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(1万4400年前のパン化石や英語表記(Bread)ついて加筆しました。)
 
 
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{{Otheruses|食品}}
 
{{特殊文字}}
 
 
[[ファイル:Various grains.jpg|thumb|right|250px|オオムギとエンバクのパン]]
 
[[ファイル:Various grains.jpg|thumb|right|250px|オオムギとエンバクのパン]]
'''パン'''({{lang-pt-short|pão}}<ref group="注釈">{{IPA-pt|ˈpɐ̃w̃}} '''パン'''ウン</ref><ref>[http://www.linguee.com/english-portuguese/search?sourceoverride=none&source=portuguese&query=p%E3o pão] (Linguee)</ref>)とは、[[小麦粉]]や[[ライムギ|ライ麦]]粉といった[[穀物]]粉に[[水]]、[[出芽酵母|酵母]]、[[塩]]などを加えて作った[[パン生地|生地]]を[[発酵]]させた後、[[焼く|焼いた]][[食品]]。世界の広い地域で[[主食]]となっている。
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'''パン'''({{lang-pt-short|pão}}<ref group="注釈">{{IPA-pt|ˈpɐ̃w̃}} '''パン'''ウン</ref><ref>[http://www.linguee.com/english-portuguese/search?sourceoverride=none&source=portuguese&query=p%E3o pão] (Linguee)</ref>)
 
 
== 概要 ==
 
基本的に、小麦粉やライ麦粉などに水・[[酵母]](イースト)を加えて[[パン生地]]にし、それを焼いた食品を指す。発酵のための酵母(種)と[[糖類]]([[砂糖]]など)をセットで加えることも一般的である。なお、出芽酵母を入れずに生地をつくるパンもあり、これを「[[無発酵パン]]」「種なしパン」などと言う(その場合、出芽酵母で発酵させてから焼いたパンのほうは「発酵パン」と言う)。無発酵パンとしては、生地を薄く延ばして焼く[[ロティ]]や[[チャパティ]]などがあり、[[アフリカ]]、[[中東]]から[[インド]]までの一帯で盛んに食べられている。なお、生地を発酵させるのは主として気泡を生じさせ膨張させるためである。出芽酵母で時間をかけて気泡を生じさせる代わりに、[[ベーキングパウダー]]や[[重曹]]を加えることで簡便に気泡を生じさせるものもある。また、生地に[[レーズン]]、[[種実類|ナッツ]]などを練り込んだり、別の食材を生地で包んだり生地に乗せたりして焼くパンもある(変種として、焼かない[[蒸しパン]]や[[揚げパン]]もある)。
 
 
 
パンは多くの国で[[主食]]となっている。[[アブラハムの宗教]]では儀式(ミサ)において用いられる。
 
 
 
== 歴史 ==
 
[[ファイル:Pompei pane.jpg|thumb|right|200px|ポンペイで出土したパン]]
 
[[ファイル:Bakermiddleages.jpg|thumb|right|200px|中世のパン職人]]
 
[[ファイル:Panyasan 01.jpg|thumb|right|200px|日本に定着したパン販売店<br />(大阪市北区)]]
 
人類は[[農耕]]・[[農業]]を始めるより早く、採取した植物でパンを焼いていたと推測される。[[ヨルダン]]では約1万4400年前の[[化石]]化したパンが発掘されている<ref>[http://www.pnas.org/content/early/2018/07/10/1801071115 “Archaeobotanical evidence reveals the origins of bread 14,400 years ago in northeastern Jordan”]『[[米国科学アカデミー紀要]]』(PNAS,July 16, 2018)2018年7月19日閲覧。</ref>。
 
 
 
[[テル・アブ・フレイラ]][[遺跡]]で最古の小麦とライ麦が発見されている。麦は外皮が固いため炒ったり、石で挽いて粉状にしたりしたものに水を加えて煮て[[粥]]状にして食べ始めたと発掘物から推定される。また、[[チャタル・ヒュユク]]遺跡の後期において、[[パンコムギ|パン小麦]](寒暖に強いため広範囲で栽培でき、[[グルテン]]が多いため膨らますことができる)が発見されている。なお、パン小麦の親が二粒小麦(野生種同士の[[ヒトツブコムギ|一粒小麦]]と[[クサビコムギ|クサビ小麦]]の子)と野生種の[[タルホコムギ|タルホ小麦]]であることを発見したのは[[木原均]]である<ref>参考文献:池部誠『遥かなる野菜の起源を訪ねて〜イネ・ムギ・野菜 日本への道〜』ナショナル出版</ref>。
 
 
 
トゥワン遺跡([[スイス]])の下層(紀元前3830-3760)からは「人為的に発酵させた粥」が発見され、中層(紀元前3700-3600)からは「灰の下で焼いたパン」と「パン窯状設備で焼いたパン」が発見されている<ref>参考文献:舟田詠子『パンの文化史』朝日新聞社</ref>。粥状のものを数日放置すると、自然の[[出芽酵母]]菌や[[乳酸菌]]がとりつき、自然発酵をはじめ、[[サワードウ]]ができる。当初これは腐ったものとして捨てられていたが、捨てずに焼いたものが食べられるだけでなく、軟らかくなることに気付いたことから、現代につながる発酵パンの製法が発見されたと考えられている。
 
 
 
パンは当初、[[オオムギ|大麦]]から作られることが多かったが、しだいに小麦でつくられることのほうが多くなった。[[古代エジプト]]ではパンが盛んに作られており、[[給料]]や[[税金]]もパンによって支払われていた。発酵パンが誕生したのもこの時代のエジプトである。[[古代ローマ]]時代になると、パン屋や[[菓子パン]]も出現した。[[ポンペイ]]から、当時のパン屋が発掘されている。すでに石でできた大型の碾臼(ひきうす)が使われていた。ポンペイで出土したパンとほぼ同一の製法・形のパンは現代でも近隣地方でつくられている。この時代から[[中世]]までは、パンの製法等には大きな変化はなかった。
 
 
 
ヨーロッパ中世においては小麦のパンが最上級のパンとされたが、特に農民や都市下層住民は小麦に混ぜ物をしたパンやライ麦パンを食べることが多かった。[[飢饉]]の際にはさらに混ぜ物の量は多くなった。また、当時は大きな丸いパンを薄く切ったものを[[トレンチャー (食器)|トランショワール]]と称して[[皿]]の代わりに使用していたことや、穀物以外の栄養源が不足していたこともあり、[[15世紀]]の[[フランス]]・[[オーヴェルニュ]]の貴族はひとりあたり500kgのパンを年間に消費していた<ref>「中世ヨーロッパ 食の生活史」pp56-57 ブリュノ・ロリウー著 吉田春美訳 原書房 2003年10月4日第1刷</ref>。このころにはすでに都市には[[パン屋]]が成立していたが、都市の当局は住民の生活のためにパンの価格を一定に抑えるよう規制を敷いており、このため小麦など原料の価格が高くなると、価格は一定の代わりにパンの重さは軽くなっていったり混ぜ物が多くなったりした<ref>「中世ヨーロッパ 食の生活史」pp105-106 ブリュノ・ロリウー著 吉田春美訳 原書房 2003年10月4日第1刷</ref>。しかし、都市の当局は一般にパンの質に対しても厳しい規制を敷くのが常であった。パンは人々の生活に欠かせないものであり、パン屋の[[ツンフト]]は肉屋とともに半ば公的な地位を持ち、大きな力を持つことが多かった。この場合のパン屋とは自ら粉を練りパンを焼き上げるまでを一貫して行うもののことで、市民が練った粉を持ち込んで、手間賃をもらってパンを焼くものとの間には明確な格差があった。農村においては領主の設置したパン焼き窯を領民は利用せねばならないという使用強制権が設定されていたが、のちには農村でもパン屋によってパンが焼かれるようになっていった<ref>「中世を旅する人びと」pp118-123 [[阿部謹也]] 平凡社 1978年6月14日初版第1刷</ref>。
 
 
 
[[18世紀]]頃からヨーロッパでは徐々に市民の生活が向上し、また農法の改善や生産地の拡大によって小麦生産が拡大するとともに小麦が食生活の中心となっていき、量の面でもライムギにかわって小麦が中心となっていった<ref>「商業史」p123 石坂昭雄、壽永欣三郎、諸田實、山下幸夫著 有斐閣 1980年11月20日初版第1刷</ref>。その後、大型の[[オーブン]]の発明や[[製粉]]技術の発達により、大規模なパン製造業者が出現した。[[19世紀]]に入って[[微生物学]]の発達により酵母の存在が突き止められ、これを産業化して野生の[[出芽酵母]]を選抜し製パンに適した菌株を単一培養したイーストを使うことができるようになった。また、酵母の代わりに[[重曹]]や[[ベーキングパウダー]]で膨らませたパンも作られるようになったほか、現代では一連の冷凍→解凍→発酵までの生地の発酵管理に自動温度管理を行う発酵室を用いるなど発酵の技術の向上もみられる。
 
 
 
=== 表記・語源 ===
 
日本では、古くは「蒸[[餅]]」「麦餅」「麦麺」「焙菱餅」<ref>敬学堂主人、『西洋料理指南』下p38左、1872年、東京、東京書林雁金屋 [{{NDLDC|849074/41}}]</ref>、「麺包」とも表記したが、現代[[日本語]]では[[ポルトガル語]]のパン({{lang|pt|pão}})に由来する<ref>オンライン版[[日本国語大辞典]], [[JapanKnowledge]] (2015-05-25参照)</ref>「パン」という語を用い、[[片仮名]]表記するのが一般的である。[[フランス語]]({{lang|fr|pain}})や[[スペイン語]]({{lang|es|pan}})でもパンと言い、[[イタリア語]]({{lang|it|pane}})でパネという。これらは[[ラテン語]]のパン、食料を意味する「panis:パニス」<ref>田中秀央編『羅和辞典』研究社</ref>を語源とした単語である<ref>{{Citation|和書 |last=宇田川 |first=政喜 |last2=遠藤 |first2=智子 |last3=加藤 |first3=綾子 |last4=橋村 |first4=弘美 |editor=日仏料理協会 |year=2007 |title=フランス 食の事典(普及版) |publisher=株式会社[[白水社]] |page=495 |isbn=978-4-560-09202-6}}</ref>。日本統治時代に日本語を経由する形で、[[台湾]]、[[台湾語]]、[[客家語]]でもパンと呼ばれ、[[大韓民国|韓国]]でも、[[韓国語]]でパン({{lang|kr|빵}})と呼んでいる。
 
 
 
[[英語]]では“[[:en:Bread|Bread]]”と呼ぶ。
 
 
 
[[中国語]]圏での[[漢字]]表記は「麵麭」({{繁体字|麵包}}、{{簡体字|面包}}<ref>[https://www.travel.taipei/ja/shop/details/876 福利麺包][[台北市]]政府観光伝播局(2018年7月19日閲覧)</ref>など。
 
 
 
=== 日本 ===
 
{{See also|食パン}}
 
[[安土桃山時代]]に[[ポルトガル]]の[[宣教師]]によって西洋のパンが日本へ伝来した。しかし、[[江戸時代]]に[[日本人]]が主食として食べたという[[記録]]はほとんど無い。一説には[[キリスト教]]と密着していたために製造が忌避されたともいわれ、また、当時の人々の[[口]]には合わなかったと思われる。江戸時代の料理書にパンの製法が著されているが、これは現在の[[中華人民共和国|中国]]における[[マントウ]]に近い製法であった。[[徳川幕府]]を訪れた[[オランダ]]からの使節団にもこの種のパンが提供されたとされる。
 
 
 
[[1718年]]発行の『御前菓子秘伝抄』には、酵母菌を使ったパンの製法が記載されている。酵母菌の種として[[甘酒]]を使うという本格的なものであるが、実際に製造されたという記録はない。最初にパン([[堅パン]])を焼いた日本人は江戸時代の末の[[江川英龍]]とされる。江川は[[兵糧]]としてのパンの有用性に着目し、[[1842年]][[4月12日]]に[[伊豆]]の[[韮山町]]の自宅でパン焼き[[かまど]]を作成し、パンの製造を開始した。このため、彼を日本のパン祖と呼ぶ<ref>「コムギの食文化を知る事典」p92 岡田哲 東京堂出版 平成13年7月15日初版発行</ref>。
 
 
 
[[明治時代]]に入ると[[文明開化]]の波のもとパンも本格的に日本に上陸するものの、[[米]]食志向の強い日本人には主食としてのパンは当初受け入れられなかった。この状況が変化するのは、[[1874年]]に[[木村屋總本店]]の[[木村安兵衛]]が[[あんパン]]を発明してからである。これは好評を博し、以後これに倣って次々と[[菓子パン]]が開発され、さらにその流れで[[惣菜パン]]も発達した。次いで、[[テオドール・ホフマン]]が桂弥一(軍人)にパン食を勧めて[[脚気]]が治り評判となり、脚気防止のためにパン食導入の流れができた。日本海軍では[[1890年]](明治23年)2月12日の「海軍糧食条例」の公布によっていち早くパン食が奨励されていた([[日本の脚気史#麦食縮小以降、脚気が増加する海軍|日本の脚気史]] 参照)。
 
 
 
[[第二次世界大戦]]後、[[学校給食]]が多くの学校で実施されるようになると、[[アメリカ合衆国]]からの援助物資の小麦粉を使ってパンと[[脱脂粉乳]]の学校給食が開始され、これが日本におけるパンの大量流通のきっかけとなった。これにより、[[1955年]]以降、日本でのパン消費量は急増していった<ref>「料理と食シリーズ8 パン・パン料理・パン菓子」p115 旭屋出版 平成6年5月25日初刷発行</ref>。
 
 
 
現在、日本においてパン食の割合が特に高いのは[[近畿地方]]である<ref>平成16年家計調査 近畿第1位 年間57.8kg 関東は47.9kg、東北・沖縄は33kg台 県庁所在地別では、1位 大津66.0kg、2位 神戸62.5kg、3位 奈良58.8kg(総務省統計局)</ref>。日本におけるパンの年間生産量は、2005年には食パンが601552t、菓子パンが371629t、そのほかのパンが223344tとなっており、約半分を食パンが占めている。同年の1世帯当たりの年間パン購入量は食パン19216g、そのほかのパンが20725gである<ref>「パンの事典」p113 成美堂出版編集部編 成美堂出版 2006年10月20日発行</ref>。日本のパンの生産量は平成3年に119万3000t、平成23年に121万5000tと、年度ごとにやや増減があるものの総体としてはこの20年ほぼ横ばいが続いている<ref>{{PDFlink|[http://www.j-margarine.com/datalist/pdf/2_pan.pdf パン・その他小麦粉製品の生産量の推移]}} 日本マーガリン工業会 2013年1月19日閲覧</ref>。しかし、主食であるコメの消費量が減少を続けていることから相対的にパンの比重が増加し、[[2011年]]度の総務省家計調査においては1世帯当たりのパンの購入金額が史上初めてコメを上回った<ref>[http://www.nca.or.jp/shinbun/about.php?aid=4084 『パンの購入金額初めて米を上回る 総務省家計調査・JC総研の「米の消費行動に関する調査」』] 全国農業新聞 2012-8-17 2013年1月19日閲覧</ref>。
 
 
 
== 原料 ==
 
[[File:Japanese_Rice_Bread.JPG|thumb|米粉パンの一例]]
 
一般的に生地に用いられる穀物粉は次のようなものがある。
 
* [[小麦粉]]
 
* [[ライムギ|ライ麦]]粉
 
* [[オオムギ]]粉
 
* [[麦芽]]粉
 
* [[トウモロコシ]]粉
 
* [[エンバク]]粉
 
* [[米粉]]
 
これらのうち、最も一般的なパン製造の材料は小麦粉である。これは、小麦粉の中には[[グルテン]]が含まれるため、水を加えてこねることで粘りが出るうえ、酵母を使って発酵させると生地が膨らみ、柔らかく美味なパンが作れるからである。これに対し、オオムギやライムギといったほかの材料ではグルテンが形成されないため、パンは硬く重いものになる。ライムギの場合、グルテンがないため酵母で膨らませられず、乳酸菌主体のサワードウによって膨らませるが、小麦粉に比べて膨らみは悪く重いパンとなる。このほか、[[メキシコ]]の[[トルティーヤ]]のようにトウモロコシ粉を用いたり、[[ブラジル]]の[[ポン・デ・ケイジョ]]の[[キャッサバ]]粉、[[エチオピア]]の[[インジェラ]]に用いる[[テフ]]の粉など、世界各地では様々な独自の材料を用いている。近年では、日本において米の利用促進や製造技術の進歩により、米粉から作られる[[米粉パン]]の利用が増加している。
 
 
 
小麦粉には様々な種類があるが、パン作りに主に使用されるものは[[強力粉]]である。これは、強力粉にはグルテンが多く含まれるためよく膨らみ、ふっくらとしたパンを作ることができるためである。これに対し、あまり膨らませる必要がなくどっしりとした[[フランスパン]]などを作る際には、強力粉より1%ほど[[タンパク質]]の少ない準強力粉(フランス粉)が使用される。
 
 
 
出芽酵母(イースト)は、小麦による発酵パンを作る際には必須の材料である。パン作りに使用される酵母は大きく分けて、工業生産された酵母と自家採捕した酵母(天然酵母)とに分けられる。工業生産されたイーストは、生イースト、ドライイースト、インスタントドライイーストの3種からなる。生イーストは一週間ほどで使用期限が過ぎてしまうため、乾燥させて長期保存ができるようにしたドライイーストが作られ、さらに予備発酵過程が不要で直接粉に混ぜ込めるインスタントドライイーストが開発された。ライムギの場合には上記のように、乳酸菌と酵母を主体に複数の微生物を共培養させた伝統的なパン種である自家酵母種の[[サワードウ]]が使われる。自家酵母種にはほかにもアンパンなどに使われる[[コメ]]と[[麹]]で作る酒種や、[[ホップ]]種、[[ヨーグルト]]種、レーズン種など、様々な酵母種が存在する<ref>「パンシェルジュ検定3級公式テキスト」pp66-71 実業之日本社 2009年8月20日初版第1刷</ref>。また、[[スコーン]]などのように発酵ではなく[[ベーキングパウダー]]や[[重曹]]などの膨張剤を使って膨らませるクイックブレッドと呼ばれる種類もある。なお、パン生地の発酵過程においては環境中の常在(人為添加されていない)乳酸菌は食味を改善する重要な働きをしている<ref name=jslab1997.9.5>岡田早苗、[http://doi.org/10.4109/jslab1997.9.5 パン生地発酵と乳酸菌[前編]] 日本乳酸菌学会誌 Vol.9 (1998-1999) No.1 p.5-8, {{DOI|10.4109/jslab1997.9.5}}</ref><ref>岡田早苗、[http://doi.org/10.4109/jslab1997.9.82 パン生地発酵と乳酸菌[後編]] 日本乳酸菌学会誌 Vol.9 (1998-1999) No.2 p.82-86, {{DOI|10.4109/jslab1997.9.82}}</ref>。
 
 
 
上記の生地材料に、必要に応じて各種材料を加える。ほぼどのパンにも使用されるものは上記のほかには[[水]]と[[食塩]]のみであり、この主材料4種(穀物粉、酵母、水、食塩)のみで作られたもの、またはほかの副材料の配合が少ないものは「リーン」なパンと呼ばれ、余計な雑味が少なく穀物本来の味が生かされるために主に食事用のパンに用いられる。水は[[硬水]]よりも[[軟水]]のほうがパンが膨らみやすく良いとされる。塩には味を調えるほか、酵母の活動を遅らせたり、雑菌の活動を抑えたり、グルテンを強固にするなどの作用がある。
 
 
 
このほかの材料はパン作りに必須ではないが、パンの味や仕上がりに大きな影響を及ぼすため副材料としてよく使用される。[[砂糖]]、[[鶏卵]]、[[牛乳]]、[[バター]]、[[オリーブオイル]]、[[ラード]]、[[ショートニング]]などが主に使われる副材料である。こうした副材料を多く配合したパンは「リッチ」なパンと呼ばれ、甘くふっくらと仕上がるため菓子パンなどに多く使用される。また、大規模工場での製造によくつかわれる添加物として上記の他に[[炭酸水素ナトリウム]]、[[ソルビット]]、[[乳化剤]]、[[イーストフード]]、[[臭素酸カリウム]]、[[アスコルビン酸]](ビタミンC)、[[グリシン]]、[[タンパク質]]([[サケ]][[白子]]由来、[[大豆]]由来、小麦由来など)、[[着色料]]、[[増粘多糖類]]などがある。
 
 
 
生地以外に、[[種実類|ナッツ]]類、[[ドライフルーツ]]、[[ジャム]]、肉類、[[チーズ]]、生クリーム、[[豆]]類、[[野菜]]類、各種[[調味料]]などを用いる場合もある。これらは主にパンにトッピングしたり具として中に入れたりして使用することが多い。
 
 
 
=== 天然酵母表示問題 ===
 
「天然酵母」との言葉に対する統一的な定義は無く、現在の日本では'''野生酵母'''を使用して製作した物品に対して使用されている事が多い<ref name=jibt />。
 
 
 
『天然酵母表示問題』とは、工場由来の酵母(ドライイースト)やベーキングパウダーでは無く野生酵母を自家採集捕獲し培養した種を使用したパンに'''天然酵母種'''あるいは'''天然酵母'''などの様に'''天然'''を接頭語として使用する事で、
 
#『自然』『安全』『ヘルシー』の優良なイメージ付け
 
#工場由来の酵母が不健康との誤認を誘う表示
 
が行われている問題である<ref name=jibt>{{PDFlink|[http://www.jibt.com/image/tennenkobohyoji.pdf  天然酵母表示問題に関する見解] 日本パン技術研究所}}</ref>。背景には、日本のパン業界では「製パン用酵母」の呼称として、英語の「イースト」が慣用的に使用され、原料表示している<ref name=jibt />。しかし、野生酵母を独自に採集捕獲し培養してパン製造に用いる伝統的な手法は、優良株に遭遇出来た場合<ref>渡邉悟、篠原尚子、金井節子 ほか、「レーズンから分離した天然酵母のパン酵母としての特性」 聖徳栄養短期大学紀要 36, 1-6, 2005-12-20, {{naid|110006407761}}</ref>、人為添加していない乳酸菌の作用<ref name=jslab1997.9.5 />と相まって工場由来の酵母とは異なった複雑な美味しさをもったパンが生産出来ることもあるが、劣悪な野生酵母菌株に遭遇すると発酵力が弱く膨らみや風味に欠けるパンになってしまう。従って、品質安定性とコストの面から大量生産を行う工場では不安定な野生酵母は採用されずパン製造に適した株を選抜し純粋培養した「工場由来の酵母」<ref name=jibt /><ref>[http://www.oyc.co.jp/business/dry.html オリエンタル ドライイースト] オリエンタル酵母工業株式会社</ref><ref>[http://www.sala1.jp/shirakami/shirakami.html 白神こだま酵母について] 株式会社サラ秋田白神</ref>が使用されているが、この内容を正しく理解している一般消費者は少ない<ref name=jibt />。従って、天然酵母に変わる適切な表示が望まれるとする見解がある<ref name=jibt />。
 
 
 
== 種類と製法 ==
 
{{Main|製パン}}
 
まずパンは「膨らませるもの」と「膨らませないもの」とに大きく分けられる。膨らませないパンは「平焼きパン」「無発酵パン」「[[種無しパン]]」などと呼ばれ、中東からインドにかけての地域で盛んに食べられている。膨らませるものは「酵母を使って発酵させるもの」「種を使って発酵させるもの」「発酵させず膨張剤を使うもの(クイックブレッド)」の3種に分けられる。もっとも一般的なものは酵母を使って発酵させる小麦のパンである。
 
 
 
パン生地の作り方としてもっとも単純で古くからあるものは、材料をそのまま一度に混ぜ込んでこねる直捏ね法(ストレート法)であり、現在でも家庭でのパン作りにおいてはこの方法が主流である。これに対し、まず材料の70%程度を捏ねておいて発酵させ中種とし、それに残りの材料を混ぜ込んで作る中種法は、柔らかな生地ができるうえ調整がしやすく、大量生産に向いているため、大手のパン製造業者のほとんどが採用している。粉の20%から40%程度に同量の水と酵母を混ぜ込んでつくる液種法(水種法、ポーリッシュ法)や、一晩おいた中種を新しい生地の10%から20%混ぜて作る老麺法などの方法もある<ref>「パンシェルジュ検定3級公式テキスト」pp102-110 実業之日本社 2009年8月20日初版第1刷</ref>。
 
 
 
発酵させるパン作りの流れとしては、まず材料を混ぜ合わせ、捏ね上げて発酵させる。これを一次発酵と呼ぶ。中種法の場合はこのあと残りの材料を混ぜ込んでもう一度発酵させる。一次発酵が終わると、発酵したパン生地のガス(二酸化炭素)を抜き、状態をととのえた後でもう一度発酵させる(二次発酵)。二次発酵後、生地を切り分けて丸め、いったん生地を寝かせ熟成させる。寝かせた生地は成形し、この過程で再びこれまでにたまったガス(二酸化炭素)を抜いていく。パンの形が完成すると、もう一度最終的に発酵させ膨らませる。そして膨らんだ生地を焼き上げて、パンが完成する​{{要出典|date=2016年2月}}​。
 
 
 
;各国の傾向
 
各国の食文化との関係で、それぞれの国において好まれるパンの傾向は異なる。まず、原材料である小麦の開花・収穫時期である5月から8月に雨が多く降ると[[グルテン]]の形成が悪くなる為、フランスなどこの時期に雨が降りやすい地域では柔らかいパンが作りづらいため固いパンが作られる。次に、ヨーロッパではパンは[[主食]]であるため、あまり余計な味付けをせず小麦粉本来の[[味]]や[[香り]]を楽しむ。また、肉食が中心で硬い歯ごたえを好む傾向があるので、表面をあえて硬く焼き、表面のパリパリとした[[クリスピー]]な食感、かすかに漂う焦げた香り(ややスモーキーなフレーバー)と、中の白い部分の食感との[[コントラスト]]を楽しみ、それを好む傾向、それこそがパンの美味しさだと感じる傾向がある。ヨーロッパ人の中には、日本を旅行して表面までフニャフニャしたパンばかりがスーパーなどで売られているのを見て「こんなものはパンじゃない」と感想、不満を漏らす人もいる。それくらい、《'''クリスピーな食感'''》というのはヨーロッパ人にとって大切なものなのである。
 
 
 
一方、日本においては、主食の地位には[[米飯]]があったため、パンは主食としてよりもむしろ[[惣菜]]や[[菓子]]として主に発達した<ref group="注釈">{{要出典範囲|そのため、小麦本来の味や香りを楽しむことが忘れられがちである|date=2017年11月}}。</ref>。主食として使用される[[食パン]]においても、日本人は米飯というきわめて柔らかい主食に慣れていたため、米飯に似せて水分を多くしたやわらかなパンが好まれる傾向にある<ref>「料理と食シリーズ8 パン・パン料理・パン菓子」pp122-123 旭屋出版 平成6年5月25日初刷発行</ref>。
 
 
 
=== 製造工程の図解 ===
 
パンのできるまでの一つの例を以下に図示する。
 
{{gallery|title=パンのできるまで|lines=3|height=120
 
|File:Výroba chleba (8).JPG|1.  酵母と生地を完全に混ぜ合わせる。
 
|File:Výroba chleba (17).JPG|2.  生地からパン一個分を切り分け、形を整える。
 
|File:Výroba chleba (11).JPG|3.  棚に生地を入れるためのバスケットを準備する。
 
|File:Výroba chleba (12).JPG|4.  バスケットに生地がくっつかないようにあらかじめ粉を振っておく。
 
|File:Výroba chleba (24).JPG|5.  生地を粉を振ったバスケットに置く。
 
|File:Výroba chleba (25).JPG|6.  生地を暖かな場所に置き発酵させる。
 
|File:Výroba chleba (29).JPG|7.  生地に切れ込みを入れて成形し、発酵中にたまったガスを抜く。
 
|File:Výroba chleba (31).JPG|8.  生地を焼き上げる準備が整う。
 
|File:Výroba chleba (35).JPG|9.  生地をピールの上に乗せる。
 
|File:Výroba chleba (34).JPG|10. 生地をオーブンの中に入れ、焼き上げる。
 
|File:Výroba chleba (38).JPG|11. パンが完成する。
 
|File:Výroba chleba (44).JPG|12. 棚の上において冷却する。
 
}}
 
 
 
=== 製造と供給 ===
 
パンの市場規模は巨大なものであり、世界のかなりの国において[[製パン]]産業が成立している。大手食品企業による工業生産されたパンが大量に供給される一方、地域に密着した中小パン製造業者や、個人経営の[[ベーカリー]]など様々な種類の業者が存在する。
 
 
 
== 種類(地域別) ==
 
{{seealso|Category:パン}}
 
 
 
[[ファイル:Croissant.jpg|thumb|right|190px|クロワッサン]]
 
[[ファイル:Jean-Baptiste Siméon Chardin 028.jpg|thumb|right|190px|ブリオッシュ]]
 
[[ファイル:Kampsbrezel.jpg|thumb|right|190px|ブレーツェル]]
 
[[ファイル:Focaccia.png|thumb|right|190px|フォカッチャ]]
 
[[ファイル:Michetta (pane)1.JPG|thumb|right|190px|alt=ロゼッタ (イタリアのパン)|ロゼッタ]]
 
 
 
[[ファイル:Buttermilk-Scones-batch.jpg|thumb|right|190px|スコーン]]
 
[[ファイル:Praline Pear Danish Pastry.jpg|thumb|right|190px|デニッシュ]]
 
[[ファイル:Bagel.jpg|thumb|right|190px|ベーグル]]
 
[[ファイル:Shmura Matzo.jpg|thumb|right|190px|マッツァー]]
 
[[ファイル:NCI_flour_tortillas.jpg|thumb|right|190px|トルティーヤ]]
 
[[ファイル:Pão_de_queijo.jpg|thumb|right|190px|ポン・デ・ケイジョ]]
 
[[ファイル:Naan shiva.jpg|thumb|right|190px|ナーン]]
 
[[ファイル:Bean-jam-bun,anpan,katori-city,japan.JPG|thumb|right|190px|あんパン]]
 
[[ファイル:Syokupan.jpg|thumb|right|190px|食パン]]
 
[[ファイル:Curry-bun,curry-pan,katori-city,japan.JPG|thumb|right|190px|カレーパン]]
 
[[ファイル:Shaobing5.jpg|thumb|right|190px|焼餅(シャオビン)]]
 
[[ファイル:Uyghur Poshkal.jpg|thumb|right|190px|ポシュカル]]
 
[[ファイル:PineappleBun2.jpg|thumb|right|190px|菠蘿包(パイナップルパン)]]
 
[[ファイル:Canai.jpg|thumb|right|190px|ロティ・チャナイ]]
 
 
 
=== フランス ===
 
[[フランス]]
 
* '''パン''' (Le pain, 400 g のパン、バゲットとともに最も一般的)
 
* [[フランスパン|バゲット]] (La baguette, パンより細くて、250 g)
 
* プティ・パン(プチパン)(petits pains, 12cmぐらいのミニバゲット)
 
* [[ブール]] (La boule, 玉の形)
 
* [[ミシュ]] (La miche, 1 kg)
 
* [[フィセル]] (La ficelle)
 
* [[フランスパン|バタール]] (Le bâtard, バゲットと同じ重さで、パンと同じ太さ)
 
* [[エピ]] (L'épi)
 
* [[フランスパン|パン・クーペ]] (Pain coupé)
 
* [[パン・ド・ドゥ・リーヴル]] (Pain de deux livres)
 
* [[パン・ド・ミー]] (Pain de mie, [[食パン]])
 
* [[パン・ド・カンパーニュ]] (Pain de campagne)
 
* [[パン・ド・セグル]] (Pain de seigle)
 
* [[フランスパン|パリジャン]] (Le Parisien)
 
* [[ファンデュ]] (Le fendu)
 
* [[リュスティック|リュスティク]] (Pain rustique)
 
* [[パン・オー・ルヴァン]] (Pain au levain)
 
* [[くるみパン|パン・オ・ヌワ]] (Pain aux noix, くるみパン)
 
* [[ピサラディエール]] (Pissaladière, [[プロヴァンス]]地方のピザ風のパン)
 
* [[ヴィエノワズリ]] (Les viennoiseries, [[菓子パン]])
 
** [[クロワッサン]] (Le croissant)
 
** [[ベニェ]] (Le beignet)
 
** [[ターンオーバー (食品)|ショソン・オ・ポム]] (Le chausson aux pommes, りんごのショソン)
 
** [[パン・オ・レ]] (Pain au lait)
 
** [[パン・オ・ショコラ]] (Pain au chocolat)
 
** [[ブリオッシュ]] (La brioche)
 
** [[パン・オ・レザン]] (Le pain aux raisins)
 
** [[ガレット・デ・ロワ]] (La galette des rois)
 
** [[サヴァラン]] (Le savarin)
 
** [[ババ (菓子)|ババ]] (baba)
 
** [[クイニーアマン]] (kouign amann)
 
 
 
=== ドイツ ===
 
[[ドイツ]] [[:de:Brot|Brot]]
 
* [[ヴァイツェンブロート]] (Weizenbrot)
 
* [[キッフェルン|キプフェル]] (Kipfel, Kipferl)
 
* [[ブレートヒェン]]/[[ゼメル]] ([[:de:Brötchen|Brötchen]]/Semmel)
 
* [[ゾンタークスブロート]] (Sonntagsbrot)
 
* [[ツォプフ]] (Zopf, ツォプ)
 
* [[プレッツェル|ブレーツェル]] (Brezel, プレッツェル)
 
* [[ロゲンブロード]] ([[:de:Roggenbrot|Roggenbrot]])
 
* [[プンパーニッケル]] (Pumpernickel)
 
* ホルン (Horn, [[:de:Hörnchen|Hörnchen]])
 
* [[シュトレン]] (Stollen)
 
* [[ミシュブロート]] ([[:de:Mischbrot|Mischbrot]])
 
* [[バウアーンブロート]] (Bauernbrot)
 
* [[乾パン]] ([[:de:Hartkeks|Hartkeks]])
 
* キューヘレ Küchle – 小麦粉・塩・バター・酵母を混ぜ平らにし一晩寝かせ低温で揚げシナモン・粉砂糖をかけ完成となる[[バイエルン州|バイエルン]]料理。
 
* [[カイザーゼンメル]] ([[:de:Kaisersemmel|Kaisersemmel]])
 
* カルトッフェルブロート ([[:de:Kartoffelbrot|Kartoffelbrot]]) - パンの素材のうち、小麦粉の一部ないし全部を[[ジャガイモ]]で置き換えたもの。
 
 
 
=== イタリア ===
 
[[イタリア]]
 
* [[グリッシーニ]] (Grissini)
 
* [[パネットーネ]] (Panettone)
 
* [[フォカッチャ|フォッカッチャ]] (Foccaccia)
 
* [[ロゼッタ (イタリアのパン)|ロゼッタ]] (Rosetta)
 
* [[ピザ]] (Pizza)
 
* [[パーネ・カラザウ]] (Pane Carasau)
 
* [[パンドーロ]] (Pandoro)
 
* [[スフォリアテッレ]] (Sfogliatelle)
 
* [[チャバッタ]] ([[:en:Ciabatta|Ciabatta]])
 
 
 
=== イギリス ===
 
[[イギリス]] ([[:en:Bread|Bread]])
 
* [[スコーン]] (Scone)
 
* [[イングリッシュ・マフィン]] (English muffin)
 
* [[ホットクロスバン]] (Hot cross bun)
 
* [[ウェルシュケーキ]] (Welsh cake)
 
* [[イングリッシュ・ブレッド]] ([[:en:White_bread|White bread]], [[食パン]])
 
* [[クランペット]] (Crumpet)
 
* [[バノック]] ([[スコットランド]]、Bannock)
 
 
 
===ロシアと近隣諸国===
 
[[ロシア]]([[:ru:Хлеб|Хлеб]]、フリェープ)
 
* [[ライ麦パン#ライ麦パンと黒パン|黒パン]]
 
* [[ババ (菓子)|ババ]]([[ロシア]]、[[ウクライナ]]、[[ポーランド]]
 
* [[ピロシキ]]([[ウクライナ]]、[[ベラルーシ]]、[[ロシア]])
 
* [[チェブレキ]]([[クリミア・タタール人|クリミア]])
 
* [[コールジュ]](ウクライナ)
 
* [[フラットブレッド|レピョーシカ]](ロシア、[[:en:Лепёшка|Лепёшка]])
 
これら諸国では「[[パンと塩]]」([[:en:Bread and salt|Bread and salt]])を用いて、お客さんの正式歓迎をする。
 
 
 
=== その他のヨーロッパ地域 ===
 
* [[デニッシュ]]([[デンマーク]])
 
* [[クリングル]]([[デンマーク]]、[[:en:Kringle|Kringle]])
 
* [[セムラ]]([[スウェーデン]])
 
* [[クリスプ・ブレッド]]([[北ヨーロッパ]])
 
* [[ソーダブレッド]]([[アイルランド]])
 
* [[ツレキ]]([[ギリシャ]] - ブリオッシュに似た生地で作る復活祭用のパン)
 
* [[チョレキ]]([[トルコ]] - ブリオッシュに似た生地で作る復活祭用のパン)
 
* クック・ド・ディナン([[ベルギー]] - 小麦粉と蜂蜜が原料の壁紙に使われる長期保存用のパン)
 
* ピサラディエール([[モナコ]]–薄いパンに、ペースト状に炒めたたまねぎを乗せ、更にその上に[[アンチョビ]]とブラックオリーブを乗せる)
 
* [[エンパナーダ]](スペイン)
 
 
 
=== 北アメリカ ===
 
[[北アメリカ]]
 
* [[ベーグル]] (bagel, 中東・中欧起源)
 
* [[ハッラー]] (challah, 中東・中欧起源)
 
* [[バブカ]] (Babka, 中東・中欧起源)
 
* [[ビアリ]] (bialy, 中欧起源)
 
* [[シナモンロール]] (Cinnamon Roll, 中・北欧起源)
 
* [[ビスケット]] (biscuit, 英国起源)
 
* [[スコーン]] (scone, 英国起源)
 
* [[ピザ]] (pizza, イタリア起源)
 
* [[コーンブレッド]] (cornbread)
 
* [[トルティーヤ]] (tortilla)
 
* [[マッツァー|マッツォ]] (matzo, 中欧起源)
 
* [[フライブレッド]] ([[:en:Frybread|frybread]])
 
* [[マフィン]] (Muffin, 英国起源)
 
* [[エンパナーダ]]([[メキシコ]])
 
 
 
アメリカ合衆国と[[カナダ]]では、[[出芽酵母|イースト]]の代わりに[[炭酸水素ナトリウム|重曹]]と[[ベーキングパウダー]]で膨らませた、発酵いらずのパン([[クイックブレッド]])の種類が豊富である。
 
 
 
=== 中南米 ===
 
[[南アメリカ]]
 
* [[ポン・デ・ケイジョ]] Pão de Queijo(ブラジル)
 
* [[クニャペ]] Cuñape([[ボリビア]])
 
* [[サルテーニャ]] Salteña(ボリビア)
 
* [[アレパ]] Arepa([[コロンビア]]、[[ベネズエラ]])
 
* [[エンパナーダ]] empanada(ほぼラテンアメリカ全域)
 
* [[エンパーダ]] empada(ブラジル)
 
 
 
[[カリブ海諸国]]
 
* [[ロティ]] Roti ([[トリニダード・トバゴ]])
 
* [[ピタ|シリアン・ブレッド]] Syrian Bread ([[ジャマイカ]])
 
 
 
=== オセアニア ===
 
[[オーストラリア]]
 
* [[ダンパー (パン)|ダンパー]] Damper
 
 
 
=== インド・中近東 ===
 
[[インド]]・[[中近東]]
 
* [[ナン|ナーン]] Naan(インド、[[イラン]]、[[中央アジア]])
 
* [[チャパティ]] Chapati(インド、[[パキスタン]]、[[アフガニスタン]])
 
* [[プーリー (食品)|プーリー]] Puri(インド、パキスタン)
 
* [[パラーター]] Paratha(インド、パキスタン)
 
* [[ロティ]] Roti(インド)
 
* [[ピタ|ピタパン]] Pita(中近東)
 
* [[ホブズ]] Khubz(中近東)
 
* [[ムルタバ|ムタッバク]] Mutabbaq([[サウジアラビア]]、[[イエメン]])
 
* [[ラホーハ]] Lahoh, Laxoox(イエメン、[[イスラエル]])
 
* [[チョレギ]] choreg([[アルメニア]] - [[ブリオッシュ]]に似た生地で作る[[復活祭]]用のパン)
 
* [[チョレキ]] çörek([[トルコ]] - ブリオッシュに似た生地で作る復活祭用のパン)
 
* [[ハッラー]] Challah(イスラエル)
 
* [[マッツァー]] Matzah(イスラエル)
 
 
 
=== アフリカ ===
 
[[アフリカ]]
 
* [[インジェラ]] Injera([[エチオピア]]、[[エリトリア]])
 
* [[ラホーハ]] Lahoh([[ソマリア]]、[[ジブチ]])
 
 
 
=== 日本 ===
 
{{Commonscat|Japanese Breads|日本のパン}}
 
* [[菓子パン]]
 
** [[あんパン]]
 
** [[ジャムパン]]
 
** [[メロンパン]]
 
** [[クリームパン]]
 
** [[チョコレートパン]]
 
** [[レーズンパン]]
 
** [[味噌パン]]
 
** [[蒸しパン]]
 
** [[コロネ]]
 
** [[かにぱん]]
 
** [[甘食]]
 
** ぼうしパン
 
** [[ウグイスパン]]
 
* [[コッペパン]]
 
* [[バターロール]]
 
* [[食パン]]
 
* [[米粉パン]]
 
* [[乾パン]]
 
* [[保存パン]]
 
* [[堅パン]]
 
* [[揚げパン]]
 
** [[カレーパン]]
 
 
 
=== 中国 ===
 
[[中華人民共和国|中国]]
 
* [[饅頭 (中国)|饅頭(マントウ)、饃饃(モーモー)]]
 
* [[焼餅 (中国)|焼餅]](シャオビン)
 
* [[油条]](ヨウティアオ)
 
* [[ナン#ウイグル|饢]] (ウイグルのナン)、ポシュカル([[ウイグル料理]]の揚げパン)
 
* [[大列巴]] ([[中国東北部]]のロシア風パン)
 
[[香港]]
 
* [[菠蘿包|パイナップルパン]](ポーローパーウ)
 
 
 
=== 台湾 ===
 
[[台湾]]
 
* [[太陽餅]](タイヤンピン) (台中起源)
 
* [[鳳梨酥]](パイナップルケーキ) (台中起源)
 
* [[胡椒餅]](フージャオピン) (福州起源)
 
* [[黑糖糕]](澎湖起源)
 
* [[牛舌餅]](鹿港・宜蘭起源)
 
 
 
=== 韓国 ===
 
[[大韓民国|韓国]]
 
* [[ホットク]]
 
 
 
=== 中央アジア ===
 
 
 
* {{仮リンク|アビ・ナン|en|Obi Non}} Obi Non ([[ウズベキスタン]])
 
* ラチラ Lochira (ウズベキスタン)
 
* ジリシュ・ナン Jirish non (ウズベキスタン)
 
* シルマ・ナン shirma non (ウズベキスタンで作られるアビ・ナンは種類があり、これはその一種で厚みがあって小さい。)
 
* {{仮リンク|シェルペク|ru|Шельпек}} Шелпек:shelpek ([[カザフスタン]])
 
* [[バウルサク]] бауырсақ (カザフスタン)
 
* [[マンティ]] Мәнті (カザフスタン)
 
* タンディール・ナン Тандыр-нан (カザフスタン)
 
* ファティール・ラフハニー фатир равғанӣ ([[タジキスタン]])
 
* ベリャシ беляши (タジキスタン)
 
* チュリョク çörek ([[トルクメニスタン]])
 
* ヤーリ・チョリョク etli çörek (トルクメニスタン)
 
 
 
=== 東南アジア ===
 
* [[バインミー]]([[ベトナム]])
 
* [[ムルタバ|ムルタバッ]] Murtabak ([[マレーシア]]、[[インドネシア]]、[[タイ王国]]、[[シンガポール]]、[[ブルネイ]])
 
* [[ロティ]] Roti ([[マレーシア]]、[[シンガポール]]、[[タイ王国]])
 
* ロティ・ビリス Roti bilis (マレーシアの「イカン・ビリス」([[サンバル]]風味の[[雑魚]])入りパン)
 
* [[カヤ・ジャム]]パン Roti kaya (マレーシア、シンガポール、インドネシア)
 
 
 
== パンを利用した料理、再加工品 ==
 
[[ファイル:Italian Sandwich.jpeg|thumb|right|190px|パニーノ]]
 
[[ファイル:HKStyleFrenchtoast.jpg|thumb|right|190px|西多士(香港式フレンチトースト)]]
 
[[ファイル:KatsuSando6515.jpg|thumb|right|190px|かつサンド]]
 
* [[トースト]]
 
** [[クロックムッシュ]]
 
** [[クロックマダム]]
 
* [[フレンチトースト]] Le pain perdu(パン・ペルデュ)(固くなったパンを利用して、卵、牛乳と砂糖を追加して、フライパンで焼く)
 
** [[トリハス]]
 
* [[ハニートースト]]
 
* [[ブレッドプディング]]
 
* [[ラスク]]
 
* [[パニーノ]] (Panino、Panini)
 
* [[ハンバーガー]]
 
* [[チビート]]
 
* [[ホットドッグ]]
 
* [[惣菜パン]]
 
** [[焼きそばパン]]
 
** [[コロッケパン]]
 
** [[サラダパン]]
 
** [[明太フレンチ]]
 
* [[サンドイッチ]]
 
** [[クリームサンドパン]]
 
* [[パニーノ|パニーニ]]
 
* [[ハトシ]]
 
* [[カナッペ]]
 
* [[ギロピタ]]
 
* [[タコス]]
 
* [[ブリート]]
 
* [[ガスパチョ]]
 
* [[チーズフォンデュ]]
 
* [[エッグベネディクト]]
 
* [[ミガス]]
 
* [[パン粉]]
 
 
 
== ホームベイク ==
 
ホームベーカリーがなくても家で簡単に焼きたての味が味わえるパン、パート・ベイクド・ブレッド(part-baked bread)などもあり、半焼き状態で売っていて、オーブンでさらに焼いて食べる。
 
 
 
== 日本におけるパン製品の表示 ==
 
[[農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律]](JAS法)および「包装食パンの表示に関する[[公正競争規約]]」に基づき、表示が決められている。
 
 
 
JAS法では、原材料や製造方法に応じて「食パン」「菓子パン」「パン」の3つに区分される。さらに市販食パンについては、上記公正競争規約による表示内容が決められている。しかし、原料のひとつである酵母をどの様に表示するのかの規定は無い<ref name=jibt />。
 
 
 
== 文化 ==
 
パンは世界の多くの地域で基本的な食料として重視されていたため、しばしば文化的に象徴性を持った。アブラハムの三宗教においては、象徴として重要であり、宗教儀式に使用される。
 
 
 
[[聖餐]]において重要な意味合いを持つ。聖餐は[[正教会]]では[[聖体礼儀]]、[[カトリック教会]]では[[ミサ]]、[[聖公会]](アングリカン・チャーチ)や[[プロテスタント]]の一部では[[聖餐式]]という名で行われ、いずれも重要な意味を持つ。聖餐で用いられるパンはウェハースのような形状で、カトリック教会ではこれをホスチアと呼び、聖餐式で聖別されたパンを[[聖体]]という。
 
 
 
ユダヤ教においては[[安息日]]や[[ユダヤ教の祝祭日]]にのみ食される[[ハッラー]]と呼ばれるパンが作られている。
 
 
 
[[ローマ帝国]]においては[[社会保障]]の一環として[[ローマ市民権]]保有者のうちの貧困者にパンの原料となる穀物の無料給付が行われており、同じく為政者によって市民に無料で供給された[[剣闘士]]試合や[[戦車競走]]と並んで、市民を政治から遠ざけるものだとして同時代の詩人[[ユウェナリス]]が「[[パンとサーカス]]」という表現で批判した。この表現は21世紀の現代においても、為政者による人気取りや[[愚民政策]]を批判する語として存在している。
 
 
 
また、[[フランス革命]]時に王妃[[マリー・アントワネット]]が困窮する民衆に対し「[[ケーキを食べればいいじゃない|パンがなければケーキを食べればいいじゃない]]」と発言したとされ、フランス革命時のエピソードとして非常によく引用されるものの、実際にアントワネットがこのような発言をしたという証拠は見つかっておらず、後世の挿話だとされている。
 
 
 
== 関連項目 ==
 
{{Commons&cat|Bread|Breads}}
 
{{Wiktionary|パン}}
 
{{Wikiquote|パン}}
 
{{col-begin}}
 
{{col-3}}
 
*種類
 
** [[シュトレン]]
 
** [[マルチパン|マジパン]]
 
*用具
 
** [[トレンチャー (食器)|トレンチャー]] - [[中世]]に使われた、固くなったパンでできた食器。
 
** [[バヌトン]]
 
*題材作品
 
{{Main|パンを主題とする作品一覧}}
 
*歴史
 
** 消しパン - かつて[[鉛筆]]で書かれた文字を消すのにパンが用いられていた<ref group="注釈">美術デッサンでも[[消しゴム]]は紙を痛めるためパンを使用することがある。</ref>。
 
*職業分野
 
** [[製パン]](製パン業者一覧を含む)
 
*注意事項
 
** [[食物アレルギー]]
 
*その他
 
** [[ケーキ]]
 
** [[ペイストリー]]
 
** [[饅頭]]
 
** [[洋菓子]]
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
=== 注釈 ===
 
{{Reflist|group="注釈"}}
 
=== 出典 ===
 
{{Reflist|2}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
* スティーヴン・L・カプラン 吉田春美 訳『パンの歴史』河手書房新社 ISBN 4-309-22420-2
 
* [[フィリップ・ビゴ]] 『フィリップ・ビゴのパン[http://www.bigot.co.jp/book1_information.shtml リンク]』柴田書店 [[ビゴの店]]HPは[http://www.bigot.co.jp/ こちら]
 
* 足立巖 『パンの明治百年史』 パンの明治百年史刊行会 昭和45年9月1日
 
* [[舟田詠子]]『パンの文化史』朝日新聞社、1998年。
 
 
 
== 外部リンク ==
 
<!-- 特定企業の宣伝にならないよう、業界団体中心に入れる -->
 
* [http://www.pankougyokai.or.jp/ 社団法人日本パン工業会]
 
* [http://www.zenpanren.or.jp/ 全日本パン協同組合連合会]
 
* [http://www.jibt.com/ 社団法人日本パン技術研究所]
 
* [http://www.oishii-pan.net/ おいしいパン.net](パン食普及協議会)
 
* [http://www.caa.go.jp/foods/pdf/kijun_30_110930.pdf パン類品質表示基準] 消費者庁
 
  
 +
小麦粉またはライ麦粉に水を加えてこね上げてできる生地を焼いた食品のうち,炭酸ガスを含ませて組織を膨化させたものをいう。その歴史は古く,すでにエジプト第5王朝 (前 2494頃~2345頃) 時代に小麦パンをつくった記録がある。日本には天文 12 (1543) 年にポルトガル人によって鉄砲とともに伝えられたといわれる。明治5 (1872) 年に木村屋,文明軒が売出してから,次第に一般に好まれるようになった。名称はスペイン語の pan,ポルトガル語の pão (「糧」の意) から出ている。製法には発酵法と無発酵法とがある。発酵パンは,パン酵母 (イースト菌) で発酵させ,発生する炭酸ガスでパン生地をふくらませたもので,発酵過程の生産物によって独特の芳香,風味が生じる。無発酵パンは,[[ベーキングパウダー]]から発生する炭酸ガスでパン生地をふくらませたもので,製法が簡単である。
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[[Category:パン|*]]
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[[Category:ポルトガル語からの借用語]]
 
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[[Category:ラテン語からの借用語]]
 +
<references group="注釈"/>

2018/10/27/ (土) 17:50時点における最新版

オオムギとエンバクのパン

パン: pão[注釈 1][1]

小麦粉またはライ麦粉に水を加えてこね上げてできる生地を焼いた食品のうち,炭酸ガスを含ませて組織を膨化させたものをいう。その歴史は古く,すでにエジプト第5王朝 (前 2494頃~2345頃) 時代に小麦パンをつくった記録がある。日本には天文 12 (1543) 年にポルトガル人によって鉄砲とともに伝えられたといわれる。明治5 (1872) 年に木村屋,文明軒が売出してから,次第に一般に好まれるようになった。名称はスペイン語の pan,ポルトガル語の pão (「糧」の意) から出ている。製法には発酵法と無発酵法とがある。発酵パンは,パン酵母 (イースト菌) で発酵させ,発生する炭酸ガスでパン生地をふくらませたもので,発酵過程の生産物によって独特の芳香,風味が生じる。無発酵パンは,ベーキングパウダーから発生する炭酸ガスでパン生地をふくらませたもので,製法が簡単である。




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  1. ポルトガル語発音: [ˈpɐ̃w̃] パンウン
  1. pão (Linguee)