エコツーリズム推進法

提供: miniwiki
2018/8/19/ (日) 18:35時点におけるAdmin (トーク | 投稿記録)による版 (1版 をインポートしました)
移動先:案内検索
エコツーリズム推進法
日本の法令
通称・略称 エコツー推進法
法令番号 平成19年6月27日法律第105号
効力 現行法
種類 環境法
主な内容 エコツーリズムの推進
条文リンク 総務省法令データ提供システム
テンプレートを表示

エコツーリズム推進法(エコツーリズムすいしんほう、平成19年6月27日法律第105号)とは、環境省が主導となりエコツーリズムを進めるための枠組みを定めた日本法律。参加省庁は環境省のほか国土交通省農林水産省文部科学省

2007年平成19年)6月20日参議院本会議で成立し、翌年の4月1日から施行された。

背景

地球温暖化現象などの環境問題を皮切りに、身近な環境への関心が高まりからエコツーリズムが数多く実施されている。しかし、環境への無配慮なエコツアーや観光活動が増え、現場の環境に悪影響を与えているのも事実である。そうした中で、観光や地域振興にあたって、環境の保全を前提とすることを定めた法律が必要であるという認識が高まり、適切なエコツーリズムのための枠組みを定める法律の制定が求められた。

法律の趣旨

地域の自然環境の保全に配慮をし、地域ごとの創意工夫を生かしたエコツーリズムを通じながらの、

  1. 自然環境の保全
  2. 観光振興
  3. 地域振興
  4. 環境教育

の推進を求めるものである。

基本方針

エコツーリズム推進に取り組む地域(市町村)は、協議会(ガイドや旅行業者、NPO、住民などさまざまな関係者がメンバー)を組織し、エコツーリズムの実施方法や自然観光資源の保護等についての構想を主務大臣(環境、国土交通、農林水産、文部科学)に対して認定を申請する。

申請した構想が認定を受けると、国は認定を受けた市町村への広報支援を行うなど、その地域のエコツーリズム実現に関して便宜を図る。また、申請地域は認定された構想に基き、「特定自然観光資源」を指定することが可能になる。この際に、特定自然観光資源を汚損、損傷することを禁止し違反者に罰則を設けることや、保全のために利用者数を制限することなども可能である。

法律の特徴

本法律では、動植物の生息地などのいわゆる自然環境だけではなく、それらの自然環境と密接に関係する風俗慣習などの伝統的な生活文化も自然観光資源として認めている。

特定自然観光資源

特定自然観光資源とは、本法律第8条に基づいて、市町村が保護措置を講じるために指定(特定)した自然観光資源のことである。「自然観光資源」の定義は、同第2条より「動植物の生息地又は生育地その他の自然環境に係る観光資源」および「自然環境と密接な関連を有する風俗慣習その他の伝統的な生活文化に係る観光資源」である。また、同第9条、同第10条により、これら特定自然観光資源にうち、風俗慣習などの無形観光資源を除く有形の自然観光資源で、観光旅行者等の立入などの活動によって損傷あるいは汚染が危惧される場合に、市町村が指定区域内の立入制限などの規制措置を講じることができる。なお同第19条より、これらの規制措置に反した者に対して30万円以下の罰則を科すことができる。

エコツーリズム推進協議会

協議会は次の事務を行う。

  1. エコツーリズム推進全体構想を作成。
  2. エコツーリズムの推進に係る連絡調整。

現在実際に組織されている協議会と各々の活動は以下の通り。 但し、エコツーリズム推進法に基づく全体構想の認定に至った協議会は、飯能市エコツーリズム推進協議会のみである(2011年2月現在)。

全体構想が認定された協議会

  • 飯能市エコツーリズム推進協議会 [1]
    • 2009年9月08日 全体構想認定(認定第1号)
  1. 「エコツーリズムオープンカレッジ」の実地
  2. 飯能市の里と山の自然・歴史・文化を楽しめるエコツアープログラムの開発(第4回エコツーリズム大賞受賞)
  3. エコツアー事前協議制度の導入
  4. 観光客の要望に合わせたオリジナルのエコツアー作り
  • 渡嘉敷村エコツーリズム推進協議会座間味村エコツーリズム推進協議会
    • 2012年6月27日 全体構想認定(認定第2号)※特定自然観光資源の指定のある全体構想としては第1号

批判

環境を「保護する」のではなく、「観光産業」にすることの正当化を狙ったものであるという批判が存在する[1]。 法律名こそ「エコツーリズム」の推進であるのに、利用者数の制限を設けるなどの「立ち入り禁止」条例の色合いが強いことなどの矛盾が生じている。 また、上記の特定自然観光資源の指定に都道府県レベルでの検証過程が存在しておらず、市町村の恣意性が発生する可能性もある。 申請は市町村にまかせながらも、罰則の基準が地方公共団体レベルの条例ではなく、国家レベルの法律に委ねられていることが、他の条例との乖離を生じさせているといえる。観光立国推進基本法との関係においての問題も存在する。旧観光基本法の指針性、規範性に問題があるとの指摘[2]もある中で、佐伯宗義が指摘した中央集権的規定の削除を行い、観光に関する基本法としての指針性を発揮すべく、環境、景観保全に言及する条項も設置したうえで、全部改正法として2006年に観光立国推進基本法が制定されたものである。それにもかかわらず、翌2007年に制定されたエコツーリズム推進法が、観光立国推進基本法との関係性に言及しない法律として制定されたことから、再び観光立国推進基本法の指針性に問題が投げかけられることとなってしまったのである。エコツーリズム研究者の研究視点のあいまいさにもつながる問題としても残ってしまったのである。

脚注

  1. http://www.news.janjan.jp/government/0803/0803010787/2.php 自己矛盾に気付かぬ環境省「エコツーリズム推進法」]
  2. [寺前秀一『観光政策学』(株)イプシロン企画出版2007年]

参考文献

外部リンク