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フィリピン海プレート(フィリピンかいプレート、英: Philippne Sea Plate)は、東は小笠原海溝やマリアナ海溝、北から西にかけては南海トラフ・琉球海溝・ルソン海溝・フィリピン海溝などに囲まれた海洋プレートである。
太平洋の北西部をしめるフィリピン海が主な領域。伊豆諸島・小笠原諸島・マリアナ諸島・ヤップ島・パラオと連なる島孤のほか、大東諸島、ルソン島の一部がこのプレート上にある。また、本州の中でも唯一伊豆半島だけがフィリピン海プレート上にある。
概要
フィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込む事で、海溝型地震である東海地震(南関東~東海)、東南海地震(東海~南紀)、南海地震(南紀~四国)が起きる。1923年の関東大震災をもたらした大正関東地震も、フィリピン海プレートが北アメリカプレートに沈み込む運動に伴う地震である。東海地震は静岡県の沖合、関東地震は神奈川県・千葉県の沖合が震源域となりうる巨大地震であり、防災上の重要性が高い。また、関東地方の地下には北アメリカ、フィリピン海、太平洋の3つのプレートが存在しており、このように2重にプレート間地震のリスクのある地域は世界的にも少ない(他はカムチャツカ半島など)が、近傍の関東南西部~東海地方東部ではユーラシアプレート・フィリピン海プレート・北米プレートが重なっているため、実質的には4プレートの間に地震のリスクが存在することになる。日本の関東地方は世界有数の政治的・経済的な先進地域でもあるため、大規模地震が直下で起こった時の影響は計り知れない。
伊豆半島と本州との衝突(プレート同士の衝突)は現在も続いている。丹沢山地は、フィリピン海プレート(伊豆半島)の北アメリカプレートへの衝突付加に伴う隆起によって形成された地形であり、現在の衝突の現場が神縄断層である。その露頭が、静岡県小山町付近などで見られる。伊豆付近では地殻の浮揚性が高く、北西-南東走向の横ずれ断層が発達している他、この割れ目に沿って形成されたと考えられる火山群(伊豆東部火山群)がある。箱根火山、富士山などはこの伊豆孤の衝突の影響を受けている。また、このプレートの変形の影響を受けて、伊豆東方沖から小田原付近に西相模湾断裂と呼ばれるプレートの断裂帯があるとする学説もあるが、異論もある。
東京大学と防災科学技術研究所の研究グループは、2010年7月、フィリピン海プレートが、紀伊半島の西端から淡路島中部を通って鳥取市近辺へと至る地域の地下で、プレートが裂けている可能性が高いことを発表した。断裂の結果、近畿地方の下はプレートが深く沈み込み、支えのない状態になっている[1][2]。
形成史
約5200万年前にフィリピン海プレートと太平洋プレートの収束型境界である伊豆・小笠原・マリアナ海溝が形成されたことによって誕生したプレート。現存する地表の大部分は誕生以後に形成されたマントルプルーム・背弧海盆運動による海洋性地殻で、島弧の他は白亜紀に形成された花東海盆や大東海嶺群がこの例外となっている。 約5000万年前にマントルプルーム運動によって西フィリピン海盆が形成を開始し、プレートが拡大し始めた。約4900万年前にはボニライトマグマの噴出を最初として太平洋プレートの沈み込みに伴う火成活動が開始した。約4500万年前には太平洋スラブが地下深部に到達し、島弧として九州・パラオ海嶺が形成、西フィリピン海盆が引き続き活動し拡大した。約3000万年前に新たに前弧側でリフトが形成され始め、四国-パレスベラ海盆・伊豆・小笠原・マリアナ島弧の形成が開始した。この背弧リフトの拡大約1500万年前に停止した。約2000万年前に太平洋プレートと接していたプレート北端が古琉球弧の海溝に沈み込み、ユーラシアプレートとの境界に変わった(南海トラフ・琉球海溝)。また、同時期にマニラ海溝の沈み込みが開始した。約600万年前からIBM弧では再びリフトの活動が再開し、マリアナトラフが形成され、西マリアナ海嶺とマリアナ海嶺が分裂した。約500万年前にパラワン島弧のマニラ海溝への衝突やモルッカ海衝突帯の形成、フィリピン海溝の沈み込みが開始した。また、マニラ海溝では台湾地塊が衝突し、急激な隆起が開始した[3]。プレート北端では1200万年前よりIBM島弧の北アメリカプレートへの衝突が開始しており、約500万年前に丹沢地塊、約100万年前に伊豆地塊が衝突している[4]。
これらの活動によってフィリピン海プレートは誕生時の5200万年前と比較すると、面積が拡大しつつ、90°時計回りに回転しながら北に移動した[3]。
位置関係と地質
東縁や南縁は伊豆・小笠原海溝やマリアナ海溝・ヤップ海溝であり、南東方向から年間3 - 4cmの速度で太平洋プレートが沈み込んでいる。この沈み込み運動により火山帯であるマリアナ諸島や小笠原諸島、伊豆諸島が生じたと考えられており、現在も活発に活動している。この火山帯は伊豆半島まで続いていて、活発な火山活動により伊豆地塊は密度が低い(軽い)ため、伊豆半島はフィリピン海プレート上に乗ったまま沈み込めずに、丹沢山地や富士山(フォッサマグナ、北アメリカプレート)あるいは赤石山脈(ユーラシアプレート)に激しく衝突して地形を隆起させている。
伊豆半島付近だけは陸で衝突が起こっているが、その東側の相模湾・房総南方沖では相模トラフを介して北アメリカプレートの下に沈み込んでいる。相模トラフの東端は太平洋プレートと重なり、世界的にも数少ないT-T-T型トリプルジャンクションとなっている[5]。一方西側の駿河湾以西でも、駿河トラフや南海トラフを介してユーラシアプレートの下に沈み込んでいる。更に西側には琉球海溝があり、この付近ではフィリピン海プレートの沈み込みによって沖縄トラフと呼ばれる背弧海盆が拡大しており、南西諸島を東シナ海の大陸棚から少しずつ引き離している。背弧海盆はマリアナ諸島の東側でも活動している。
琉球海溝の西端である台湾付近からルソン島北西沖では、逆にユーラシアプレートがフィリピン海プレートの下に沈み込むという複雑な構造となっている。台湾付近では沈み込むというよりも、ユーラシアプレートの上に乗り上げる形で激しく衝突し台湾山脈を形成している。台湾の南に続くルソン島北西沖ではマニラ海溝を介してユーラシアプレートが西から沈み込んでいる。しかし、マニラ海溝は比較的短く、南に続くズールー海溝・コタバト海溝、トランスフォーム断層であるフィリピン断層系、フィリピン海プレートが東から沈み込むフィリピン海溝と、幅の広い変動帯に移行する。フィリピン海溝の南に続くモルッカ海付近では更に複雑な構造となり、モルッカ海衝突帯からモルッカ海プレートがハルマヘラ島側とスラウェシ島側の両側に沈み込みんでいる。ハルマヘラ島付近から東西走向の左横ずれ断層を複数介して、ニューギニア海溝へ、そこからパラオ付近まで北に伸び発散型境界であるアユトラフ、そしてヤップ海溝へと連なる。
脚注
- ↑ 日本経済新聞 2010年7月9日
- ↑ 日本地震学会ニュースレター VOL.22 No.5 表紙 日本地震学会、2010年1月10日発行。
- ↑ 3.0 3.1 Wu et al. (2016). “Philippine Sea and East Asian plate tectonics since 52 Ma constrained by new subducted slab reconstruction methods”. Journal of Geophysical Research 121 (6): 4670-4741. doi:10.1002/2016JB012923 . 2017閲覧..
- ↑ 天野一男; 松原典孝; 田切美智雄 (2007). “富士山の基盤:丹沢山地の地質 -衝突付加した古海洋性島弧-” (PDF). 富士火山: 59-68 . 2017閲覧..
- ↑ 「関東・伊豆小笠原」, 貝塚ほか, 東京大学出版会 (2000), p.6
参考文献
- 伊豆半島をめぐる現在の地学的状況 小山真人、伊豆半島の火山―その生い立ち・現在・未来
- 「伊豆の衝突と神奈川県西部の地震・火山テクトニクス」講演要旨集 石橋克彦
- 台湾の地質構造
- 地学II 2-2-2 日本列島の歴史 啓林館
関連項目
外部リンク
- 丹沢皆瀬川フィールドワーク(神奈川県立生命の星・地球博物館主催観察会) - 神縄断層の写真と解説