カジカ (魚)
カジカ(鰍、杜父魚、鮖、Cottus pollux)は、カサゴ目カジカ科に属する魚。地方によっては、他のハゼ科の魚とともにゴリ、ドンコと呼ばれることもある。 体色は淡褐色から暗褐色まで、地域変異に富んでいる。日本固有種で、北海道南部以南の日本各地に分布する。ただし、北海道に生息するのは小卵型のみである。
分類については定説がまだなく、 大卵型(河川陸封型)中卵型(両側回遊型)小卵型(両側回遊型)をそれぞれ別種に、湖沼陸封型は小卵型と亜種に分ける説なども出ている
生態
生活型によって、一生を淡水で過ごす河川型を大卵型、孵化後に川を下り稚魚の時期を海で過ごして成魚になると再び遡上する小卵型、琵琶湖固有のものをウツセミカジカ Cottus reinii と分けることが多かったが、近年の研究により小卵型にウツセミカジカを含め、大卵型と小卵型に分けるようになった。また、これらは別種レベルの違いがあると考えられている。大卵型は、山地の渓流などの上流域を中心に、小卵型は中流域から下流域にかけて生息する。石礫中心の川底を好み、水生昆虫や小魚、底生生物などを食べる。
- 河川型(湖沼陸封型)
- 淡水を生活圏とし、水棲昆虫を餌とする。きれいな水を好みイワナやヤマメ、アマゴ等の魚と生息域が重なる。カジカ及びカンキョウカジカの性的成熟は1年魚以上で、オスは体長7cm、メスは体長6cmを越えると産卵を行う。卵には付着性があり卵塊となって石に付き、オスが孵化まで保護をする。産卵床の形成場所は、比較的流れの緩い"平瀬"や"とろ場"が多く、浮き石や沈み石は用いない。また、泥砂質の河床も利用しない。開口部が1箇所の洞窟状になった動きにくい石の河床との隙間が多く利用される。水通しの悪い卵塊では、ミズカビに犯され孵化しない。
- 山地渓流の個体はダムや砂防堰堤などの構造物の設置によって移動が妨げられ、個体群の分断化がより進行している。また、平地域の個体は、埋め立て、コンクリート護岸化、道路建設などによって生息適地が縮小し、湧水量の減少にともない生息数が減少している。
- 降河回遊型
- 河川(淡水)で繁殖を行い、稚魚期を海水中で過ごし河川に遡上する。稚魚期は河口付近の表層を遊泳し、有る程度成長すると着底生活を送る。また、孵化後80日前後の30mm程度に成長すると遡上を開始すると考えられる[1]。
保護
条例によっては、捕獲可能な漁期と捕獲制限体長が設定されている。また、保護のため稚魚を育成した放流が行われているが、放流による定着に失敗した例も報告されている。長野県での放流試験で9ヶ月後の生存率は、約30%であった。
カジカ属の種
- 河川型(湖沼陸封型)
- カジカ
- 学名:Cottus pollux Günther,1873
- 宮崎県、大分県、東海、近畿、本州の日本海側、四国の太平洋側に生息、受精卵直径 1.4-1.7mm、産卵期は1月-4月頃、水深15cm-70cmの直径10cm-30cm程度の石に生み付ける。
- 両側回遊型
- ウツセミカジカ
- 学名:Cottus reinii Hilgendorf,1879
- 北海道南部の日本海側、本州、四国、九州西部、琵琶湖
- エゾハナカジカ
- 学名:Cottus amblystomopsis Schmidt,1904 (Sakhalin sculpin)
- 北海道の津軽海峡側から標津地方までの太平洋とオホーツク海側の河川、サハリンやアムール川水系に分布。
- ハナカジカ
- 学名:Cottus nozawae Snyder,1911
- 北海道、青森、秋田、山形、岩手、新潟。渓流釣りにおいてニジマスやヤマメの外道でよく釣れる。エゾハナカジカとは棲み分けをし、より上流に生息。夏季の最高水温が20℃以下の流域にのみ生息し河川内で一生を送る生活史を持つ。3-4月初めに繁殖し、孵化までオスによって保護される。現在生息している何れの河川出も生息数は少なく、河川間の交流がないことから河川毎の集団は遺伝的に近いが、この種全体としては分化が進んでいる。山形県や岩手県では、各々の県でレッドデータブックで希少種に指定し保護された河川が有る一方で、指定外の地域では保護されていない。食用にもなり、フライや天ぷらにして食べられる。
- カンキョウカジカ
- 学名:Cottus hangiongensis Mori,1930
- 北海道南部から本州、四国、九州、国外では朝鮮半島東部と沿海州に分布し河川の下流から上流に生息する。
- ヨーロッパブルヘッド
- 学名:Cottus gobio リンネ,1758 (European bullhead)
- 降河回遊型
- カマキリ
- 学名:Cottus kazika Jordan and Starks,1904 (Fourspine sculpin)
- (一般名:アユカケ)太平洋側は神奈川県相模川以南、日本海側は青森県岩崎村津梅川以南
ヤマノカミ属の種
- ヤマノカミ
- 学名:Trachidermus fasciatus (Roughskin sculpin)
- 有明海と流入河川に生息、受精卵直径 1.9-2.2mm、産卵期は1月-3月頃。
利用
見た目は悪いが、とても美味な魚とされる。汁物、鍋料理では、大変美味な出汁が良くでる為「なべこわし」とも称される。
日本各地で食用にされ、汁物、味噌汁・鍋料理や佃煮、甘露煮などにして食される。代表的なものに石川県金沢市の郷土料理「ゴリ料理」。
名称
日本語で「鰍」は「カジカ」を意味するが、中国語で「鰍」はドジョウを意味する。中国語で「カジカ」は、「杜父魚」と書かれる。
カジカ(鰍、杜父魚、Cottus pollux)は、「鈍頭杜父魚」
なお、カジカは、石伏(いしぶし)、石斑魚(いしぶし)、霰魚(あられうお)、川鰍(かわかじか)、ぐず、川虎魚(かわおこぜ)などの別名を持つ[2]。
保全状態評価
絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)
河川改修などにより生息環境が圧迫を受け、各地で個体数が減少している。2007年版の環境省レッドリストには中卵型 Cottus sp. と小卵型 Cottus reinii が記載された。
関連項目
出典
- 環境省 自然環境局 生物多様性センター
- 長野県水産試験場研究報告 長野県水産試験場
- 両側回遊型カジカ仔稚魚の遊泳・摂餌機能の発達に基づく発育段階 (PDF) 東京水産大学魚類学研究室
脚注
- ↑ 降河回遊型カジカ科魚類ヤマノカミとカマキリの初期生活史の比較 (PDF)
- ↑ 『これは重宝漢字に強くなる本』十三版 編集:佐藤一郎、浅野通有 出版:株式会社光文書院 1979/06/15発行/十三版発行/発行者:長谷川凱久 印刷:日本デザイン工房、開成印刷、製本:小泉製本、高田紙器 全622頁中57頁
外部リンク
- 河川改修が底生魚類の分布と生息環境におよぼす影響 応用生態工学 Vol.4 , No.2 (2001)pp.133-146