「ポアンカレ写像」の版間の差分
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数学の、特に力学系の理論における第一回帰写像(first recurrence map)あるいはポアンカレ写像(ポアンカレしゃぞう、英: Poincaré map)とは、ある連続力学系の状態空間の周期軌道と、系のフローを横断するポアンカレ切断面と呼ばれる低次元の部分空間との共通部分のことを言う。アンリ・ポアンカレの名にちなむ。より正確に、空間のある切断面の中に初期点を持つ周期軌道がその面を離れ、再びその面に戻ってきたときの点を調べる。するとその初期点から第二の点への写像を作ることが出来、それが第一回帰写像と呼ばれる。ポアンカレ切断面の横断性は、その部分空間上を出発する周期軌道のフローは再びそれを通過し、平行にはならないことを意味する。
ポアンカレ写像は、元の連続力学系よりも次元が 1 小さい状態空間を持つ離散力学系と解釈することも出来る。それは元の系の周期軌道および準周期軌道の多くの性質を保存し、低次元の状態空間を持つため、元の系を解析する上でしばしば用いられる。しかし実際には、ポアンカレ写像を構成する一般の方法はないので、常に利用可能という訳ではない。
ポアンカレ写像は、その空間のリカレンスプロットとは異なり、時間ではなく、ある点をいつプロットするかを決定するものである。例えば、地球が近日点にあるときの月の位置は再帰プロットである。一方、地球の軌道と垂直に交わる平面を通過し、太陽と近日点にある地球を通過するときの月の位置はポアンカレ写像である。
ポアンカレ写像は、ミシェル・エノンによって銀河の中の星の動きを研究するために用いられた。実際、ある平面上に射影される星の経路は、もつれ混沌としたものであったが、その構造をポアンカレ写像はより明確に表すものであった。
Contents
定義
R は実数、M は相空間、φ は発展函数(evolution function)とし、(R, M, φ) は大域的力学系(global dynamical system)とする。γ はある点 p を通る周期軌道とし、S は p を通るポアンカレ切断面(Poincaré section)と呼ばれる局所微分可能な φ の横断面とする。
- [math]P: U \to S[/math]
は次の三つの条件を満たすなら、点 p を通るポアンカレ切断面 S 上の軌道 γ に対するポアンカレ写像(Poincaré map)と呼ばれる:
- P(p) = p
- P(U) は p の近傍であり、P:U → P(U) は微分同相
- U 内のすべての点 x に対し、x の正の半軌道は P(x) において初めて S と交わる
ポアンカレ写像と安定性解析
ポアンカレ写像は離散力学系と解釈することが出来る。元のシステムの周期軌道の安定性は、対応するポアンカレ写像の不動点の安定性と密接に関連している。
(R, M, φ) を、点 p を通る周期軌道 γ を備える微分可能力学系とする。今、p を通る対応するポアンカレ写像を
- [math]P: U \to S[/math]
とする。次を定義する。
- [math]P^{0} := id_{U}[/math]
- [math]P^{n+1} := P \circ P^n[/math]
- [math]P^{-n-1} := P^{-1} \circ P^{-n}[/math]
および
- [math]P(n, x) := P^{n}(x).[/math]
このとき (Z, U, P) は状態空間 U と発展函数
- [math]P: \mathbb{Z} \times U \to U[/math]
を備える離散力学系である。このシステムは定義ごとに p において不動点を持つ。
元の連続力学系の周期軌道 γ が安定であるための必要十分条件は、上の離散力学系の不動点 p が安定であることである。
元の連続力学系の周期軌道 γ が漸近安定であるための必要十分条件は、上の離散力学系の不動点 p が漸近安定であることである。
関連項目
参考文献
外部リンク
- Shivakumar Jolad, Poincare Map and its application to 'Spinning Magnet' problem, (2005)