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{{JIS2004}}
 
{{JIS2004}}
'''アイヌ語'''(アイヌご、アイヌ語[[ラテン文字]]表記:{{lang|ain-Latn|'''Aynu itak'''}}、[[アイヌ語仮名]]表記:{{lang|ain-Kana|{{JIS2004フォント|'''アイヌ・イタㇰ'''}}}})は、現在、北海道島や本州島北東地域やロシア極東地域等に居住する[[アイヌ|アイヌ民族(アイヌ)]]の[[言語]]である。
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'''アイヌ語'''(アイヌご、アイヌ語[[ラテン文字]]表記:{{lang|ain-Latn|'''Aynu itak'''}}、[[アイヌ語仮名]]表記:{{lang|ain-Kana|{{JIS2004フォント|'''アイヌ・イタㇰ'''}}}})
 
 
話者は、アイヌ民族の主たる居住地域である[[北海道]]、[[樺太]]、[[千島列島]]に分布していたが、現在ではアイヌの移住に伴い日本の他の地方(主に首都圏)にも拡散している。言語学では「[[孤立した言語]]」である。[[国際連合教育科学文化機関]]によって、2009年2月に「極めて深刻<ref>{{lang-en|critically endangered}}</ref>」な消滅の危機にあると分類された、[[危機に瀕する言語]]である<ref>[http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/kikigengo/ 消滅の危機にある方言・言語,文化庁]</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.asahi.com/shimbun/nie/kiji/kiji/20090302.html |title=八丈語? 世界2500言語、消滅危機 日本は8語対象、方言も独立言語 ユネスコ |author= |date=2009-02-20 |work= |publisher=朝日新聞 |accessdate=2014-03-29 }}</ref>。危険な状況にある日本の8言語のうち唯一最悪の「極めて深刻」に分類された<ref>他の7言語は[[与那国語]]、[[八重山語]]が「重大な危険(severely endangered)」、[[宮古語]]、[[沖縄語]]、[[沖永良部与論沖縄北部諸方言|国頭語]]、[[奄美語]]、[[八丈方言|八丈語]]が「危険(definitely endangered)」に分類されている。</ref>。
 
 
 
== 概説 ==
 
地理的に近い位置で話され、古くから互いに経済的、文化的な交流があったにも関わらず、大和民族の[[日本語]]との間には、[[語彙]]の借用(例、{{lang|ain-Latn|menoko}})を除いてそれほど共通点(例、皮 {{lang|ain-Latn|''kap''}} 〜 {{lang|ain-Latn|''kapa''}})が見いだせない。アイヌ語の系統や[[語族]]に関しては、学術的に確実なことはいえない状況であり、孤立した言語であると考えられている。
 
 
 
北海道以北のアイヌの民には強力な支配者や中央政府が存在しなかったため、いわゆる共通語のようなものは無い(東北地方には {{lang|ain-Latn|''sisam''}} 倭人と組織的に戦闘を行った英雄叙事詩が残っている)。地方によって多くの方言がある。
 
 
 
== 現状 ==
 
=== 消滅危機言語 ===
 
現在アイヌ語を継承しているアイヌ民族の数が極めて少ないため、アイヌ語は近いうちに消滅してしまう[[危機に瀕する言語|消滅危機言語]]の一つとなっている。2007年の推定では、約1万5000人のアイヌの中で、アイヌ語を流暢に話せる[[母語|母語話者]]は10人しかいなかった<ref>{{Cite web|url=http://www.ethnologue.com/language/ain|title=Ethnologue report for Ainu|author=Ethnologue.com|language=英語|accessdate=2013年3月29日}}</ref>。さらに別の推定では、アイヌ語を[[母語]]とする人は、千島列島では既に消滅し、樺太でもおそらく消滅していて、残る[[北海道]]の母語話者も、平均年齢が既に80歳を越え、母語話者数も10人以下となっている<ref>{{Cite web|url=http://www.helsinki.fi/~tasalmin/nasia_report.html#Ainu|title=Endangered languages in Northeast Asia/ report|author=Juha Janhunen|coauthors=Tapani Salminen|language=英語|accessdate=2007年9月29日}}</ref>。アイヌ語の消滅危惧のレベルは「おそらく消滅した言語」と「消滅の危機に厳しくさらされる言語」の間の「消滅に近い言語」となっている。2009年(平成21年)、[[国際連合教育科学文化機関|ユネスコ]]により「[[危機に瀕する言語]]」として、最高ランクの「極めて深刻」の区分に分類され、数年後には母語話者の死亡により消滅すると見られている<ref>「八丈語? 世界2500言語 消滅危機——「日本は8言語対象 方言も独立言語」ユネスコ」『朝日新聞』2009年2月20日付夕刊、第3版、第1面。</ref>。
 
 
 
=== 保存活動 ===
 
1980年代以降、[[萱野茂]]らアイヌ語を残そうとするアイヌ自身の努力の結果、アイヌ語[[教室]]が各地に開設され、[[1981年]]には[[山本多助]]がアイヌ語小事典を発行した。2007年現在、北海道内14箇所にアイヌ語教室が設置され、多くの人がアイヌ語を学んでいる。また[[関東地方]]にも、[[関東]]在住のアイヌまたは[[和人]]がアイヌ語を学ぶ集まりがいくつか存在する。[[1987年]]には[[STVラジオ]]が「アイヌ語講座 イランカラプテ」(現在の「[[アイヌ語ラジオ講座]]」)の放送を開始し、2016年現在も放送中である。
 
 
 
1986年には、[[田村すず子]]の教え子、北方言語研究会が上智大学学生などと共催で早稲田大学において第一回「アイヌ語祭」を開催し、和人による全編アイヌ語による演劇などがアイヌ民族や元[[北海道新聞]]社員でアイヌ語地名研究家などの前で披露された。
 
 
 
[[アイヌ文化振興財団]]主催のアイヌ語[[弁論大会]]({{lang|ain-Kana|イタカンロー}})には毎年多くの人が参加し、アイヌ語による[[弁論]]や、[[口承文芸]]の披露が行われている。
 
 
 
また、1990年代から、アイヌではない人の中にもアイヌ語を勉強しようとする人が増えてきている。アイヌ語の辞典も各種出版されている。特に[[東北地方]]では、アイヌとの歴史的連続性や地名研究の必要からアイヌ語への関心は伝統的に高い。
 
 
 
アイヌ語は「[[危機に瀕する言語]]」と呼ばれる言語の中では、例外的と言って良いほど、大量の録音資料が残されている言語である。[[オープンリール]]や[[カセットテープ]]に記録され、現在まで残っているアイヌ語の音声資料は豊富である。しかし、その音声資料については、内容が不明なものも多く、調査は発展途上であるため、アイヌ語学習に使用できる資料は限られている。今後のアイヌ語学習には、この音声資料の活用が課題となっている<ref>{{Cite web|url=http://www.town.biratori.hokkaido.jp/biratori/nibutani/culture/language/ |title=アイヌ語・アイヌ口承文芸 - アイヌ語の未来と音声資料の重要性 |publisher=[[二風谷アイヌ文化博物館]] | accessdate=2015-7-4}}</ref>
 
 
 
=== 新語の創造 ===
 
2000年代になり、[[北海道教育大学|北海道教育大学旭川校]]等でアイヌ語を刷新する兆しがある。実際「アイヌ語旭川方言会話辞典」では現代に不足している語彙の補完が試験的に行われており、{{lang|ain-Latn|imeru}}(神が放つ光。転じて電気の意)から{{lang|ain-Latn|imeru inaw}} または{{lang|ain-Latn|imeru pasuy}}(前者は固定電話で、後者は[[携帯電話]]の意)。{{lang|ain-Latn|inaw}}は[[イナウ]]、{{lang|ain-Latn|pasuy}}は[[箸]]を意味する。アイヌの信仰では、イナウや箸は神と人間との仲立ちをすると考えられていて、ネットの中とリアルを仲立ちする例えから)、{{lang|ain-Latn|imeru kampi}}([[電子メール]]。{{lang|ain-Latn|kampi}}は紙、または手紙を意味する。)等の造語を作り、現代生活で不足している語彙を補完し、「現代の言語として」使える様にする努力が行われている。2008年7月4日に開催された「先住民族サミット」アイヌモシリ2008では、「アイヌ語を公用語とし、義務教育でも学べる言語とすること」を日本政府に提言<ref>「先住民族サミット」アイヌモシリ2008「[http://www.win-ainu.com/ainumosir2008/img/JGovAppeal-J.pdf 日本政府への提言] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20110718052926/http://www.win-ainu.com/ainumosir2008/img/JGovAppeal-J.pdf |date=2011年7月18日 }}」(2008年7月4日)</ref>している。
 
 
 
== アイヌ語の研究 ==
 
明治時代になってから、アイヌ語は科学的に研究されるようになったが、最初期には外国からのしかも言語学者ではない人々による研究が先行したのが特徴的である。たとえば東洋学者の[[アウグスト・プフィッツマイアー]]、ロシアの医師であった[[ミハイル・ドブロトウォルスキー]]、ポーランドの社会運動家で亡命者であった[[ブロニスワフ・ピウスツキ]]、宣教師であった[[ジョン・バチェラー]]などがそれにあたる。
 
 
 
日本の言語学者たちがアイヌ語を研究し始めた頃にはアイヌ語の話者は非常に少なかったが、先にあげた外国の研究者とはほとんど交渉を持たず、活発に研究されてきた。[[金田一京助]]とその弟子である[[久保寺逸彦]]や、アイヌである[[知里幸恵]]・[[知里真志保]]姉弟らがまず挙げられる。
 
 
 
上に挙げた研究者のあと、[[田村すず子]]、浅井亨、[[村崎恭子]]、[[魚井一由]]、[[キーステン・レフシン]]([[デンマーク人]])、[[中川裕 (アイヌ語研究者)|中川裕]]、切替英雄、佐藤知己、[[奥田統己]]らの研究者がそれぞれ研究を進めてきた。
 
 
 
== 文字による記録 ==
 
[[ファイル:Pirka Kotan, Sapporo.JPG|thumb|300px|[[札幌市]]のアイヌ文化交流センター。サッポロピㇼカコタンというアイヌ語が片仮名で併記されている。(「札幌の美しい村」という意味であり、日本語の片仮名に元来は存在しない「[[小書きリ|小書き片仮名の "リ"]]」が用いられている。)]]
 
アイヌ語は漢字が伝わる前の日本語と同様、[[口承]]のみによって受け継がれてきた。そのため文字による古い記録は、ヨーロッパ人や和人によって書かれたものが残されている。古くは17世紀初頭に松前を訪れた宣教師[[アンジェリス]]の[[ラテン文字]]による記録が残されている。日本の史料としては[[平仮名]]でアイヌ語が記録された『[[松前ノ言]]』が最も古く[[寛永]]年間頃のものと推定されており、年代の明確なものとしては宝永元年([[1704年]])に蝦夷地を訪れた[[禅僧]]である[[正光空念]]の記録が古い。
 
 
 
正徳2年([[1712年]])に刊行された『[[和漢三才図会]]』では、50ほどのアイヌ語の単語とその日本語訳が記されている<ref>寺島良安『倭漢三才圖會』(復刻版)吉川弘文館、1906年(明治39年)、213-214頁</ref>。蝦夷通詞(アイヌ語通訳)の[[上原熊次郎]]は、寛政4年([[1792年]])に刊行されたアイヌ語の辞書『[[もしほ草]]』(書名は蝦夷方言とも)の著者として知られており、自筆稿本である『[[蝦夷語集]]』([[国立公文書館]]所蔵)や『[[蝦夷地名考並里程記]]』([[東京国立博物館]]所蔵)が伝わっている。
 
 
 
アイヌ自身による記録は、[[大正時代]]からラテン文字などを用いて書かれるようになったといわれている。ピウスツキと親交があった[[千徳太郎治]]は、[[キリル文字]]によってアイヌ語を表記していた。
 
 
 
== 発音 ==
 
アイヌ語の音節はCV(C)(すなわち義務的な[[声母]]と義務的ではない[[韻母]])からなり、子音群は少数しかない。
 
 
 
=== 母音 ===
 
アイヌ語は五つの母音を持つ。樺太方言では開音節で長短を区別する。
 
 
 
{|class="wikitable" style="text-align: center"
 
|-
 
! !! [[前舌母音|前舌]] !! [[中舌母音|中舌]] !! [[後舌母音|後舌]]
 
|-
 
! [[狭母音|狭]]
 
| {{IPA|i}} i || || {{IPA|u}} u
 
|-
 
! [[中央母音|中央]]
 
| {{IPA|e}} e || || {{IPA|o}} o
 
|-
 
! [[広母音|広]]
 
| || {{IPA|a}} a ||
 
|}
 
 
 
=== 子音 ===
 
[[子音]]は 「{{lang|ain-Latn|p}}」、「{{lang|ain-Latn|t}}」、「{{lang|ain-Latn|k}}」、「{{lang|ain-Latn|c}}」、「{{lang|ain-Latn|n}}」、「{{lang|ain-Latn|s}}」、「{{lang|ain-Latn|r}}」、「{{lang|ain-Latn|m}}」、「{{lang|ain-Latn|w}}」、「{{lang|ain-Latn|y}}」、「{{lang|ain-Latn|h}}」、「{{lang|ain-Latn|'}}」の12種が数えられる。[[無声音]]と[[有声音]]の区別は存在しない。
 
 
 
{|class="wikitable" style="text-align: center"
 
!
 
![[両唇音|両唇]]
 
![[両唇軟口蓋音|両唇軟口蓋]]
 
![[歯茎音|歯茎]]
 
![[硬口蓋音|硬口蓋]]
 
![[軟口蓋音|軟口蓋]]
 
![[声門音|声門]]
 
|-
 
!'''[[破裂音|破裂]]'''
 
| {{IPA|p}} p
 
|
 
| {{IPA|t}} t
 
|
 
| {{IPA|k}} k
 
| {{IPA|ʔ}} '
 
|-
 
!'''[[破擦音|破擦]]'''
 
|
 
|
 
| {{IPA|ts}} c
 
|
 
|
 
|
 
|-
 
!'''[[鼻音|鼻]]'''
 
| {{IPA|m}} m
 
|
 
| {{IPA|n}} n
 
|
 
|
 
|
 
|-
 
!'''[[摩擦音|摩擦]]'''
 
|
 
|
 
| {{IPA|s}} s
 
|
 
|
 
| {{IPA|h}} h
 
|-
 
!'''[[接近音|接近]]'''
 
|
 
| {{IPA|w}} w
 
|
 
| {{IPA|j}} y
 
|
 
|
 
|-
 
!'''[[はじき音|はじき]]'''
 
|
 
|
 
| {{IPA|ɾ}} r
 
|
 
|
 
|
 
|}
 
<!--
 
翻訳中。
 
The glottal stop {{IPA|/ʔ/}} only occurs at the beginning of words, before an accented vowel. The sequence {{IPA|/ti/}} is realized as {{IPA|[t​͡ʃi]}}, and {{IPA|/s/}} becomes {{IPA|[ʃ]}} before {{IPA|/i/}} and at the end of syllables. The affricate {{IPA|/ts/}} has voiced and post-alveolar variants. There is some variation among dialects; in the [[Sakhalin]] dialect, syllable-final {{IPA|/p}}, {{IPA|t}}, {{IPA|k}}, {{IPA|r/}} [[lenition|lenited]] and merged into {{IPA|/x/}}. After an {{IPA|/i/}}, this {{IPA|/x/}} is pronounced {{IPA|[ç]}}.
 
 
 
There is a [[pitch accent]] system. The accentuation of specific words varies somewhat from dialect to dialect. Generally, words including [[affix]]es have a high pitch on the stem, or on the first syllable if it is closed or has a diphthong, while other words have the high pitch on the second syllable, although there are exceptions to this generalization.
 
-->
 
 
 
日本語にはほとんど現れない[[閉音節]]が多く存在し、北海道方言では[[音節]]末には{{lang|ain-Latn|c}}、{{lang|ain-Latn|h}}、{{lang|ain-Latn|'}} を除く任意の子音が立つことができる。いっぽう[[多来加湾|多来加]]を除く樺太の方言では音節末に立つ子音は限られ、音節末子音{{ipa|m}}は{{ipa|n}}との区別を失い、{{ipa|k}}, {{ipa|t}}, {{ipa|p}}, および{{ipa|r}}の一部は[[摩擦音]]化し{{ipa|h}}(xとも表記された)になる。例えば北海道の{{lang|ain-Latn|sések}}(「セセク」のように発音。「熱い」の意)は樺太では{{lang|ain-Latn|sēseh}}(「セーセヘ」のように発音)となる。
 
 
 
{{lang|ain-Latn|u}} は、日本語の「ウ」と発音が異なり、日本語を母語とする者には「オ」のようにも聞こえることもある。そういったこともあり、かつては{{lang|ain-Latn|aynu}}が{{lang|ain-Kana|アイノ}}、{{lang|ain-Latn|kamuy}}が{{lang|ain-Kana|カモイ}}、{{lang|ain-Latn|inaw}}が{{lang|ain-Kana|イナオ}}と書かれることが多かった。
 
 
 
{{lang|ain-Latn|c}}はチャ、チなどにあらわれる[[破擦音]]で濁って発音されることもある。
 
 
 
{{lang|ain-Latn|s}}は{{lang|ain-Kana|{{smaller|シ}}}}や{{lang|ain-Kana|{{smaller|ス}}}}の摩擦音。方言によっては{{lang|ain-Kana|シャ}}と発音されることもある。また、有声で発音されることはない。
 
 
 
「{{lang|ain-Latn|'}}」は[[声門閉鎖音]]で、たとえば{{lang|ain-Latn|teeta}}で母音の連続を回避するために、はっきりと区切って{{lang|ain-Kana|テエタ}}と発音するとき{{lang|ain-Kana|テ}}と{{lang|ain-Kana|エ}}の間に入る音である。
 
 
 
音節{{lang|ain-Latn|ti}}は存在せず、{{lang|ain-Latn|t}}と{{lang|ain-Latn|i}}が結びつくと必ず{{lang|ain-Latn|ci}}に変わる ({{lang|ain-Latn|kot}} + -{{lang|ain-Latn|ihi}} → {{lang|ain-Latn|kocihi}})。
 
 
 
音節{{lang|ain-Latn|wi}}はごく少数の[[擬音語]]・[[擬態語]]にしか現れない({{lang|ain-Latn|siwiwatki}}風がビュウビュウ吹く。{{lang|ain-Latn|siw}}-{{lang|ain-Latn|iw}}は風の音を表す[[語根]]の反復)。
 
 
 
音節{{lang|ain-Latn|yi}}、「{{lang|ain-Latn|wu}}」を「{{lang|ain-Latn|'i}}」、「{{lang|ain-Latn|'u}}」と別の音節として認めるか否かは研究者によって異なる({{lang|ain-Latn|yairayke}}/{{lang|ain-Latn|yayirayke}}、{{lang|ain-Latn|aun}}/{{lang|ain-Latn|awun}}、{{lang|ain-Latn|ya}}({{lang|ain-Latn|y}}){{lang|ain-Latn|inkarpirkare}} &lt;{{lang|ain-Latn|yay-inkar-pirkare}} 自分の・見る(こと)・を良くする)。
 
 
 
開音節の「{{lang|ain-Latn|'i}}」や「{{lang|ain-Latn|'u}}」は他の母音の後に来たとき、母音の連続を回避するため軽く発音され、{{lang|ain-Latn|y}}、{{lang|ain-Latn|w}}となることがある。表記としては{{lang|ain-Latn|ukoytak}}のように{{lang|ain-Latn|y}}、{{lang|ain-Latn|w}}になる。閉音節の場合はこの変化は起きない。
 
 
 
母音{{lang|ain-Latn|i}}や{{lang|ain-Latn|u}}の後に他の母音が来たときは、母音の連続を回避するため渡り音{{lang|ain-Latn|y}}、{{lang|ain-Latn|w}}が挿入されることが多い。この{{lang|ain-Latn|y}}、{{lang|ain-Latn|w}}は表記される場合とされない場合がある。例えば、{{lang|ain-Latn|uepeker}}という語はしばしば{{lang|ain-Latn|uwepeker}}と書かれる。ただし、{{lang|ain-Latn|u}}の後に{{lang|ain-Latn|i}}が来た場合だけは*{{lang|ain-Latn|uwi}}とはならず、{{lang|ain-Latn|u'i}}または{{lang|ain-Latn|uy}}となる。
 
 
 
音節末の{{lang|ain-Latn|t}}、{{lang|ain-Latn|p}}、{{lang|ain-Latn|k}}は[[朝鮮語]]の閉音節の{{lang|ko-Latn|p}}、{{lang|ko-Latn|t}}、{{lang|ko-Latn|k}} と同じく[[内破音]]であり、日本語のみを使う者にとっては聞き分けが難しい。たとえば{{lang|ain-Latn|p}}の場合、「アップ」と言った時の「プ」の直前の「ッ」のような感じの音になる。音節末{{lang|ain-Latn|t}}も同様に「ハット」の「ッ」、{{lang|ain-Latn|k}}も「メッカ」の「ッ」音である。
 
 
 
音節末{{lang|ain-Latn|s}}もシの前で詰まる音に近いが場合によりスの前で詰まる音のように聞こえる場合もある。
 
 
 
音節末の{{lang|ain-Latn|m}}は、日本語と異なり{{lang|ain-Latn|n}}と区別して発音しなければならない。
 
 
 
音節末の{{lang|ain-Latn|r}}については直前の母音の音色が影響することが多く、日本語のラ行子音に近い[[歯茎はじき音]]で、且つ舌先が略平らで微妙にしか舌先が上がらない為、
 
{{lang|ain-Latn|ar}}の{{lang|ain-Latn|r}}は口の中で発音されたあいまいな{{lang|ain-Kana|{{smaller|ラ}}}}のように、{{lang|ain-Latn|ir}}の{{lang|ain-Latn|r}}は軽い{{lang|ain-Kana|{{smaller|リ}}}}のような音となることが多い。樺太方言には音節末の{{lang|ain-Latn|r}}は無く、{{lang|ain-Latn|h}}か{{lang|ain-Latn|r}}+母音のいずれかで発音される。例えば北海道方言の{{lang|ain-Latn|utar}}(人々、〜たち)は樺太で{{lang|ain-Latn|utah}}または{{lang|ain-Latn|utara}}と発音される。
 
 
 
[[アクセント]]は、語頭に閉音節があればここに付く。語頭の音節が開音節であれば、原則としてその次の音節に付く。例えば{{lang|ain-Latn|pírka}}(美しい)は最初の音節pirが閉音節なのでここにアクセントが付く。一方{{lang|ain-Latn|kamúy}}(神、ヒグマ)は最初の音節{{lang|ain-Latn|ka}}が開音節なので、次の{{lang|ain-Latn|muy}}にアクセントが付く。
 
 
 
なお、アイヌ語では文法上他の母音の後のイ、ウも子音{{lang|ain-Latn|y}}、{{lang|ain-Latn|w}}と見なされ閉音節として扱われる。例えば{{lang|ain-Latn|áynu}}(人間)は{{lang|ain-Kana|イ}}ではなく{{lang|ain-Kana|ア}}にアクセントが付く。
 
 
 
ただし例外的に最初の音節が開音節であってもそこにアクセントが付く単語もある。例えば{{lang|ain-Latn|yúkar}}([[ユーカラ]])がこれである。
 
 
 
なおアイヌ語のアクセントは高低アクセントで、アクセントのある音節は高く発音される。また、樺太方言で語頭の開音節にアクセントが付いた場合、その母音は長く発音される。例えば先の例のyukarは北海道方言では「ユカラ」に近いが樺太では{{lang|ain-Latn|yūkara}}「ユーカラ」に近い。
 
 
 
== 文法 ==
 
基本的な文型はSOV([[主語]]・[[目的語]]・[[動詞]])の順で、この点では日本語と同じである。{{要出典範囲|date= 2017年9月4日 (月) 23:32 (UTC)|しかし、[[形態論]]的には[[抱合語]]という東[[シベリア]]や[[アメリカ州の先住民族|アメリカ先住民族]]らの言語([[古シベリア諸語]]、[[アメリカ先住民諸語]]など)と共通の特徴を持つ。}}これは、動詞に主語および目的語(授与動詞では[[間接目的語]]も)の[[人称]]および数を示す[[接辞]]が付けられ、さらにその他の意味を加える接辞(動詞の[[相 (言語学)|相]]や[[態]]、先行名詞との関係を示す[[関係詞]]的なものなど)が付加されて、動詞だけでも文に相当する表現が可能なためである。なお[[名詞]]でも、体の部分など、特に個人と切り離せない関係にあるものには、所有者を示す[[所有接辞]]が必須的に付加される。
 
 
 
たとえば1つの例として、
 
* {{lang|ain-Latn|usa-oruspe a-e-yay-ko-tuyma-si-ram-suy-pa}}
 
これを直訳すれば
 
* いろいろ-うわさ 私(主語)-について-自分-で-遠く-自分の-心-揺らす-繰り返し
 
つまり「いろいろのうわさについて、私は遠く自分の心を揺らし続ける=思いをめぐらす」という意味になる<ref>[[知里真志保]]による。出典:[[平凡社]]世界大百科事典</ref>。これは[[単語]]としては2つしか含まないが長い文に相当する意味を表している。2番目の動詞は[[語根]]{{lang|ain-Latn|suy}}に主語などを示す[[接辞]]、[[副詞]]、さらには目的語やそれを限定する接辞がついて1つの長い単語になっている。
 
 
 
== 方言 ==
 
アイヌ語の方言は大きく北海道、千島、樺太に分けられる。
 
 
 
*[[北海道アイヌ語]]
 
*[[千島アイヌ語]]
 
*[[樺太アイヌ語]]
 
 
 
なお東北北部にも18世紀まで[[本州アイヌ]]が居住していたが、彼らの方言については詳らかでない。また中世以前の[[蝦夷]]がアイヌ語を話していたとする説もある(エミシアイヌ語)。
 
 
 
=== 概要 ===
 
[[アイヌ]]は[[コタン]]毎に生活をしており、コタンは主に川筋か海岸線に沿って分布したため、川筋ごとに方言が少しずつ異なる場合が多く、また海岸部と内陸部でも差異が見られた。
 
 
 
かつて大きくは[[北海道アイヌ語|北海道]]・[[千島アイヌ語|千島]](北千島)・[[樺太アイヌ語|樺太]](南樺太)の三方言があった。北海道方言は、さらに北東部方言と南西部方言の二つに分類したり、もっと細かく分類されることもあるが、方言間の詳細な比較研究が進んでいないため定説はない。千島方言は[[千島樺太交換条約|日本の千島領有]]以後急速に廃れ、[[第二次世界大戦]]後には既に話者が見つからなかったとされる。樺太方言は1994年に最後の話者とされる[[浅井タケ]]が亡くなった。北海道内でも和人の移住が早くから進んだ[[渡島国|渡島地方]]や[[石狩川]]下流域などの方言は記録がほとんど残っていない。
 
 
 
アイヌは独自の[[国家]]を形成せず、自らの言葉を文字に記すこともなかったので、アイヌ語には[[標準語]]ないしそれに近い中央語が存在しない。アイヌ語を学ぶ場合は[[沙流郡|沙流]]方言や[[千歳郡|千歳]]方言の資料が比較的手に入りやすい。
 
 
 
=== 下位区分 ===
 
''括弧内は使用地域。話者、教材を後述。''
 
*[[北海道アイヌ語]]
 
**北海道南西部方言
 
***八雲方言 ([[八雲町]]。旧[[熊石町]]域は除く)
 
***長万部方言 ([[長万部町]])
 
***余市方言 ([[余市町]])
 
***幌別方言 ([[登別市]]) - <!-- [[知里真志保]] 母語話者ではない -->[[知里幸恵]]『[[アイヌ神謡集]]』、[[金成マツ]]『アイヌ叙事詩ユーカラ集』
 
***白老方言 ([[白老町]])
 
***千歳方言 ([[千歳市]]) - [[中川裕 (アイヌ語研究者)|中川裕]]・中本ムツ子『エクスプレス・アイヌ語』、中川裕『アイヌ語千歳方言辞典』
 
***[[鵡川]]方言 (旧[[鵡川町]])
 
***沙流方言 ([[沙流川]]流域) - [[田村すず子]]『アイヌ語沙流方言辞典』、[[萱野茂]]『萱野茂のアイヌ語辞典』、他多数。他のどの方言よりも記録の質・量ともに充実している。
 
***新冠方言 ([[新冠町]])
 
**北海道北東部方言
 
***静内方言 (旧[[静内町]]) - [[奥田統己]]『アイヌ語静内方言文脈つき語彙集(CD-ROMつき)』
 
***浦河方言 ([[浦河町]])
 
***様似方言 ([[様似町]])
 
***十勝方言 ([[十勝支庁]]) - [[本別町]]教育委員会『[[澤井トメノ]]十勝本別アイヌ語分類辞典』
 
***釧路方言 ([[釧路支庁]]) - 『アイヌ語釧路方言語彙』、[[山本多助]]、貫塩喜蔵
 
***阿寒方言 ([[阿寒町]])
 
***根室方言 ([[根室支庁]])
 
***北見方言 ([[網走支庁]])
 
***石狩方言 ([[旭川市]]など) - 砂沢クラ、杉村キナラブック、杉村フサ、石山キツエ
 
***天塩方言 ([[名寄市]]など)
 
***宗谷方言 ([[稚内市]])
 
 
 
*[[樺太アイヌ語]]
 
**西海岸方言 - 藤山ハル、浅井タケ、[[村崎恭子]]『カラフトアイヌ語』
 
**東海岸方言 - [[山辺安之助]]『あいぬ物語』
 
**タライカ方言 (旧[[敷香町]]) - 樺太の他地域のアイヌ語と著しく異なっていた。
 
 
 
*[[千島アイヌ語]] (旧[[新知郡]]以北の[[千島列島]]) - [[村山七郎]]『北千島アイヌ語』 古い時代には[[カムチャツカ半島]]でも話されていた可能性がある。北千島アイヌは明治時代に[[色丹島]]へ移住し、後に北海道本島へ再移住した。なお、元々の[[択捉島]]以南のアイヌ語は北海道方言の一種とされる。
 
 
 
== 文章 ==
 
=== 文章化の試み ===
 
20世紀よりも前の時代にアイヌ自身がアイヌ語の文章を記したテキストはみつかっていない。近年は[[アイヌタイムズ]]を例として、カタカナやラテン文字、キリル文字による文章化の試みが浸透しつつある。
 
 
 
アイヌ語には多くの方言体系の存在が知られている(「[[アイヌ語方言]]」を参照)が、伝統的なアイヌ語話者全体あるいはその大部分を統べるような中央集権的[[支配者]]、宗教的権威、あるいは文化的中心が歴史上存在しなかったこともあり、他を圧倒する方言(あるいは[[言語変種]])の体系が存在しない<ref>アイヌ語母語話者あるいは習得した話者も含めての各方言別の話者数の比較によって他の方言に優越する方言が存在する可能性はある。また、辞書や研究文献の過多によるアクセスの難易は各方言で差が存在する。</ref>。その為、アイヌ語を文字を使って体系的に表現する場合すなわち文章化する際には、規範となりうる共通語あるいは規範的な書記体系([[書記言語]])や[[正書法]]が存在しないという困難がある。
 
 
 
アイヌ語には文章化する際の[[wikt:オーソライズ|オーソライズ]]された形式・体系が存在しないもののそれに準ずるとみなし得る試みがみられ、[[北海道ウタリ協会]]が編集したアイヌ語テキスト『{{lang|ain-Kana|アコ{{smaller|ロ}} イタ{{smaller|ク}}}}』が出版されて以降は、『{{lang|ain-Kana|アコ{{smaller|ロ}} イタ{{smaller|ク}}}}』で範示されている文章表記に基づいた、各方言の文章化が多くなされている。
 
 
 
また、英語などを通じてローマ字表現に慣れ親しんでいる人たちを除いて、カタカナ表記に慣れ親しんでいる日本語母語話者を中心にした日本語を使用する人々には、ローマ字よりカタカナによるアイヌ語表記が好まれる場合が多い。ただし、カタカナ表記は、出版物やワープロやパソコン上で音節末の子音を表現するための小さいカタカナを記す際、わざわざ活字の大きさを小さくしなければならないなど、大きな問題点があった。
 
 
 
=== 文字(カナ表記) ===
 
アイヌ語の仮名による統一された正書法が存在するわけではないが、各方式が大きく異なるわけではない。日本語にない音を表記するために、いくつかの専用の文字を使用する。
 
 
 
「ca・cu・ce・co・ye・we・wo」などは日本語と同様に「チャ・チュ・チェ・チョ・イェ・ウェ・ウォ」と表記する。
 
 
 
{{lang|ain-Latn|tu}}は、「トゥ」、または「ト」に半濁点がついた「{{lang|ain-Kana|{{JIS2004フォント|ト゚}}}}」([[ト゜]])、あるいは「ツ」に半濁点がついた「{{lang|ain-Kana|{{JIS2004フォント|ツ゚}}}}」([[ツ゜]])(括弧内は代用表記)で表記される。
 
 
 
音節末の{{lang|ain-Latn|t}}、{{lang|ain-Latn|k}}、{{lang|ain-Latn|p}}、{{lang|ain-Latn|m}}、{{lang|ain-Latn|n}}はそれぞれ、「{{lang|ain-Kana|ッ}}」、「{{lang|ain-Kana|{{JIS2004フォント|[[小書きク|ㇰ]]}}}}」({{lang|ain-Kana|{{smaller|ク}}}})、「{{lang|ain-Kana|{{JIS2004フォント|[[小書きプ|ㇷ゚]]}}}}」({{lang|ain-Kana|{{smaller|プ}}}})、「{{lang|ain-Kana|{{JIS2004フォント|[[小書きム|ㇺ]]}}}}」({{lang|ain-Kana|{{smaller|ム}}}})、「ン」(括弧内は代用表記)で表記される。
 
 
 
音節末の{{lang|ain-Latn|s}}は多くの場合「{{lang|ain-Kana|{{JIS2004フォント|ㇱ}}}}」({{lang|ain-Kana|{{smaller|シ}}}})と表記するが、発音の状態によって「{{lang|ain-Kana|{{JIS2004フォント|[[小書きス|ㇲ]]}}}}」({{lang|ain-Kana|{{smaller|ス}}}})と表記される。
 
 
 
音節末の{{lang|ain-Latn|r}}は直前の母音に則した書き分けをし、それぞれ「{{lang|ain-Kana|{{JIS2004フォント|[[小書きラ|ㇻ]]}}}}」({{lang|ain-Kana|{{smaller|ラ}}}})、「{{lang|ain-Kana|{{JIS2004フォント|[[小書きリ|ㇼ]]}}}}」({{lang|ain-Kana|{{smaller|リ}}}})、「{{lang|ain-Kana|{{JIS2004フォント|[[小書きル|ㇽ]]}}}}」({{lang|ain-Kana|{{smaller|ル}}}})、「{{lang|ain-Kana|{{JIS2004フォント|[[小書きレ|ㇾ]]}}}}」({{lang|ain-Kana|{{smaller|レ}}}})、「{{lang|ain-Kana|{{JIS2004フォント|[[小書きロ|ㇿ]]}}}}」({{lang|ain-Kana|{{smaller|ロ}}}})(括弧内は代用表記)で表記される。
 
 
 
単語は分かち書きする。人称接辞は中黒「・」で区切って書かれることがある。それ以外の記号は日本語と同じつかい方をする。
 
 
 
2000年1月に[[日本工業規格|JIS規格]]として[[JIS X 0213|JIS第三水準漢字(記号類を含む)・JIS第四水準漢字]]が新規に制定され、このうちのJIS第三水準漢字に'''[[アイヌ語仮名|アイヌ語カナ]]'''表記用の[[拡張カタカナ]](日本語の文章に通常使用される範囲外での小文字カタカナや半濁音付きカタカナ)も含まれている。
 
 
 
[[ISO規格]]に採り入れられている {{lang|en|Unicode}} では、2002年3月に改定された {{lang|en|[[Unicode]]}} 3.2 から [[JIS X 0213|{{lang|en|JIS}} X 0213]] に追随する形でアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナ ([[片仮名音声拡張|Katakana Phonetic Extensions]]) が追加されており、同規格に対応したソフトウェアでアイヌ語カナ表記が扱える枠組みが整えられた。ただし、一部の文字は合成を用いないと表現できないという {{lang|en|Unicode}} 特有の問題があり、ソフトウェアによってはきれいに表示できないことがある。
 
 
 
*アイヌ語カナ表記用の拡張カタカナ({{lang|en|Unicode}} 3.2準拠)
 
:代用表記に関しては、小文字カタカナは通常サイズのカタカナの縮小表示、半濁音は通常の全角半濁音記号を付与。
 
{|class="wikitable" style="font-family:'ヒラギノ角ゴ ProN W3','ヒラギノ角ゴ ProN','Hiragino Kaku Gothic ProN','メイリオ',Meiryo,'新ゴ Pr6N R','A-OTF 新ゴ Pr6N R','小塚ゴシック Pr6N M','IPAexゴシック','Takaoゴシック','XANO明朝U32','XANO明朝','和田研中丸ゴシック2004絵文字','和田研中丸ゴシック2004ARIB','和田研中丸ゴシック2004P4','和田研細丸ゴシック2004絵文字','和田研細丸ゴシック2004ARIB','和田研細丸ゴシック2004P4','和田研細丸ゴシックProN',YOzFont04,'IPA Pゴシック',MS Pゴシック';-moz-font-feature-settings:'jp04';-moz-font-feature-settings:'jp04=1';-webkit-font-feature-settings:'jp04' 1;"
 
!文字!!代用表記!!!!文字!!代用表記!!!!文字!!代用表記!!!!文字!!代用表記
 
|-
 
|{{lang|ain-Kana|[[小書きク|&#12784;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|ク}}}}||rowspan="5"| ||{{lang|ain-Kana|[[小書きハ|&#12789;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|ハ}}}}||rowspan="5"| ||{{lang|ain-Kana|[[小書きラ|&#12795;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|ラ}}}}||rowspan="5"| ||{{lang|ain-Kana|[[小書きム|&#12794;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|ム}}}}
 
|-
 
|{{lang|ain-Kana|[[小書きシ|&#12785;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|シ}}}}||{{lang|ain-Kana|[[小書きヒ|&#12790;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|ヒ}}}}||{{lang|ain-Kana|[[小書きリ|&#12796;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|リ}}}}||{{lang|ain-Kana|[[小書きプ|&#12791;&#12442;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|プ}}}}
 
|-
 
|{{lang|ain-Kana|[[小書きス|&#12786;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|ス}}}}||{{lang|ain-Kana|[[小書きフ|&#12791;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|フ}}}}||{{lang|ain-Kana|[[小書きル|&#12797;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|ル}}}}||{{lang|ain-Kana|[[セ゜|セ&#12442;]]}}||{{lang|ain-Kana|セ゜}}
 
|-
 
|{{lang|ain-Kana|[[小書きト|&#12787;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|ト}}}}||{{lang|ain-Kana|[[小書きヘ|&#12792;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|ヘ}}}}||{{lang|ain-Kana|[[小書きレ|&#12798;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|レ}}}}||{{lang|ain-Kana|[[ツ゜|ツ&#12442;]]}}||{{lang|ain-Kana|ツ゜}}
 
|-
 
|{{lang|ain-Kana|[[小書きヌ|&#12788;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|ヌ}}}}||{{lang|ain-Kana|[[小書きホ|&#12793;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|ホ}}}}||{{lang|ain-Kana|[[小書きロ|&#12799;]]}}||{{lang|ain-Kana|{{smaller|ロ}}}}||{{lang|ain-Kana|[[ト゜|ト&#12442;]]}}||{{lang|ain-Kana|ト゜}}
 
|}
 
{{See also|JIS X 0213非漢字一覧#1面5区}}
 
パソコンでアイヌ語カナ表記(Unicode 3.2準拠)を扱う場合、
 
*{{lang|en|[[Macintosh]]}} では、2001年の {{lang|en|[[Mac OS X 10.1]] Puma}} 以降での[[オペレーティングシステム|OS]]標準[[フォント]]はアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナにも対応している他、2003年の {{lang|en|[[Mac OS X 10.3]] Panther}} 以降でのOS標準[[インプットメソッド|文字入力システム]]の[[ことえり]]4からはアイヌ語入力モードも採用された。
 
*{{lang|en|[[Microsoft Windows|Windows]]}}では、2007年の{{lang|en|[[Microsoft Windows Vista|Windows Vista]]}}以降のOS標準フォントはアイヌ語カナ表記用の拡張カタカナにも対応しており、2001年の{{lang|en|[[Microsoft Windows XP|Windows XP]]}}と2003年の{{lang|en|[[Microsoft Windows Server 2003|Windows Server 2003]]}}については標準では対応しないものの対応版フォントを無償でダウンロードできる。([http://support.microsoft.com/kb/927489/ja {{lang|en|JIS}}2004対応フォント(KB927489)]
 
**2008年現在 {{lang|en|Windows}} の標準状態ではアイヌ語カナ表記[[IME|入力機能]]を備えていないものの、カナ表記入力を可能にするためのユーティリティなどが有志により作成公開されており<ref>{{cite web|url=http://hp.vector.co.jp/authors/VA038316/|title=ROM作成物サポートページ - ainu_exchange|accessdate=2007年9月29日 }}</ref><ref>{{cite web|url=http://ha1.seikyou.ne.jp/home/akairingosaita/typing/test2-23.htm|title=アイヌ語入力-試作品その3|accessdate=2007年9月29日 }}</ref>、アイヌ語カナ表記用の拡張カタカナにも対応する商用フォントや[[フリーフォント]]も増えつつある。
 
***{{smaller|(対応フォント一覧は {{lang|en|ainu_exchange}}<ref>[http://hp.vector.co.jp/authors/VA038316/ {{lang|en|ROM}}作成物サポートページ]</ref>の取扱説明書内で記述されている)}}
 
 
 
=== 文字(ローマ字表記) ===
 
「発音」の節を参照。アクセント表記には[[アキュート・アクセント]]付きラテン文字の「{{Unicode|á}}」「{{Unicode|í}}」「{{Unicode|ú}}」「{{Unicode|é}}」「{{Unicode|ó}}」を使用する。
 
 
 
通常アクセントを省略して例外アクセントのみ表記したり、全てのアクセントを省略してアルファベットのみで表記したりすることもある。
 
 
 
=== 文学 ===
 
アイヌ語で文字使用が試みられる以前のアイヌの文学は全て口承のもので、民話・神話には非常に富んでいる。アイヌ語の[[叙事詩]]は{{lang|ain-Kana|[[ユーカラ|ユカ{{smaller|ラ}}]]}}または{{lang|ain-Kana|[[ユーカラ|ユーカ{{smaller|ラ}}]]}}と呼ばれる。{{lang|ain-Kana|ユーカ{{smaller|ラ}}}}の内容は、動物の神があらわれて体験を語るものや、人間の世界の恋愛や戦いを歌うものなど多様である。叙事詩のほかに、いわゆる昔話のような散文による伝承文学もある。
 
 
 
== 語彙 ==
 
{{wiktionary|Category:アイヌ語|アイヌ語の語彙}}
 
{{see|アイヌ語の語彙一覧}}
 
 
 
==アイヌ語に起源を持つと推測されている地名==
 
 
 
[[ファイル:1880s Meiji Japanese Folding Map of Japan - Geographicus - Japan-meiji-1880.jpg|サムネイル|[[明治]]時代の[[日本地図]]。[[北海道]]の土地の名前の多くは、アイヌ語を[[片仮名|カタカナ]]で表記している。]]
 
 
 
北海道島には、アイヌ語由来の日本語地名が多い。大別して、(1) アイヌ語の発音を写し取ってカタカナで表記するものと、(2) それに漢字をあてたものがある。漢字の読みにうまく当てはまらない地名も多く、(3) 漢字にあわせて元の読みを変更してしまったものや、(4) アイヌ語の語義をそのまま日本語名にあてた(意訳)ものもある。
 
 
 
{|class=wikitable
 
!型!!アイヌ語での地名!!変化!!日本語での地名
 
|-
 
|(1)||{{lang|ain-Kana|ニセイ・コ・アン・ペツ}}||短縮・省略してカナ文字で表記。||ニセコ
 
|-
 
|(2)||{{lang|ain-Kana|サッ・ポロ・ペッ}}||「ペッ」が脱落し、残りの部分に漢字をあてた。||{{読み仮名|札幌|さっぽろ}}
 
|-
 
|(3)||{{lang|ain-Kana|チキサプ}}||→ツキサップ→ツキサム||{{読み仮名|月寒|つきさむ}}
 
|-
 
|(4)||{{lang|ain-Kana|タンネトー}}||「細長い沼」という意味を日本語訳。||{{読み仮名|長沼|ながぬま}}
 
|-
 
|(5)||{{lang|ain-Kana|オッカイ・タム・チャラパ}}||→オカタマ→オカダマ||{{読み仮名|[[丘珠町|丘珠]]|おかだま}}
 
|}
 
 
 
日本の[[本州|本州島]]以南にも、アイヌ語を起源とする[[地名]]が、かつて多数住んでいたアイヌの痕跡として残っているという説がある。本州以南のアイヌ語地名については、[[山田秀三]]をはじめ、在野の[[地名研究家]]によって研究が進められてきた。山田らによれば仙台付近以北(太平洋側)・秋田県以北(日本海側)には明らかにアイヌ語と解釈できる地名が分布し、この地域については[[続縄文文化]]の後北式土器の分布と重なるとの指摘もある<ref>新谷正隆:西木村のアイヌ語地名、秋田地名研究年報20(2004)19-27.]</ref>。しかし、これより以南については根拠が乏しい。
 
<!--
 
一例としてこれらの地名で「……内」「……別」が語尾につくもの([[幌加内町|幌加内]]、[[岩内町|岩内]]、[[登別市|登別]]、[[江別市|江別]]など)はそれぞれアイヌ語の意味で沢または川がその近隣に存在しているところから由来する。
 
-->
 
 
 
===北海道島の地名===
 
{{see|北海道の地名・駅名#アイヌ語に由来するもの}}
 
 
 
===本州島の地名===
 
本州島の地名については、アイヌ語が起源、あるいは(狭義の)アイヌ語と祖先を同じにする(「アイヌ語族」「[[縄文人]]の言語」と表現する人もいる)、という説が存在する地名である。また、北海道を含めた東北全域に特有な地名(発音)があり、タㇷ゚コㇷ゚(tap・kop、小高い丘または丸山)はその典型である: 
 
北海道の達古武(たっこぶ、 tapkop)、達布(たっぷ、tapkop)、青森県の田子(たっこ、 tapkop)、岩手県の達谷(たっこく、 tapkop)、達古袋(たっこたい、tapkop)、立根(たっこん、 tapkop)、秋田県の達子森(たっこもり、tapkop)、田子内(たごない、tapkop)、辰子潟(たつこがた、tapkop)、宮城県の達居森(たっこもり、tapkop)、福島県の立子山(たつごやま、tapkop)、竜子山(たつごやま、たっごやま、tapkop){{要出典|date=2017年5月}}。ちなみに、タㇷ゚コㇷ゚は内破音の閉音節をほとんど持たない日本語の話者にとっては「タッコッ」のように聞こえる音である。トィオマ(土のある~、toy・oma):岩手県の豊間根(とよまね)、宮城県の登米(とよま)、福島県の豊間(とよま)。シコッ(大きな窪地、si・kot):北海道の支笏湖(しこつこ、sikot)、岩手県の死骨崎(しこつざき、sikot)。
 
 
 
====青森県====
 
[[相内]](あいない)、[[浅瀬石]](あせいし)、[[赤保内]](あかぼない)、[[荒熊内]](あらくまない)、[[今別]](いまべつ)、[[兎内]](うさぎない、とない)、[[宇鉄]](うてつ)、[[老部 (曖昧さ回避)|老部]](おいっぺ)、[[大深内]](おおふかない)、[[大別内]](おおべつない)、[[奥内]](おくない)、[[大沢内]](おおざわない、おおさわない)、[[奥 (曖昧さ回避)|奥戸]](おこっぺ)、[[遅毛内]](おそけない)、[[尾太]](おっぷ)、[[尾別]](おっぺつ)、[[折腰内]](おりこしない)、[[影津内]](かげつない)、[[蟹田]](かにた)、[[木内内]](きないない)、[[木野部]](きのっぷ)、[[切谷内]](きりやない)、[[笹内]]、[[佐羽内]](さばない)、[[小比内]](さんぴない)、[[三内丸山遺跡|三内]](さんない)、[[獅々内]]、[[下風呂]](しもふろ)、[[尻労]](しつかり)、[[車力村]](しゃりき)、[[瀬辺地]](せべち、せへじ)、[[千厩]](せんまや)、[[田子町|田子]](たっこ-まち、{{lang|ain-Latn|tapkop}})、[[竜飛]]([[龍飛]]、たっぴ)、[[田光]](たっぴ)、[[蓼内]](たでない、たてない)、[[丹内]]、[[鳥舌内]](ちょうしたない)、[[十腰内]](とこしない)、[[十枝内]](としない)、[[飛内]](とびない)、[[苫米地]](とまべち)、[[豊間内]](とよまない)、[[入内]](にゅうない)<ref>[http://d.hatena.ne.jp/bluesapphire/200704 (入内地区について)]</ref>、[[野辺地]](のべち、のへじ)、[[野内駅|野内]](のない)、[[原別]](はらべつ)、[[平内町|平内]](ひらない-まち)、[[洞内]](ほらない)、[[三厩]](みんまや)、[[目内]](めない)、[[類家 (曖昧さ回避)|類家]](るいけ)<ref>[http://www.town.takko.aomori.jp/000000so3002011301.htm 田子町プロフィール]{{リンク切れ|date=2018年3月 |bot=InternetArchiveBot }}</ref>
 
 
 
====岩手県====
 
[[相去]](あいさり)、[[浅内]](あさない)、[[安家洞|安家]](あっか)、[[安比]](あっぴ)、[[安庭]](あにわ)、[[宇霊羅]](うれいら、うれら)、[[伊保内]]、[[江刺]](えさし)、[[江釣子村|江釣子]](えづりこ)、[[越喜来]](おきらい)、[[オショウナイ]]、[[女遊部]](おなつぺ・おなっぺ、釜石市)、[[女遊戸]](おなつぺ・おなっぺ、宮古市)、[[釜石]] (?)、[[上米内]](かみよない)、[[金田一]](きんだいち)、[[吉里吉里駅|吉里吉里]](きりきり)、[[久慈]] (?)、[[気仙]] (?)、[[夏油]](げとう)、[[花露辺]](けろべ)、[[佐比内]]、[[死骨崎]](しこつざき、[[唐丹町]])、[[タイマグラ]]、[[達谷]](たっこく, tapkop)、[[立根]](たっこん、{{lang|ain-Latn|tapkop}})、[[束稲山]](たばしね<ref>[http://www.st.rim.or.jp/~success/oh/ainu61-68.html アイヌ語地名考]</ref>)、[[土淵]](つちぶち)、[[唐丹]](とうに)、[[遠野]] (とおの)、[[泊里]](とまり)、[[西根町|西根]](にしね)、[[似田貝]]、[[似内]](にたない)、[[沼宮内]](ぬまくない)、[[日頃市]](ひころいち)、[[平泉]](? ひらいずみ<ref>「ひら-(平、比良)」を平らではなく pira "崖"と解釈する方法。ただし、広(ひろ)、拓/墾(ひら)く、などと同語根であることにも留意</ref>)、[[馬渕]](まべち、まぶち)、[[目屋]]、[[綾里駅|綾里]](りょうり)、[[和井内]](わいない)
 
 
 
====秋田県====
 
[[浅見内]](あさみない)川、[[阿仁]](あに)、[[阿仁合]](あにあい)、[[天内]](あまない)、[[板見内]](いたみない)、打当内(うっとない)、[[笑内駅|笑内]](おかしない)、小猿部川(おさるべ)、[[生保内]](おぼない)、[[毛馬内]](けまない)、[[斉内川]](さいない)、狙半内川(さるはんない)、[[鹿内]](しかない)、[[下山内]](しも-さんない)、[[岱野]](?, たいの)、[[田子内]](たごない、{{lang|ain-Latn|tapkop}})、[[辰子潟]](たつこがた、田沢湖、{{lang|ain-Latn|tapkop}})、[[達子森]](たっこもり、{{lang|ain-Latn|tapkop}})、[[土目内]](どめね)、[[十和田]](とわだ)、[[西馬音内]](にしもない)、[[仁別]](にべつ)、[[能代]](のしろ、nup・sir)、[[羽見内]](はみない)、[[比立内]](ひたちない)、[[比内]](ひない)、[[桧木内]](ひのきない)、[[堀見内]](ほりみない)、[[マンタラメ]]、[[役内]](やくない)、[[鑓見内]](やりみない)、[[米内]](よない)
 
 
 
====宮城県====
 
[[歌津町|歌津]](うたつ)、[[達居森]](たっこもり、{{lang|ain-Latn|tapkop}})、[[登米]](とよま)、[[保呂内]]
 
 
 
====北東北3県、その他各地に点在====
 
[[長内]]<ref>[http://www.jomon.com/~emisi/material/19_2008.9/sugawara-3/osanai.htm 久慈市周辺のアィヌ語系地名] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20110713115625/http://www.jomon.com/~emisi/material/19_2008.9/sugawara-3/osanai.htm |date=2011年7月13日 }}</ref>、[[折壁]](おりかべ)、[[鬼壁]](おにかべ)、[[折戸]] (?)、[[釜谷]]、[[釜屋]]、[[蒲谷]]、[[鎌谷]](かまや)、[[目名]]、[[目名川]]、~[[岱]]、~台(臺)、~平({{lang|ain-Latn|たい}}、{{lang|ain-Latn|tay}}、「森」)
 
 
 
==日本語に溶け込んだアイヌ語==
 
{|class=wikitable
 
!日本語!!アイヌ語!!備考
 
|-
 
|nowrap|[[エトピリカ]]||nowrap|{{lang|ain-Kana|エトゥピリカ}}({{lang|ain-Latn|etu pirka}})||嘴・美しい
 
|-
 
|nowrap|[[オットセイ]]||nowrap|{{lang|ain-Kana|オンネプ}}({{lang|ain-Latn|onnep}})||中国語を経由、オットに変化した後、漢方薬としての陰茎の婉曲表現の臍がつきオットセイとなって入ったものであると言われている。
 
|-
 
|nowrap|[[ケイマフリ]]||nowrap|{{lang|ain-Kana|ケマフレ}}({{lang|ain-Latn|kema hure}})||足・赤い(熟語 {{lang|ain-Latn|kema-pase}} 足・重い→年老いた)
 
|-
 
|nowrap|[[コマイ]]||nowrap|{{lang|ain-Kana|コマイ}}({{lang|ain-Latn|komay}})<br />{{lang|ain-Kana|カンカイ}}({{lang|ain-Latn|kankay}})||
 
|-
 
|nowrap|[[シシャモ]]||nowrap|{{lang|ain-Kana|スサム}}({{lang|ain-Latn|susam}})||語源は{{lang|ain-Latn|susu-ham}}「柳の葉」とされる。
 
|-
 
|nowrap|[[トナカイ]]||nowrap|{{lang|ain-Kana|トゥナカイ}}({{lang|ain-Latn|tunakay}})||
 
|-
 
|nowrap|[[ノンノ]]||nowrap|{{lang|ain-Kana|ノンノ}}({{lang|ain-Latn|nonno}})||花([[ファッション雑誌]]の名称)
 
|-
 
|nowrap|[[ハスカップ]]||nowrap|{{lang|ain-Kana|ハシカプ}}({{lang|ain-Latn|haskap}})||語源は {{lang|ain-Latn|has-ka-o-p}} で「枝の上にたくさんなるもの」の意。
 
|-
 
|nowrap|[[ウバガイ|ホッキ貝]]||nowrap|{{lang|ain-Kana|ポク}}({{lang|ain-Latn|pok}})<br />{{lang|ain-Kana|セイ}}({{lang|ain-Latn|sey}})||
 
|-
 
|nowrap|[[ラッコ]]||nowrap|ラッコ({{lang|ain-Latn|rakko}})||
 
|-
 
|nowrap|[[ルイベ]]||nowrap|ルイペ({{lang|ain-Latn|ruype}})||溶ける食べ物の意
 
|}
 
 
 
== 雑学 ==
 
2004年から北海道で開催されている世界的[[モータースポーツ]]イベント、[[世界ラリー選手権]]のイベントの一つ''[[ラリージャパン]]''において、コース(SS、スペシャルステージ)の名前は、{{lang|ain-Kana|キムンカムイ}}、{{lang|ain-Kana|ヤムワッカ}}など、原則的にアイヌ語で付けられている。<br />
 
2000年代中盤から、アイドルのライブコンサートの際に、アイヌ語の掛け声(mix)を入れる場合がある。「チャペ・アペ・カラ・キナ・ララ・トゥスケ・ミョーホントゥスケ」(左記ゼンキョーバージョンの他にフルバージョン「チャペ・アペ・カラ・キナ・ララ・トゥスケ・ウィスペ・ケスィ・スィスパ」がある。)と叫ぶのがそれである。
 
{| class="wikitable"
 
|-
 
! カナ !! ローマ字 !! 意味
 
|-
 
| チャペ || cape || 猫
 
|-
 
| アペ || ape || 火
 
|-
 
| カㇻ || kar || 作る
 
|-
 
| キナ || kina || 草
 
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| ラㇻ || rar || 潜る
 
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| トゥスㇱケ || tususke || 震える
 
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| ミョーホントゥスケ ||  || ※アイヌ語ではない
 
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アイヌ民族の言語。平取 (ひらとり) ,様似 (さまに) ,釧路,旭川などの北海道方言と,第2次世界大戦後,サハリン (樺太) から北海道に移住した引揚者による稚咲内 (わっかさくない) や常呂 (ところ) の樺太方言がある。千島方言はすでに絶滅。他の方言もごく少数の古老が記憶しているだけで,滅びる寸前にある。他言語との[[親族関係]]は未確立。人称接辞による主格活用,目的格活用,両者を合せた抱合的活用があるのが特色。たとえば,沙流 (さる) 方言では,nukar「見る」に二人称複数主格の人称接辞'eci-が接合した形式'eci-nukarは「あなたがたが見る」を意味し,一人称単数目的格の人称接辞'en-が接合した形式'en-nukarは「私を見る」を意味する。「あなたがたが私を見る」は'eci-'en-nukarで表わされる。アイヌ語に入った日本語は tuki (杯) ,puta (ふた) など多数。日本語に入ったアイヌ語はそれほど多くなく,「ラッコ」 rakko,「トナカイ」 tonakkayなど。北海道から東北地方にかけての地名にはアイヌ語起源のものがあり,かつてのアイヌ語の分布領域を示している。生保内
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(おぼない) ,長内 (おさない) などのナイは nay (沢) ,苫辺地 (とまべち) ,馬淵 (まべち) ,登別 (のぼりべつ) などのベチ,ベツは pet (川) からきたものである。
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== 脚注 ==
 
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{{reflist}}
 
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== 参考文献 ==
 
=== 入門書 ===
 
* 中川裕・中本ムツ子 『CDエクスプレス アイヌ語』 [[白水社]] ISBN 4560005990 2004年
 
*: 1997年刊の『エクスプレス アイヌ語』にCDが付いた新装版。
 
* 『アコ{{smaller|ロ}} イタ{{smaller|ク}}』[[北海道ウタリ協会]] ISBN 4905756219 C0086 1994年
 
* [[田村すず子]] 『アイヌ語入門』『アイヌ語基礎語彙』『アイヌ語入門解説』 [[早稲田大学]]語学研究所、1983年
 
*: カムイトラノ協会、片山言語文化研究所などがビデオ教材やテキストを作成している。
 
*大修館書店1981年刊、講座言語第六巻『世界の言語』413-445pp 田村すゞ子「アイヌ語」
 
 
=== 辞書 ===
 
* [[萱野茂]] 『萱野茂のアイヌ語辞典』 [[三省堂]] ISBN 4385170509 1996年(初版)・ISBN 4385170525 2002年(増補版)
 
* 『萱野茂のアイヌ語辞典 CD-ROM』三省堂 ISBN 4385613060 1999年。
 
*: 上記(初版)のCD-ROM版。全例文に著者自身の発音による音声が付いている。
 
* [[田村すず子]] 『アイヌ語沙流方言辞典』 草風館 ISBN 4883230937 1996年
 
* 中川裕 『アイヌ語千歳方言辞典』 草風館(普及版) ISBN 4883230783・(机上版) ISBN 4883230775 1995年
 
* 知里高央・横山孝雄 『アイヌ語イラスト辞典』
 
* 知里高央・横山孝雄 『アイヌ語絵入り辞典』
 
* [[知里真志保]] 『分類アイヌ語辞典』
 
* [[服部四郎]] 『[[アイヌ語方言辞典]]』
 
* [[ジョン・バチェラー]]『アイヌ・英・和辞典  第四版』(岩波書店、ISBN 4000800558、1981年)
 
 
=== 解説書、特定分野の辞典 ===
 
* 亀井孝・[[河野六郎]]・[[千野栄一]]編 『日本列島の言語』 [[三省堂]] ISBN 4385152071
 
*: 『言語学大辞典』(三省堂、1988年)からアイヌ語、日本語、琉球列島の言語の3項目を抜き出して編集。アイヌ語全般に関する詳しい解説を含む。アイヌ語の解説は[[田村すず子]]が担当。
 
* [[知里真志保]] 『アイヌ語入門 - 特に地名研究者のために』
 
* 知里真志保 『地名アイヌ語小辞典』 北海道出版企画センター ISBN 4832888021
 
*: 原本は1956年に発行された。地名に出てくるアイヌ語の解説書。
 
 
=== 読み物 ===
 
* 『[[アイヌ神謡集]]』 [[知里幸惠]]編訳、岩波書店〈[[岩波文庫]]〉 赤80-1
 
*: 原本は1923年に発行され、アイヌ文学として一般に知られるようになった最初のもの。著者は出版をまたず、19歳3か月で夭折した。
 
 
== 関連項目 ==
 
{{Commonscat|Ainu language}}
 
{{wiktionarycat|アイヌ語}}
 
* [[アイヌ用語一覧]]
 
* [[アイヌ語方言]]
 
* [[アイヌ語仮名]]
 
* [[アイヌ文化]]
 
* [[アイヌ文化振興法]]
 
* [[人名#アイヌの人の名前|人名#アイヌの名前]]
 
* [[アイヌ語ラジオ講座]]
 
* [[アイヌタイムズ]]
 
* [[蝦夷]]
 
* [[オホーツク文化]] - [[ニヴフ]]
 
* [[苫小牧駒澤大学]]
 
* [[危機に瀕する言語]]
 
* [[北海道の地名・駅名]]
 
* [[消滅危機言語の一覧]]
 
 
== 外部リンク ==
 
{{Incubator|prefix=Wp|code=ain}}
 
* [http://jinbunweb.sgu.ac.jp/~ainu/biblio/japanese.html アイヌ語学習者のためのアイヌ語基本文献・音声資料リスト] [[田村すず子]]([[早稲田大学]]語学教育研究所)編、[http://jinbunweb.sgu.ac.jp/~ainu/biblio/japanese.html 奥田統己]([[札幌学院大学]]人文学部)増補
 
* [http://www.geocities.jp/otarunay/bunpo.html 初心者のためのアイヌ語文法解説]
 
* [http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Gaien/6362/siraaynu.htm 白老のアイヌ語単語集]
 
* [http://www.asahi-net.or.jp/~hi5k-stu/aynu/ 北海道のアイヌ語地名]
 
* [http://www.stv.ne.jp/radio/ainugo/ アイヌ語ラジオ講座]([[札幌テレビ放送]] STV)
 
* [http://www.frpac.or.jp/index.html アイヌ文化振興・研究推進機構]
 
* [https://web.archive.org/web/20060528175555/http://www.pref.hokkaido.jp/kseikatu/ks-ambkc/hacrc/hp/index.html 北海道立アイヌ民族文化研究センター]
 
* [https://web.archive.org/web/20050208075201/http://www.l.chiba-u.ac.jp/japanese/eura/ 千葉大学文学部ユーラシア言語文化論講座](アイヌ語や[[ニヴフ語]]などを含む北方諸民族の言語や文化を研究)
 
* [http://hp.vector.co.jp/authors/VA038316/ ROM作成物サポートページ](Windows用のアイヌ語カナ表記用拡張カタカナ対応化拡張フォントやアイヌ語カナ表記入力/変換ユーティリティ)
 
* [http://www.dai3gen.net/index_j.html 日本古代史とアイヌ語]
 
* [http://www.geocities.jp/otarunay/taimuzu.html 季刊紙『アイヌタイムズ』のホームページ]
 
* [http://www.chikyukotobamura.org/forum/salon100123s.html NPO法人「地球ことば村・世界言語博物館」による2010年1月のことばのサロン シリーズ「よみがえることばたち」7「アイヌに生まれて」]
 
  
 
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アイヌ語(アイヌご、アイヌ語ラテン文字表記:Aynu itakアイヌ語仮名表記:アイヌ・イタㇰ

アイヌ民族の言語。平取 (ひらとり) ,様似 (さまに) ,釧路,旭川などの北海道方言と,第2次世界大戦後,サハリン (樺太) から北海道に移住した引揚者による稚咲内 (わっかさくない) や常呂 (ところ) の樺太方言がある。千島方言はすでに絶滅。他の方言もごく少数の古老が記憶しているだけで,滅びる寸前にある。他言語との親族関係は未確立。人称接辞による主格活用,目的格活用,両者を合せた抱合的活用があるのが特色。たとえば,沙流 (さる) 方言では,nukar「見る」に二人称複数主格の人称接辞'eci-が接合した形式'eci-nukarは「あなたがたが見る」を意味し,一人称単数目的格の人称接辞'en-が接合した形式'en-nukarは「私を見る」を意味する。「あなたがたが私を見る」は'eci-'en-nukarで表わされる。アイヌ語に入った日本語は tuki (杯) ,puta (ふた) など多数。日本語に入ったアイヌ語はそれほど多くなく,「ラッコ」 rakko,「トナカイ」 tonakkayなど。北海道から東北地方にかけての地名にはアイヌ語起源のものがあり,かつてのアイヌ語の分布領域を示している。生保内

(おぼない) ,長内 (おさない) などのナイは nay (沢) ,苫辺地 (とまべち) ,馬淵 (まべち) ,登別 (のぼりべつ) などのベチ,ベツは pet (川) からきたものである。

脚注




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