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航空機(こうくうき、aircraft[1])は、大気中を飛行する機械の総称である[2]。
Contents
概要
「軽航空機」(気球、飛行船等々)と「重航空機」(グライダー、飛行機等々)に大別される[1][2]。軽航空機とは、空気よりも軽い気体が静浮力を持っていることを利用するものであり、重航空機とは翼に働く空気の動的揚力を利用するものである[1]。飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船などが含まれる。
航空機は、船舶と同じように国籍が登録され、常に登録番号を掲示することが求められる[1]。これにより、その航空機に対する管轄権や外交的保護権がどこにあるのかが識別されている[1]。
法令上の定義
航空機には法令上、さまざまな目的でさまざまな定義が与えられる。以下では、航空行政の観点による代表的な定義を例示する。
- ICAOによる定義
- シカゴ条約(国際民間航空条約)には航空機についての一般的な定義が置かれていないが、国際民間航空機関(ICAO)の定める同条約附属書のいくつかにおいては、「大気中における支持力を、地球の表面に対する空気の反作用以外の空気の反作用から得ることができる一切の機器」[3]としている。なお、「地球の表面に対する空気の反作用以外の」との文言は1967年11月6日に追加されたものであり、これによりホバークラフトは除外されることになる。
- 米国の航空行政上の定義
- 米国の合衆国法典第49編第VII準編Part A(航空通商及び安全)においては「any contrivance invented, used, or designed to navigate, or fly in, the air(空中を航行し、または飛ぶために考案され、使用され、または設計された一切の仕掛け)」と定義されている(49 USC §40102(a)(6))。他方で、連邦規則集第14編第1章(運輸省連邦航空局)においては「a device that is used or intended to be used for flight in the air(空中の飛行のために使用され、または使用されることを意図された装置)」と定義されている(14 CFR §1.1)。
- 日本の航空行政上の定義
- 日本の航空法では「人が乗つて航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機及び飛行船その他政令で定める航空の用に供することができる機器」とされ(航空法2条1項)、該当する政令の定めはない。気球、無人航空機(航空法2条22項)、ロケットなどは航空機に含まれない[1]。
航空機の分類
航空機は、平均の密度が空気より軽い軽航空機と、空気より重い重航空機の2つに大分される。また、航空機の運用者や運用目的などにもとづいて「民間機」と「軍用機」に分類されたり、操縦者を含めた人員を乗せるか否かで「有人機」と「無人機(無人航空機)」、エンジンにより『タービン』と『ピストン』に分類されたりする。
原理別
軽航空機
体積の大きな「気のう(風船のようなもの)」に、水素やヘリウム、加熱した空気といった、大気より軽い気体を充填することで、機体の平均比重を空気より軽くし、浮力(静的揚力)により飛行する航空機のこと。LTA(Lighter-Than-Air)機あるいはエアロスタット(aerostat)とも。
- 軽飛行船
- 軽航空機の中で推進装置を持ち、操縦可能なもの。硬い骨組み構造を持つ硬式飛行船(ツェッペリンなど)と、骨組みをもたない軟式飛行船がある。
- 気球
- 軽航空機の中で推進装置をもたないもの。バーナーなどで熱した空気を利用する熱気球と、水素やヘリウムなどを使用するガス気球がある。
重航空機
翼周りの大気の流れによって生じる揚力(動的揚力)によって浮き、飛行する航空機のこと。翼のタイプにより固定翼機と回転翼機に分けられる。HTA(Heavier-Than-Air)機あるいはエアロダイン(aerodyne)とも。
- 垂直離着陸機
- ヘリコプターのように垂直に離着陸が可能な飛行機。ジェット機ではエンジンノズルを下方に向けるものや、垂直離着陸用のリフトエンジンを推進用とは別に装備しているものなどある。ローターを傾けることで垂直離着陸をするティルトローター機などは、回転翼機の特徴も併せ持つ。また、垂直には離陸できないものの短距離離陸垂直着陸機(STOVL)と呼ばれるものも存在する。
- 回転翼機
- 回転する翼(ローター)により揚力を発生させ、これにより空中に浮ぶ航空機。
- 揚力によらない重航空機
飛行機は主に離着陸方法により分類した、分類の一例。
航空機 | 軽航空機 | 動力無し | 気球 | 熱気球 |
ガス気球 | ||||
動力あり | 軽飛行船 | 軟式飛行船 | ||
半硬式飛行船 | ||||
硬式飛行船 | ||||
重航空機 | 動力無し | 凧 | ||
滑空機(グライダー) | 滑空機 | |||
動力滑空機 (モーターグライダー) | ||||
動力あり | ハイブリッド飛行船 (重飛行船) | |||
固定翼機・可変翼機 (飛行機) |
垂直離着陸機 (運用の違いで同じ機体でもVTOL、STOVL、V/STOLに分けられる) |
推力偏向式 | ||
リフトエンジン形式 | ||||
ティルトローター機 | ||||
ティルトジェット | ||||
ティルトウイング機 | ||||
テイルシッター (コレオプター含む) | ||||
短距離離着陸機(STOL機) | ||||
通常離着陸機(CTOL機) | ||||
CATOBAR機 (カタパルト補助離陸・拘束着艦機) | ||||
短距離離陸拘束着艦機(STOBAR機) | ||||
回転翼機 | ヘリコプター | シングルローター式 | テールローター | |
ノーター | ||||
フェネストロン (ファンテイル) | ||||
ツインローター式 | 同軸反転ローター式 | |||
タンデムローター式 | ||||
サイドバイサイドローター式 | ||||
交差反転式ローター | ||||
マルチローター式 (マルチコプター) |
トライコプター | |||
クアッドコプター | ||||
ヘキサコプター | ||||
オクトコプター | ||||
複合ヘリコプター | ||||
オートジャイロ | ||||
オーニソプター (羽ばたき機) | ||||
ロケット | 化学ロケット | 固体燃料ロケット | ||
液体燃料ロケット | ||||
ハイブリッドロケット | ||||
電気推進 | 静電加速型 | |||
電熱加速型 | ||||
電磁加速型 | ||||
原子力推進 | 原子力蒸気機関 | |||
原子力電気推進 | ||||
核熱ロケット | ||||
核パルス推進 | 核分裂パルス推進 | |||
核融合パルス推進 | ||||
核融合ロケット | ||||
水ロケット (ペットボトルロケット) |
用途別
航空機の運用者や運用目的などにもとづいて「民間機」と「軍用機」に分類される。
工学
航空機に関する工学を航空工学と言う。近年では、何かと重なる領域の多い宇宙工学と並び、航空宇宙工学の一部門と見なされている。
歴史
人類は古くから空を飛ぶことにあこがれを持っており、さまざまな飛行機械の構想が立てられたものの、実際にはじめて空を飛ぶ機械が発明されたのは1783年のことだった。フランスのモンゴルフィエ兄弟がこの年熱気球を発明した。しかしこれは空中を自在に動くというわけにはいかず、その後も動力によって空中を飛行する機械の開発は進められた。1903年にはアメリカ合衆国のライト兄弟が動力によって飛行する、いわゆる飛行機を発明し、以後航空機は急速に発達した。
船舶との関係
航空関係の法律、用語、習慣などには、船舶が由来となっているものも多い。例えば、下記のような例が挙げられる。
- (旅客機の場合)機体を「シップ(ship)」と呼ぶ[6]。
- 英語では指揮者を「キャプテン(captain)」と呼ぶ。(ただし、日本語では航空機では機長、船舶では船長)
- 機体左側を「ポートサイド(port side)」、機体右側を「スターボードサイド(starboard side)」と呼ぶ。
- 空中では海上と同じく右側通行。スターボード艇優先の原則を元にしたルールがあり、左舷に赤色、右舷に緑色の灯火を掲げる。
- 乗務員は「クルー(crew)」になぞらえ「エアクルー(air crew)と呼ぶ。
- 発着場所を 「 空"港"(air"port")」と呼ぶ。基本的には船舶と同じくポートサイドから乗り降りする。
- 用船契約と類似した航空機リースが行われる。
航空機と船舶を両方製造しているメーカーは川崎重工業(1918年から)、サード(2015年に参入開始)、ツネイシホールディングス(2015年に航空機メーカーを買収)などごく少数である。
陸上の滑走路に離着陸できる水陸両用機は基本的に航空機として扱われる。
航空産業
航空機は認定を受けた部品のみを使用し基本的に受注生産であるため、小型機であっても引き渡しまでに時間がかかり非常に高価である。このため中古市場が発達しており、事故機であっても機械的な寿命が残っている限り資産価値がある。また部品単位での販売も盛んで、生産が終了した機体の補修部品やアップグレードパーツを開発・販売する業者も多い。
大型旅客機の売買は航空会社の財務に大きく影響するため、メーカーと航空会社の間に入る航空機リース専門の会社がある。契約には確約の他にも追加購入を一時的に契約し、財務や需要に合わせて確定するなど独特のスタイルがある。
航空機は保守や運用にも多額の費用がかかり、資格を持った専門家が多数必要であるため、航空機を開発するメーカー以外にも各分野の専門会社により航空産業が形成されている。
安全性と事故
- 飛行性 - 飛行試験における指標の1つ。
- 運輸安全委員会(2008年10月に航空・鉄道事故調査委員会から改組)
- 空間識失調 - 操縦者が空間を客観的に把握できなくなる症状。
脚注
関連項目
外部リンク
- 財団法人 日本航空機開発協会 民間航空機の開発、製造、需要予想などの調査研究
- airliners.net(英語)