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|awards                  = [[IEEE栄誉賞]](1966年)<br />[[アメリカ国家科学賞]](1966年)<br />[[ハーヴェイ賞]](1972年)<br />[[京都賞基礎科学部門]](1985年)
 
|awards                  = [[IEEE栄誉賞]](1966年)<br />[[アメリカ国家科学賞]](1966年)<br />[[ハーヴェイ賞]](1972年)<br />[[京都賞基礎科学部門]](1985年)
 
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'''クロード・エルウッド・シャノン'''('''Claude Elwood Shannon''', [[1916年]][[4月30日]] - [[2001年]][[2月24日]])は[[アメリカ合衆国]]の[[電気工学]]者、[[数学者]]。20世紀[[科学]]史における、最も影響を与えた[[科学者]]の一人である。
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'''クロード・エルウッド・シャノン'''('''Claude Elwood Shannon''', [[1916年]][[4月30日]] - [[2001年]][[2月24日]]
  
[[情報理論]]の考案者であり、情報理論の父と呼ばれた。情報、通信、暗号、データ圧縮、符号化など今日の[[情報社会]]に必須の分野の先駆的研究を残した。[[アラン・チューリング]]や[[ジョン・フォン・ノイマン]]らとともに今日の[[コンピュータ]]技術の基礎を作り上げた人物として、しばしば挙げられる<ref>コンピュータ「技術」の基礎を作り上げた人物として挙げられる、ということは事実であるが(特に一般人は、「IT」というバズワードの T が技術を意味しているために)、チューリングやノイマンについても同じことが言えるが、技術への貢献以上に、まず第一に「理論への貢献」と、コンピュータの専門家や科学史家ならば言うであろう。</ref>。
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アメリカの応用数学者。ミシガン大学で電気工学と数学を学び,マサチューセッツ工科大学の大学院で電気回路理論を研究。 1941年より 57年までベル電話研究所に勤め,48年同僚の W.ウィーバーと共著で『コミュニケーションの数学的理論』を発表した。この本のなかで彼は,[[エントロピー]]の概念を使って情報量を定義し,現代の情報理論の基礎を築いた。 57年よりマサチューセッツ工科大学技術研究所教授。
 
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== 業績 ==
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{{テンプレート:20180815sk}}
=== デジタル回路設計の創始者 ===
 
1937年の[[マサチューセッツ工科大学]]での修士論文「継電器及び開閉回路の記号的解析」<ref>Claude Shannon, "A Symbolic Analysis of Relay and Switching Circuits", Massachusetts Institute of Technology, Dept. of Electrical Engineering, 1940.</ref>において、[[電気回路]](ないし[[電子回路]])が[[論理演算]]に対応することを示した。すなわち、[[開閉器|スイッチ]]のオン・オフを[[真理値]]に対応させると、スイッチの直列接続は[[論理積|AND]]に、並列接続は[[論理和|OR]]に対応することを示し、論理演算がスイッチング回路で実行できることを示した。これは、[[デジタル回路]]・[[論理回路]]の概念の確立であり、それ以前の[[電話交換機]]などが職人の経験則によって設計されていたものを一掃し、数学的な理論に基づいて設計が行えるようになった。どんなに複雑な回路でも、理論に基づき扱えるということは[[コンピュータ]]の実現に向けたとても大きなステップの一つだったと言える。
 
 
 
ハーバード大学教授の[[ハワード・ガードナー]]([[:en:Howard Gardner|Howard Gardner]])は、この論文について「たぶん今世紀で最も重要で、かつ最も有名な修士論文」と評した。ただし、わずかな時間差であるが、中嶋章による発表の方が先行しており([[論理回路#歴史]]を参照)、独立な成果か否かは不明とされている。
 
 
 
=== 情報理論の考案 ===
 
1948年[[ベル研究所]]在勤中に論文「[[通信の数学的理論]]」<ref>Claude Shannon, "A Mathematical Theory of Communication", ''Bell System Technical Journal'', vol. 27, pp. 379–423 and 623–656, 1948. [http://cm.bell-labs.com/cm/ms/what/shannonday/paper.html オンライン版], [http://cm.bell-labs.com/cm/ms/what/shannonday/shannon1948.pdf PDF]</ref>を発表し、それまで曖昧な概念だった「[[情報]]」(information)について定量的に扱えるように定義し、情報についての理論([[情報理論]])という新たな数学的理論を創始した。
 
 
 
翌年[[ウォーレン・ウィーバー]]の解説を付けて出版された同名<small>(ただし“A”が“The”に変わっている)</small>の書籍『通信の数学的理論』<ref>Claude Shannon and Warren Weaver, ''The Mathematical Theory of Communication'', The University of Illinois Press, 1949. ISBN 0-252-72548-4.</ref>で、シャノンは[[通信]]におけるさまざまな基本問題を取り扱うために、[[エントロピー]]の概念を<!--[[統計力学]]から-->導入し<!--合理的に表現し-->た。情報の量([[情報量]])を[[事象]]の起こる[[確率]](生起確率)によって定義し、エントロピー(平均情報量)を次のとおりに定義した。時間的に連続して起こる[[離散数学|離散的]]な確率事象 <math>X</math> の生起確率 <math>\Pr[X=i]</math> によって定まる情報量 (<math>-\log\Pr[X=i]</math>) の期待値が、エントロピー <math>H(X)</math> である([[エントロピー#情報理論におけるエントロピーとの関係]]も参照)。
 
 
 
:<math>H(X)= - \sum_i\Pr[X=i]\log\Pr[X=i] \quad</math>([[関数の台|台]]が有限の場合)
 
 
 
エントロピーの語を提案したのは[[ジョン・フォン・ノイマン|フォン・ノイマン]]とも言われているが、シャノンは否定している<ref>出典は[[情報量#歴史]]を参照。</ref>。また、情報量の単位として[[ビット]]を初めて使用した<ref>論文の中で、用語 "bit" を考案したのは[[ジョン・テューキー]]だとしている。[[国際標準化機構|ISO]]および[[日本工業規格|JIS]]では単位としてビットの代わりに[[情報量#単位|シャノン]](Sh)を使うことにしているが、現在のところあまり一般的ではない。</ref>。
 
 
 
そして、[[ノイズ]](雑音)がない[[通信路]]で効率よく情報を伝送するための[[符号化]](「[[シャノンの情報源符号化定理|情報源符号化定理]]」または「シャノンの第一基本定理」)と、ノイズがある通信路で正確に情報を伝送するための[[誤り訂正符号]](「[[シャノンの通信路符号化定理|通信路符号化定理]]」または「シャノンの第二基本定理」)という現在の[[データ伝送]]での最も重要な概念を導入した。これらはそれぞれ[[データ圧縮]]の分野と誤り訂正符号の分野の基礎理論となっている。通信路符号化定理は単一通信路あたりの伝送容量に上限があることを意味する。
 
 
 
これらの定理は現在、[[携帯電話]]などでの通信技術の基礎理論となっており、その後の[[情報革命]]と呼ばれる[[情報技術]]の急速な発展に結びついている。
 
 
 
==== シャノン=ハートレーの定理 ====
 
{{Main|シャノン=ハートレーの定理}}
 
 
 
:<math>C = W \log_{2}\left( 1 + \frac{S}{N} \right)</math>
 
 
 
:(ここでC:[[ビット毎秒]]、W:[[帯域幅]]、S:[[信号 (情報理論)|信号]]電力、N:[[ノイズ]]電力)
 
 
 
=== 標本化定理の証明 ===
 
アナログデータをデジタルデータへと変換する時、どの程度の間隔で[[サンプリング]]すればよいかを定量的に表す[[標本化定理]]を1949年の論文"Communication in the Presence of Noise"の中で証明した。標本化定理は1928年に[[ハリー・ナイキスト]]によって予想されており、またシャノンの証明発表の同時期に証明をした人物が複数存在するが、シャノンのものが最も有名であり、英語圏では「ナイキスト=シャノンの標本化定理」という名前で知られている(詳しくは[[標本化定理]]を参照)。標本化定理は、現在、[[コンパクトディスク]]を始めとしたあらゆる[[デジタイズ]]技術の基礎定理となっている。
 
 
 
=== 暗号理論に関する先駆的成果 ===
 
 
 
1949年に論文「秘匿系の通信理論」<ref>Claude Shannon, "Communication Theory of Secrecy Systems", ''Bell System Technical Journal'', vol. 28, pp. 656–715, 1949.</ref>を発表し、[[ワンタイムパッド]]を利用すると情報理論的に解読不可能な[[暗号]]が構成でき、情報理論的に解読不可能な暗号はワンタイムパッドの利用に限ることを数学的に証明した(現代の暗号研究で考察されている[[計算量的安全性を持つ暗号|計算量的に安全]]な暗号ではなく、[[情報理論的安全性|情報理論的に安全]]な暗号を考察している点に注意)。
 
 
 
シャノンはこの論文で、暗号の[[アルゴリズム]](暗号化方法)が知られてもなお安全である暗号([[ケルクホフスの原理]]参照)について考察しており、はじめて暗号について数学的分析を行った。
 
 
 
=== シャノンのチェスプログラム ===
 
1949年に[[コンピュータチェス]]に関する画期的な論文「チェスのためのコンピュータプログラミング」<ref>Claude Shannon, "Programming a Computer for Playing Chess", ''Philosophical Magazine'', ser. 7, vol. 41, no. 314, 1950.</ref>を発表し、力ずくの総当たりでなくコンピュータが[[チェス]]をする方法を示した。コンピュータがどの駒をどう移動するかを決定するのにシャノンが用いた方法が、[[評価関数]]に基づいた[[ミニマックス法]]だった。評価関数は、駒の価値や、駒の位置の価値、移動の価値などをすべて数値化して「局面」の価値を評価するものであり、シャノンはその後のゲーム展開を[[探索木]]([[:en:Tree traversal|Search tree]])に分類してどの着手がもっとも良いかを探索する方法について考察している。この論文はコンピュータゲームでのコンピュータの思考プログラム設計の原典となった。
 
 
 
== 受賞歴 ==
 
*1940 アルフレッド・ノーブル賞([[:en:Alfred Noble Prize|Alfred Noble Prize]])
 
*1949 [[:en:Institute of Radio Engineers|IRE]] [[IEEEダニエル・E・ノーブル賞|モーリス・N・リーブマン記念賞]]
 
*1955 フランクリン・インスティテュート([[:en:Franklin Institute|Franklin Institute]]) スチュアート・バランタイン・メダル
 
*1956 リサーチ・コーポレーション賞
 
*1962 [[ライス大学]] 栄誉賞
 
*1962 マービン・J・ケリー賞
 
*1966 [[IEEE栄誉賞]]
 
*1966 [[アメリカ国家科学賞]]
 
*1967 ゴールデンプレート賞
 
*1972 [[ハーヴェイ賞]](イスラエル)
 
*1978 ジョゼフ・ジャカール賞
 
*1978 ハロルド・ペンダー賞
 
*1985 [[AES]] ゴールドメダル
 
*1985 [[京都賞基礎科学部門]](日本)
 
*1991 エドワード・ライン賞
 
 
 
== 栄誉 ==
 
*1954 [[イェール大学]] 修士号(MS)
 
*1961 [[ミシガン大学]] 名誉博士号
 
*1962 [[プリンストン大学]] 名誉博士号
 
*1964 [[エディンバラ大学]] 名誉博士号
 
*1964 [[ピッツバーグ大学]] 名誉博士号
 
*1970 [[ノースウェスタン大学]] 名誉博士号
 
*1975 [[オランダ王立芸術科学アカデミー]] 外国会員
 
*1978 [[オックスフォード大学]] 名誉博士号
 
*1982 [[イースト・アングリア大学]] 名誉博士号
 
*1984 [[カーネギー・メロン大学]] 名誉博士号
 
*1987 [[タフツ大学]] 名誉博士号
 
*1991 [[ペンシルベニア大学]] 名誉博士号
 
*2004 [[全米発明家殿堂]]入り
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{reflist}}
 
 
 
== 著書 ==
 
* コミュニケーションの数学的理論、C.E.シャノン、W.ウィーヴァー、(The Mathematical theory of communication、E.Shannon、Warren Weaver、(C)1967 by The University of Illinois Press.)訳者:長谷川淳、井上光洋、[[明治図書出版]]([[1969年]])。
 
* 通信の数学的理論 、Warren Weaver, Claude Elwood Shannon, 植松 友彦 (翻訳) 、[[筑摩書房]] ([[2009年]][[8月10日]]) <ちくま学芸文庫>、ISBN 978-4480092229、価格1260円。
 
(上記の再翻訳、文庫版)。
 
 
 
== 関連項目 ==
 
*[[シャノン (単位)|シャノン]]:情報量の単位
 
*[[シャノン符号化]](シャノン-ファノ符号、Shannon-Fano code)
 
*[[情報理論]] (Information theory)
 
*[[標本化定理]] (Nyquist-Shannon sampling theorem)
 
*[[レート歪理論]] ([[:en:Rate distortion theory|Rate distortion theory]])
 
*[[シャノン=ハートレーの定理|シャノン=ハートレイの定理]] (Shannon-Hartley law)
 
*[[シャノン指数]] ([[:en:Shannon index|Shannon index]])
 
*[[シャノン線図]](Shannon diagram)
 
*[[シャノン数]] ([[:en:Shannon number|Shannon number]])
 
*[[クロード・E・シャノン賞]] ([[:en:Claude E. Shannon Award|Claude E. Shannon Award]])
 
*[[シャノンのスイッチングゲーム]] ([[:en:Shannon switching game|Shannon switching game]])
 
*[[ワンタイムパッド]] (One-time pad)
 
*[[拡散とかく乱]] ([[:en:Confusion and diffusion|Confusion and Diffusion]])
 
*[[デジタル回路]]
 
 
 
== 外部リンク ==
 
* [http://www.inamori-f.or.jp/laureates/K01_b_claude/ctn.html 京都賞ホームページ](受賞ページ)
 
* [http://cm.bell-labs.com/cm/ms/what/shannonday/shannon1948.pdf A Mathematical Theory of Communication](全文)
 
* [http://hdl.handle.net/1721.1/11173  A Symbolic Analysis of Relay and Switching Circuits](修士論文)
 
* {{MathGenealogy|id=42920|title=Claude Elwood Shannon}}
 
 
 
{{Normdaten}}
 
 
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[[Category:アメリカ合衆国の数学者]]
 
[[Category:アメリカ合衆国の数学者]]

2018/10/27/ (土) 14:49時点における最新版

クロード・エルウッド・シャノンClaude Elwood Shannon, 1916年4月30日 - 2001年2月24日

アメリカの応用数学者。ミシガン大学で電気工学と数学を学び,マサチューセッツ工科大学の大学院で電気回路理論を研究。 1941年より 57年までベル電話研究所に勤め,48年同僚の W.ウィーバーと共著で『コミュニケーションの数学的理論』を発表した。この本のなかで彼は,エントロピーの概念を使って情報量を定義し,現代の情報理論の基礎を築いた。 57年よりマサチューセッツ工科大学技術研究所教授。



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