被虐待症候群

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被虐待症候群(ひぎゃくたいしょうこうぐん、Battered person syndrome , BPS)は、虐待被害者の症状として頻繁に紹介されるもので、あまりに虐待が継続・日常化した場合、被害者が抵抗する意欲を失うばかりか、虐待をごく自然な行為として甘んじて受けるようになってしまう状態のこと。

多くは家庭内暴力、ドメスティックバイオレンス (DV) と関連しており、女性の場合は被虐待女性症候群(バタードウーマン症候群)、被虐待妻症候群(バタードワイフ-)、児童の場合は被虐待児症候群(バタードチャイルド-)、被殴打児症候群とも称される。

batteredは「殴打された」という意味ではあるが、これには殴打するだけでなく、蹴ったり、叩いたり、タバコの火を押し付けたり、階段から投げ落としたりといった暴力行為も含む。心理学者のマーティン・セリグマンが、こうした現象を「学習性無力感」と名づけた、一種の条件づけでもある。

この状態で救出され看護師などから介護、ケアを受けても、この行為に応えて、自ら手を差し出してそれを受け入れることもできなかったりする。アメリカの臨床場面では、それを「お祈りするカマキリ」という言い方をすることもある。手を組んで、それを差し出せないように自ら規制するため。ベテランの看護師が、1週間程度愛情をこめてケアすれば、その手は解けることが多いという。

症状

PTSDとの比較[1]
症状 虐待者症候群 (BPS) 心的外傷後
ストレス障害
(PTSD)
患者は人生に恐れを抱いている テンプレート:Check mark テンプレート:Check mark
その恐れは4週間以上持続している テンプレート:Check mark テンプレート:Check mark
仕事、その他の重要な日常生活のパフォーマンスに影響を及ぼしている テンプレート:Check mark テンプレート:Check mark
暴力、望まざる性交、値引き、隔離などの脅威によってコントロールされている テンプレート:Check mark
自分の体を嫌悪しており、身体表現性障害がある テンプレート:Check mark
性的活動に問題を抱えている テンプレート:Check mark

被虐待児症候群

医師のヘンリー・ケンプHenry Kempe)が1962年に報告した主な特徴を以下に記述する。

  • 被虐児はどの年齢でも生じ得るが、一般的に3歳以下であることが多い。
  • 被虐児の臨床的状態をもたらしたのは、たった一回のエピソードによる例もあるが、多くの場合子どもの健康状態は平均以下であり、皮膚の不潔さ、複数の軟部組織(筋など)の損傷、栄養不足など、ネグレクトの証拠を示す。
  • 臨床所見と親が語った状況との間に、しばしば矛盾が見られる。
  • 硬膜下血腫は非常にしばしばみられる。
  • 様々な回復段階にある多数の骨折が見られる。

脚注

参考文献

  • 『消えたい: 虐待された人の生き方から知る心の幸せ』高橋和巳、筑摩書房 (2014/3/10)

関連項目