リン酸三カルシウム

提供: miniwiki
移動先:案内検索


リン酸三カルシウム(英語:Tricalcium phosphate、略称:TCP)とは、化学式:Ca3(PO4)2で表されるリン酸カルシウムである。リン灰石として天然に産出し、また土壌中に広く分布して含まれ、植物の生長に必須の成分である[1]を燃焼させた際に得られる物質でもある(骨灰骨炭など)[2]

結晶構造

リン酸三カルシウムは三種の多形体を持ち、単斜晶のα-と六方晶系のα'-リン酸三カルシウム(α-TCP、α'-TCP)は、リン酸三カルシウムの高温多形体であり、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)は低温多形体である。加熱によるβ-TCPのα-TCPへの多形転移は、1180℃前後の温度で観察される。1180℃より高温の温度域で形成されるα-TCPは、ゆっくり室温まで冷却すると、この多形体に保持することができず、急冷すなわちクエンチすることによってしか室温で得ることができない[3]

β-リン酸三カルシウムの結晶学的密度は3.066gcm−3であるが、高温形態は密度が低くα-リン酸三カルシウムの密度は2.866gcm−3であり、α'-リン酸三カルシウムの密度は2.702gcm−3である。

β型とα型との間には化学的、生物学的特性に違いがあり、α型の方は可溶性と生分解性が優れている。 両方の形態は、商業的に入手可能であり、医療および歯科用途で良く利用される[4]

用途

生体材料
ヒドロキシアパタイト等とともに人工関節インプラントなどに利用される[5][6][7]
食品添加物
プロセスチーズなどの乳化剤[8]パンを膨らませるイースト菌のえさとなるイーストフード[9]、カルシウムの強化剤として指定添加物とされる[10]
固化防止剤
固化防止剤としてベビーパウダーなどに含まれる
歯磨き粉
フッ化物とfTCP配合歯磨剤により象牙質知覚過敏症の抑制効果が期待できるものと考えられる。また, エナメル質脱灰量の減少やF, CaあるいはPが硬組織に取り込まれたことから, 歯質強化効果が示唆され, う蝕進行抑制に寄与することが期待される[11]

出典

  1. 世界大百科事典リン酸カルシウム(燐酸カルシウム)から
  2. Yacoubou, Jeanne, MS. Vegetarian Journal's Guide To Food Ingredients "Guide to Food Ingredients". The Vegetarian Resource Group, n.d. Web. 14 Sept. 2012.
  3. 特開2004-26648(P2004-26648A)α-およびβ-リン酸三カルシウム粉末の製造方法(アーメット タス)
  4. Carrodeguas, R.G.; De Aza, S. (2011). “α-Tricalcium phosphate: Synthesis, properties and biomedical applications”. Acta Biomaterialia 7 (10): 3536–3546. doi:10.1016/j.actbio.2011.06.019. ISSN 1742-7061. http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S174270611100256X.  テンプレート:Subscription or libraries
  5. より速く再生する「人工骨」づくりに貢献東京工業大学
  6. スポンジ状人工骨開発に成功(東京工業大学大学院理工学研究科 田中順三教授)
  7. インプラント材料とその表面 : その2東京歯科大学
  8. 健康食品取扱マニュアル 編集:東京都福祉保健局、東京都生活文化スポーツ局 216p
  9. 食品添加物(大阪教育大学)
  10. 図解入門よくわかる最新食品添加物の基本と仕組み: 現代の食卓を支える影の功労者 86p
  11. フッ化物とfTCP配合歯磨剤による歯質に与える影響(日本歯科保存学雑誌 Vol. 59 (2016) No. 2 p. 228-235 新潟大学大学院医歯学総合研究科 科韓 臨麟, 福島 正義)

関連項目