秘府略

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平安時代前期に編集された一種の百科事典。

『文徳実録』仁寿二年(八五二)二月乙巳条の滋野貞主(しげののさだぬし)の卒伝に、天長八年(八三一)、貞主が、勅によって、諸儒とともに、「古今の文書を撰集し」、類従して、一千巻からなる本書を編集したことがみえ、滋野貞主らが編集したものであることが知られる。

もと千巻からなる浩瀚な類書であったが、いまは巻八百六十四(百穀部中)と巻八百六十八(布帛部三)の二巻が伝わるにすぎない。

内容・体裁は「百穀部」「布帛部」などの「部」を設け、その中に黍・稷・粟・・粱、繍・錦などの項目を立て、項ごとに『説文』『爾雅』など小学書、『尚書』『毛詩』など経部の書、『史記』『漢書』など史部の書、『淮南子』『抱朴子』など子部の書、『夏侯湛集』『諸葛亮集』など集部の書、また「左思魏都賦」「張衡四愁詩」など詩文(すべて漢籍・漢詩文)から、関連する記事を抄出・引用して示す。現存の二巻の七項に関して引用される典籍・詩文は計三百六十一条、約百六十部にのぼる。

貞主らが当時日本に伝存した漢籍から記事を抄出して編集したものとする説が一般的であったが、『初学記』『翰苑』『芸文類聚』など先行する類書が参照され、後代の『太平御覧』とも内容が類似し、また複数の類書から記事を集めたために生じたとみられる混乱が存することから、先行の類書を取捨して編集したものとみられる。内容は『太平御覧』に比して豊富である。

伝本にはお茶の水図書館蔵本(巻八百六十四、成簣堂文庫蔵、重要文化財)・尊経閣文庫蔵本(巻八百六十八、国宝)がある。刊本に『続群書類従』雑部が、複製本に『古典保存会複製書』第三期(巻八百六十四)、『秘府略』(副本協会、巻八百六十八)、『秘府略』(成簣堂文庫刊行会、巻八百六十四)がある。