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(質量の概念)
 
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{{出典の明記|date=2011-4}}
 
{{物理量
 
|名称=質量
 
|英語=mass
 
|記号=''m''
 
|次元=M
 
|階=スカラー
 
|SI=[[キログラム]] (kg)
 
|CGS=[[グラム]] (g)
 
|MTS=[[トン]] (t)
 
|FPS=[[ポンド (質量)|ポンド]] (lb)
 
|MKSG=[[メトリックスラグ]]
 
|FPSG=[[スラグ (単位)|スラグ]]
 
|プランク=[[プランク質量]]
 
|原子=[[電子の静止質量]] ({{math|''m''{{sub|e}}}})
 
}}
 
'''質量'''(しつりょう、{{lang-la-short|massa}}、{{lang-el-short|μᾶζα}}、{{lang-de-short|Masse}}、{{lang-en-short|mass}})とは、[[物体]]の動かしにくさの度合いを表す[[量]]のこと。
 
  
== 概説 ==
+
'''質量'''(しつりょう、{{lang-la-short|massa}}、{{lang-el-short|μᾶζα}}、{{lang-de-short|Masse}}、{{lang-en-short|mass}}
質量という概念の内容や定義は、[[動力学]][[力学]]の歴史とともに推移してきている{{sfn|小出昭一郎|1988}}
 
  
[[物理学]]的には厳密には、動かし難さから定義される'''[[#慣性質量|慣性質量]]''' {{en|(inertial mass)}}{{sfn|朝永振一郎|1981|p=15}}と、[[万有引力]]による重さの度合いとして定義される'''[[#重力質量|重力質量]]''' {{en|(gravitational mass)}}{{sfn|朝永振一郎|1981|p=12}}の 2 種類の[[定義]]があるが、現在の物理学では[[等価原理|等価]]とされている。
+
物体に含まれる物質の量で,普通はてんびん,さお秤ではかられる。質量は物体の力学的性質を決める基本的な量であり,2種類の定義がある。第1は,同一地点である物体に働く重力と標準物体 ([[キログラム原器]] ) に働く重力との比の値として定義された質量であり,重力を媒介として測定されるので,[[重力質量]]と呼ばれる。てんびんではかられるのはこの質量であるが,宇宙船内のように無重量のところでは測定不可能である。重力質量は物体が重力,すなわち地球の万有引力を受ける強さ,また逆に万有引力を生み出す強さを決める量である。第2は,同じ大きさの力が働いたときに,ある物体が得る[[加速度]]の大きさと標準物体が得る加速度の大きさとの逆比の値で定義された質量で,物体がもつ慣性の大きさを表わすので,[[慣性質量]]と呼ばれる。運動方程式 (質量) × (加速度) = () の質量は慣性質量である。
  
慣性質量と重力質量の等価性は、たとえば[[重力加速度]]が落下する物体によらず定まることから知ることができる。物体に働く[[重力]]は重力質量に[[比例]]するが、一方で重力加速度は重力を慣性質量で割ったものなので、重力質量と慣性質量は比例していることが分かる。
+
重力質量と慣性質量とは同じ標準物体に関して必ず同じ値をもつことが,[[エトベシュの実験]]などによって精密に確かめられている。したがって両質量はまったく同じ物理量であると思えるが,前に述べたようにニュートン力学ではまったく違った概念の量であって,両質量の値の一致は偶然の一致としかいえない。この一致を必然の一致として説明するのが[[等価原理]]であって,これに基づいて A.アインシュタインは[[一般相対性理論]]を導いた。ニュートン力学では質量は一定の値をもつと考えられているが,[[特殊相対性理論]]では質量は速さによって変る。物体が静止しているときの質量が <i>m</i> <sub>0</sub> ([[静止質量]]という) ならば,速さ <i>v</i> で動いているときの質量 <i>m</i> は真空中の光の速さを <i>c</i> とすると,
:<math>F_\mathrm{G} = m_\mathrm{I}g,~ F_\mathrm{G} \propto m_\mathrm{G} ~~\Rightarrow~~ m_\mathrm{I} \propto m_\mathrm{G}.</math>
+
[[ファイル:05108000 siki4.gif]]
:{{math|''m''<sub>I</sub>}}:慣性質量、{{math|''m''<sub>G</sub>}}:重力質量、{{math|''F''<sub>G</sub>}}:重力、{{mvar|g}}:質量加速度。
+
となり,速く動くほど質量が大きくなる。また,物体のエネルギー <i>E</i> は <i>E</i>=<i>mc</i> <sup>2</sup> で与えられ,これは質量がエネルギーの一形態であることを示している。これを[[質量とエネルギーの等価性]]という。核分裂や核融合の際に原子核の質量の一部がエネルギーとして取出されたのが原子エネルギーである。なお,荷電粒子が運動すると周囲の電磁場が変化するので,粒子の速度を変えると同時に周囲の電磁場の運動量も変えることになり,余分の力が必要となる。これは荷電粒子の慣性質量が変ることを意味する。[[電子論]]における[[電磁質量]],物性論 ([[物性物理学]] ) における[[有効質量]]はこのような意味の質量である。
ここで重力質量と慣性質量の[[物理単位|単位]]を適切に選べば、それらを結ぶ比例定数を {{math|1}} にすることができ、重力質量と慣性質量の次元を同一視することができる。
 
:<math>m_\mathrm{I} = m_\mathrm{G}.</math>
 
  
質量の発生原理として[[ヒッグス機構]]が有力視されているが完全には分かっていない。
+
{{テンプレート:20180815sk}}
 
 
質量は[[重さ]]と混同される場合も多いが、異なる概念である。物体の重さとは、その物体が受ける重力の大きさを表し、重力が異なる場所では、たとえ同じ物体を用意したとしても、その重さは異なる。しかしながら、どちらの場合においてもその物体の質量は同じである。
 
 
 
以上は物体の固有な量としての質量についてであるが、金属などの結晶中を運動する[[電子]]など、特殊な状況において質量に相当するような量を考えることができる。それらを通常の質量と区別して'''[[有効質量]]''' {{en|(effective mass)}} と呼ぶ。
 
 
 
== 二つの質量 ==
 
質量には慣性質量と重力質量の 2 種類がある。
 
 
 
=== 慣性質量 ===
 
'''慣性質量'''({{lang|en|inertial mass}}){{math|''m''<sub>I</sub>}} は[[ニュートンの運動方程式]]において導入される量である。
 
物体に作用する[[力 (物理学)|力]] {{mvar|'''F'''}} と物体の[[加速度]] {{mvar|'''a'''}} の比例係数として次の様に表される。
 
{{Indent|
 
<math>m_\mathrm{I} \boldsymbol{a} = \boldsymbol{F}.</math>
 
}}
 
これは実際に実験を行い、物体を(バネの変形などによる)既知の力で引っ張ったときの加速度を調べ、比例係数を計算することで求められる。慣性質量は物体の動きにくさ(あるいは止まりにくさ)を表す値であるといえる。
 
 
 
=== 重力質量 ===
 
'''重力質量'''({{lang|en|gravitational mass}}){{math|''m''<sub>G</sub>}} は[[重力]]([[万有引力]])を起こす質量のことである。
 
物体に作用する重力 {{math|'''''F'''''<sub>G</sub>}} とその場所での[[重力加速度]] {{mvar|'''g'''}} により次の様に表される。
 
{{Indent|
 
<math>\boldsymbol{F}_\mathrm{G} = m_\mathrm{G} \boldsymbol{g}</math>
 
}}
 
これは[[体重計]]などで計ることができる、直感的にイメージする「重さ」を生じさせる質量である。
 
 
 
=== 等価原理 ===
 
{{main|等価原理}}
 
両者は全く別の定義であるが、これらは同一の値を取る。この経験則を'''[[等価原理#重力質量と慣性質量|等価原理]]'''といい、[[エトヴェシュ・ロラーンド]]などが行った実験により高い精度で示されている。[[落体の法則]]や[[振り子]]の[[等時性]]といった法則は、この原理のために成り立っている。だが、なぜ慣性質量と重力質量が同じ値をとるのかという理由は、現在でもわかっていない。慣性質量が生じる仕組みについては[[ヒッグス粒子]]によるヒッグス機構が唱えられているが、これは重力質量にはあてはまらない。重力質量発生のしくみは[[重力子]]交換によるものであると考えられている{{要出典|date=2012年9月24日 (月) 05:14 (UTC)}}。
 
 
 
== 相対論的質量 ==
 
[[光速]]に近い[[速度]]で運動する物体の質量が増えるといわれることがある。これは相対論的質量とよばれる考え方で、運動方程式 {{math|'''''F''''' {{=}} ''m''&thinsp;'''''a'''''}} が速度の大きな物体についても成り立つように、相対論的効果を質量に押し付けた結果生ずるものである。現在では、このような相対論的質量の考え方を用いないのが一般的である。詳しくは[[特殊相対性理論]]を参照。
 
 
 
== 他の物理量との関係 ==
 
マクロな物質の質量は同一物質で[[温度|同温]]・[[圧力|同圧]]の条件下においては、経験的に[[体積]]におおよそ比例することが知られている。この性質から、特に温度や圧力による体積変化が少ない[[固体]]・[[液体]]において、物質ごとに定まる物理量としての[[密度]]が用いられる。
 
 
 
これより、均一物質を分けた場合、その体積比と質量比はおおよそ一致することとなる。この性質により、物質を根源となる粒子まで細かく分けていけば、その粒子の種類ごとに質量が定まり、その粒子の質量の総和が物質の質量となるという、いわゆる[[原子論]]の類の説が説得力を持つことになる。[[アメデオ・アヴォガドロ|アヴォガドロ]]の分子説の根幹である「同温・同圧の気体中には同数の[[分子]]が存在する」という主張も、体積と質量の比例関係から一定の説得力を得られるのである。これらの[[化学]]の発展に基づき、同一物質であれば質量に比例する[[物質量]]が定義されるに至った。
 
 
 
[[ニュートン力学]]においては、[[力 (物理学)|力]]と質量、[[加速度]]の関係を表す運動方程式、
 
:<math>\boldsymbol{F} = m\boldsymbol{a}</math>
 
:{{mvar|'''F'''}}:物体に働く合力、{{mvar|m}}:物体の質量、{{mvar|'''a'''}}:物体の加速度
 
が成り立つ。これは[[運動の第2法則]]
 
:<math>\boldsymbol{F} = \frac{\mathrm{d}\boldsymbol{p}(t)}{\mathrm{d}t}</math>
 
に[[運動量]] {{mvar|'''p'''}} と質量 {{mvar|m}} および速度 {{mvar|'''v'''}} の関係
 
:<math>\boldsymbol{p}(t) = m\boldsymbol{v}(t)</math>
 
を適用したものである。
 
 
 
[[特殊相対性理論]]においては、物体の[[エネルギー]]は
 
:<math>\frac{E}{c}=m\frac{d(ct)}{d\tau}</math>
 
:{{mvar|E}}:物体のエネルギー、{{mvar|c}}:[[光速]]、{{mvar|m}}:物体の[[静止質量]]、{{mvar|t}}:観測者の時刻、{{mvar|τ}}:[[固有時]]
 
で定義される。これを計算すると、
 
:<math>E=mc^2\frac{1}{\sqrt{1-\left(\frac{v}{c}\right)^2}}</math>
 
:{{mvar|v}}:物体の[[速度|速さ]]
 
が求められる。ここで {{math|''v'' {{=}} 0}} とすると、{{math|''E'' {{=}} ''mc''<sup>2</sup>}} という有名な公式を導くことができる。これが「質量とエネルギーの等価性」を示しているのである。また、{{math|''v''/''c''}} が {{math|1}} より充分小さいとき、2 次の[[テイラー展開]]より、
 
:<math>E\simeq mc^2+\frac{1}{2}mv^2</math>
 
が成り立つ。この右辺の第 2 項がニュートン力学における[[運動エネルギー]]に対応する。第 1 項は定数であるため、この定数分を引いたものを新たに系のエネルギーとして定義することができる。そのため、この結果は速度が充分小さい運動について非相対論的な理論と一致していることを示す。
 
 
 
=== 単位表記 ===
 
素粒子物理学では、素粒子の質量を[[静止エネルギー]]値({{Math|eV}})を用いて {{Math|eV/c<sup>2</sup>}} という単位表記がなされる。これは、「静止エネルギーを光速<sup>2</sup>で除算する値」という一種の記法であり、「除算した値」ではないことに注意。例として、電子の静止エネルギーは {{math|511 keV}} で、電子の静止質量は {{math|511 keV/c<sup>2</sup>}} と表される。
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{Reflist}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
*{{Cite book|和書|author=小出昭一郎|chapter=質量|year=1988|title=世界大百科事典|publisher=平凡社|ref=harv}}
 
*{{Cite book|和書|author=朝永振一郎|authorlink=朝永振一郎|title=物理学読本|edition=第2|date=1981|publisher=みすず書房|isbn=4-622-02503-5|ref=harv}}
 
 
 
== 関連項目 ==
 
{{Wiktionary}}
 
{{wikidata property|P2067}}
 
*[[等価原理]]
 
*[[ヒッグス粒子]]
 
*[[質量の比較]]
 
*[[質量保存の法則]]
 
*[[重さ]]
 
*[[有効質量]]
 
 
 
{{Normdaten}}
 
 
{{DEFAULTSORT:しつりよう}}
 
{{DEFAULTSORT:しつりよう}}
 
[[Category:質量|*]]
 
[[Category:質量|*]]
 
[[Category:物理量]]
 
[[Category:物理量]]

2019/4/27/ (土) 10:11時点における最新版

質量(しつりょう、: massa: μᾶζα: Masse: mass

物体に含まれる物質の量で,普通はてんびん,さお秤ではかられる。質量は物体の力学的性質を決める基本的な量であり,2種類の定義がある。第1は,同一地点である物体に働く重力と標準物体 (キログラム原器 ) に働く重力との比の値として定義された質量であり,重力を媒介として測定されるので,重力質量と呼ばれる。てんびんではかられるのはこの質量であるが,宇宙船内のように無重量のところでは測定不可能である。重力質量は物体が重力,すなわち地球の万有引力を受ける強さ,また逆に万有引力を生み出す強さを決める量である。第2は,同じ大きさの力が働いたときに,ある物体が得る加速度の大きさと標準物体が得る加速度の大きさとの逆比の値で定義された質量で,物体がもつ慣性の大きさを表わすので,慣性質量と呼ばれる。運動方程式 (質量) × (加速度) = (力) の質量は慣性質量である。

重力質量と慣性質量とは同じ標準物体に関して必ず同じ値をもつことが,エトベシュの実験などによって精密に確かめられている。したがって両質量はまったく同じ物理量であると思えるが,前に述べたようにニュートン力学ではまったく違った概念の量であって,両質量の値の一致は偶然の一致としかいえない。この一致を必然の一致として説明するのが等価原理であって,これに基づいて A.アインシュタインは一般相対性理論を導いた。ニュートン力学では質量は一定の値をもつと考えられているが,特殊相対性理論では質量は速さによって変る。物体が静止しているときの質量が m 0 (静止質量という) ならば,速さ v で動いているときの質量 m は真空中の光の速さを c とすると, 05108000 siki4.gif となり,速く動くほど質量が大きくなる。また,物体のエネルギー EEmc 2 で与えられ,これは質量がエネルギーの一形態であることを示している。これを質量とエネルギーの等価性という。核分裂や核融合の際に原子核の質量の一部がエネルギーとして取出されたのが原子エネルギーである。なお,荷電粒子が運動すると周囲の電磁場が変化するので,粒子の速度を変えると同時に周囲の電磁場の運動量も変えることになり,余分の力が必要となる。これは荷電粒子の慣性質量が変ることを意味する。電子論における電磁質量,物性論 (物性物理学 ) における有効質量はこのような意味の質量である。



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