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チェス・プロブレム


チェス・プロブレムとはチェス・コンポジションとも呼ばれ、達成すべき特定の課題を解き手に提示する、チェスのルールに則ったパズルである。

概要

たとえばある局面が与えられ、「白が1手指し、どの応手に対しても次の手で黒のキングをメイトせよ」という解答条件が示される。チェス・プロブレムを創作する人を作局家 composer と言う。チェス・プロブレムには多数の専門用語がある(下記の「用語」の項を参照のこと)。以下、項目名を除き、単にプロブレムと記す。

プロブレムと対比できるものとして、チェスコラムや雑誌によく掲載されている戦術的パズルがある。これは与えられた局面から最善の指し手(通常はメイトあるいは駒得に至る)を見つけさせる問題である。戦術的パズルは、実際の対局から採られたもの、もしくは少なくとも対局で生じる可能性のある局面であり、棋力向上目的で用いられる。

他方プロブレムは、実際の対局では見られないような非常に「人工的」な局面と解を持つように創作された局面であり、棋力向上の効果よりも審美性が重視される。プロブレムの構成条件については、大いに議論の分かれるところである。しかし現実に、チェス雑誌のプロブレムのセクション、プロブレム専門誌、プロブレムを集めた書籍など、出版されたプロブレムでは、ほとんどの場合に以下の共通の特徴を持っている。

  1. 局面が作り物である(composed)。すなわち、局面は実際の試合から採られたものではなく、問題を示すために創作されたものである。通常は「ルールに従った手順で生じえる局面でなくてはならない」という縛りはあるが、実戦で生じる局面ではないのが普通である。
  2. 特定の解答条件(stipulation)を持つ。たとえば、指定した手数で黒のキングをメイトする、など。
  3. 特定のテーマ(theme、単数または複数)を持つ。プロブレムは一般にあるテーマを表現するために創作される。
  4. 効率(economy)を重視する。つまり、テーマの表現と完全作であるために必要最小限の駒しか使ってはならない。
  5. 美的な価値(aesthetic value)がある(後述)。

現在知られている最古のプロブレムは 840年頃に発表されたものである(冒頭の図参照)。ただ、このプロブレムは詰将棋的にチェックをかけ続けるものであった。現在のようなプロブレムの萌芽は13世紀に見られていたが、1845年に Henry A. Loveday が Chess Player's Chronicle に発表した構想作以降、作家たちは新たな構想作を捜し求めるようになり、多数の作品が作成されるようになった。

美的な価値

プロブレムは単に問題を解くだけではなく、芸術作品として鑑賞できなくてはならない。この点は特定のテーマをもっとも効率よく表現するという特徴と不可分である。ただしプロブレムの美醜を区別する公式の基準はない。判断基準は人によるし、また時代によっても変化するためである。現代においては、美しいプロブレムの重要な要素として一般的に以下の条件が認められている。

  • プロブレムの局面は合法でなくてはならない。つまり、初形から合法手を続けて生じる局面であることが必要。そのための手順が実戦的な意味での大悪手を含んでいても、作品のキズとは見なされない。
  • プロブレムの初手(key move あるいは キーと呼ばれる)は唯一でなくてはならない。解答条件を満たす初手が複数あるものは「別解がある(cooked)」と言われ、不完全作として専門雑誌等には掲載されないはずである。例外は、テーマ上関連のある複数のキーを意図して作られたプロブレムである。この種のプロブレムは特にヘルプメイトに多い。
  • 直接メイト問題においては、理想的にはどの黒の応手に対しても白の指し手は1つでなくてはならない。最初の手(キー)以外で白の指し手に選択肢があるものはデュアルと呼ばれる。キーが複数ある場合とは違って、デュアルはそのプロブレムに他の面で魅力が大きければ許容されることも多い。
  • 解は手あたり次第の読みによって出てくるものではなく、なんらかのテーマに沿って説明できるものでなくてはならない。よく用いられるテーマには独特の名称がついている(一部は用語の項に挙げた)。
  • 解の初手(キー)は自明なものであってはならない。たとえばチェック、駒取り、直接メイトにおいて黒キングの動きを狭める手などは悪いキーとされる。黒キングの逃げ道のひとつをふさぐ手でも、逃げ道の総数を減らさないキーは認められる。また、黒からのチェックを防ぐキーも特に嫌われる。一般的に言って、実戦における得な手から遠いほど、意外性のあるよいキーということになる。
  • 問題図にはポーンの昇格によって生じた駒があってはならない。
  • 盤上の駒は例外なく、作意解を成立させるためか、別解を排除するために役立っていなくてはならない。解答者の注意をそらすための余分な駒(飾り駒)を加えてはならない(まれに、それがテーマに貢献している場合は認められることがある)。またそのテーマがより少ない駒数で表現できるのなら、そうすべきである。
  • プロブレムは手の効率を見せなくてはならない。テーマは実現可能な最短手数で見せることが望ましい。この点は、詰将棋や詰碁とは異なるところである。詰将棋や詰碁の趣向作では、テーマを最大限に繰り返して長手数作品に仕上げることがよく行われるからである。

主な種類

プロブレムにはさまざまな種類がある。

  • 直接メイト(directmate) - 白が初手を指し、黒がどのように応じても指定された手数以内で黒のキングが詰まされる(稀に黒が初手になるものもある)。さらに以下に分類される。
    • 2手問題 - 白が1手指し、黒がどのように応じても次の手で黒のキングが詰まされる。
    • 3手問題 - 白が1手指し、黒がどのように応じても次の手またはその次の手で黒のキングが詰まされる。
    • n手問題 - 白が1手指し、黒がどのように応じても指定された手数以内で黒のキングが詰まされる。
  • ヘルプメイト - 黒が初手を指し、黒白が協力して黒のキングを(最短で)詰ませる
  • セルフメイト - 白が初手を指し、黒の意思にかかわらず黒が白のキングを詰ませる
  • リフレクスメイト - セルフメイトに、白黒双方とも次の1手でチェックメイトできる手があれば、その手を指さなければならないという条件を付加したもの。この条件を黒のみに適用したものは準リフレクスメイトと呼ぶ。
  • 連続系 - 一方が連続して手を指すもの。いずれの場合も、相手キングへは最終手を除いてチェックをかけてはならない。
    • 連続メイト - 白が連続して何手か指し、黒のキングを詰ます形式
    • 連続ヘルプメイト - 黒が連続して何手か指し、白が1手指して黒のキングを詰ます形式のヘルプメイト
    • 連続セルフメイト - 白が連続して何手か指し、黒が1手(強制手)指して白のキングを詰ます形式のヘルプメイト
    • 連続リフレクスメイト - 白が連続して何手か指し、黒が1手指して白のキングを詰ます形式のリフレクスメイト

以上、直接メイト以外のものはすべて、通常と異なるルールを用いているという点でフェアリーチェスの一種である。

加えて、「白が勝つ(または引き分ける)手順を求めよ」という解答条件を持つスタディがある。ほとんどすべてのスタディはエンドゲームの局面である。スタディも創作物であるため、広義のプロブレムの一種とされるが、スタディの解答条件には手数制限がないため、通常はプロブレムとは別物とされる。しかし、特にプロブレムでもn手詰にはスタディの特徴を持つものもある。したがって、プロブレムとスタディの間に明確な一線を引くことはできない。

どの種類のプロブレムでも、キャスリングは、レトログレード解析(後述)によりキングとキャスリング相手のルークのうち少なくとも一方が動いたことがあることが証明されない限り可能である。一方で、アンパッサンは、直前の手がアンパッサンで取られるポーンのダブルステップ(2枡前進)であることを証明しない限り不可能である。

上記の分類に従わないプロブレムも何種類かある。たとえば、ナイトツアーエイト・クイーン問題のように数学的性質を持つパズルがある。それから、通常のプロブレムと特に関連の深いものとして次の2種類がある。これらについては専門の雑誌、書籍、賞が存在する。

  • レトログレード解析 - 指定された局面に至る手順を求めること。プロブレムとしてはある局面を提示し、たとえば「白の最終手は?」「c1にあったビショップはどう移動したか?」などと問う直接的なものもあれば、通常のプロブレム(直接メイトなど)の局面が、アンパッサンが可能か、キャスリングが可能かなどを判断する必要がある局面であるという間接的なものもある。レトログレード解析が主目的であるようなプロブレムは単にレトロと呼ばれることもある。レトロプロブレムの一種で非常に重要なものとして次のものがある。
    • 最短プルーフゲーム - 解答者はチェスの初形から与えられた局面までのゲーム手順を答える。その局面を実現するにあたって白黒双方が協力するが、指し手はすべて合法手でなければならない。通常は与えられた局面に到達するまでの手数が決まっているが、与えられた局面を最少手数で実現する手順を求めよという場合もある。
  • Construction task - ある条件を満たすゲームあるいは局面を作れという問題で、問題図はない。たとえばサム・ロイドの出題(Le Sphinx誌、1886年)に「黒が4手で白をメイトする手順を求めよ」がある。解答は 1. f3 e5 2. Kf2 h5 3. Kg3 h4+ 4. Kg4 d5# である。ほかにはたとえば「連続した開き王手が最大回数現れるゲーム」「一方の色の16個の駒を盤上に置いて効きが最も少ない局面」など、決められた条件で最大あるいは最小の数を問うconstruction taskもある。

例題

これは、T. Tavernerが1881年に作図したプロブレムである。

初手(key move)は Rh1 である。直接的な狙いがない(次に白から詰ます手がない)ため、この手はとても見つけにくい。このとき、黒は1手パスしたいにもかかわらず、1手指さなければならないツークツワンクという状況に陥る。黒の可能な指し手19手のすべてが1手詰の局面になってしまう。たとえば、1. ... Bxh7 とすれば、d5 への効きがなくなり、2. S(=N)d5# で詰む。その代わりに、1. ... Re5 とすると、逃げ道が塞がり、2. Qg4# で詰んでしまう。黒がもしパスできれば、白は次の手で黒のキングを詰ますことはできないが、パスはできない。

このプロブレムを解くためのテーマに沿った考え方は、問題図においては黒はすでにほぼツークツワンクであると気づくことである。もし黒が先に指せるとすれば、メイトを防ぐために Re3 か Bg5 と指すはずである。しかし、いずれの指し手も黒のキングの逃げ道を塞ぐことになり、もし白のルークが h2 にいなければ別の駒をそこに動かしてメイトできる(1. ... Re3 なら 2. Bh2# だし、1. ... Bg5 なら 2. Qh2#)。

プロブレムの世界では、このルークが並びその両脇にビショップがある配置をOrgan Pipesと呼んでいる。黒の駒が互いの利きに入ってしまう効果(干渉)を示す配置である。たとえば、黒が 1. ... Bf7 と指すと、ルークのf5への利きが遮られ、2. Qf5# でメイトできる。この状況はself-interference(自己干渉)として知られる。同様に、黒が 1. ... Rf7 と指すと、ビショップの d5 への利きが遮られ、2. Nd5# でメイトである。このような1つのマスにおける2つの駒(ルークとビショップ)による相互干渉は、グリムショウ干渉と呼ばれる。この問題図にはグリムショウ干渉が多数存在する。

略号

プロブレムの雑誌では、記述スペースと言葉の問題から、プロブレムの条件を示すために様々な略記法が用いられる。一般的なものを以下に掲げる。

  • # - チェックメイト
  • = - ステイルメイト(フランス語でステイルメイトを意味するpatあるいはそれを略記したpが使用されることもある)
  • h - ヘルプメイト
  • s - セルフメイト
  • r - リフレクスメイト
  • ser- - 連続・・・

これらの記号に、解答条件を達成すべき制限手数の数字を加えて示す。したがって#3は3手詰、ser-h=14は連続ヘルプステイルメイト14手(黒が14手連続して指した後、白が1手指してステイルメイトにする)である。

スタディでは、「白先白勝ち」と「白先引き分け」を示すために + と = の記号が用いられる。

競技会

プロブレムの創作および解答を競う競技会(tourney)が存在する。

創作競技

創作競技には公式なものと非公式なものがある。公式な創作競技では、各プロブレムは審査されてから公開されるが、非公式な創作競技ではまず公開されたものを対象に審査を行なう。非公式な創作競技は、よくプロブレム専門誌やプロブレムのセクションのある雑誌で開催される。ある年度にその雑誌に掲載された全プロブレムを審査の対象とするのが普通である。公式競技は、特別なイベントや人物を記念して開催されることが多い。FIDEのプロブレム創作常置委員会が開催する世界チェス創作競技会(World Chess Composing Tournament:WCCT)は国別のチームによる公式競技会である。

公式・非公式を問わず競技会では、通常プロブレムのある特定のジャンル(たとえば、2手問題、n手問題、ヘルプメイト)が指定される。さらに付加的な制限(たとえば、パトロールチェスのプロブレム、ラツニのテーマを表現したプロブレム、使用駒数が8駒以下のプロブレム)が課されることもある。通常、表彰は3段階のクラスで行なわれる。上からprize(優秀賞)、honourable mention(佳作)、commendation(準佳作)である。審査員は、そのクラスに値すると思えばいくつのプロブレムに賞を与えてもよい。当然、該当作なしのこともある。同じクラス内の作品には差をつけることもあるし、つけないこともある。

賞が発表された後、受賞作に先例がある(すなわち、同一または類似のプロブレムが過去に発表されている)こと、あるいは不完全である(すなわち、別解があるか解がない)ことを主張する期間(通常は約3か月)を置く。有効な主張があれば、受賞が取り消されることがある。この期間を過ぎて始めて賞は確定する。その後にプロブレムが公表される場合には、受けた賞を示すことが普通である。

解答競技

解答競技も公式・非公式の2種に分かれる。通信により運営される大会では、参加者が郵便や電子メールによって解答を送る。これは非公式の創作競技と似た方式で行なわれる。実際、非公式な創作競技の対象となったプロブレム群がそのまま解答競技の出題となることも多い。このような非公式な大会ではコンピュータの使用を排除できないが、解が特に長いようなプロブレムにはコンピュータでの解答に適さないものもある。

もうひとつ、日時と場所を決めて参加者が集まって開催される競技もある。解答には制限時間があり、盤駒以外の補助手段は使用できない。この種の解答競技で最も有名なものは、PCCCが開催する世界チェス解答選手権(World Chess Solving Championship)である。2012年の第36回大会は若島正を実行委員長として日本の神戸で行なわれた。

どちらの解答競技でも、プロブレムごとに配点がある。作意解を答えた場合、満点が与えられる。別解や無解を指摘した場合には、ボーナス点が与えられることもある。不完全な解答でも、解答内容に応じて部分点が与えられる。最高得点を獲得した参加者が優勝者となる。同点の場合は解答の所要時間がタイブレークに使われる。

称号

実戦チェスと同じように、特に優れたプロブレムやスタディの創作者や解答者に対しても、プロブレム創作常置委員会(Permanent Commission of the FIDE for Chess Composition, PCCC)を通じてFIDEからグランドマスター(GM)、インターナショナルマスター(IM)、FIDEマスター(FM)の称号が授与される。チェスと異なり、プロブレムでは女性限定の称号はない。

創作部門では、1959年にIMの称号が創設され、同時に、André Cheron、Arnolodo Ellerman、Alexander Gerbstmann、Jan Hartong、Cyril Kippingの5人に与えられた。またGMの称号は1972年に創設され、Genrikh Kasparyan、Lev Loshinsky、Comins Mansfield、Eeltje Vissermanの4人に与えられた。またFMの称号も1990年に創設された。後には、FIDEアルバムに選出掲載された作品の数によって称号が与えられるようになった。FIDEアルバムは、3年間に創作されたすぐれたプロブレムとスタディの選集で、FIDE の任命する審査員が選定にあたる。アルバムに掲載されたプロブレムには各1点、スタディには1 2/3点が与えられる。共作の場合には、この点数を各作者に等分に分配する。FMになるには12点、IMには25点、GMには70点が必要である。

解答部門では、GMとIMの称号が1982年から、FMの称号が1987年から授与されている。GMとIMは、世界解答選手権(World Chess Solving Championship, WCSC)の成績によってのみ獲得できる。GMになるには、「優勝者の得点の90%以上を獲得し、かつ10位以内」の成績を連続10回のWCSCで3回達成しなければならない。IMになるには、「優勝者の得点の80%以上を獲得し、かつ15位以内」の成績を連続5回のWCSCで2回達成しなくてはならない。あるいは、1回のWCSCに優勝する(または優勝者と同得点を獲得する)ことでもIMになれる。FMになるには、2つのPCCC公認大会で優勝者の得点の75%以上を獲得し、上位40%の順位に入らなければならない。

日本人では解答IMに若島正、解答FMに山田康平がいる。

International Judge of Chess Compositionsの称号は最高の水準で創作競技の審査にあたれると判断された個人に与えられる。

用語

ここにあげた用語は一部である。なお、項目名が斜体字のものはフェアリーチェス由来の項目である。

  • アイデアルメイト - 白黒双方のすべての駒がメイトに参加しているピュアメイト
  • アリストクラート - 初期局面でポーンのないプロブレム。
  • アルビノ - 白のポーンが初形位置(2段目)にあり、4種類の指し手(1枡前進、2枡前進、左への駒取り、右への駒取り)が可能な状況が生じるプロブレム。(関連項目:ピカニニィ)
  • アンチブリストル - 同一の線上における、黒の同種の2駒による干渉。(異なる線上にある場合は、ホルツハウゼンという)
  • エクセルシオール - 解の進行の間に初形位置のマスにあったポーンが成るために盤の端まで動くようなプロブレム。サム・ロイドによる作品から命名された。
  • S - 一般のチェスではナイトはNと表記するが、プロブレムではナイトをSと表記する(Sはドイツ語のSpringerの頭文字)。プロブレムでNといえば、フェアリー駒のナイトライダーを意味する。
  • n手詰 - 白が初手を指し黒がどのように応じても高々n手で黒のキングを詰ませる、という条件(ただし、n > 3)を持つ直接メイト。創作競技では、ヘルプメイトセルフメイト、その他のクラスに分けられるのと同様、しはしば、2手詰3手詰とクラスが分けられる。
  • 重い - 初期局面において比較的駒が多いプロブレムに適用される形容詞。重さは効率の観点から可能な限り避けられるべきである。
  • 仮想手 - セットプレイpost-key playとは逆に、紛れに続く指し手。
  • 軽い - 初期局面において比較的駒数の少ないプロブレムに適用される形容詞。軽さは効率の観点から通常は望ましい。
  • 干渉 - 第 2 の駒によるある駒の効き筋遮断、つまり、あるマスからその動きを制限し遮る。干渉の種類により、グリムショウノボトニアンチブリストルホルツハウゼンビュルツブルグ-プラフッタプラフッタなど様々な名前が与えられている。
  • キー - 解の初手。意図的でなく、2つ以上の詰む手があるプロブレムは別解ありと言われる。
  • グロテスク - 非常に不自然な初期局面、特に大量の駒がある局面や白のマスと黒のマスで大きく駒数に違いがある局面、を持つプロブレムあるいはスタディ。
  • クリアランス - 一般的に、駒をある特定のマスに動くことができるようにするある駒の動き。マスクリアランスでは、第2の駒が最初の駒がいたマスを占めることができるように最初の駒が動く。ラインクリアランスでは、第2の駒が最初の駒がいたマスを通過して目的のマスへ動けるように最初の駒が動く。ブリストルとしても知られるラインバケーションは、ある駒があるラインを動いた後、別の駒がその駒の通過したマスに動けるという、ラインクリアランスの特別な様式である。
  • グリッド盤 - チェス盤を 2 × 2 のグリッドに 16 分割した盤。指し手は別のグリッドに動かすものに限定される。したがって、駒の効きが通常より減少する。
  • グリムショウグリムショー - 2 つの黒の駒 がある地点で相互に干渉することを特色とする共通の仕掛け
  • Post-key play - キーの後に続く指し手、すなわち、プロブレムの条件を満たすような一連の指し手。これはセットプレイ仮想手と対立する(これら双方はプロブレムの美しさにおける重要な要素ともなる可能性がある)。
  • 効率経済性 - プロブレムの創作において効率は一般的に良いことであるとみなされているが、それが何を意味するか、そして効率的であるために最も重要であるものは何かということを討議することは自由である。駒あるいは force の効率(必要以上の駒を使用しない)、空間の効率(チェス盤を最大限に用い、すべての駒をある隅へ詰め込まない)および動機の効率(そのテーマに適切な解決法においてすべてのラインを保つ)はすべて重要であるものとみなされる。
  • 先を越された - 後の作者が知らないで、以前のプロブレムである特定のプロブレムのテーマと設定がすでに現れていれば、そのプロブレムは先を越されたと言われる。局面は同一である必要はなく、非常に似ていれば足りる。作者が故意にこのような作品を発表した場合、剽窃されたの語が使用される。配置およびテーマは限られた数しかなく、またチェスプロブレムは何百年もの間作成されてきているため、もし相対的に単純なテーマであるプロブレムの場合、現実に衝突の機会が高い。しかし、同一作や類似作はいつでもすぐ知らされるとは限らない。
  • 3手詰 - 白が初手を指し黒がどのように応じても高々3手で黒のキングを詰ませる、という条件を持つプロブレム。創作競技において、(ヘルプメイトセルフメイト、その他のクラスに分けられるのと同様、)しはしば、2手詰n手詰とクラスが分けられる。
  • 実戦手 - post-key playの項を参照のこと。
  • By-play - プロブレムのテーマに直接結びつかない変化。たとえば、3手問題で初手に付随するスレットを防がない変化のこと。
  • シリンダー盤 - 盤の端がつながっているもの。a列とh列がつながっているものを垂直シリンダー盤、1列と8列がつながっているものを水平シリンダー盤という。a列とh列および1列と8列がつながっているものはアンカーリングと呼ばれる。
  • スイッチバック - ある駒が初期位置から動いた後、同じ経路を通って元に戻ること(たとえば、ルークが e3-e5-e3 と動くこと)ラウンドトリップと比べてみよ。
  • スレット - 黒が防御を放棄した場合に白が指す手あるいは変化。キーの次にスレットのないプロブレムはブロックである。
  • セットプレイ - 先に他方のプレイヤーが動かしたとすれば、プロブレムの初期局面から可能となるような指し手。たとえば、直接詰においては、セットプレイは(白の指し手よりはむしろ)黒の指し手から始まる一連の指し手からなる。セットプレイが存在する場合、初手がセットプレイの筋を変化させないことがままあるが、その場合プロブレムは完全ブロックであり、そうでない場合、プロブレムはミューテートである。セットプレイは「指し手の相」の1つである。
  • セルフメイト - 本文参照。
  • 全種類成 - 解にすべての可能な駒種へのプロモーション(ポーンの昇格)が含まれるプロブレム。通常ならば、クイーン、ビショップ、ルーク、ナイト。局面にフェアリー駒があればそれらの駒へも成れなければならない。
  • - 初手紛れセットプレイの後の指し手はそれぞれ指し手の相を構成する。セットプレイを持つプロブレムは2つの相を持つと言われる。(セットプレイは1つの相であり、post-key playは別の相である)3つの紛れを持つプロブレムは4つの相のプロブレムとなろう(各紛れは1つの相であり、post-key playは第4の相である)。異なる相における指し手は時折互いに関連しあう。
  • タートンダブリング - 第2の駒がある駒の前で同一のライン上へ動けるようにある駒がそのラインを動くダブリングの一種。それからこの第2の駒は第1の駒の動きとは異なる方向から動く。ヘンリー・タートンに因んで名付けられた。チェプラーダブリングと比較せよ。
  • ドミネーション - スタディにおいて、ある駒の動きにかなりの自由度があるにもかかわらず、取られる運命にある状態。
  • ダブリング - 互いに守りあえる2つの駒を、同一の線(ランク、ファイル、斜線)上に重ねる動き。タートンダブリングチェプラーダブリングはその特殊な場合である。
  • チェプラーダブリング - 第2の駒がある駒の後ろで同一のライン上へ動けるようにある駒がそのラインを動くダブリングの一種。それから第1の駒は前と同じく同一の方向へ再び動く。エリッヒ・チェプラーに因んで名づけられた。タートンダブリングと比較せよ。
  • 直接メイト - (先に動かす)白が、あらゆる防御に対して指定された手数で黒をメイトとするよう要求されるプロブレム。そのようなプロブレムは通常、「(check)mate in two」(2手詰)あるいはより多い手数による詰の条件により示される。直接メイトの語はこれらの種類のプロブレムと、ヘルプメイトセルフメイトリフレクスメイト、その他と区別するのに有益である。
  • ツイン - 同一の作者が作成し、互いに少し配置の異なる2つ以上のプロブレム。通常は、駒の位置が異なる、駒が増減している、駒の種類が異なる、の3つがある。
  • テーマ - プロブレムにロジック、統一性、美を与える隠されたアイデア。
  • デュプレックス - 2つの解があり2番目の解が第1の解における色の役割を変えたものであるプロブレムの種類。つまり、先に黒が指しても詰むし、先に白が指しても詰む。デュプレックスの最も一般的な種類はヘルプメイトである。
  • 2手詰 - 白が初手を指し黒がどのように応じても2手で黒のキングを詰ませる、という条件を持つプロブレム。創作競技において、(ヘルプメイトセルフメイト、その他のクラスに分けられるのと同様、)しはしば、3手詰n手詰とクラスが分けられる。
  • 逃げ道 - 黒のキングが合法的に移動できる(すなわち、白の駒で守られておらず、黒の駒で占められていない)マス。もし黒がこれらのマスのうちの1つへ駒を動かせば、キングの可動性が減少し、セルフブロックとなる。黒がこれらのマスうちの1つから動かせば、それはsquare-vacationである。
  • ノボトニ - 2つの駒から取られる可能性のある位置への捨駒により、取った駒により他方の駒の利きを遮断する手筋。本質的にグリムショウは重要なマスへの白の捨て駒によりもたらされる。
  • バージョン - 以前のプロブレムの改作であるようなプロブレム。作品の効率を改善したり、別解を排除するためのものであることが多い。
  • バッテリー - 後ろの駒から攻撃をするために前の駒が動く(つまり、将棋で言う開き王手をするための)1対の駒。たとえば、白のナイトが白のルークと黒のキングの間にいて、そのナイトが動く、すなわちバッテリーが開かれれば、チェックがかかる。
  • バブソンの課題 - 黒のポーンの成に対し、白のポーンが同じ駒に成ることで応えるプロブレム。全種類成の特殊な場合である。
  • ピカニニィ - 黒のポーンが初形位置(2段目)にあり、4種類の指し手(1枡前進、2枡前進、左への駒取り、右への駒取り)が可能な状況が生じるプロブレム。(関連項目:アルビノ)
  • ピュアメイト - メイトされたキングとその周りのすべての空きマスは敵からは1つの駒の利きしかなく、(間に入ってチェックを防ぐためにそのような駒がピンされない限り)キングの周りにいる味方の駒は敵側から攻撃されていない状態であるメイト。
  • ビュルツブルグ-プラフッタ - 異なるライン上の動きが似た2つの黒の駒の間での相互干渉。本質的に、ある変化では駒 B で駒 A を干渉し、別の変化では駒 A で駒 B を干渉する、ホルツハウゼン干渉の対。重要なマスでの白の捨て駒によりその干渉がもたらされるのであれば、それはプラフッタである。
  • フェアリーチェス - 通常のルールでないチェス。キルケマキシ、非伝統的な駒種(フェアリー駒)を使用するもの、非伝統的な盤(たとえば、シリンダー盤グリッド盤)を使用するものなどがある。
  • 複数解デュアル - 理想的には、プロブレムを解く際に、白は1つの指し手だけを持つべきである。初手以外のどの手番でもで白に代わりの手があれば、複数解である。複数解は別解ほど重大な欠点ではなく、さほど重要でない筋では複数解は許されるかもしれない(この点で意見が異なる)。デュアル回避 ― 2つの明らかに等価な白の指し手のうち1つだけが働かせる ― により美徳となすプロブレムもある。
  • プラフッタプラチュッタ - 捨てられた白の駒が2個の同様な動きをする黒の駒により取られる可能性があり、その白の駒をどちらで取っても、他方の駒を干渉するプロブレム。本質的に重要なマスでの白の捨て駒によりもたらされるホルツハウゼン干渉(あるいはビュルツブルグ-プラフッタ干渉)と対である。
  • プルーフゲーム - 与えられた手数で作者が与えた最終局面となる対局を構成するというプロブレム。レトログレード解析の一種である。
  • ブロック - キースレットを用意しないが、黒がツークツワンクである局面になるようなプロブレム。完全ブロックの作品では、セットプレイにおけるすべての黒の手はメイトをもたらし、キーは単に手待ちとなる。不完全ブロックにおいては、セットプレイにおいてすべての黒の手がメイトをもたらす訳ではない。― その初手はメイトしないものに備える。ミューテートではセットプレイにおいてもたらされるいくつかのメイトは初手に従って変更される。
  • 別解 - 作者が気づかなかった第2の初手。別解は重大な瑕であり、プロブレムを無価値にする。かつては、発表後に別解が発見されることは珍しくなかったが、最近ではコンピュータによる検討が行なわれるようになり、めったになくなった。
  • ヘルプメイト - 本文およびデュプレックスの項を参照のこと。
  • マキシ - 黒が合法手のなかで最も長い指し手を指す義務のあるプロブレム。指し手の長さは、たとえば、1つ右に動く手は1、1つ斜め前に動く手はルート2、ナイトが動く手はルート5である。最も長い差し手が複数ある場合はその中から1つ選択できる。セルフメイトに付加されることが多い。
  • 紛れ - キーと異なり、黒の唯一の強防により詰まない手。紛れの後の変化は仮想手と呼ばれ、プロブレムを満足させるものにする重要な一部でありうる。
  • ミニアチュア - 初期局面で駒数が7個以下であるようなプロブレム。
  • ミューテート - セットプレイにおける少なくとも1つの詰筋が初手に続くよう変化するようなブロックプロブレムの1種。
  • メレディス - 初期局面で駒数が8から12個であるようなプロブレム。
  • モデルメイト - 白のキングとポーンを除くすべての駒がメイトに参加しているピュアメイト。キングとポーンはメイトに参加していても構わない。ボヘミアンスクールの一員による特定の特徴のプロブレム。
  • ラウンドトリップ - 解において、あるマスを離れた駒が後に遠回りの経路で(たとえば、ルークがe3-g3-g5-e5-e3と動く)そこに戻るもの。スイッチバックと比べてみよ。
  • LacnyLacnyサイクル - ある指し手の相において、応手 a, b, c に対しそれぞれ A, B, C で詰ませ、他の指し手の相において、応手 a, b, c に対しそれぞれ B, C, A で詰ませるプロブレム。他の指し手の相は、セットプレイ、トライ、ツインの2解目などが相当する。さらに別の指し手の相において、応手 a, b, c に対しそれぞれ C, A, B で詰ませるプロブレムは完全Lacnyと呼ばれる。応手は3つ以上であればよい。最初にこのテーマを発表した人名からこう呼ばれている。
  • リフレクスメイト - 本文参照。
  • レトログレード解析レトロ解析レトロ - 与えられた局面への指し手の推論。プロブレムが、(たとえば、プルーフゲームあるいは課題が黒の最終手を決定するプロブレムにおけるように)完全にレトログレード解析で構成されることや、あるいはより大きなプロブレムの一部となることがある (たとえば、与えられた局面へ至る途中でキングを動かし(これはキャスリングできないことを意味する)、したがって解を正しく与える(キャスリングする手が誤りである)ことを決定するために必要となることがある)。
  • 連続詰 - 一方が連続して指すことのできるプロブレム。本文も参照のこと。

問題の解答


関連項目

関連書籍

  • 湯川博士、若島正 - 『将棋ファンにも楽しめる初めてのチェス 1 手・ 2 手詰集』(山海堂、2003/10) ISBN 438110482X

外部リンク


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