タイ高速鉄道計画
タイ高速鉄道計画(タイこうそくてつどうけいかく、โครงการรถไฟความเร็วสูงไทย、โครงการไฮสปีดเทรนไทย、Thailand High Speed Rail Project)は、タイ王国運輸省とタイ国有鉄道が進めている高速鉄道建設計画。
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概要
タイ王国運輸省とタイ国有鉄道は、2009年10月、数線からなる高速鉄道計画を発表[1]。11月アピシット内閣によって鉄道開発基本計画の一部として高速鉄道建設案が採択され、より短い区間をパイロットプロジェクトとすることに決定した[2]。さらに2010年10月タイ議会で中国の企業と共にバンコクを基点とする5線からなる計画を推進することが承認された[3]。アピシット・ウェーチャチーワ内閣はタイ中協力の立場から中国へとつながるノーンカーイルート、マレーシアへつながるパダン・ブサール・ルートへの関心が強く、三国を高速交通システムに組み込むことを計画した[4]。
しかし、2011年インラック・シナワトラ内閣が成立すると、建設計画の改定が行われ、国際連結(ラオス、マレーシア)よりも国内地方都市間連結(ナコーンラーチャーシーマー、チェンマイ、フアヒン)を重視する方向へ転換された[5]。2011年9月20日バンコク‐ナコーンラーチャシーマー‐ノンカーイルートは閣議で承認され、6ヶ月以内に企業による入札が行われることになったが[6]、中国のラオス高速鉄道の延伸計画に遅延が見られることから、政府としてはノーンカーイへの延伸を急がず、まずバンコク‐ナコーンラーチャシーマー間をパイロット事業として建設計画を進めている[7]。この計画によると、政府が線路の敷設と構造物の建築を行い、運営を民間に委託する官設民営方式を適用する[7]。建設費は1kmあたり800から1,000百万バーツと算出している[7]。バンコク‐ナコーンラーチャシーマー間(1時間6分)の料金は1,000バーツ程度とみている[7]。 2012年4月24日に運輸省は高速鉄道の早期実現に向け、次官事務室を事務局とした委員会を設置する計画であることを発表した[8]。2012年6月15日チャチャート副運輸相は日本の国土交通省高官との会談の後、2012年末にはバンコク‐ピッサヌローク、バンコク‐ナコーンラーチャシーマー、バンコク‐フアヒン、 バンコク‐ラヨーンの4路線で事業仕様書(TOR)を取りまとめ、2013年初に国際入札を行うことを確認[9]、当時の計画では2014年着工を目指していた[8]。
2015年5月28日、プラジン・チャントーン運輸相と太田昭宏国土交通相との会談が行われ、日本の高速鉄道の導入を合意、覚書が交わされた[10]。
2016年8月6日タイのアーコム運輸相と日本の石井啓一国土交通大臣は、バンコクと北部都市チェンマイを結ぶ高速鉄道に日本の新幹線方式の導入する覚書を結んだ[11]。総延長距離は約670キロメートルとなり[11]、早ければ2018年の着工の見通し[12]。
ルート
2011年10月2日現在、5ルートの建設が検討されている[7]。
- 第1ルート:バンコク‐ピッサヌローク‐チェンマイ (3時間43分)
- 第2ルート:バンコク‐ウボンラーチャターニー (2時間51分)
- 第3ルート:バンコク‐ナコーンラーチャシーマー‐ノンカーイ (3時間4分)
- 第4ルート:バンコク‐フアヒン‐パダン・ブサール (4時間54分)
- 第5ルート:バンコク‐ラヨーン (1時間6分)
- それぞれの短縮ルートを含む。
付属施設建設
ノンカーイ県ナーター鉄道駅の近くに、バンコク・ラートクラバン内陸コンテナ・デポ(Lat Krabang ICD)に続く、内陸コンテナ・デポ(ICD)の建設を進めており、2012年から2億バーツを2期に分けて107ライのコンテナヤードを整備する予定[13]。
システムの売り込み
現在、日本、中国、韓国などの外国企業による高速鉄道システムの売込みが行われている。タイ運輸省次官によると、日本はバンコク‐チェンマイルートとバンコク‐ラヨーンルートの投資に興味を示しており、合計800kmへの2300億バーツ規模の投資で50年間大きな事故もなく運営されている新幹線を持つ日本の高水準の高速鉄道技術を利用できるとしているという[14]。また国土交通省国土計画局『平成19年度諸外国の国土政策分析調査(その3)‐タイの国土政策事情‐報告書』によると、旅客流動と支払能力の予測から、最優先ルートはバンコク‐ラヨーン間ルート、実現可能ルートとしてバンコク‐ナコーンラーチャーシーマー間ルート、スワンナプーム国際空港‐バンコク‐フアヒン間ルートを挙げている[15]。2012年5月3日在タイ日本国大使館によると日本側は調査を終え、バンコク‐チェンマイ間及びバンコク‐ラヨーン間の高速鉄道構想の案件形成に関する調査(プレ・フィージビリティ・スタディ)報告書をタイ王国運輸省に提出した[16]。6月15日には、チャチャート副運輸相と日本の国土交通省高官との会談が行われ、その会談後に2012年末に事業仕様書の取りまとめ、2013年初めに国際入札が行われることが確認された。日本には、1.運行速度制御、運行などの技術、2.債務問題などを含めた運用組織改編整備ノウハウ、3.事業費の財務の3分野での協力を求めて行きたいとの意向を表明している[9]。
中華人民共和国(中国)はバンコク‐ノンカーイルート、バンコク‐フアヒン‐パダン・バザールルートへの投資に興味を示している[14]。2009年6月アピシット首相と中国胡錦濤首相との会見により、南中国とタイと間の経済開発協力の合意が形成されると、高速鉄道計画におけるタイ中の結びつきは強まり、2009年11月には議会により中国企業との高速鉄道開発計画が決定した。これにより中国は昆明からラオスを通過しノンカーイへ出て、バンコクへ向うルートを2015年までに構築することを計画している[17]。しかし、インラック政権になってから、建設計画の見直しが行われている。2012年中国はバンコク‐チェンマイルートとバンコク‐ノンカーイの2ルートへの興味を示しており、フィージビリティ調査を行った。[18]。現在行われているチェンマイルートのフィージビリティ調査概要の要点は、まず居住地を避け、また洪水被害から線路を守るために全線の87%を高架とすること。次に建設路線を二区間に分け、バンコク‐ピッサヌロークまでを既存線を活用し、ピッサヌローク(ウッタラディット)‐チェンマイ間は、住宅密集地を抜けるため土地収用が難しく新しいルートを建設することと見られる[18]。またパイロット事業として、バンコクからアユタヤ県パーチー郡バーンパーチー駅までの整備を計画している[19]。2012年10月19日調査終了、報告書が提出された[19]。
韓国もタイ高速鉄道の入札に意欲を持っており、フランス国鉄の技術を基礎とする韓国高速鉄道の導入を目指している。
タイでの鉄道事業を多く行っているドイツ企業シーメンスは、タイ運輸省からバンコクーラヨーンルートへの入札を誘われているが、入札に関する直接的な言及を避けている状況にある[20][21]。
タイ有識者の見方
タイ大手新聞クルンテープ・トゥラギット紙のコラムニストであるスッティチャイ・ユンは、高速鉄道計画を含む大型インフラ事業に関して「共同体構想」を掲げる日本、活発な経済力を持つ中国、安全保障等でアジア回帰に向かうアメリカ、潜在的重要性を持つヨーロッパ諸国の四勢力間で均衡を取り、また国内においては、政治家や企業家に利用されないようにすることがタイの国益に適うと論じている[22]。そのため、高速鉄道計画における日本と中国との競争は歓迎され、タイは長期戦略を考えて対応してゆくべきと論じている[22]。
脚注
- ↑ “SRT to seek funds for infrastructure”. The Nation (2009年10月29日). . 2011閲覧.
- ↑ “SCabinet approves Bt100 billion hi-speed rail construction plan”. MCOT English News (2009年11月11日). 2009年11月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2011閲覧.
- ↑ “Thailand to negotiate with China on high-speed proposal - International Railway Journal” (2010年10月30日). 2010年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2010閲覧.
- ↑ “China will invest in Thailand’s high-speed train” (2010年8月5日). . 2011閲覧.
- ↑ “Thailand revises high-speed rail plan, Laos link shelved” (2011年8月23日). . 2011閲覧.
- ↑ "เปิดแผนลงทุน"ไฮ สปีดเทรน" ดัน "โคราช" เป็นศูนย์ขนส่ง ใช้ "หนองคาย"กระจายสินค้า"ネーウナー紙2011年9月20日
- ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 7.4 "เมื่อประเทศไทยกำลังจะมี 'ม้าเหล็ก' ความเร็วสูงใช้"タイラット紙 2011年10月2日閲覧
- ↑ 8.0 8.1 "คมนาคมเตรียมตั้งคณะกรรมการพัฒนารถไฟความเร็วสูง" MCOT 2012年4月24日
- ↑ 9.0 9.1 "คมนาคมขอความช่วยเหลือญี่ปุ่นช่วยพัฒนารถไฟความเร็วสูง" MCOT 2012年6月15日
- ↑ 新幹線導入-両政府で覚書、事業規模は1兆円 - 日刊工業新聞(2015年5月28日)
- ↑ 11.0 11.1 “石井国交相とタイ運輸相、高速鉄道導入へ覚書”. 日本経済新聞 (2016年8月6日). . 2016閲覧.
- ↑ “タイの高速鉄道計画、日本の新幹線方式導入を確認 2018年中の着工目指す”. 産経ニュース (2016年8月6日). . 2016閲覧.
- ↑ "เปิดแผนลงทุน"ไฮ สปีดเทรน" ดัน "โคราช" เป็นศูนย์ขนส่ง ใช้ "หนองคาย"กระจายสินค้า"ネーウナー紙2011年9月20日
- ↑ 14.0 14.1 "ญี่ปุ่นสนใจลงทุนไฮสปีดเทรน กรุงเทพฯ เชียงใหม่ ระยอง มูลค่า 2.3 แสนล้าน" プーヂャットガーン紙 2011年7月25日
- ↑ 国土交通省国土計画局『平成19年度諸外国の国土政策分析調査(その3)‐タイの国土政策事情‐報告書』 国土交通省 p1-11
- ↑ 『タイにおける高速鉄道構想の案件形成に関する調査(プレ・フィージビリティ・スタディ)報告書の提出について』在タイ日本国大使館2012年5月3日
- ↑ "ไฮสปีดเทรนไทย-จีน" サヤームトゥラギット紙 2011年4月22日
- ↑ 18.0 18.1 ยึดอีโคโนมิกฟอรัมโชว์แผนลงทุน5ปี "ปู"ลั่นประมูล"ไฮสปีดเทรน"4สายปีนี้ プラチャーチャートトゥラキット紙2012年5月13日
- ↑ 19.0 19.1 จีนส่งผลศึกษารถไฟความเร็วสูง2สายแรก"หนองคาย-เชียงใหม่" プラチャーチャートトゥラキット紙2012年10月30日
- ↑ Siemens to join bid for SRT project ネーション紙 2012年5月23日
- ↑ Siemens engineers venture in Khon Kaenバンコックポスト紙2012年5月23日
- ↑ 22.0 22.1 กาแฟดำ:ไทยต้องถ่วงดุลจีน, ญี่ปุ่น, สหรัฐ, ยุโรป ชิงโครงการยักษ์ クルンテープトゥラギットonline 2012年5月26日