Google ブックス

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Google ブックス
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URL
日本語版トップページ
https://books.google.co.jp/
タイプ 電子図書館・書籍全文検索
項目数 全文表示100万冊以上、限定表示100万冊以上[1]、スキャン済み1200万冊以上[2]
閲覧 無料
登録 不要
運営元 Google
営利性 あり
設立 2003年12月
現状 コンテンツ数増加中

Google ブックス(英名:Google Books)とは、世界最大のインターネット企業Googleが、ポータルサイトGoogle内で提供している、書籍の全文検索サービスである。

書籍内の全文を対象に検索を行なうことができ、検索結果として表示された書籍の内容の一部(著作権切れの書籍であれば全ページ)が無料で表示される。検索・表示されるデータはGoogle社が紙製の書籍からスキャンしたもの。

著作権の保護期間が満了した書籍は、全文が公開されている。この場合 Googleブックスは電子図書館として機能する。これに対し、著作権保護期間が存続している書籍は、書籍の一部がプレビュー表示され、同時に書籍販売サイトへのリンクが表示される。この場合Googleブックスは広告・販売促進サイトとして機能する。

歴史

Google ブックスはGoogle Print(グーグル・プリント)というプロジェクト名で[3]、2003年12月に計画が発表された。そこから一年弱のベータテスト期間を経て、2004年10月7日、世界最大の書籍見本市フランクフルト・ブックフェアの開催期間中に本格運用の開始を公表[4]、サイトの本格運用を開始した。しかし Print (印刷)という言葉から「書籍データを勝手に印刷できるようにするサービス」といった印象を与え、出版業界からの反発も少なくなかったことがあり、2005年11月17日にサービス名を Google Book Searchと改名することを発表した[5]。 その後、よりシンプルに Google Books へと改名した。ちなみにGoogle print 時代に使われていたアドレスは http://print.google.com で、このアドレスは現在Google ブックスにリダイレクトされている。

2012年3月にGoogle Play Booksがサービス開始し、同年9月25日に、日本向けのGoogle Play ブックスがサービス開始した[6]。Google Play ブックスは、AndroidiOS向けの電子書籍サービス。Google Play ブックスのストアから電子書籍を購入できる。購入した書籍はGoogle Play ブックスのアプリビューアで開き、スワイプでページをめくり、マルチタッチでピンチ操作できる。

著作権侵害

Googleは英米の図書館が所蔵する世界中の書籍を著作権者に無断でデジタル・スキャンして、そのデータを元に作った画像にGoogleのコピーライトを貼ってネット上に公開していた。この行為が著作権侵害に当たるとして、米国作家協会などに訴えられていた。

本訴訟はアメリカの集団訴訟であり、制度の特徴として訴訟に直接参加していない利害関係者にまで効力が生じる。また、Googleの提出した和解案はニューヨーク南部地区連邦地裁で審査されていたが、成立すればベルヌ条約加盟国の約200か国で発行された書籍の著作権者にまで本和解の効力が生じることになっていた。

和解案は次のとおりである。Googleによる書籍のデジタル化、商業利用を可能とし、著作権者に対しては、デジタル化書籍1作品につき補償金60ドル以上(総額4500万ドル以上)、収益(アクセス権料、広告費)の63%を支払う[7]。2009年1月5日以前に出版の書籍が対象となっている。また、2009年2月25日号の『ニューズウィーク日本版』に本和解に関する公告が掲載された。

この和解案に対しては、フランスやドイツなどの各国政府までが異議を唱えた。そして、米国政府の連邦著作権登録局と司法局から「和解案により米国が外交圧力を受ける可能性」を指摘されるほどの政治問題へ発展した[8]。ドイツ法務省が作成した意見書は、根源的な問題として次の点を指摘する。すなわち、被害者救済や被害拡大防止に見せかけて、著作権が有効な世界中の全書籍に対する強制執行権をGoogleに獲得させるため集団訴訟が利用されているというのである[9]

和解案が正式に成立すれば[10]、著作権者が拒否する旨を示さない限り、絶版と本和解の規定により見なされた書籍が全文公開されるはずだった[11]。2009年11月13日に修正和解案が出され、米国、英国、カナダ、オーストラリアの四カ国で出版された書籍に対象が限定されることになった。しかし、日本でのスキャン行為は依然として続いている。この点、修正和解案によると、時効までに参加国以外の著作権者は損害賠償請求訴訟を新たに提起する必要があるという[12]

技術

ファイル:Kirtas APT BookScan 1200 - 01.jpg
(参考用画像)ブックスキャナー。空気で吸い寄せてページを持ち上げ、めくる。そして上方からCCDカメラで各ページの画像を撮影。その後OCRプログラムで画像データから文字データを抽出する。Googleがこうしたブックスキャナーと呼ばれる装置を使って書籍をデジタル化していることは確実だが、具体的にどのメーカーのどういった装置を使用しているのかは不明。この画像は参考用。

紙製の書籍からのデータの読み取りには、ブックスキャナーと呼ばれる自動の書籍スキャン装置を使用している。Googleブックスでは、特許を取得したスキャン技術により、大量のページを素早く読み取ることができると考えられている[13]。日本語は誤変換が著しい[14]。アルファベットの書籍は特に問題がない。

具体的にどういった装置を何台ぐらい使用しているのか、といった詳細な点は未公開の部分が多い。

提携図書館

Googleブックスは世界中のいくつもの図書館と提携関係を結んでいる。図書館側が蔵書を貸し出し、Googleがそれをスキャンしてデジタル化し、データベースに付け加えている。以下の図書館がGoogleブックスと提携関係にある。

大学図書館

慶應義塾図書館(慶應義塾大学)

2007年7月6日に提携を発表[15]慶應義塾大学が所蔵する蔵書のうち、著作権保護期間が満了したパブリックドメインの書籍約12万冊をデジタル化してGoogleブックスを通じて公開する予定。12万冊の内訳は明治初期までに日本で発行された和装本および明治・大正期・昭和前期の日本語図書。[16]

ハーバード付属図書館(ハーバード大学)

2005年に提携を発表。ハーバード大学が400年近くかけて収集した書籍のうち、著作権保護期間が満了した約1550万冊の書籍について、その内最低でも100万冊以上をデジタル化してGoogleブックスを通じて公開する予定[17]

スタンフォード大学付属図書館(スタンフォード大学)

2004年12月14日に提携を発表。スタンフォード大学が有する蔵書800万冊のうち、数十万冊から百万冊程度をデジタル化してGoogleブックスを通じて公開する予定。両者の間で最終的なスキャン冊数に関する合意は特にないらしく、状況に合わせて流動的に変化していく模様。書物のスキャン費用は全てGoogleが負担する[18][19]

その他の大学図書館

国立または公立の図書館

私立の図書館

その他

メリット

  1. 公開書籍に関しては、インターネットサービス利用者にとって、国境を越え、またインターネットサービス料のみで入手できる点で、手段・金銭上、入手が容易となる。ただ、これはインターネットサービスの利用環境を持つ者の範囲内のことである。
  2. 検索機能があることで、登録書籍に関しては、到達が容易である。ただ、未登録出版物については到達できず、検索語句を認識していない書籍については到達できない。
  3. 紙製等の図書と別形態で、電子的に資料保存が行われることで、資料保存手段が一つ増加したといえる。ただし、この方法論はそもそもGoogleの独占事項ではない。

デメリット

  1. 出版物無料公開は、出版物を作成する出版社の利益を、出版社の倒産を招くレベルで、損なう可能性を一面でもつ。ただ、出版社の倒産は、個々の会社の事情も関わるものである。ただ、Googleは絶版かつ市販されていない書籍に限定すると明記しており、その点で出版社の損失が出るとは考えにくい。
    1. 一部の出版社が倒産すれば、出版物による意見発信という言論手段が、一部損なわれる、という一面をもつ。ただ、全ての言論手段を損なうわけではない。
    2. 資料保存は、保存手段が多い程、達成度が高い。仮に一部の出版社の倒産があれば、作成された出版物という形態での資料保存という保存手段が、一部損なわれる。ただ、出版物無料公開が全資料保存手段に影響するわけではない。
    3. 保存手段の減少があれば、資料消失のリスクが高まる。言い換えれば、資料消失に対するリスク分散を行える程度が低くなる。
  2. 出版物は、図書の利用者に対し、その購入、図書館等の施設における閲覧、という、二種の利用・入手手段を生む。しかし、かりに出版社の減少により出版物が減少すれば、それら二種の手段の有効範囲が狭くなる。ただ、この点は、ウェブ上での閲覧が補完しうるという論調もある。
  3. そもそもこれらのデータベース化はGoogleの特許事項ではない。そのため、ウェブ上での同様の形態(を今後志向する)の事業者の機会喪失と、出版社の事業の機会喪失という、2重の事項について、独占禁止法に当たらないか、さかんに議論されている。
  4. ウェブ上での書籍閲覧は、検索という行為を媒介とするため、書店や図書館での閲覧と異なり、利用者が、書名・著者が既知である書籍、関連検索語句が既知である書籍にしか到達できない。書店や図書館でのように、ある本を探す中で、脇を通過する書棚の本のタイトルが目に入り、それにより、既知以外の書籍に到達する、という図書利用形態をもたない[22]。ただ、特定の単語でインターネット検索をすれば、複数の類似・近似サイトが見付かるのと同様、ウェブ上での書籍閲覧でも既知以外の書籍に到達する可能性は充分にある。

注釈

  1. Big Ten Academic Alliance はアメリカの学術コンソーシアムのひとつ。オハイオ州インディアナ州などアメリカ中西部の、イリノイ大学など Big 10 と呼ばれる大規模大学が参加。前身は学術コンソーシアム CIC (Committee of institutional cooperation) [20]
    CIC当時の加盟大学は他にアイオワ大学インディアナ大学ウィスコンシン大学マディソン校オハイオ州立大学シカゴ大学ノースウェスタン大学パーデュー大学ペンシルベニア州立大学ミシガン大学ミシガン州立大学ミネソタ大学[21]

脚注

  1. In Google Book Settlement, Business Trumps Ideals
  2. Google: 129 Million Different Books Have Been Published
  3. ニュース:"米アマゾンに宣戦布告か--米グーグル、書籍検索「Google Print」をテスト" CNET Japan, 2003年12月18日付, 最終閲覧日 2008年4月17日
  4. ニュース:" 米Google、書籍の中身まで全文検索する「Google Print」開始" INTERNET Watch, 2004年10月7日付, 最終閲覧日 2008年4月17日
  5. ブログ:"Judging Book Search by its cover" Google公式ブログ 2005年11月17日付 最終閲覧日 2008年4月17日
  6. Google、電子書籍サービス「Google Playブックス」を日本向けに提供開始
  7. 版権リジストリの天引きがあるので実際の取り分は50%程度。さらに、支払先は著者ではなくて、グーグルが一方的に出版社を権利者とみなして出版社に払う仕組み。
    明石昇二郎 『グーグルに異議あり!』 集英社 2010年4月 pp.96-99.
  8. 明石 p.144.
  9. 明石 pp.146-150.
  10. Google Book Search訴訟で,Googleが出版業界・著作者団体と和解」、『情報管理』第51巻第9号、2008年12月、 712-713頁、. 2017年12月27日閲覧.
  11. 「本の全文検索 波紋――米グーグル ネット公開へ準備」『朝日新聞』2009年2月23日付朝刊、第13版、第2面
  12. 明石 pp.164-166.
  13. Google、画期的書籍スキャン技術で特許を取得していた”. . 2009閲覧.
  14. 明石 p.44.
  15. ニュース:"Google、ブック検索で慶應義塾大学図書館と連携--図書館はアジアで初の参加" CNET Japan, 2007年7月6日付, 最終閲覧日 2007年12月6日
  16. プレスリリース:"Googleとの連携について" 慶應義塾大学 2007年7月6日付 最終閲覧日 2007年12月6日
  17. Harvard-Google Project - ハーバード大学がGoogleとの協力関係についてまとめたウェブページ。最終閲覧日 2007年12月6日
  18. プレスリリース:"About the Cooperation with Google," スタンフォード大学 2004年12月14日付 最終閲覧日 2007年12月6日
  19. Stanford Google Library Project - スタンフォード大学がGoogleとの協力関係についてまとめたウェブページ。最終閲覧日 2007年12月6日
  20. 梅澤貴典(中央大学図書館)「2004年度海外派遣研修報告書」、私立大学図書館協会、2005年2月21日、. 2017年12月27日閲覧.
  21. 共同デジタルリポジトリ「HathiTrust」が開始」、『情報管理』第51巻第9号、2008年12月、 713頁、. 2017年12月27日閲覧.
  22. 月村辰雄「デジタル時代の読書のゆくえ」『季刊 本とコンピュータ』2-14、2004年、p58、参照

関連項目

外部リンク