祝詞

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祝詞(のりと、しゅくし)は、神道において神徳を称え、崇敬の意を表する内容をに奏上し、もって加護や利益を得んとする言葉。通常は神職によって独特の節回しによる奏上が行われ、文体・措辞・書式などに固有の特徴を持つ。

解説

祝詞(のりと)の語源は「のりとごと」(宣之言・宣処言・宣呪言)であるとする説が従来もっとも一般的であったといえる。

神職などの奉仕者が祭神祭祀の意義や目的を奏上する言葉(人間が神に対してみずからの祈願するところや、神を称えるこころを表現するために記した文章)を意味するものであるが(奏上体)、古くは祭祀の場に参集した人々に宣り下される言葉でもあった(宣命体)。「のりと」の「のり」には「宣り聞かせる」という意味が考えられることから、宣命体の祝詞が本義を伝えるものであると考えることもできる。

折口信夫は古代祝詞の用例から「〜と宣る(宣ふ)」と結ぶノリト型と「〜と申す」と結ぶヨゴト型の別のあることを探り出し、高位にあるものが下位にあるものへ祝福を授けるための言葉がノリトすなわち「宣り言」であり、その礼として下位にあるものが高位にあるものを称え服従を誓う言葉がヨゴト(寿詞)であると解した。

すなわち現今云うところの祝詞は、折口のいわゆるヨゴト(寿詞)の系譜に属する祈願の言葉がたまたま「祝詞」の名を取ったものであるということもできる。祝詞の語源・本義に関する右の両説は現在でも容易に決着がつけがたい。

祝詞と名づけられた文章のもっとも古い例は、『延喜式』巻八に収録する27篇と藤原頼長台記』別記所収「中臣寿詞」の計28篇である。以上はすくなくとも奈良時代以前にまで遡りうる貴重な文献であり、古代の祝詞の姿を現在に伝える重要な資料である。延喜式所収の祝詞は以下のものである[1]

  1. 祈年祭:としごいのまつり
  2. 春日祭:かすがのまつり
  3. 廣瀬大忌祭:ひろせおおいみのまつり
  4. 龍田風神祭:たつたかぜのかみのまつり
  5. 平野祭:ひらののまつり
  6. 久度古閞祭:くどふるあけのまつり ※「閞」の字から開、關、関の字が当てられた文献が多い
  7. 六月月次祭:みなづきのつきなみのまつり
  8. 大殿祭:おおとのほがひ ※「ほがい」は「祝ひ/寿ひ」の訓
  9. 御門祭:みかどほがい
  10. 六月晦大祓:みなづきのつきごもりのおおはらえ
  11. 東文忌寸部献横刀時ノ呪:やまとのふみのいみきべのたちをたてまつるときのじゅ
  12. 鎮火祭:ほしずめのまつり
  13. 道饗祭:みちあえのまつり
  14. 大嘗祭:おおにえのまつり
  15. 鎮御魂齋戸祭:みたまをいわいどにしずめるまつり
  16. 二月祈年祭:にがつのとしごい
  17. 六月十二月月次祭:みなづきしわすのつきなみのまつり
  18. 豊受宮同祭:とゆけのみやのおなじきまつり ※二月、六月、十二月の祭後に奏上
  19. 四月ノ神衣祭:うづきのかんみそのまつり
  20. 六月ノ月次祭:みなづきのつきなみのまつり
  21. 九月ノ神嘗祭:ながつきのかんにえのまつり
  22. 豊受宮同祭:とゆけのみやのおなじきまつり ※九月神嘗祭後に奏上
  23. 神嘗祭:かんにえのまつり
  24. 斎内親王奉入時:いつきのひめみこをいれまつるとき
  25. 遷奉大神宮祝詞:おおかみのみやをうつしまつるのりと
  26. 遷却祟神祭:たたるかみをうつしやることば
  27. 遣唐使時奉幣:もろこしにつかいをつかわすときにたてまつるみてぐら
  28. 出雲国造神賀詞:いずものくにのみやつこのかんよごと

このうち1 - 7は各神社祭礼ごとの祝詞、8 - 15は宮中祭祀にかかわる祝詞、16 - 25は伊勢神宮にかかわる祝詞、26以降は補遺である。以上のうちに特徴的なのは「〜と申す(白す)」と結ぶ奏上体が大半を占めるのに対して祈年祭、六月月次祭(大祓)、大嘗祭・神嘗祭においては「〜と宣る(宣ふ)」とする宣命体がとられていることでこれらの祭儀が発生や形式においてそのほかの祭儀と性格を別にしていたことを思わせるものである。

その目的によって様々な種類があり、現在でも大和言葉が用いられている。基本的に祝詞は祭儀の度に作文するが、決まった祭儀(初宮詣、結婚式など)では同じ祝詞を用いることが多い。また、祭儀の前に行う修祓での「祓詞」(はらえことば)や大祓での「大祓詞」(おおはらえことば)も言葉が決まっている。

近年では祝詞例文集が数多く登場している。それを作文の上で参考にするのは問題ないが、頼りすぎて表現が固定化され本来の祝詞の意義からは外れているという指摘もある。

神社本庁傘下の神社において)神職が奏上する場合は、祝詞座へ着いたら、まず再拝して祝詞を奏した後、再拝二拍手一拝するという流れが基本であるが、伊勢神宮出雲大社などの一部の神社では異なる。

現代の祝詞

神職が神前で神々にむかって言上するときの言葉。地鎮祭、結婚式、葬場祭、解体(建物を解くこと)時、新車清祓、ほか、色々な行事の際に祝詞をあげる。神職は場合に応じ祝詞を作文する。[2] 祝詞は浄書後、七折半になるように折り、末尾から巻く。そして祝詞奏上時に、その都度開き、終わって巻き閉じる[3]

祝詞袋

神職は祝詞を懐中するか、「祝詞袋」に納めて後取に捧持させる。祝詞袋は、赤字大和錦裏同色平絹または、青地大和錦裏白平絹を用いる。「安置用」と「捧持用」の二種がある[4]

祝詞正案

出雲大社では、祝詞奏上前に後取が祝詞正案を薦上に据え、その上に祝詞と玉串を置き、祝詞正案の前に軾を敷く。斎主は、祝詞奏上後に祝詞を巻き、祝詞正案の上に置く。後取は祝詞奏上後にこれらを徹する。なお祝詞正案は、祝詞奏上のために使用される小型の案である[5]

出典

  1. 西牟田崇生 (2015). 平成新編 祝詞事典 増補改訂版. 戎光祥出版. ISBN 978-4864031653. 
  2. 菅田[2010:218-238]
  3. 『神社本庁教学研究所神道のしきたりと心得』神社本庁1990年2月5日発行全224頁中118頁
  4. 『神社有職故実』全129頁36頁昭和26年7月15日神社本庁発行
  5. 『出雲大社教布教師養成講習会』発行出雲大社教教務本庁平成元年9月全427頁中134頁

参考文献

  • 菅田正昭 『よくわかる祝詞(のりと)』 2010年 創土社 ISBN 978-4-7988-0206-0

関連項目

外部リンク


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