「質量」の版間の差分

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物体に含まれる物質の量で,普通はてんびん,さお秤ではかられる。質量は物体の力学的性質を決める基本的な量であり,2種類の定義がある。第1は,同一地点である物体に働く重力と標準物体 ([[キログラム原器]] ) に働く重力との比の値として定義された質量であり,重力を媒介として測定されるので,[[重力質量]]と呼ばれる。てんびんではかられるのはこの質量であるが,宇宙船内のように無重量のところでは測定不可能である。重力質量は物体が重力,すなわち地球の万有引力を受ける強さ,また逆に万有引力を生み出す強さを決める量である。第2は,同じ大きさの力が働いたときに,ある物体が得る[[加速度]]の大きさと標準物体が得る加速度の大きさとの逆比の値で定義された質量で,物体がもつ慣性の大きさを表わすので,[[慣性質量]]と呼ばれる。運動方程式 (質量) × (加速度) = (力) の質量は慣性質量である。
 
物体に含まれる物質の量で,普通はてんびん,さお秤ではかられる。質量は物体の力学的性質を決める基本的な量であり,2種類の定義がある。第1は,同一地点である物体に働く重力と標準物体 ([[キログラム原器]] ) に働く重力との比の値として定義された質量であり,重力を媒介として測定されるので,[[重力質量]]と呼ばれる。てんびんではかられるのはこの質量であるが,宇宙船内のように無重量のところでは測定不可能である。重力質量は物体が重力,すなわち地球の万有引力を受ける強さ,また逆に万有引力を生み出す強さを決める量である。第2は,同じ大きさの力が働いたときに,ある物体が得る[[加速度]]の大きさと標準物体が得る加速度の大きさとの逆比の値で定義された質量で,物体がもつ慣性の大きさを表わすので,[[慣性質量]]と呼ばれる。運動方程式 (質量) × (加速度) = (力) の質量は慣性質量である。
  
重力質量と慣性質量とは同じ標準物体に関して必ず同じ値をもつことが,[[エトベシュの実験]]などによって精密に確かめられている。したがって両質量はまったく同じ物理量であると思えるが,前に述べたようにニュートン力学ではまったく違った概念の量であって,両質量の値の一致は偶然の一致としかいえない。この一致を必然の一致として説明するのが[[等価原理]]であって,これに基づいて A.アインシュタインは[[一般相対性理論]]を導いた。ニュートン力学では質量は一定の値をもつと考えられているが,[[特殊相対性理論]]では質量は速さによって変る。物体が静止しているときの質量が <i>m</i> <sub>0</sub>  ([[静止質量]]という) ならば,速さ <i>v</i> で動いているときの質量 <i>m</i> は真空中の光の速さを <i>c</i> とすると,<img border="0" align="middle" title="数式" src="http://media.japan.eb.com/bolj2/math/05/05108000_siki4.gif"> となり,速く動くほど質量が大きくなる。また,物体のエネルギー <i>E</i> は <i>E</i>=<i>mc</i> <sup>2</sup> で与えられ,これは質量がエネルギーの一形態であることを示している。これを[[質量とエネルギーの等価性]]という。核分裂や核融合の際に原子核の質量の一部がエネルギーとして取出されたのが原子エネルギーである。なお,荷電粒子が運動すると周囲の電磁場が変化するので,粒子の速度を変えると同時に周囲の電磁場の運動量も変えることになり,余分の力が必要となる。これは荷電粒子の慣性質量が変ることを意味する。[[電子論]]における[[電磁質量]],物性論 ([[物性物理学]] ) における[[有効質量]]はこのような意味の質量である。
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重力質量と慣性質量とは同じ標準物体に関して必ず同じ値をもつことが,[[エトベシュの実験]]などによって精密に確かめられている。したがって両質量はまったく同じ物理量であると思えるが,前に述べたようにニュートン力学ではまったく違った概念の量であって,両質量の値の一致は偶然の一致としかいえない。この一致を必然の一致として説明するのが[[等価原理]]であって,これに基づいて A.アインシュタインは[[一般相対性理論]]を導いた。ニュートン力学では質量は一定の値をもつと考えられているが,[[特殊相対性理論]]では質量は速さによって変る。物体が静止しているときの質量が <i>m</i> <sub>0</sub>  ([[静止質量]]という) ならば,速さ <i>v</i> で動いているときの質量 <i>m</i> は真空中の光の速さを <i>c</i> とすると,
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となり,速く動くほど質量が大きくなる。また,物体のエネルギー <i>E</i> は <i>E</i>=<i>mc</i> <sup>2</sup> で与えられ,これは質量がエネルギーの一形態であることを示している。これを[[質量とエネルギーの等価性]]という。核分裂や核融合の際に原子核の質量の一部がエネルギーとして取出されたのが原子エネルギーである。なお,荷電粒子が運動すると周囲の電磁場が変化するので,粒子の速度を変えると同時に周囲の電磁場の運動量も変えることになり,余分の力が必要となる。これは荷電粒子の慣性質量が変ることを意味する。[[電子論]]における[[電磁質量]],物性論 ([[物性物理学]] ) における[[有効質量]]はこのような意味の質量である。
  
 
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2019/4/27/ (土) 10:11時点における最新版

質量(しつりょう、: massa: μᾶζα: Masse: mass

物体に含まれる物質の量で,普通はてんびん,さお秤ではかられる。質量は物体の力学的性質を決める基本的な量であり,2種類の定義がある。第1は,同一地点である物体に働く重力と標準物体 (キログラム原器 ) に働く重力との比の値として定義された質量であり,重力を媒介として測定されるので,重力質量と呼ばれる。てんびんではかられるのはこの質量であるが,宇宙船内のように無重量のところでは測定不可能である。重力質量は物体が重力,すなわち地球の万有引力を受ける強さ,また逆に万有引力を生み出す強さを決める量である。第2は,同じ大きさの力が働いたときに,ある物体が得る加速度の大きさと標準物体が得る加速度の大きさとの逆比の値で定義された質量で,物体がもつ慣性の大きさを表わすので,慣性質量と呼ばれる。運動方程式 (質量) × (加速度) = (力) の質量は慣性質量である。

重力質量と慣性質量とは同じ標準物体に関して必ず同じ値をもつことが,エトベシュの実験などによって精密に確かめられている。したがって両質量はまったく同じ物理量であると思えるが,前に述べたようにニュートン力学ではまったく違った概念の量であって,両質量の値の一致は偶然の一致としかいえない。この一致を必然の一致として説明するのが等価原理であって,これに基づいて A.アインシュタインは一般相対性理論を導いた。ニュートン力学では質量は一定の値をもつと考えられているが,特殊相対性理論では質量は速さによって変る。物体が静止しているときの質量が m 0 (静止質量という) ならば,速さ v で動いているときの質量 m は真空中の光の速さを c とすると, 05108000 siki4.gif となり,速く動くほど質量が大きくなる。また,物体のエネルギー EEmc 2 で与えられ,これは質量がエネルギーの一形態であることを示している。これを質量とエネルギーの等価性という。核分裂や核融合の際に原子核の質量の一部がエネルギーとして取出されたのが原子エネルギーである。なお,荷電粒子が運動すると周囲の電磁場が変化するので,粒子の速度を変えると同時に周囲の電磁場の運動量も変えることになり,余分の力が必要となる。これは荷電粒子の慣性質量が変ることを意味する。電子論における電磁質量,物性論 (物性物理学 ) における有効質量はこのような意味の質量である。



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