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'''脂肪酸'''(しぼうさん、Fatty acid)とは、長鎖[[炭化水素]]の1価の[[カルボン酸]]である<ref>[http://goldbook.iupac.org/F02330.html IUPAC Gold Book - fatty acids]</ref>。一般的に、炭素数2-4個のものを'''[[短鎖脂肪酸|短鎖脂肪酸(低級脂肪酸)]]'''、5-12個のものを'''[[中鎖脂肪酸]]'''、12個以上のものを'''[[高級脂肪酸|長鎖脂肪酸(高級脂肪酸)]]'''と呼ぶ<ref>[http://www.suzugamine.ac.jp/~arinobu/gakusyuu/lipids.pdf 脂質] [http://www.suzugamine.ac.jp/~arinobu/ 授業資料2006年06月07日に追加]</ref>{{信頼性要検証|date=2012年10月}}。炭素数の区切りは諸説がある<ref>[http://acbio2.acbio.u-fukui.ac.jp/phychem/maeda/kougi/CHEM2.pdf くらしの化学 6月9日] [http://acbio2.acbio.u-fukui.ac.jp/phychem/maeda/kougi/shiryo2003.html 2003年講義資料]</ref><ref>[http://zen.shinshu-u.ac.jp/modules/0052003002/main/main.pdf E-生化学(保険学科版Ver1.07)] [http://zen.shinshu-u.ac.jp/modules/0052003002/] 教材 更新日2008年11月13日</ref>{{信頼性要検証|date=2012年10月}}。脂肪酸は、一般式 C<sub>n</sub>H<sub>m</sub>COOH で表せる。脂肪酸は[[グリセリン]]を[[エステル]]化して[[油脂]]を構成する。[[脂質]]の構成成分として利用される。
+
'''脂肪酸'''(しぼうさん、Fatty acid)
  
広義には[[油脂]]や[[蝋]]、[[脂質]]などの構成成分である[[有機酸]]を指すが、狭義には単に鎖状の[[カルボン酸|モノカルボン酸]]を示す場合が多い。炭素数や[[二重結合]]数によって様々な呼称があり、鎖状のみならず分枝鎖を含む脂肪酸も見つかっている。また環状構造を持つ脂肪酸も見つかってきている。
+
直鎖式炭化水素基の端に1個のカルボキシル基をもつ酸。油脂やろうの中にエステルの形で含まれているため,脂肪酸の名がつけられた。特に多量に存在しているのは炭素原子数 16,18のものである。また飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり,不飽和のものは飽和のものより融点が低く,液状のものが多い。二重結合を2個,3個もつ脂肪酸にはヒトの栄養に必要な不可欠脂肪酸 (リノール酸,リノレン酸) といわれるものがある。
  
==分類==
 
脂肪酸 (fatty acid) は主に炭素数および[[不飽和結合]]の有無によって分類される。
 
 
===炭素数による分類===
 
脂肪酸の炭素数が6以下のものを[[短鎖脂肪酸]](SCFA、Short-chain fatty acid)、8&ndash;10のものを中鎖脂肪酸(MCFA、Medium-chain fatty acid)、12以上のものを長鎖脂肪酸(LCFA、Long-chain fatty acid)という。なお10以上のものを高級脂肪酸とするものもある。
 
 
===不飽和度による分類===
 
[[不飽和度]]による分類はさまざまであるが、基本的には以下の分類に従う。
 
*[[飽和脂肪酸]] (saturated fatty acid, SFA) &mdash; 炭素鎖に単結合のみ有する(飽和である)
 
*[[不飽和脂肪酸]] (unsaturated fatty acid, UFA) &mdash; 炭素鎖に二重結合、三重結合を有する
 
また不飽和脂肪酸は二重結合の数が1つであるか、複数であるかによって以下の分類がなされる。
 
*モノエン脂肪酸(一価不飽和脂肪酸、monounsaturated fatty acid, MUFA) &mdash; 二重結合の数が1つである
 
*ポリエン脂肪酸(多価不飽和脂肪酸、polyunsaturated fatty acid, PUFA)&mdash; 二重結合の数が2つ以上である。二重結合の数が4つ以上のものを高度不飽和脂肪酸と呼ぶ場合もある。
 
また、二重結合の有無および炭素数の差異によって名称が異なる。[[脂肪酸#命名法]]にて述べる。
 
 
====幾何異性体による分類====
 
不飽和脂肪酸は、[[幾何異性体]]にcis型とtrans型があり、近年trans型のものを[[トランス脂肪酸]]として区別することがある。
 
 
===その他の分類===
 
その他の分類には以下のようなものがある。
 
*分枝脂肪酸 &mdash; 分枝鎖を有する脂肪酸
 
*環状脂肪酸 &mdash; 環状構造を有する
 
*ヒドロキシル脂肪酸 &mdash; [[ヒドロキシ基]]を含む
 
 
==命名法==
 
脂肪酸の命名法はIUPAC生化学命名法<ref name="IUPAC-IUB">[http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac/lipid/  IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature (CBN) Nomenclature of Lipids(Recommendations, 1976)]</ref>に定義されている。(尚、この項の符号Rule Lip-…は同命名法の節番号を示す)
 
 
脂肪酸は天然の[[脂肪]]を[[加水分解]]して得られる脂肪族モノカルボン酸である。広く使用されている遊離脂肪酸(free fatty acids)や非エステル化脂肪酸(nonesterified fatty acids)という語が使用されているが、遊離や非エステル化という修飾語は徐々に廃止すべきである(Rule<ref name="IUPAC-IUB" /> Lip-1.1)。また、これらの[[頭字語|アクロニム]]である'''FFA'''や'''NEFA'''などは使用すべきではない(Rule<ref name="IUPAC-IUB" /> Lip-1.14)。言い換えると、厳密には炭素数が3以下など天然の脂肪に含まれないものは脂肪族モノカルボン酸と呼ぶべきであるが総称として脂肪酸と呼ばれる。
 
 
尚、脂肪酸基を'''アシル'''(基)という語で示す場合があるが、アシル(acyl)はIUPAC有機化合物命名法によるものである。アシルは任意の長さの直鎖構造を持つがIUPAC生化学命名法の脂肪酸は炭素数が4以上のものを指す。そして、炭素数が10を超える(&gt;C<sub>10</sub>)脂肪酸は高級脂肪酸(higher fatty acids)と呼ばれている。(Rule<ref name="IUPAC-IUB" /> Lip-1.2)
 
 
脂肪酸とそのアシル基の命名はIUPAC有機化合物命名法(Rule C-4)に従うまた許容慣用名や略号については下の表に示す。いままでは2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸でギリシャ文字を使用して異性体を示していた(例''α''-ないしは''γ''-リノレン酸)、これは二重結合の位置番号を列挙する方法(例 (9,12,15)-リノレン酸ないしは(6,9,12)-リノレン酸)に変えるべきである。しかし、二重結合の位置を示すさいに接頭辞としてギリシャ文字を使う方法は位置を列挙する方法の省略形として使用しても良い(Rule<ref name="IUPAC-IUB" /> Lip-1.6)。あるいは二重結合の位置はIUPAC有機化合物命名法の省略形であるΔを使用してもよい(例 Δ<sup>9</sup>,Δ<sup>12</sup>,Δ<sup>15</sup>-リノレン酸)。
 
 
また脂肪酸を炭素数と二重結合の数の組み合わせ(例 '''16:0''' = パルミチン酸,  '''18:1''' = オレイン酸 )で示しても良い。アシル基の場合は(stearyl-の代わりに)'''(18:0)acyl-'''と表しても良い (Rule<ref name="IUPAC-IUB" /> Lip-1.15)。
 
 
脂肪酸末端([[カルボキシ基]]から最も離れた位置)から同じ位置に二重結合を持つことを示す場合は(例、末端から9番目に二重結合を持つ脂肪酸グループの場合)は'''n-9'''と示す(nは具体的には当該脂肪酸の炭素数を意味する)。あるいは'''ω9'''とも示す('''ω'''は二重結合の位置を示すギリシャ文字省略形)。すなわちオレイン酸の二重結合'''18-9'''とネルボン酸の'''24-9'''とは'''ω9'''<ref>日本油脂化学協会(同協会編、『油脂化学便覧』、丸善、1998年)では'''ω9'''式ではなく'''ω-9'''式の表記が示されている。</ref>と総称する (Rule<ref name="IUPAC-IUB" /> Lip-1.16)。
 
 
{| class="wikitable" style="margin: auto"
 
|+ style="padding: 0.3em" | 脂肪酸の命名例 (Rule<ref name="IUPAC-IUB" /> Lip. Appendix A, Appendix B)
 
|-
 
!colspan="2"|数値表現<br />(Numerical symbol)
 
!示性式<br / >CH<sub>3</sub>-(R)-CO<sub>2</sub>H
 
!組織名
 
!慣用名
 
!略号
 
![[融点]](℃)<ref name="脂質の科学">板倉弘重、『脂質の科学』、朝倉書店、1999年 ISBN 4-254-43514-2</ref><br />
 
|-
 
|colspan="2"| 4:0 || -(CH<sub>2</sub>)<sub>2</sub>-  ||ブタン酸||[[酪酸]](ブチル酸)||Bu||&nbsp;
 
|-
 
|colspan="2"| 5:0 || -(CH<sub>2</sub>)<sub>3</sub>-  ||ペンタン酸||[[吉草酸]](バレリアン酸)||Pe||&nbsp;
 
|-
 
|colspan="2"| 6:0 || -(CH<sub>2</sub>)<sub>4</sub>-  ||ヘキサン酸||[[カプロン酸]]||Hx||&nbsp;
 
|-
 
|colspan="2"| 7:0 || -(CH<sub>2</sub>)<sub>5</sub>-  ||ヘプタン酸||[[エナント酸]](ヘプチル酸)||Hp||&nbsp;
 
|-
 
|colspan="2"| 8:0 || -(CH<sub>2</sub>)<sub>6</sub>-  ||オクタン酸||[[カプリル酸]]||Oc||&nbsp;
 
|-
 
|colspan="2"| 9:0 || -(CH<sub>2</sub>)<sub>7</sub>-  ||ノナン酸||[[ペラルゴン酸]]||Nn||&nbsp;
 
|-
 
|colspan="2"|10:0|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>8</sub>- ||デカン酸||[[カプリン酸]]||Dec||&nbsp;
 
|-
 
|colspan="2"|12:0||  -(CH<sub>2</sub>)<sub>10</sub>- ||ドデカン酸||[[ラウリン酸]]||Lau||44.2
 
|-
 
|colspan="2"|14:0||  -(CH<sub>2</sub>)<sub>12</sub>- ||テトラデカン酸||[[ミリスチン酸]]||Myr||53.9
 
|-
 
|colspan="2"|15:0||  -(CH<sub>2</sub>)<sub>13</sub>- || ペンタデカン酸||[[ペンタデシル酸]] ||&nbsp;||&nbsp;
 
|-
 
|colspan="2"|16:0||  -(CH<sub>2</sub>)<sub>14</sub>- ||ヘキサデカン酸||[[パルミチン酸]]||Pam||63.1
 
|-
 
|16:1(n-7)||16:1(Δ<sup>9</sup>)||  -(CH<sub>2</sub>)<sub>5</sub>CH=CH(CH<sub>2</sub>)<sub>7</sub>- ||9-ヘキサデセン酸||[[パルミトレイン酸]]||ΔPam<!--参照文献のママ -->||0.5
 
|-
 
|colspan="2"|17:0||-(CH<sub>2</sub>)<sub>15</sub>-  ||ヘプタデカン酸||[[マルガリン酸]]||&nbsp;||&nbsp;
 
|-
 
|colspan="2"|18:0|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>16</sub>- ||オクタデカン酸||[[ステアリン酸]]||Ste||69.6
 
|-
 
|18:1(n-9)||18:1(Δ<sup>9</sup>)|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>7</sub>CH=CH(CH<sub>2</sub>)<sub>7</sub>- ||''cis''-9-オクタデセン酸||[[オレイン酸]]||Ole||14.0
 
|-
 
|18:1(n-7)||18:1(Δ<sup>11</sup>)|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>5</sub>CH=CH(CH<sub>2</sub>)<sub>9</sub>- ||11-オクタデセン酸||[[バクセン酸]]||Vac||&nbsp;
 
|-
 
|18:2(n-6)||18:2(Δ<sup>9,12</sup>)|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>CH=CH)<sub>2</sub>(CH<sub>2</sub>)<sub>7</sub>- || ''cis'',''cis''-9,12-オクタデカジエン酸||[[リノール酸]]||Lin||-5.0
 
|-
 
|18:3(n-3)||18:3(Δ<sup>9,12,15</sup>)|| -(CH<sub>2</sub>CH=CH)<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>)<sub>7</sub>- ||9,12,15-オクタデカントリエン酸|| (9,12,15)-リノレン酸||αLnn||-11.3
 
|-
 
|18:3(n-6)||18:3(Δ<sup>6,9,12</sup>)|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>CH=CH)<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>)<sub>4</sub>- ||6,9,12-オクタデカトリエン酸|| (6,9,12)-リノレン酸||γLnn||&nbsp;
 
|-
 
|18:3(n-5)||18:3(Δ<sup>9,11,13</sup>)|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>3</sub>(CH=CH)<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>)<sub>7</sub>- ||9,11,13-オクタデカトリエン酸|| [[エレオステアリン酸]]||eSte||&nbsp;
 
|-
 
|colspan="2"|20:0|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>18</sub>- ||エイコサン酸||[[アラキジン酸]]||Ach||75.6
 
|-
 
|20:2(n-9)||20:2(Δ<sup>8,11</sup>)|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>6</sub>(CH<sub>2</sub>CH=CH)<sub>2</sub>(CH<sub>2</sub>)<sub>6</sub>- || 8,11-エイコサジエン酸|| &nbsp; ||Δ<sub>2</sub>Arc||&nbsp;
 
|-
 
|20:3(n-9)||20:3(Δ<sup>5,8,11</sup>)|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>6</sub>(CH<sub>2</sub>CH=CH)<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>)<sub>3</sub>- ||5,8,11-エイコサトリエン酸||[[ミード酸]] ||Δ<sub>3</sub>Arc||&nbsp;
 
|- 
 
|20:4(n-6)||20:4(Δ<sup>5,8,11,14</sup>)|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>CH=CH)<sub>4</sub>(CH<sub>2</sub>)<sub>3</sub>- ||5,8,11-エイコサテトラエン酸||[[アラキドン酸]]||Δ<sub>4</sub>Arc||-49.5
 
|-
 
|colspan="2"|22:0|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>20</sub>- ||ドコサン酸||[[ベヘン酸]]||Beh||81.5
 
|-
 
|colspan="2"|24:0|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>22</sub>- ||テトラコサン酸||[[リグノセリン酸]]||Lig||86.0
 
|- 
 
|colspan="2"|24:1|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>7</sub>CH<sub>2</sub>CH=CH(CH<sub>2</sub>)<sub>13</sub>- ||''cis''-15-テトラコサン酸||ネルボン酸||Ner||&nbsp;
 
|-
 
|colspan="2"|26:0|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>24</sub>- ||ヘキサコサン酸||セロチン酸||Crt||&nbsp;
 
|-
 
|colspan="2"|28:0|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>26</sub>- ||オクタコサン酸||モンタン酸||Mon||&nbsp;
 
|-
 
|colspan="2"|30:0|| -(CH<sub>2</sub>)<sub>28</sub>- ||トリアコンタン酸||メリシン酸||&nbsp;||&nbsp;
 
|}
 
 
 
不飽和脂肪酸は、ω3 系列か、ω6 系列かをはっきりさせるため、20:5 ω3あるいは20:5(n-3)と表記することもある。
 
 
==化学的性質==
 
炭素数10以上の飽和脂肪酸の融点は鎖長の順に高くなり炭素数30の トリアコンタン酸の融点は 93.6 ℃だが、炭素数9以下の飽和脂肪酸では解離、水素結合によるクラスター形成等様々な原因で、炭素鎖の長さの順になる訳ではない。炭素数2の酢酸では 16.7 ℃なのに炭素数5のペンタン酸が最も低く &minus;34.5 ℃である。
 
 
==生化学==
 
脂肪酸は[[生合成]]を受ける際に炭素数が2個ずつ増加していくため、基本的には炭素数が偶数個の脂肪酸が大半を占めるが、[[α酸化]]を受けることによって炭素数が奇数個の脂肪酸が合成されることもある。
 
 
[[ヒト]]を含む多くの生体内ではエネルギー源として好気的に[[代謝]]される([[β酸化]])。[[カルニチン]]は体内においてはほとんどが[[筋肉]]細胞に存在しており、筋肉細胞内において脂肪酸を[[ミトコンドリア]]内部に運搬する役割を担う。[[ミトコンドリア内膜]]はアシルCoAを直接透過しないため、カルニチンが脂肪酸[[アシル基|アシル]]運搬体の役割を果たす(動植物共通)。脂肪酸アシルCoAはカルニチンと一時的に結合し、脂肪酸アシルカルニチンを生成する。この反応は[[ミトコンドリア外膜]]に埋め込まれたカルニチンアシルトランスフェラーゼI (carnitine acyltransferase I) により触媒される。その後、脂肪酸はミトコンドリア内でβ酸化を受け酢酸にまで分解されながら、生成した[[アセチルCoA]]は[[クエン酸回路]]を通じてエネルギーに転換される。
 
 
==飽和脂肪酸==
 
{{main|飽和脂肪酸}}
 
[[飽和脂肪酸]]は同じ炭素数の[[不飽和脂肪酸]]に比べて、高い[[融点]]を示す。飽和脂肪酸は、食物から摂取され、また、体内でアセチルCoAから生合成される。
 
 
===飽和脂肪酸生合成系===
 
[[画像:説明図 酵素 複合酵素.jpg|thumb|right|複脂肪酸生合成系<br />クリックで拡大・解説]]
 
[[脂肪酸の合成|脂肪酸生合成]]は[[アセチルCoA]](炭素数2)を出発物質として、ここにマロニルCoA(炭素数3)が脱炭酸的に結合していく経路である。すなわち、炭素数2個ずつ反応サイクルごとに増加し、任意の炭素鎖を持った脂肪酸が作成されることとなる。
 
 
また、脂肪酸生合成反応が起きるには[[補酵素A]]は用いられず、[[アシルキャリアータンパク質]] (ACP) に[[アセチル基]]が結合したアセチルACPおよびマロニルACPが実際の反応をになうこととなる。以下に反応系を示す。
 
#アセチルCoA(C2) + CO<sub>2</sub> + [[アデノシン三リン酸|ATP]] → マロニルCoA(C3) + [[アデノシン二リン酸|ADP]] + [[リン酸|P<sub>i</sub>]]
 
#アセチルCoA + ACP → アセチルACP + [[補酵素A|SH-CoA]]
 
#マロニルCoA + ACP → マロニルACP + SH-CoA
 
#アセチルACP + マロニルACP → アセトアセチルACP(C4) + CO<sub>2</sub> + ACP
 
#アセトアセチルACP + [[ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸|NADPH]] → βヒドロキシブチリルACP(C4) + NADP<sup>+</sup>
 
#βヒドロキシブチリルACP → 2''E''-ブテノイルACP(C4) + H<sub>2</sub>O
 
#2''E''-ブテノイル + NADPH → ブチリルACP(C4) + NADP<sup>+</sup>
 
#ブチリルACP + マロニルACP → カプリルACP(C6) + ACP + CO<sub>2</sub>
 
8.の反応は4.の反応と同じである。このように炭素数2個ずつの脂肪酸炭素鎖の伸長が行なわれる。これはC<sub>16</sub>アシル化合物ができあがるまで続けられ、最終的に[[チオエステラーゼ]]によって[[パルミチン酸]]とACPに[[加水分解]]される。
 
 
なお、上記の反応を触媒する酵素は以下の通りである。
 
#アセチルCoAカルボキシラーゼ
 
#アセチルトランスフェラーゼ
 
#マロニルトランスフェラーゼ
 
#3-ケトアシルシンターゼ
 
#3-ケトアシルレダクターゼ
 
#3-ヒドロキシアシルデヒドラターゼ
 
#エノイルレダクターゼ
 
#3-ケトアシルシンターゼ
 
 
飽和脂肪酸を取り過ぎると、カロリー不足でない限り血清総[[コレステロール]]濃度を上昇させ、[[虚血性心疾患]]を起こしやすくすると言われている。
 
 
飽和脂肪酸は、WHO/FAOが肥満問題に対する戦略のひとつとして摂取制限を挙げている<ref>5.2 Recommendations for preventing excess weight gain and obesity, [http://www.who.int/hpr/NPH/docs/who_fao_expert_report.pdf DIET,NUTRITION AND THE PREVENTION OF CHRONIC DISEASES], pp.61-71, Joint WHO/FAO Expert Consultation, 2003.</ref>。
 
 
==不飽和脂肪酸==
 
{{main|不飽和脂肪酸}}
 
[[飽和脂肪酸]]はエネルギー代謝に重要な役割を果たすが、[[不飽和脂肪酸]]の役割はそれとは異なる。1930年代の動物実験により不飽和脂肪酸を欠くことで、皮膚障害、不妊などが引き起こされることからG.O.BurrあるいはH.M.Evansにより[[リノール酸]]、[[α-リノレン酸]]などが摂取することが必須の[[栄養素 (栄養学)|栄養素]]である[[必須脂肪酸]](ビタミンF)であることが示された。畜産動物の肉に割合多く含まれる飽和脂肪酸は、必須栄養素ではなく、[[食生活指針]]などでも病気との関連が示され、多くの摂取は推奨されていない。その後[[不飽和脂肪酸#高度不飽和脂肪酸の生理活性|高度不飽和脂肪酸]]も[[プロスタグランジン]]類の原料や新生児・乳児の中枢神経系の発育の為に必須であることが示された。<ref>『世界大百科事典』、必須脂肪酸、平凡社、1998年</ref><ref name="脂質の科学" />
 
 
===一価不飽和脂肪酸===
 
16:0のパルミチン酸は、長鎖脂肪酸伸長酵素により、18:0の[[ステアリン酸]]に伸張される。ステアリン酸は、体内で[[ステアロイルCoA 9-デサチュラーゼ]](Δ9-脂肪酸デサチュラーゼ)によりステアリン酸のw9位に二重結合が生成されて[[ω-9脂肪酸]]の一価不飽和脂肪酸である18:1の[[オレイン酸]]が生成される{{要出典|date=2012年10月}}。
 
 
===多価不飽和脂肪酸===
 
植物及び微生物中では、ω6位に二重結合を作る[[Δ12-脂肪酸デサチュラーゼ]] により[[オレイン酸]]の二重結合を一個増やしてリノール酸を生成することができる。さらに植物及び微生物中では、ω3位に二重結合を作る[[デサチュラーゼ|Δ15-脂肪酸デサチュラーゼ]] により[[リノール酸]]の二重結合を一個増やして[[α-リノレン酸]]を生成することができる<ref name=kinjo>[http://www.kinjo-u.ac.jp/orc/document/topic1.pdf I章 最新の脂質栄養を理解するための基礎 ― ω(オメガ)バランスとは?] 『 [http://www.kinjo-u.ac.jp/orc/research/topic.html 脂質栄養学の新方向とトピックス]』</ref>{{信頼性要検証|date=2012年10月}}。
 
ヒトを含む動物は、[[ステアリン酸]]からオレイン酸を生成する[[Δ9-脂肪酸デサチュラーゼ]]を有してはいるものの、Δ12-脂肪酸デサチュラーゼもΔ15-脂肪酸デサチュラーゼもどちらも有していないので、リノール酸もα-リノレン酸もどちらも自ら合成することができない。このため[[ω-3脂肪酸]]と[[ω-6脂肪酸]]はともに[[必須脂肪酸]]となっている。
 
 
====ω-6脂肪酸====
 
{{Main|ω-6脂肪酸}}
 
ヒトを含めた動物の体内では、代表的なω-6脂肪酸であるリノール酸から出発して[[リノレオイルCoAデサチュラーゼ]](Δ6-脂肪酸デサチュラーゼ)により[[γ-リノレン酸]]が生成され、さらに[[アラキドン酸]]へ変換される。さらに、このアラキドン酸(20:4(n-6))から変換されて生成される炎症・アレルギー反応と関連した強い生理活性物質であるω-6[[プロスタグランジン]]、n-6[[ロイコトリエン]]等の[[オータコイド]]類は、[[アテローム性動脈硬化症]]、[[喘息]]、[[関節炎]]、[[血管]]の病気、[[血栓症]]、[[免疫炎症]]の過程、[[腫瘍]]増殖における過度のω-6作用を抑制する調合薬開発の標的となっている<ref name=kinjo/>。n-3とn-6エイコサノイド前駆体の生成について代謝酵素が共通しているため、n-6脂肪酸とn-3脂肪酸とが競争的な相互作用をする。
 
 
====ω-3脂肪酸====
 
{{Main|ω-3脂肪酸}}
 
ヒトを含めた動物の体内ではΔ6-脂肪酸デサチュラーゼにより18:3(n-3)の[[α-リノレン酸]](ALA)のΔ6の位置に不飽和結合を作り炭素2個伸張して20:4(n-3)の[[エイコサテトラエン酸]]を生成し、Δ5-脂肪酸デサチュラーゼにより不飽和結合を増やして20:5(n-3)の[[エイコサペンタエン酸]](EPA)を生成し、このエイコサペンタエン酸から22:5(n-3)のドコサペンタエン酸(DPA)を経るかSprecher's shuntと呼ばれる経路いずれかを経て22:6(n-3)の[[ドコサヘキサエン酸]](DHA)が生成される(詳細は[[デサチュラーゼ]]を参照のこと。)<ref name=kinjo/>。このようにヒトを含めた多くの[[動物]]は体内で[[α-リノレン酸]]を原料としてEPAやDHAを生産することができる。
 
 
[[細胞膜]]は流動性を持ち、脂質や膜タンパクは動いている。この流動性は膜の構成物質で決まる。たとえば、[[リン脂質]]を構成する脂肪酸の不飽和度(二重結合の数)に影響され、二重結合を持つ炭化水素が多いほど(二重結合があるとその部分で炭化水素が折れ曲がるので)リン脂質の相互作用が低くなり流動性は増すことになる。例えばDHAは不飽和度が極めて高く細胞膜の流動性の保持に寄与している。
 
 
神経細胞は、軸索や樹状突起などの凹凸の多い入り組んだ構造を有しているため、膜成分が極端に多くなっている<ref>浜崎智仁「[http://www.kinjo-u.ac.jp/orc/document/topic6.pdf 13:00 ~13:40脂質と精神]」金城学院大学/日本脂質栄養学会共催シンポジウムの抄録 6章p10『 [http://www.kinjo-u.ac.jp/orc/research/topic.html 脂質栄養学の新方向とトピックス]』</ref>。
 
 
DHAは[[精液]]や[[脳]]、[[網膜]]の[[リン脂質]]に含まれる脂肪酸の主要な成分である。
 
 
===トランス脂肪酸===
 
[[Image:Isomers_of_oleic_acid.png|thumb|right|トランス脂肪酸(上)とシス脂肪酸(下)]]
 
[[トランス脂肪酸]]は、構造中に[[トランス (化学)|トランス型]]の[[二重結合]]を持つ。トランス脂肪酸は、天然の[[植物油]]にはほとんど含まれず、[[水素]]を付加して硬化した[[硬化油|部分硬化油]]を製造する過程で発生するため、それを原料とする[[マーガリン]]、[[ファットスプレッド]]、[[ショートニング]]などに含まれる。多量に摂取すると[[コレステロール#生化学|LDLコレステロール]](悪玉コレステロール)を増加させ[[心臓病|心臓疾患]]の[[リスク]]を高めるといわれ、[[2003年]]以降、トランス脂肪酸を含む製品の使用を規制する国が増えている。
 
 
[[植物油]]や[[魚油]]などから得られる天然の不飽和脂肪酸の場合、ほとんどすべての二重結合は[[シス (化学)|シス型]]をとり、折れ曲がった構造をもつ。一方、[[酸化]]による[[劣化]]が起こりやすいという面で扱いにくい不飽和脂肪酸から、酸化による劣化が起こりにくく扱いやすい[[飽和脂肪酸]]を製造するために[[水素]]を添加(水添)し[[水素化]]させると、飽和脂肪酸にならなかった一部の不飽和脂肪酸のシス型結合がトランス型に変化し([[エライジン化]]し)、直線状の構造を持つようになる。このような不飽和脂肪酸をトランス脂肪酸という。
 
 
==遊離脂肪酸==
 
脂肪酸の生合成は、主に[[アセチルCoA]]の縮合による。この酵素は、2つの炭素原子グループを付加するので、ほとんどすべての天然の脂肪酸は偶数の炭素原子数を有することになる。
 
 
生物における他の化合物と結合していない脂肪酸あるいは遊離脂肪酸は、[[中性脂肪]]の分解に由来する。遊離脂肪酸は水に不溶であるため、これらの脂肪酸は[[血漿]][[蛋白]][[アルブミン]]に結合して、可溶化、循環輸送されている。血中の遊離脂肪酸の濃度は、アルブミン結合部位の有無の状況によって制限される。
 
 
遊離脂肪酸は、[[リポ蛋白質リパーゼ]](LPL)によって[[リポ蛋白質]]から「放出され」て、[[脂肪細胞]]に入る。そこで、それは、[[グリセロール]]とともに[[エステル|エステル化]]されることによって、[[トリグリセリド]]へと再構成される。脂肪細胞には、トリグリセリド維持における重要な生理的役割と[[インスリン]]耐性と遊離脂肪酸水準を決定する役割がある。
 
 
==脚注==
 
<references/>
 
 
==関連項目==
 
{{Commons|Fatty acids}}
 
*[[β酸化]]
 
*[[脂質]]
 
*[[生体膜]]
 
*[[必須脂肪酸]]
 
*[[脂肪酸の合成]]
 
 
==外部リンク==
 
*[http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/houkoku/1299179.htm 文部科学省 五訂増補 日本食品標準成分表 脂肪酸成分表編]
 
*[http://ndb.nal.usda.gov/ USDA National Nutrient Database]
 
  
 
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[[Category:脂肪酸|*]]
 
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[[Category:栄養素|しほうさん]]
 
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2018/11/13/ (火) 00:04時点における最新版

脂肪酸(しぼうさん、Fatty acid)

直鎖式炭化水素基の端に1個のカルボキシル基をもつ酸。油脂やろうの中にエステルの形で含まれているため,脂肪酸の名がつけられた。特に多量に存在しているのは炭素原子数 16,18のものである。また飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり,不飽和のものは飽和のものより融点が低く,液状のものが多い。二重結合を2個,3個もつ脂肪酸にはヒトの栄養に必要な不可欠脂肪酸 (リノール酸,リノレン酸) といわれるものがある。


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