべきであるが、実態としては、主要交差点等の付近だけに灯火道路鋲を設置している場合が殆どである。
実施している日本の主な道路
- 国道36号(札幌市清田区里塚2条7丁目交差点 - 北広島市大曲並木1丁目交差点間・午前7時 - 9時は千歳方面が3車線、それ以外の時間帯は札幌方面が3車線)
- 盛岡市道上田深沢線(盛岡市緑が丘二丁目・岩手県営野球場西口T字路 - 高松二丁目十字路間・月曜日 - 土曜日午前7時 - 9時は往復4車線のうち南行き片側3車線・北行き片側1車線、それ以外の時間帯は南北両方向いずれも片側2車線。東黒石野・四十四田ダム東口十字路 - 高松四丁目Y字路間では同時間帯に南行き車線におけるバス専用レーン規制と車両駐停車禁止規制を同時実施)
- 東京都道・神奈川県道2号東京丸子横浜線(中原街道:品川区首都高速2号目黒線荏原出入口 - 星薬大前付近 - 品川区荏原警察署前付近・ラッシュ時は北行きが3車線・南行きは1車線)
- 東京都道・千葉県道10号東京浦安線(永代通り:中央区新川 - 江東区佐賀・永代橋・通常時は都心方面が3車線、夕方から夜間に葛西方面を1車線増)
- 東京都道315号御徒町小岩線(蔵前橋通り:江東区亀戸付近・朝ラッシュ時は都心方面が3車線、小岩方面は1車線)
- 新潟市道曽和インター信濃町線(旧国道116号) 新潟市西区五十嵐一交差点 - 中央区昭和町交差点間の3車線区間)
- 新潟県道16号新潟亀田内野線(新潟市中央区関新一丁目交差点 - 西区青山道下交差点間)
- 国道1号(静岡市駿河区南安倍交差点 - 手越原交差点・駿河大橋上・午前は上りが2車線、午後は下りが2車線)
- 愛知県道222号緑瑞穂線(名古屋市緑区及び南区内の3車線区間)
- 犀川大通り(金沢市菊川2丁目交差点 - 鱗町交差点間・通常片側2車線の走行車線を、朝の通勤時(午前7時 - 9時)は市内流入を3車線、流出を1車線(土・日・祝日を除く))
- 滋賀県道558号高島大津線(旧国道161号。大津市柳が崎交差点 - 大津港口交差点間・通常は北行き2車線、南行き1車線。通勤時間帯に北行きが1車線、南行きが2車線になる)
- 福岡県道31号福岡筑紫野線(福岡外環状道路交点 - 宝町交差点手前の3車線区間・午前7時 - 9時は北行き2車線、南行き1車線)
- 国道210号(大分市大道トンネル付近・朝は市街地方面行きが片側3車線、逆方向が片側1車線となる)
- 国道330号(那覇市古波蔵交差点 - 旭町ハーバービュー通り入口の旧国道329号・午前7時30分 - 9時は西行き3車線、東行き1車線)
- 国道507号(那覇市国場交差点 - 古波蔵交差点の旧国道329号・午前7時30分 - 9時は西行き3車線、東行き1車線)
- 沖縄県道29号那覇北中城線(那覇市安里交差点 - 松川三叉路・午前6時 - 午後5時30分は西行き、午後5時30分 - 翌日午前6時は東行きがそれぞれ1車線増)
かつて実施されていた道路
- 秋田県道28号秋田岩見船岡線(秋田市手形蛇野 - 脳血管研究センター前・午前0時 - 正午は秋田駅方面を、正午 - 翌日午前0時は手形方面をそれぞれ1車線増) → 秋田中央道路開通に伴う交通量の減少により廃止
- 岩手県道・秋田県道1号盛岡横手線(盛岡市夕顔瀬橋・朝に東行きを1車線増) → 橋梁架け替えに伴い1991年をもって廃止
- 宮城県道22号仙台泉線(仙台市泉区八乙女 - 青葉区昭和町・朝は南行き1車線増、夕方は北行き1車線増) → 電線共同溝工事に伴う片側3車線化により廃止
- 宮城県道137号荒浜原町線(仙台市宮城野区の宮城野陸橋において午前は東行きを、午後は西行きをそれぞれ1車線増) → 片側2車線の新橋架け替えに伴い廃止
- 国道286号広瀬河畔通り(旧国道4号。仙台市太白区根岸町・宮城県道273号仙台名取線分岐点 - 青葉区土樋までの愛宕大橋区間・片側3車線のうち、午前7時から10時まで仙台駅方面の北行きを1車線増、長町方面の南行きを1車線減) → 時代の流れによる交通変化(仙台市地下鉄東西線開業に伴う交通量減少など)により、2016年3月21日をもって24時間上下3車線通行に固定に伴い廃止[1][注 1]
- 金華橋通り(岐阜市メモリアルセンター西交差点 北 - 裁判所前交差点・朝に南行きを1車線増) → 2011年10月11日から社会実験で運用を取りやめ、2013年4月1日を以て正式に運用終了[2]
- 国道161号(現滋賀県道558号 大津市自衛隊北交差点 - 柳が崎交差点間 運用は上記の県道558号と同様) → 県道になる前の2016年1月18日に廃止 残部は上記の通り現在も運用中
- 京都府道143号四ノ宮四ツ塚線(京都市山科区の蹴上 - 日ノ岡において午後5時 - 7時までの間は蹴上方面を、それ以外の時間は日ノ岡方面をそれぞれ1車線増) → 京阪京津線廃止(地下線切替)後の道路拡幅で片側2車線化により廃止
- 国道31号(安芸郡坂町 - 呉市天応町の2区間・午前は広島方面、午後は呉方面にそれぞれ1車線増) → 広島呉道路開通に伴い1996年廃止
- 国道54号[注 2](広島市西区三篠 - 安佐南区中須) → 並行する祇園新道の6車線化により1994年廃止
- 宮島街道(国道2号および広島市道。広島市西区己斐 - 草津にかけての4車線区間・朝に東行きを1車線増)。 → 2014年3月に広島南道路が開通したことにより、2014年4月に廃止[3][4]
- 国道202号(福岡市中央区警固交差点 - 西区福重交差点・東行きを朝1車線増) → 福岡市地下鉄七隈線工事開始に伴い廃止
- 福岡市内城南線の一部区間(中央区薬院大通交差点手前 - 早良区西新4丁目交差点手前・東行きを朝1車線増) → 六本松以東区間については福岡市地下鉄七隈線工事開始に伴い廃止。それ以外の区間については交差点改良や交通状況により別時期に廃止
- 沖縄県道29号那覇北中城線(那覇市泊高橋交差点 - 安里三叉路・午前6時 - 午後5時30分は西行き、午後5時30分 - 翌日午前6時は東行きがそれぞれ1車線増)[5]
時間一方通行規制
時間一方通行規制(じかんいっぽうつうこうきせい)は、対面通行の道路を時間帯により一方通行に規制して、交通量がより多い方向への一方通行とする交通規制のことである。
なお、ラッシュ時間帯の住宅街への車両流入を防止するための車両通行禁止規制とは異なる。
運転者にとっては標識を確実に順守する必要がある。正面衝突の危険性(現実に事故は多く発生している)や、一方通行の時間帯に自動車や二段階右折対象外原付が右折する時は、道路中央ではなく道路右端に寄る必要があるなど、現地の道路事情に通じていないと危険なため、日本では道路整備の進行に伴い規制を廃止する流れにある。
脚注
注釈
出典
- ↑ 宮城県警交通規制課 愛宕大橋交差点から根岸交差点までの交通規制を下記のとおり変更しますので、ご理解とご協力をお願いします
- ↑ 金華橋通りの中央線変移規制廃止のお知らせ 岐阜県警
- ↑ “「中央線変移」廃止へ 広島”. 中国新聞 (中国新聞社). (2013年4月7日). オリジナルの2013年4月10日時点によるアーカイブ。
- ↑ “中央線変移規制の廃止のお知らせ” (プレスリリース), 広島県警察, (2014年3月28日), オリジナルの2014年5月18日時点によるアーカイブ。 . 2014閲覧.
- ↑ 沖縄県警察|交通情報|県道29号線(安里~泊)の中央線変移の廃止について
関連項目
- PTPS(公共車輌優先システム)
- ゾーンバス
- バスロケーションシステム
- バリアトランスファーマシン - 米国の中央分離帯の移動車両