詩学 (アリストテレス)

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テンプレート:Works of Aristotle詩学』(しがく、: Περὶ Ποιητικῆς: De Poetica: Poetics)は、文学理論について論じた古代ギリシャ哲学者アリストテレスの著作。著作中では、『弁論術』とともに、創作学に関する著作である。また、この著書は、古代ギリシアの哲学者プラトンによる『国家』とともに、物語論の考え方の起源とされている。

概要

本作における韻文で、今日の詩とは異なる。当時は散文は盛んでなく、文学作品のほとんどが韻文で書かれていた。

本作では、詩を、用いられる言語・調子・旋律等の様態(: matter)や、登場人物の特徴等によって示される悲劇喜劇等の課題(: subjects)、また、「語りのみ」、「語りの中に、時に直接会話が現れるもの」、「語りがなく、直接会話のみで構成されているもの」等、再現の手法(: method)等の指標によりジャンル分けしている。

また、例えば、悲劇の要素は次のようなものであるとし、それぞれの在り方を解説している。

その他、主要な要素として「ミメーシス(再現)」、「カタルシス(精神の浄化)」、「ペリペテイア(急転、どんでん返し)」、「アナグノリシス(認知、発見)」、「ハマルティア(錯誤)」等を挙げている。

特徴として、「模倣」または「再現」と訳される「ミメーシス」の概念が繰り返し強調されていることがあげられる。

また悲劇劇詩)を抒情詩叙事詩などより上位に位置づけていて、文学の最高形態に位置づけている。悲劇は上演を見なくても読むだけで十分であるという考えは、すでに写本が普及していた当時の文化の状況をあらわすに過ぎないという(岩波文庫版の解説より)。

ホメロスの偉大さは、その叙事詩が劇文学への道を切り開いたがゆえにあるとも論じている。

目次

岩波文庫版『詩学』(松本仁助・岡道男訳)より〉

  1. 論述の範囲、詩作再現、再現の媒体について
  2. 再現する対象の差異について
  3. 再現の方法の差異について 劇という名称の由来について 悲劇喜劇の発祥地についてのドーリス人の主張
  4. 詩作の起源とその発展について
  5. 喜劇について 悲劇と叙事詩の相違について
  6. 悲劇の定義と悲劇の構成要素について
  7. 筋の組み立て、その秩序と長さについて
  8. 筋の統一について
  9. 詩と歴史の相違、詩作の普遍的性格、場面偏重の筋、驚きの要素について
  10. 単一な筋と複合的な筋について
  11. 逆転と認知、苦難について
  12. 悲劇作品の部分について
  13. の組みたてにおける目標について
  14. おそれとあわれみの効果の出し方について
  15. 性格の描写について
  16. 認知の種類について
  17. 悲劇の制作について―矛盾・不自然の回避、普遍的筋書きの作成
  18. ふたたび悲劇の制作について―結び合わせ、解決、悲劇の種類
  19. 思想語法について
  20. 語法について
  21. 詩的語法に関する考察
  22. 文体(語法)についての注意
  23. 叙事詩について―その一
  24. 叙事詩について―その二
  25. 詩にたいする批判とその解決
  26. 叙事詩と悲劇の比較

日本語訳

訳注・研究

  • 松浦嘉一訳 『アリストテレス 詩学』 哲学古典叢書1 岩波書店、1924年、岩波文庫(改訂版)、1948年
  • 安倍保訳 『アリストテレス 詩学(芸術学)』 碓氷書房、1950年
  • 北条元一・登張智雄訳 『アリストテレス 詩学 世界大思想全集 哲学・文芸思想篇21』河出書房、1960年。『アリストテレス・ホラティウス・ボワロー...』 
  • 村治能就訳 『アリストテレス 詩学 世界の大思想2』 河出書房新社、1966年
  • 藤沢令夫訳 「詩学」、『世界古典文学全集16 アリストテレス』 筑摩書房、1968年
  • 藤沢令夫訳 「詩学」、『世界の名著8 アリストテレス』 田中美知太郎解説 中央公論社、1972年
  • 今道友信訳 「詩学」、『アリストテレス全集 17』 岩波書店、1972年
  • 松本仁助岡道男訳 『アリストテレース 詩学/ホラーティウス 詩論』 岩波文庫、1997年、ワイド版2012年
    • 旧版『アリストテレース 詩学 世界思想ゼミナール』 世界思想社、1985年
  • 堀尾耕一・野津悌・朴一功訳 『アリストテレス全集18 弁論術 詩学』 岩波書店、2017年 

参考文献

  • 『アリストテレス「詩学」の研究』(上下) 當津武彦 大阪大学出版会

脚注・出典

関連項目

外部リンク