正則基数

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集合論において、正則基数(regular cardinal)とは、その共終数がそれ自身である基数のこと。 簡単に言えば、正則基数は小さいパーツの少ない集まりに分割できないものである。

(この状況は選択公理を仮定しない文脈ではもっと複雑である。 そのような場合、全ての濃度が整列集合の濃度とは限らなく、 上記の定義は整列集合の濃度のみに対してなされる。) 選択公理を仮定するときは、いかなる濃度も基数になり、無限基数 [math]\kappa[/math] が 正則であることは [math]\kappa[/math] 未満の基数の [math]\kappa[/math] 未満個の和では 表せないことと同値になる。

また、無限順序数 [math]\alpha[/math] が正則順序数と呼ばれるのは、それが極限順序数で より小さい順序数の順序型[math]\alpha[/math] 未満の集合の極限にならないこととである。

正則な順序数はen:initial ordinalである。しかし、initial ordinalだからといって 正則であるとは限らない。

正則でない整列無限集合の濃度は特異基数と呼ばれる。 有限順序数に対しては普通、正則や特異と言った呼び方はしない。

[math]\omega[/math] 未満の順序数は有限順序数である。有限順序数の有限列は最大元をもつ。 だから [math]\omega[/math][math]\omega[/math] 未満の順序数による 順序型 [math]\omega[/math] 未満の列の極限にはならない。 なので、 [math]\omega[/math] は正則順序数である。 [math]\aleph_0[/math] は正則濃度である。 そのinitial ordinalである [math]\omega[/math] が正則だからである。 直接に正則性を示すこともできる。有限基数の有限個の和はそれ自身有限だからである。

[math]\omega+1[/math][math]\omega[/math]の次の順序数で極限順序数でないから特異順序数である。 [math]\omega+\omega[/math][math]\omega[/math] の次の極限順序数である。 これは [math]\omega[/math], [math]\omega+1[/math], [math]\omega+2[/math], [math]\omega+3[/math],…といった順序型 [math]\omega[/math] の列の極限であり、特異順序数となる。

[math]\aleph_1[/math][math]\aleph_0[/math]の次の濃度である。 [math]\aleph_1[/math] 未満の基数は高々可算な基数である。選択公理を仮定すると、 可算集合の可算和は可算集合である。 ゆえに、[math]\aleph_1[/math] は可算集合の可算和で書けないので正則である。

[math]\aleph_\omega[/math][math]\aleph_0[/math],[math]\aleph_1[/math],[math]\aleph_2[/math], [math]\aleph_3[/math], … の列の次にくる濃度である。これのinitial ordinalは [math]\omega_\omega[/math] で 列 [math]\omega[/math],[math]\omega_1[/math], [math]\omega_2[/math], [math]\omega_3[/math],… の極限である。この列の順序型は [math]\omega[/math] だから [math]\omega_\omega[/math],[math]\aleph_\omega[/math] は特異である。

選択公理を仮定すると、 [math]\aleph_\omega[/math] は最初の無限特異濃度である (最初の無限特異順序数は [math]\omega+1[/math] であった)。 特異基数の存在を証明するには置換公理が必要である。 ツェルメロの集合論では [math]\aleph_\omega[/math] の存在性は証明できない。

性質

非可算な正則な極限基数は弱到達不能基数として知られていて、この存在性はZFCの下では証明できないし、その存在性がZFCと矛盾するかどうかも知られていない。 弱到達不能基数の存在性はしばしば追加的な公理として採られることがある。 到達不能基数はアレフ関数不動点である必要がある。 しかし、その不動点は正則とは限らない。 例えば、最初の不動点は [math]\aleph_0, \aleph_{\aleph_0}, \aleph_{\aleph_{\aleph_0}}, ...[/math][math]\omega[/math]-列の極限で、これは特異基数である。

選択公理の下では、後続型基数は正則である。 なので、ほとんどのアレフ数濃度の正則性,特異性は後続型基数か極限基数かで確かめられる。 濃度の中には、どのアレフ数と等しいか証明できないものもある。 連続体濃度がその例で、ZFCの下では非可算な共終数をもついかなる非可算基数と等しいと考えても矛盾に至らない(イーストンの定理を参照)。 連続体仮説は連続体濃度が正則な [math]\aleph_1[/math] であるという仮説である。

選択公理を仮定しないとき、整列可能でない集合の濃度が存在しうる。 さらに、濃度の和も全ての集合に定義できるわけではない。 だから、正則,特異性が意味をもつのはアレフ数のみである。 さらには、可算濃度の次の濃度が正則とも限らない。 例えば、可算集合の可算和が可算とは限らず、実数全体の集合が可算集合の可算和であるという主張と同様に [math]\omega_1[/math] が可算順序数の可算列の極限であるというのはZFと矛盾しない。 さらには、[math]\aleph_0[/math] より大きい全てのアレフ数が特異基数であるというのもZFと矛盾しない(ギティック(en:Moti Gitik)により証明された)。

関連項目

参照