JR西日本321系電車

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パンタグラフ2基のクモハ321形を先頭とした7両編成

321系電車(321けいでんしゃ)は、西日本旅客鉄道(JR西日本)の直流通勤形電車である[1]

概要

東海道本線山陽本線(JR京都線JR神戸線)の普通列車(京阪神緩行線)で使用されていた201系205系の置き換えと、JR福知山線脱線事故で大破し廃車となった207系の補充のために製造され、2005年12月1日より営業運転を開始した。編成記号はD

JR西日本では新型通勤形電車として1991年から2003年までに207系が改良する形で増備されていたが、投入開始から約15年が経過し、その後の社会情勢の変化や技術の進歩に対して充分な対応が困難となり始めていた。そこで陳腐化の目立つ各駅停車用の201系205系の全面置き換えを行うに当たって全面的な設計の見直しが図られ、本系列が設計された。

力行・ブレーキの台車単位制御やイーサネットを活用した車内伝送システム、側構体のレーザー溶接など、自社・他社での15年間の技術開発や運用で得られた成果を積極的に取り入れ、随所に新機軸を盛り込んだ。コストダウン[注 1]や工期短縮にも配慮され、部材別組立・後取り付けのユニット化や構体の全車共通設計化が図られている。

構造

車体

車体はSUS304ステンレス鋼を使用した連続溶接構造とした[2]。幅 2950 mm のワイドボディであり、1両の片側に4つの客用扉を持つ形態となっている。ドアピッチは207系と同じ 4700 mm(ドア中心間)である。断面は近郊形との共通化を念頭に置き、207系とも223系とも異なる新形状が起こされた。207系では構体に骨構造に外板をビード加工(断面が凹凸の細い帯状の補強構造)したものを組み合わせるものなしてたが、本形式では2003年の223系5000番台で採用された、戸袋部を2シート工法、窓部を骨組み工法とすることでビードが廃止された。側構体腰部・吹き寄せ部にはレーザー溶接に変更され、従来より外観平滑性の高い構造となっている[3]。外板厚は 2.0 mm であり、レーザー溶接と相まって223系などを上回る車体強度を有する。207系に比べ床面高さを 30 mm 、屋根高さを 70 mm 下げ、バリアフリー化と低重心化が図られている。一方で床を207系より 5 mm 厚くし、床材も塩化ビニールからゴムチップに変更することで車内騒音・振動を軽減する設計である[4]

コストダウンや車種変更の容易化を目的に、各車の構造は極力共通化されている。パンタグラフ搭載スペースは全車種に2か所ずつ設けられた[注 2]ほか、台枠も全車共通設計で、どの車種にも車両制御装置・空気圧縮機・蓄電池を搭載できる。このため、従来先頭車床下台車間に設けていた ATS 制御装置を運転室内設置とした。

207系の側窓はドア間が固定、連結面寄りが下降式で、車体片側の妻面下降窓の幅を拡げるため貫通路を車体中心からオフセット配置し、消火器は妻窓下の車外に設け取り出す際は窓を下げる必要があった。本系列では火災時の対応や妻構体の近郊形との共通化を考慮し、片側1面にあたり2か所の窓を下降窓とし、貫通路は中央に配置し妻窓は廃止され、消火器は室内側から取り出せるように改良されている。

先頭車前面のデザインは207系のイメージを踏襲しつつ、フォグランプの追加や下部の三角形の装飾、前面の濃紺色(計画時は黒)仕上げで、先端部分は一層近代的で力強い表情となっている。車体下に設置される排障器(スカート)は前面と一体感のある専用デザインのものとなり、強度も207系の強化型(製造途中に設計変更)よりさらに向上している。この部分は普通鋼製となっており、紺色仕上げ面以外の部分は銀色の塗装がなされている。なお、側面先端部分には紺色のグラデーションが入れられている。

車外の行先案内設備は、221系以来の種別表示器と発光ダイオード (LED) 式行先表示器を併用するものである。207系では省略されていた号車表示機能が設けられており、その分表示機の横寸法が長くなった。前面のLED行先表示器の文字が223系2000番台と同様のゴシック体になった。

207系と同じ調律のミュージックホーンが引き続き採用されている。他形式車と同様にペダルを軽く踏むとミュージックホーンだけが、強く踏むと通常の空気笛が同時に鳴る仕組みである。

車体塗色

製造前の計画では、外装は側面が旧塗装の207系と同一の、窓下に濃淡ブルー帯、前面が先述の通り黒色仕上げとなる予定であった[5]が、実際の落成に際して、帯色は濃紺色とオレンジ色の配色に、前面は先述の通り濃紺色仕上げにそれぞれ変更され、戸袋部分には当初の予定にはなかった濃紺色帯が追加されて223系に近いデザインとなった。マスコミ報道では、外装の変更についてJR福知山線脱線事故の遺族や乗客の心情に配慮したと報道されたが[6]、JR西日本からの公式発表はなされていない。なお、207系や205系は本形式の落成後に営業に使用される全編成が本形式と同デザイン[注 3]に変更されている。

主要機器

本系列では先行して設計された支線区用の125系と同様、各電動車の後位寄り[注 4]台車のみを主電動機を装架する電動台車とし、全電動車ないしそれに準じた編成とすることで1列車として運行するのに必要な出力を確保している。この「0.5Mシステム」の導入により、編成内各車の重量均一化と牽引力の分散による車両間衝動の抑制、冗長性の確保、編成組成の自由度の向上[注 5]、前述の全車共通設計による設計・製造の合理化が図られた。

こうした機器構成により、MT比1:3まで主電動機を開放した状態で 35 ‰ 上り勾配での起動が可能となっている[7]

最高速度は 120 km/h 、台車・ブレーキなどの改造[注 6]で 130 km/h への向上に対応する。

なお、メディア報道では、本系列が両先頭車を電動車としたことを捉え、電動車が付随車に比べて重心が低く転覆し難いという理由により、JR福知山線脱線事故の影響で急遽設計変更したかのように報じる向き[6]もあったが、これは誤りである。

これらの報道の中で先頭車の運転台寄り台車が従台車であることや、「0.5M システム」の導入目的について触れたものはない。

Mc車およびM車に搭載された集電装置によって取り入れられた直流1,500Vは、下り寄りに隣接するM'車およびM'c車にも車間に渡されたWKE20ジャンパ連結器を介して車両制御装置に供給される[8]。補助電源に関してはWKE21ジャンパ連結器を介して編成に引き通されており、異常時の冗長性を確保している[8]。このほか低圧回路用(直流100V)のWKE108ジャンパ連結器、情報配信装置用のMY119コネクタを備え、元空気だめ管 (MRP) 引き通しは連結器直下に設置されている[8]

電源・制御機器

車両制御装置[注 7]三菱電機[注 8]日立製作所東芝東洋電機製造[9][10]の4社による競作である。すべて共通仕様・同一性能で混用されており、外装には各社で相違があるが、いずれも WPC15 という同一形式を与えられている。

主回路部はIGBTによる2レベル電圧形PWMインバータ1基で2基の電動機を制御する、いわゆる1C2M構成のVVVFインバータを搭載し、速度センサレスベクトル制御に対応する[11]。補助電源部もIGBTを用いた2レベル電圧形PWMインバータを用いており、CVCF制御することで三相交流440V 60Hzを出力し、定格容量75kVAを得る[11]。他車の補助電源部と並列運転を行うことで、1基当たりの容量小型化および故障時の編成全体での冗長性を確保する設計である[12]。また、223系での1C1M制御に比べて半導体素子数の削減を図っている[12]

電動空気圧縮機 (CP) は223系2000番台などの実績である除湿装置一体型の低騒音形スクリュー式 WMH3098-WRC1600 が搭載されている。

主電動機・駆動装置

主電動機は自己通風かご形三相誘導電動機 WMT106 で、センサレスベクトル制御の採用により速度センサを省略、このスペースを活用することで磁気回路の増量を図り、1時間定格出力270 kW/1100Vを実現している[11]。この出力増強は回生ブレーキの負担割合向上を目的としたもので、力行性能を223系と同程度に抑えることで信頼性向上・長寿命化をも図っている。回転数は定格2955rpm 、許容5830rpm[13] で、130km/h運転にも対応可能な高速性能を有する。

駆動装置はJR西日本標準のWNドライブで、惰行時の騒音低減を図る改良が施された。歯数比は223系などと共通の1:6.53となっている。

台車

台車は、軸箱支持方式を207系の円錐積層ゴム式[注 9]や乾式円筒案内式[注 10]を止め、WDT59・WTR243(223系2000番台)をベースとした軸梁式[注 11]とした、ボルスタレス台車のWDT63(動台車)・WTR246 もしくは WTR246A(付随台車)が新たに設計された[14]。バリアフリー化への社会的な要請に対応すべく、基本となった223系2000番台用 WDT59・WTR243 系台車と比較して空気ばね上面高さを 15 mm 下げて床面高さを低減させ、空気ばね中心間隔を 20 mm 拡げロール剛性が高められている[14]。空気ばね自体も、前後方向に柔らかく左右方向に硬い設計とした異方性空気ばねとすることで曲線通過性能と乗り心地の両立が図られている[15]

基礎ブレーキは、WDT63 が踏面ユニットブレーキ、WTR246 がSJシリンダによる踏面ブレーキと1軸1枚のディスクブレーキとし、Mc車およびM'c車の WTR246A に関してはSJシリンダ踏面ブレーキに代わって駐車ブレーキ機能を内蔵した踏面ユニットブレーキを搭載する[16][注 12]

最高運転速度が120 km/hであることから、構成部品を223系2000番台と共通としつつも、軸ダンパー、アンチローリング装置、各軸制御用滑走検知を準備工事としている[14]。また、省メンテナンス化を図るために速度発電機の非接触化、制輪子・ブレーキライニング着脱のワンタッチ化、ワンタッチカプラ化された空気ホースを採用する[14]

集電装置

集電装置はJR西日本標準の下枠交差式パンタグラフの WPS27D である。最初の9編成はMc・M車後位寄り(車体西側)の第一パンタグラフのみとし、第二パンタグラフ側は台座と碍子をつけた準備工事状態で落成した。第10編成以降JR東西線乗り入れのため落成時から2基搭載し、最初の9編成も2006年8月までに追加搭載がなされた。地上区間では207系と同様に第二パンタグラフは降ろして運用されており、東西線乗り入れ時は尼崎駅と京橋駅で第二パンタグラフを上げ下げする。

また、第1 - 16編成では全ての車両にパンタグラフ台座が取り付けられているが、第17編成以降はクモハ321形とモハ321形以外の車両は省略とした。

冷房装置

冷房装置は集約分散式の WAU708(冷凍能力 20,000 kcal/h)が1両につき2基搭載されている。1989年に登場した221系から採用された方式であるが、保守性を高めるため外装ケーシングの上下寸法が拡大されている。

ブレーキ

205系以降国鉄・JRの標準となった電気指令式空気ブレーキが装備されている。

ブレーキ制御装置は各車両に2基搭載し、台車ごとに個別制御を行う。これにより故障時の冗長性を高めたほか、装置自体を各台車直近に配置することで配管を簡素化、応答性も向上させている。

車両情報システム

車両情報システムとして、東芝製のデジタル伝送装置を搭載する。インタフェースは車両間の幹線に 10Base 相当のイーサネット、端末装置と機器の間に RS-485 が用いられている。全車共通設計を図るため先頭車の中央装置を排し、各車の端末装置にその機能を分担させた。伝送速度は207系の 1 kbps から 10 Mbps と大幅に向上し、力行・ブレーキの編成単位での制御が可能となった。幹線と端末装置を2重系として冗長性を確保しているが、従来の機器ごとの引き通し線も設けており、「ソフト・ハード双方の信頼性の実績を示すデータが蓄積できた後、伝送のみで制御するシステムに移行させる予定[17]としている。

その他装備

連結器は1編成を1車両として運用する考え方を基本としたため、中間連結部は半永久連結器を使用することを基本としている。検修の都合上、3両と4両に分割できるようにするためにモハ320形後位およびサハ321形前位は密着連結器としている。先頭車運転台寄りの連結器も密着連結器としているが、営業列車での増解結作業が存在しないことから、電気連結器・自動解結装置は搭載しない。

保安装置は、新製当初からATS-SWATS-Pに加えてEBTE装置を搭載する。中間車と先頭車で床下機器配置を極力共通化するため、従来は床下に搭載されていたATS制御装置は床上に設置する事とした[4]。それに対応するため、ATS-P制御装置を小型化し、ATS-SWとの機能集約を行ったATS-P3制御装置を開発して搭載した[4][12]

警笛は、空気笛および電子笛が先頭車両床下に搭載されている[4]

車内

車内の配色は、207系がアイボリーの内壁とベージュの床であったのに対し、本系列では薄いグレーの内壁と濃いグレーの床が採用された。また、妻面は灰色、妻面貫通扉はステンレス素材を生かし、運転台仕切りはグレーで塗り分けられ、アクセントとなっている。手摺りなどの構造も大幅に簡略化され、コストの低減と内装との統一が図られている。妻面には大型の路線図が掲示されている。

座席はすべてバケットシートタイプのロングシートで[18]、車端部は4人掛、440 mm として在来車と同様の設計である。ドア間は207系の7人掛から6人掛に減らし、その分一人当たりの幅を 440 mm から 470 mm に拡げることで座り心地にゆとりを持たせるとともに、出入り口付近のスペースを拡大することで乗客の流れをスムーズにする狙いである[18]。座面高さは207系より 35 mm 高い450 mm とすることで、高齢者が立ち上がる際の負担軽減を狙ったものである[18]。座席モケットは従来より濃い青色で、外装が青主体だった計画時のものがそのまま採用されている。

2006年1月1日以後に新造される鉄道車両には改正された火災対策の条文が適用されることとなり、第14編成以降、蛍光灯カバー・天井化粧板の材質変更や貫通扉のドアキャッチャ廃止がなされた。以後の車両の蛍光灯カバーは特殊樹脂でコーティングしたガラス繊維製で、デザインも強い丸みを持ち、つり革の支持棒と一体化するという、独特のものに変更されている。

ドアエンジンは直動空気式である WTK112B を採用し、閉扉時の隙間風防止機構および戸閉予告チャイムを備える[16]。戸挟検知機能および戸閉予告表示は準備工事とされた[16]。客室扉の車外および車内の横には、扉が半自動時において乗客が任意で扉を扱うことができる半自動ドア機能を搭載している。この機能の稼動を、207系では扉を動かすスイッチの脇に設けられた電照パネルに「ドア」の文字を表示することで告知していたが、321系ではスイッチボタン周縁が光る方式に変更された。

207系からの最大の変更として、各車両に19インチ・解像度 SXGA の液晶ディスプレイが計12面設置された。実表時領域は 1280x960 で、アスペクト比は4:3である。ディスプレイは2面1セットを前後に配したユニットをドア間天井に座席と直角(枕木と平行)の向きで設置している。通常時は、左側画面に現在位置や駅名・乗り換え路線などが表示されているが、2009年12月17日より、京阪神近郊エリアの主要線区および東海道・山陽新幹線において、30分以上の列車の遅れが発生または見込まれる場合に文字による運行情報が表示されるようになった[19]。また、ダイヤが大幅に乱れ車両運用が変更された場合、「JR西日本」のロゴが表示される。右側画面にCM放送WESTビジョン)を表示している。音声は出ないため、CMの中には吹き出しや字幕が追加された独自仕様となっているものもある。

2008年時点では東日本旅客鉄道(JR東日本)が山手線に投入したE231系500番台のように、停車駅での階段エスカレーター位置などの案内はなされていない。また駅名の表示は日本語と英語の表示に対応していたが、2016年12月24日から大阪環状線に導入された323系に合わせ、中国語・韓国語の表示にも対応した。

また、脱線事故の遺族や乗客の心情に配慮して、207系と本系列の座席モケットの青色から緑色への変更が2010年4月より順次行われている[20][21]

2011年10月19日から、207系と本系列の吊り手が225系仕様のものに順次交換および増設が行われている[22]

編成・形式

3両以上の編成では故障等による1インバータ(2モータ)解放時においても健全時と変わらぬ力行性能を確保させることを目的に、片方の台車を付随台車とする 0.5M 方式による全電動車編成を基本としているが、7両編成は解放時の影響が短編成に比べ相対的に小さいため付随車[注 13]を1両挿入している。電動車は全車に車両制御装置を搭載する。集電装置の有無によって321形と320形の区別を行っている(付随車のサハ321形をのぞく)。

車種は以下の5形式である。

クモハ321形(Mc)
京都・木津側(東)の先頭に連結されている制御電動車。車両制御装置・集電装置蓄電池が搭載されている。空車重量35.6t。
クモハ320形(Mc')
西明石・新三田側(西)の先頭に連結されている制御電動車。車両制御装置・蓄電池が搭載されている。車内には車椅子スペースが設置されている。空車重量35.1t。
モハ321形(M)
車両制御装置・集電装置・空気圧縮機が搭載されている電動車。空車重量34.1t。
モハ320形(M')
車両制御装置・蓄電池が搭載されている電動車。空車重量33.3t。
サハ321形(T)
蓄電池が搭載されている付随車。空車重量27.3t。
← 京都・木津
西明石・新三田 →
クモハ321
(Mc)
モハ320
(M')
モハ321
(M)
モハ320
(M')
サハ321
(T)
モハ321
(M)
クモハ320
(Mc')

車両配置と運用線区

ファイル:JRW series321 Gakkentoshi.jpg
片町線(学研都市線)では区間快速にも充当される

2016年(平成28年)10月1日現在、39本すべてが網干総合車両所に所属し、明石支所に配置されている[23]。2017年(平成29年)3月4日現在の定期運用は次の通りで、207系と共通運用されている[24]和歌山県をのぞく近畿5府県で運転されている。

  • 東海道・山陽本線(琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線〈京阪神緩行線〉):野洲 - 加古川
    • 日中は京都 - 西明石間で運用され、草津・加古川乗り入れは平日朝ラッシュ時、野洲乗り入れは最終電車(毎日運転)のみ。
  • 福知山線:尼崎 - 篠山口
    • 日中は尼崎 - 新三田間で運用され、篠山口乗り入れは朝晩のみ。基本的に東海道本線(JR京都線)およびJR東西線・片町線(学研都市線)と直通運転を行い、快速・普通として運転されている。大阪発着の列車に充当されることもあり、その場合は列車線を走行するため、普通列車であっても塚本駅を通過する。
  • JR東西線・片町線(学研都市線):尼崎 - 京橋 - 木津
    • 東海道本線(JR神戸線)・福知山線(JR宝塚線)と直通運転を行うほか、片町線(学研都市線)内のみの運用もあり、普通・区間快速・快速として運転される。
  • おおさか東線関西本線大和路線):放出 - 久宝寺 - 木津
    • 尼崎 - 奈良間をJR東西線・片町線(学研都市線)・おおさか東線・関西本線(大和路線)経由で運転されている直通快速のほか、木津 - 奈良間では、早朝・深夜に限って片町線(学研都市線)と直通する列車が運転される。

2016年(平成28年)3月25日のダイヤ改正までは、湖西線堅田駅・近江舞子駅発着の朝晩限定運用が存在していた。

運用の開始まで

ファイル:JRW321.JPG
長期試運転時に姫路駅に入線した321系

第1編成は2005年(平成17年)7月19日に近畿車輛で落成し、その後第2編成以降も同社で順次製造されたが、同年12月1日までは全ての編成が長期的に試運転が行われたり、普段は乗り入れがない福知山電車区奈良電車区へと回送されて乗務員訓練を行ったため、営業運転には使用されなかった。

当初、同年中に7両編成16本、翌2006年(平成18年)に同20本の計7両編成36本252両が製造される予定であったが[25]、実際には2005年(平成17年)に7両編成20本、2006年(平成18年)に同19本の計7両編成39本273両が製造された。これは、脱線事故で廃車になった207系の補充に入っていた103系の早期の撤退および、「ゆとりダイヤ」の実施や207系の帯色変更に伴う運用離脱で必要編成数が増加したためである。

当初は置き換え対象の201系・205系と共通運用されていたが、2007年(平成19年)1月に全編成の落成・営業投入がなされ、同年3月18日をもって普通の207系・321系統一が達成されている[注 14]。ただし、一旦営業運転を開始した編成が、回生ブレーキ改善工事のため、一部の編成が再び近畿車輛に入場していた。この時置き換えられた201系体質改善未施行車を一時的に呼び戻すことで対応した。

前述のパンタグラフ増設によりJR東西線への乗り入れが可能となり、2008年(平成20年)3月15日よりJR東西線片町線(学研都市線)への乗り入れが開始された。2010年(平成22年)3月13日からは木津駅 - 同志社前駅間の各駅のホームを7両編成に対応できるよう延伸したことによって、一部の快速の運用にも充当されるようになった[26]

脚注

注釈

  1. 2005年2 - 3月に日本経済新聞・朝日新聞・産経新聞などで「252両につき約250億円」(つまり1両あたり約1億円)との趣旨の報道がなされた。
  2. D16編成まで、D17編成以降はMc・M車以外は配管の準備工事のみ。
  3. 日根野電車区→吹田総合車両所日根野支所所属の205系1000番台を除く。207系では前面の紺色仕上げとグラデーションは採用されていなかったが、前面紺色仕上げのみ体質改善車に採用されている。また205系0番台では後年の日根野再転属後にスカイブルー帯に戻されている。
  4. クモハ320形のみ前位寄り(連結面側)に電動台車を、後位寄り(運転台側)に付随台車を配置する。
  5. 車体の構成変更で両運転台式とすることも可能である。
  6. 台車への軸端ダンパやアンチローリング装置の追加やブレーキ系への滑走検出装置の付加など。いずれも準備工事は新製時より施工済みである。
  7. 主回路用インバータ(VVVF制御装置)と補助電源用インバータ (SIV) を一体化したもの
  8. 東洋電機製造の OEM であり、ソフトウェアも同社のものとなっている。
  9. WDT52・WTR235(0番台)および WDT55・WTR239系(1000番台)。国鉄 DT50 系の系譜に連なる。
  10. WDT62・WTR245系(2000番台)。製造に参加した川崎重工業(厳密にはその前身の1社である汽車製造)と近畿車輛はそれぞれスイスのシンドラー社とスイス・カー・アンド・エレベーター社との技術提携を通じて円筒案内式台車に関する設計ノウハウを保有している。
  11. 川崎重工業が前身の川崎車輌時代から半世紀に渡って研究開発を続けてきた方式で、500系新幹線にも採用された。直進安定性に優れ高速走行に適する。
  12. 留置時の転動を防止するために従来から用いられてきた手歯止めを代替する目的ではなく、手歯止めの使用を前提とした上重ねの機能として搭載されている。
  13. 車体構造は電動車と同一で、後日の需給変動による電動車化改造に対応する設計となっている。
  14. ただし、2011年(平成23年)3月12日のダイヤ改正で205系は再び東海道本線での運用に復帰している。

出典

  1. データで見るJR西日本(西日本旅客鉄道、p.122)
  2. New Product 321系通勤電車 (PDF) - 近畿車輛技報 vol. 24
  3. 『Rolling stock & Machinery』第13巻第11号、p.4
  4. 4.0 4.1 4.2 4.3 『Rolling stock & Machinery』第13巻第11号、p.7
  5. 西日本旅客鉄道(株)向け新型通勤車両252両受注について - 近畿車輛
  6. 6.0 6.1 先頭車両重心下げる 尼崎JR脱線207系後継車両 - 神戸新聞 2005年7月9日
  7. 『Rolling stock & Machinery』第13巻第11号、p.6
  8. 8.0 8.1 8.2 『鉄道ファン』通巻538号、p.103
  9. 『東洋電機技報』通巻112号、p.23
  10. とれいん誌2006年10月号(382号)
  11. 11.0 11.1 11.2 引用エラー: 無効な <ref> タグです。 「Toyodenki112_24」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません
  12. 12.0 12.1 12.2 『近畿車輛技報』通巻12号、p.41
  13. 『インバータ制御電車 開発の物語』レールアンドテック出版 p.161
  14. 14.0 14.1 14.2 14.3 『Rolling stock & Machinery』第13巻第11号、p.8
  15. 『近畿車輛技報』通巻12号、p.42
  16. 16.0 16.1 16.2 『鉄道ファン』通巻538号、p.102
  17. 鉄道ピクトリアル』781号 電気車研究会 鉄道車両年鑑 2006年版
  18. 18.0 18.1 18.2 『Rolling stock & Machinery』第13巻第11号、p.5
  19. 京阪神近郊エリアを運転する電車内での運行情報提供開始について - 西日本旅客鉄道プレスリリース 2009年12月16日
  20. JR西、事故と同型車両の席を緑色に…被害者心情に配慮 - 読売新聞 2010年4月13日
  21. 「事故思い出し、つらい」 JR座席を青から緑に - 神戸新聞 2010年4月13日
  22. 在来線列車に「新しい吊り手」を導入します- 西日本旅客鉄道プレスリリース 2011年10月18日
  23. ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2017冬 ジェー・アール・アール、交通新聞社、2016年、p.178。ISBN 9784330737164。
  24. 『鉄道ジャーナル』通巻579号、p.93
  25. 321系通勤形直流電車の新製投入インターネットアーカイブ)- 西日本旅客鉄道プレスリリース 2005年7月8日
  26. JR片町線 京田辺-木津間で7両編成の運用開始 - 『鉄道ファン交友社 railf.jp鉄道ニュース 2010年3月14日

参考文献

  • JR西日本「321系通勤形直流電車」、『鉄道ファン』第538号、交友社、2006年2月、 99 - 103頁。
  • 柴田東吾「JR西日本207系の歩みと現状」、『鉄道ジャーナル』第579号、鉄道ジャーナル社、2015年1月、 90 - 93頁。
  • JR西日本鉄道本部車両部設計課「JR西日本321系電車の概要」、『Rolling stock & Machinery』第13巻第11号、日本鉄道車両機械技術協会、2005年11月、 4 - 9頁。
  • 西日本旅客鉄道株式会社321系車両制御装置」 (pdf) 、『東洋電機技報』第112号、東洋電機製造、2005年10月、 23 - 24頁。
  • 山縣勝善(近畿車輛車両事業本部車両設計部)他2名「321系通勤電車」 (pdf) 、『近畿車輛技報』第12号、近畿車輛、2005年11月、 40 - 43頁。
  • 『鉄道車両と技術』No.119、No.120、レールアンドテック。
  • 『鉄道ファン』2005年10月号、交友社。

外部リンク


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