堤幸彦

提供: miniwiki
移動先:案内検索

堤 幸彦(つつみ ゆきひこ、1955年11月3日 - )は、日本演出家映画監督オフィスクレッシェンドの取締役。三重県四日市市生まれ[1]愛知県名古屋市千種区出身[2]。活動初期は、堤ユキヒコ名義を使用した。

経歴

1955年三重県四日市市に生まれ、6歳のときに父親の仕事の都合で愛知県名古屋市に引っ越した[3]名古屋市立田代小学校名古屋市立城山中学校、私立愛知高等学校と進学し、高校を卒業する18歳まで名古屋で過ごした[3]。高校時代からロックに傾倒し、はっぴいえんどに憧れて上京を希望し、法政大学社会学部社会学科へ進学する。大学在学中は当時の学生運動にも参加したが、3年の頃にそれが終わり、拠りどころを失くした堤は大きな挫折感を味わい、大学を中退する。そのころ、偶然見つけた東放学園専門学校の新聞記事をきっかけに同校放送芸術科に入学し、放送業界に入る。[4]

アシスタントディレクター時代は、当時の業界の常で先輩スタッフに怒られ、理不尽な暴力を振るわれることが日常茶飯事で[5]、仕事ができず立っているだけだったので「電信柱」というあだ名をつけられる日々だった[6]

TBSEXPOスクランブル』(1985年)および日本テレビコラーッ!とんねるず』(1985年 - 1989年)のテレビディレクターから出発(コラとんでは、TBSには無断で行っていたため、「ハロルドKITAGAWA」「ローゼンKITAGAWA」「ローゼン堤」などの変名を使用)。数々のCMやプロモーションビデオの演出を手掛けながら、1986年、秋元康と会社「SOLD OUT」を立ち上げる[4][5]。のちにこの会社からは離れ、株式会社オフィスクレッシェンド所属となる。

1988年オムニバス作品『バカヤロー! 私、怒ってます』の第4話「英語がなんだ」で劇場映画デビュー。1989年に、アメリカ合衆国ニューヨークに渡り、1年半滞在する間にオノ・ヨーコの映画(『Homeless』)を撮っている[5]

堤の名を一躍世間に知らしめたのは、『金田一少年の事件簿』(堂本剛版)。

その後、『ケイゾク』『池袋ウエストゲートパーク』『TRICK』『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』シリーズ等、独自の演出によってヒット作を世に送り出す。

一方、近年では『明日の記憶』や『まぼろしの邪馬台国』など、年輩層にむけたシリアスな作品や、『Kesennuma,Voices.東日本大震災復興特別企画〜堤幸彦の記録〜』『MY HOUSE』などの社会派作品も手掛けている。

大作映画を多く手掛けるものの長らく日本の主要映画賞とは無縁であったが、2015年に『天空の蜂』『イニシエーション・ラブ』の異なるタイプのエンタメ作品2作を手がけた手腕が評価され第40回報知映画賞監督賞を受賞した[7]

2010年に愛知工業大学客員教授に就任する。

2017年11月30日に開館した「あいち航空ミュージアム」(愛知県豊山町県営名古屋空港内)の名誉館長に就任[8]

作風・制作姿勢

映画とテレビドラマの世界の双方に新しいシステムを取り入れたとされている。映画の撮影においては、監督はカメラの横で指示を出すのが常であるが、堤は別の場所にテントを設置し、その中でモニターを通して撮影の指示を出し、その場で映像を編集して俳優にも見せる。こういったやり方は旧来の映画の現場からは「伝統」に反し失礼にあたる行為と捉えられることもあるが、撮影が合理的に進み、プロデューサーや俳優とイメージを伝えあいやすくコミュニケーションが取りやすくなるという[4][9]

他方、テレビドラマの現場では、それまでのテレビ局のスタジオ収録を中心とした撮影から一転して、オールロケの撮影にこだわっている。予算が増大するためカメラを手持ち1台に抑え、カメラ数が少ないことによる画面の単調さをカバーするためアングルに変化をつけた斬新な演出を生みだした。また、ドラマの演出にバラエティ番組のような効果音を取り入れた。この変化は以後の日本のテレビドラマ全体に大きな影響を与え、「堤以前・堤以後」と言われている。[9]

撮影の2時間前には現場に入り、イメージの確認作業をすることを常としている[6]。その際、当日の雰囲気などを反映してカット割りをその場で変更することもあり、堤のチームではこれに即座に対応できる体制を持っている[9]

また、助監督時代の経験から、黒板製のカチンコを使用すると画面にチョークの粉が飛び、カチンコ係が責められて撮り直しになるという不合理でありながら伝統として続いていた習慣を排し、「ピカンコ」というボタンを押すと光る道具を作り使用するというシステムを作り、助監督の負担を合理的に軽減している[5][10]

作品

映画

テレビドラマ

連続ドラマ

単発

バラエティ番組

クイズ番組

テレビCM

  • コメ兵(2010年8月、東名阪にて放映)
  • ロッテ「ウェル噛む!プロジェクト ♯堤ガムロック篇」(2015年7月21日 - 、全国にて放映)

舞台

ビデオ

ミュージック・ビデオ

配信ドラマ

  • 革命ステーション5+25(2009年、LISMO Video)企画・脚本

webドラマ

著作

監修・その他

  • 金田一少年の事件簿 サウンドファイル(1996年、VAP)収録曲「bicycle ride」見岳章と共同作曲
  • 銀狼怪奇ファイル (1996年1月 - 3月、日本テレビ) タイトルバック演出
  • REVERSIBLE BEAT(2001年3月7日、avex trax堤幸彦見岳章犬山イヌコの3人によるユニットでCDデビュー
  • 20世紀少年 〜もう一つの第1章〜(2009年1月、日本テレビ)総監督
  • 20世紀少年 〜もう一つの第2章〜(2009年8月、日本テレビ)総監督
  • タカハマ物語(2012年)監修担当。愛知県高浜市ご当地映画
  • A.F.O(2014年)企画・総監督。名古屋電気学園100周年記念作品
  • ピカ☆★☆ンチ LIFE IS HARD たぶんHAPPY(2014年8月公開)監修
  • neorevo2014「noise」(2014年12月、公演)映像
  • イニシエーション・ラブ-あの頃カーステから流れていた80'S BEST HITS-(2015年5月)映画『イニシエーション・ラブ』サウンドトラックアルバムの監修[14]

出演作品

映画
テレビドラマ
その他テレビ番組

受賞歴

脚注

  1. 堤幸彦 (2011年7月11日). “夜光”. 堤幸彦の2013日記(公式ブログ). . 2013閲覧.
  2. 堤幸彦; 三浦展 (2012年5月29日). “なぜ、この映画を名古屋で撮ったのか--堤 幸彦監督、直球ど真ん中の異色作「MY HOUSE」を語る vol.2”. PRESIDENT online. プレジデント社. . 2013閲覧.
  3. 3.0 3.1 加藤家へいらっしゃい! 〜名古屋嬢っ〜』DVD映像特典「堤家へいらっしゃい」より
  4. 4.0 4.1 4.2 この段落の出典。{{#invoke:Footnotes | harvard_citation }}
  5. 5.0 5.1 5.2 5.3 「たった1つのことがものすごいマイナスの時に身を助ける」、映画「はやぶさ/HAYABUSA」堤幸彦監督インタビュー”. GIGAZINE (2011年10月6日). . 2013閲覧.
  6. 6.0 6.1 {{#invoke:Footnotes | harvard_citation }}
  7. 7.0 7.1 【報知映画賞】堤幸彦監督、意外!?主要賞で初受賞「心が乱れた」”. スポーツ報知 (2015年11月26日). 2015年11月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2015閲覧.
  8. “映画監督の堤幸彦氏、あいち航空ミュージアム名誉館長に”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2017年9月11日). http://www.asahi.com/articles/ASK9C3HBHK9COIPE00C.html . 2017閲覧. 
  9. 9.0 9.1 9.2 {{#invoke:Footnotes | harvard_citation }}
  10. 2010年代においては、映画撮影におけるフィルム撮影の衰退とデジタル化に伴い、カチンコをはじめこういった用具そのものも廃れてゆく傾向にある。
  11. “向井理、堤幸彦監督ドラマで本気コメディー「期待値が圧倒的に高い」”. ORICON STYLE. (2016年4月28日). http://www.oricon.co.jp/news/2070880/full/ . 2016閲覧. 
  12. 松坂桃李、SPドラマで“視覚探偵”に 堤幸彦監督とタッグ”. ORICON (2015年9月16日). . 2015閲覧.
  13. SPECサーガ完結篇『SICK'S 恕乃抄』、TBSテレビ、2017年12月26日閲覧。
  14. 映画『イニシエーション・ラブ』のサントラアルバム、堤幸彦監修で発売決定│Daily News│Billboard JAPAN、ある2015年5月3日。
  15. :堤幸彦の2010日記(現ブログ)・2010年6月14日

参考文献

  • チーム20S5・編 『仕事ってこういうことだったのか』 かんき出版、2010年、149-162。ISBN 978-4-7612-6669-1。
  • NHK「プロフェッショナル」制作班・編 『プロフェッショナル 仕事の流儀 2008-2009』 ポプラ社、2010年、9-23。ISBN 978-4-591-11532-9。
  • NHK「プロフェッショナル」制作班・編 『ディレクターズノート もうひとつのプロフェッショナル』 光文社、2009年、43-54。ISBN 978-4-334-97593-7。

外部リンク

テンプレート:堤幸彦監督作品