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(内容を「 '''90式戦車'''(きゅうまるしきせんしゃ) 防衛庁が 1977年から 10年あまりの歳月をかけて開発し,90年に採用が決った陸上自衛…」で置換)
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{{Otheruses|日本の戦車|中国の戦車|90-II式戦車}}
 
{{戦車|
 
|名称= 90式戦車
 
|画像= [[ファイル:Japanese Type 90 Tank - 1.jpg|300px]]
 
|説明=
 
|全長= 9.80[[メートル|m]]
 
|車体長= 7.55m
 
|全幅= 3.40m(サイドスカートを含む)
 
|全高= 2.30m(標準姿勢)
 
|重量= 50.2[[トン|t]]
 
|懸架方式= [[ハイブリッド]]式<br />(油気圧・トーションバー併用)
 
|速度= 70[[キロメートル毎時|km/h]]<br />(加速性能0-200mまで20秒)
 
|整地時速度=
 
|不整地時速度=
 
|行動距離= 350[[キロメートル|km]]
 
|主砲= [[ラインメタル 120 mm L44|44口径120mm滑腔砲Rh120]]
 
|副武装= [[74式車載7.62mm機関銃]]([[主砲]][[戦車#装備と構造|同軸]])<br />[[ブローニングM2重機関銃|12.7mm重機関銃M2]]([[砲塔]]上面)
 
|装甲= [[装甲#複合装甲|複合装甲]]<br />(砲塔前面 及び 車体前面)
 
|エンジン名= 三菱10ZG32WT<br />[[水冷エンジン|水冷]][[2ストローク]][[V型10気筒]][[ターボチャージャー|ターボチャージド]]・[[ディーゼルエンジン|ディーゼル]]
 
|出力= 1,500ps/2,400rpm(15分間定格出力)<br />最大トルク4,410N・m(450kgf・m)<br />排気量21,500cc
 
|乗員= 3名
 
|備考=
 
}}
 
'''90式戦車'''(きゅうまるしきせんしゃ)は、[[日本]]の[[戦車]]。[[第二次世界大戦]]後に日本国内で開発生産された[[自衛隊]]の[[主力戦車]]としては[[61式戦車]]、[[74式戦車]]に続く三代目にあたり、[[戦車#戦後第3世代主力戦車|第3世代主力戦車]]に分類される。
 
  
== 概要 ==
+
'''90式戦車'''(きゅうまるしきせんしゃ)
着上陸侵攻してくる[[ソビエト連邦軍|ソ連軍]]の機甲部隊に対抗することを開発目標としており、世界の[[戦車#第3世代主力戦車|第3世代戦車]]トップクラスに比肩する性能を有する。
 
  
製造は、車体と[[砲塔]]を[[三菱重工業]]、[[ラインメタル 120 mm L44|120mm滑腔砲]]を[[日本製鋼所]]が担当し、[[1990年]](平成2年)度から[[2009年]](平成21年)度までに[[61式戦車]]の全てと[[74式戦車]]の一部を更新するために341輌が調達された。価格は1輌あたり約8億円である。
+
防衛庁が 1977年から 10年あまりの歳月をかけて開発し,90年に採用が決った陸上自衛隊の主力戦車。ハイテク技術を駆使,日本の戦車で初めて[[滑腔砲]]や[[複合装甲]]を取入れ,自動装填装置も導入している。反面,重量が 74式戦車の 38tから 50tに増加しており,移動に制約を受ける面もある。主要目は,乗員3,全備重量 50t,全長 9.8m,最高時速 70km,行動距離 340km,武装 120mm滑腔砲1,12.7mm重機関銃1,7.62mm機関銃1。
 
 
120mm[[滑腔砲]]と高度な[[射撃管制装置]]により高い射撃能力を持つ。[[西側諸国]]の第3世代主力戦車では初となる[[自動装填装置]]を採用しており、乗員は装填手が削減され3名となっている。[[装甲]]には複合素材が用いられ、正面防御力は世界最高水準と評価されている。
 
 
 
[[北海道]]の[[北部方面隊]]以外では教育部隊の[[富士教導団]]・[[第1機甲教育隊]]・[[陸上自衛隊武器学校|武器学校]]にしか配備されておらず、[[本州]]以南の機甲部隊は74式を主力とする。
 
 
 
平成23年度以降は[[冷戦]]の終結、防衛方針の変化や防衛費の削減、[[東アジア]]の軍事バランスの変化など、世界、国内の情勢変化を受けて、全国的な配備を目指した後継の[[10式戦車]]が配備される。一方で、[[防衛計画の大綱|平成23年度以降に係る防衛計画の大綱]]で示された'''動的防衛力'''の方針から、90式戦車も北海道以外の地域で活動を行えるよう、訓練が実施されるようになっている。
 
 
 
== 開発 ==
 
本車輌の開発は[[74式戦車]]が制式化された直後、[[1977年]]に[[神奈川県]][[相模原市]]にある[[防衛省|防衛庁]][[技術研究本部]]第4研究所が、新[[戦車]]の各種構成要素の研究試作をスタートさせている{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=113}}。当時は米ソ[[冷戦]]下にあり、[[ソビエト連邦軍|ソ連軍]]及び[[ワルシャワ条約機構]]軍の質的向上、量的増大による[[東側諸国|東側陣営]]の軍事的脅威が高まっていた時期でもある{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=112}}。同時期、ソ連軍は125mm[[滑腔砲]]を搭載させた戦車の配備を進めている{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=113}}。
 
 
 
[[1979年]]にシステム設計を開始し{{Sfn |丸|2002|p=72}}、[[1980年]]には開発要求書がまとめられた{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=113}}。[[1982年]]度-[[1983年]]度までに1次試作(その1)として[[日本製鋼所]]と[[ダイキン工業]]などが[[主砲]]、[[弾薬]]、[[自動装填装置]]の試作を行った{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=113}}。120mm滑腔砲向けの自動装填装置の開発は世界初となったが、当初から主砲に関しては[[ドイツ]]の[[ラインメタル]]社製[[ラインメタル 120 mm L44|44口径120mm滑腔砲Rh120]]を[[ライセンス生産]]する方針になっていた{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=113}}(日本製鋼試作の120mm砲は性能面ではラインメタル製よりも若干優れていたが[[コストパフォーマンス]]の面でラインメタルに優位が認められた{{要出典|date=2012年3月}})。テスト用として、オリジナルのラインメタル社製120mm滑腔砲と弾薬も輸入されている{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=113}}。
 
 
 
{{Multiple image|direction=vertical|width=250|align=left
 
|image1=JGSDF MBT Type 90 at JGSDF PI center 2.jpg
 
|caption1=陸上自衛隊広報センターに展示される試作車。
 
|image2=JGSDF MBT Type 90 at JGSDF PI center 3.jpg
 
|caption2=砲塔上面<br />手前側に[[指揮官|車長]]、[[ブローニングM2重機関銃|12.7mm重機関銃M2]]を挟んだ反対側に[[砲手]]が乗車する<br />試作車のため旧型の[[発煙弾発射機|74式60mm発煙弾発射機]]が装備され、自動装填装置上面のブローオフパネルが省略されている。<br />また、車長用照準潜望鏡の形状や設置位置など量産車と異なる点がある。
 
}}
 
1983年-[[1985年]]にかけて[[三菱重工業]]が参画し、試作1号車と弾薬の試作が1次試作(その2)として1次試作(その3)として試作2号車と弾薬の試作が行われた{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=113}}。この1次試作、2次試作で合計6輌(1次試作:2輌、2次試作:4輌)の試作車が製造され、各種試験に投入された{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=114}}。
 
 
 
1次試作の試作車による技術試験は1983年10月-[[1986年]]10月までに、機動性能・[[火力 (軍事)|火力]]性能・防護性能などの試験が実施された{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=114}}。
 
 
 
試験中に1次試作の2輌は合計約11,000kmの走行試験、合計約1,220発の射撃試験を実施、また、1985年7月に実施された装備審査会議調整部会の決定により2次試作ではラインメタル社製120mm滑腔砲を採用することを決定した<ref name="giken50">防衛省『防衛庁技術研究本部五十年史』<!-- (←書名は国会図書館所蔵のものの表記に倣った) --></ref>。
 
 
 
[[1987年]]9月-[[1988年]]12月までに行われた2次試作の試作車による試験は、1次試作の試作車の試験を受けた仕上げ作業に加えて、[[小隊]]行動試験も実施された{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=114}}。この試験では、下北試験場にて試作車への射撃試験も行われている{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=114}}。[[1989年]]2月からは[[陸上自衛隊]]による実用試験が、同年8月まで実施された{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=115}}。実用試験では潜水渡渉準備、[[規制が議論されている兵器|NBC]]使用状況下の行動、[[重機関銃]]による対空射撃、弾薬補給などあらゆる事態を想定した試験が行われた{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=115}}。
 
 
 
試験中に2次試作の4輌は合計約20,500kmの走行試験、合計約3,100発の射撃試験を実施した<ref name="giken50" />。
 
 
 
実用試験の結果、陸上自衛隊は「部隊の使用に供し得る」との報告書をまとめ{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=115}}、1989年[[12月15日]]に装備審査会議調整部会において陸自側の報告内容を追認し{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=115}}、「制式の採用を適当と認める」との決定を下した{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=115}}。翌[[1990年]][[8月6日]]に新型戦車は「'''90式戦車'''」として制式化された{{Sfn |丸|2002|p=72}}。同年、30輌の調達が開始された{{Sfn |古是三春|一戸崇雄|p=115}}。
 
 
 
現在、この試作車のうちの1輌が[[陸上自衛隊広報センター]]で屋内展示されている。この車両は、元々[[日本原駐屯地]]に用途廃止車として屋外展示されていたものを、広報センター開設のために化粧直しをして移管したものである。これは初めて90式が公開されたときの写真と同じく、[[砲塔]]正面[[装甲]]をキャンバスで覆い隠している。また、車体前面には[[92式地雷原処理ローラ]]用の6箇所の取付け座がある。試作車は[[土浦駐屯地]]と[[前川原駐屯地]]でも1輌ずつ屋外展示されており、後者にはストレートドーザが取り付けられている。
 
{{-}}
 
 
 
== 特徴 ==
 
日本の戦車開発は、世界の[[主力戦車]]が[[戦車#戦後第2世代主力戦車|第2世代]]へと移行する中に制式化された先々代の[[61式戦車]]{{Sfn |自衛隊新戦車パーフェクトガイド|2011|p=36}}、第2世代戦車としては他国に並ぶ性能を有していないため、やはり世界の情勢は[[戦車#戦後第3世代主力戦車|第3世代戦車]]に移行している中の制式化という一歩遅れることとなった先代の[[74式戦車]]と、他国の後塵を拝する状況であったが{{Sfn |自衛隊新戦車パーフェクトガイド|2011|p=34}}、ようやく本車に至り、他国新鋭戦車に並ぶ能力を持つに至った。
 
 
 
=== 火力 ===
 
[[ファイル:JGSDF Type90 tank 20120527-09.JPG|thumb|250px|砲塔。]]
 
[[ファイル:Japanese_APFSDS.jpg|thumb|250px|JM33装弾筒付翼安定徹甲弾(手前)<br />JM12A1対戦車りゅう弾(奥)。]]
 
[[ファイル:US Army 52808 JGSDF at Yakima.jpg|thumb|250px|[[ヤキマトレーニングセンター|ヤキマ演習場]]での訓練に参加する90式戦車([[2009年]][[9月15日]])。]]
 
 
 
[[主砲]]には[[西側諸国|西側]][[戦車#戦後第3世代主力戦車|第3世代主力戦車]]の標準主砲となっている[[ラインメタル]]社の[[ラインメタル 120 mm L44|44口径120mm滑腔砲]]を備え、弾種は[[APFSDS]](120mm TKG JM33装弾筒付翼安定徹甲弾)と[[成形炸薬弾#多目的対戦車榴弾|HEAT-MP]](120mm TKG JM12A1対戦車りゅう弾)を使用する。この120mm滑腔砲用砲弾の[[薬莢]]は、焼尽薬莢と呼ばれるもので、底部を残して燃えて無くなる仕組みで、射撃後に空薬莢を捨てる必要がない。照準具安定装置、[[自動装填装置]]、熱線映像装置、各種の[[センサー]]と連動したデジタル計算装置を備え{{Sfn |丸|2002|p=73}}、照準具安定装置の自動追尾機能は車体が上下に揺れたり、左右に方向転換しても常に目標を捉え続け、砲を目標に指向できる{{Sfn |丸|2002|p=73}}。
 
 
 
[[射撃管制装置]]が[[光波測距儀|レーザー測遠機]]や砲耳軸傾斜計、装薬温度計、横風センサーなどから送られてくる情報を計算し、弾道へ与える各種要素を割り出す{{Sfn |丸|2002|p=74}}。そして照準装置への入力・設定を照準制御器に送ることで、[[砲弾]]は的確な軌道を描いて目標に命中する{{Sfn |丸|2002|p=74}}。これら国産ハイテク技術が導入された射撃管制装置や[[自動装填装置]]を用い、射撃には大容量のデジタル弾道コンピューターと[[ジャイロスコープ|ジャイロ]]を併用することで、目標及び自らが移動していたとしても高精度な行進間連続射撃が行え、急激な制動で車体が前後に傾いた状態でも正確な射撃が可能となった。なお、90式戦車の[[滑腔砲]]は仰俯角範囲が狭いものの、サスペンションによって車体を傾斜させることでこれを補う。
 
 
 
日本の演習場では、広さの問題から行進間連続射撃や最大射程射撃訓練などが十分にできず、急減速する訓練弾(TPFSDS)を使用していたが、[[1996年]](平成8年)度より毎年9月に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]・[[ワシントン州]]の[[ヤキマトレーニングセンター|ヤキマ演習場]]に90式を持ち込んで戦闘射撃訓練などを行っている。ヤキマ演習場で高機動テストや走行間射撃テストを行った際には、停止状態だと2km先の標的用[[M60パットン]]に高確率での命中<ref>『月刊グランドパワー』2006年4月号では、記者が「ほぼ100パーセント」と表現している</ref>、走行間射撃では3km先の目標に命中させる<ref>[[コーエー]]刊『戦車名鑑1946〜2002 現用編』51頁</ref>などの性能に、[[アメリカ軍]]関係者が驚いた<ref>『月刊グランドパワー』2006年3月号</ref>という。00式120mm戦車砲用演習弾の導入により、[[富士総合火力演習]]でも[[2002年]](平成14年)度から行進間射撃が披露されるようになった。
 
 
 
[[砲塔]]内の[[指揮官|車長]]席には正面に[[潜望鏡|照準潜望鏡]]、潜望鏡操作パネル、サーマルモニター、[[照準器]][[ハンドル]]などがある{{Sfn |丸|2002|p=77}}。潜望鏡操作パネルには28個の[[開閉器|スイッチ]]と[[ランプ (光源)|ランプ]]があり、車長はこれらを見る事で自らの車輌の状態を知る事ができる{{Sfn |丸|2002|p=77}}。また、車外の車長用視察・照準装置を介して外の様子を知ることができる。車長席側の装填装置にはハンドルを取り付ける穴があり、装填装置が使用不能になったとしても、車長がハンドルを取り付けて回すことで[[弾薬]]を装填できる。[[砲手]]席には正面とサイドにパネルがあり、正面のパネルには14個、サイドパネルに20個のスイッチが備わっている{{Sfn |丸|2002|p=77}}。砲手席左側には無線装置がある。照準ハンドルには追尾スイッチ、角速度ボタン、レーザー発射スイッチ、撃発安全レバー、撃発ボタンの計5個のボタン・スイッチがあり、両手の指を使い操作する{{Sfn |丸|2002|p=77}}。
 
 
 
砲塔後部にはラックと、円筒形の風向センサーを備えている。
 
 
 
なお、自動装填装置を採用している点については評価する声がある一方で、装填手1人分の人手がなくなったことで車体の清掃や整備、戦車用[[掩体壕|掩体]]を掘るといった作業における搭乗員の負担が増加したとの意見がある。[[メルカバ (戦車)|メルカバ]]や[[M1エイブラムス]]のように、技術的には可能とされながらも乗員減のデメリットを考慮し、自動装填装置の搭載を見送った例もある。人員削減の思惑もあるとされるが{{Sfn |丸|2002|p=76 }}、砲弾装填の失敗、事故を防ぐ点は評価されている。
 
 
 
90式戦車の主砲は砲弾が焼尽薬莢方式であるため[[空包]]が利用できないとされ、創立記念行事などでの訓練展示(模擬戦)では代わりに[[戦車#装備と構造|同軸機銃]]の[[74式車載7.62mm機関銃]]を主砲に見立てる模擬射撃が行われていた。後にメーカーから非燃焼薬莢の空包が提供されるようになり、[[2012年]]の富山駐屯地創立50周年記念行事より空包を使用しての訓練展示が行われている。
 
 
 
乗員向けに[[89式5.56mm小銃#派生型|89式5.56mm小銃(折り曲げ銃床型)]]が支給される。
 
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=== 防護力 ===
 
[[ファイル:Type90_training_unit.jpg|thumb|250px|砲塔左前面<br />マークは[[戦車教導隊]]第2中隊。]]
 
[[セラミックス|セラミック]]系[[装甲#複合装甲|複合装甲]]の実用化と車両そのもの小型化により、軽量ながら防護力は高いとされている。
 
 
 
セラミックは硬度があるぶん割れやすい素材だが、[[APFSDS]]などのように、セラミックが割れる速度より高速で衝突してくる物体に対してはその硬度を防御力に転換でき、[[劣化ウラン]]などの[[重金属]][[装甲]]よりも軽量化することができる。これによって90式戦車は防御力を維持しつつ、他の同世代戦車に比べて軽量化することに成功しており、車体そのものが小型化されたことで被弾率が低下し、発見される可能性も抑えている。
 
 
 
一般に公開される90式の[[砲塔]]正面装甲には迷彩塗装のキャンバス布地などが張られ、複合装甲の詳細は隠されるが、生産車輌の試験走行時に撮影された公開写真などには何も塗られていない状態のもの<ref>{{Cite web |date=2004-11-11 |url=http://www.sakamotogoji.com/report/report_6.html |title=三菱重工(株) |work=活動報告 その他 |publisher=衆議院議員 坂本剛二 |accessdate=2016-09-28 |deadlinkdate=2016-09-28 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20060105163325/http://www.sakamotogoji.com/report/report_6.html |archivedate=2006-01-05}}</ref><ref>http://i.imgur.com/EHxDs87.jpg</ref>が存在し、その形態から[[ルクレール]]と同様の内装式モジュラー装甲と見られている。
 
 
 
砲塔前面の複合装甲が垂直の平面で[[避弾経始]]を考慮していないのは、装甲を傾斜させると前面投影面積あたりの重量が増加し車内容積が減少する点のほか、高速で衝突し流体状の振る舞いで貫通するAPFSDSに対しては装甲傾斜による避弾経始が意味を成さないこと、また、傾斜させずともそれに耐えられるだけの装甲材の開発に成功したことなどが理由に挙げられている。
 
 
 
耐弾試験では、正面装甲は[[ラインメタル 120 mm L44|44口径120mm滑腔砲]]を使用して発射された重金属弾体APFSDSに対して[[自衛隊]]の公式発表では「良好な結果を得た」という表現が用いられ、前面装甲に関しては[[M1エイブラムス#形式|M1A1エイブラムス]]を若干上回る防御力を持ち、側面は[[APDS|35mm徹甲弾]]の掃射に耐えうる性能があり、上面は[[榴弾]]の破片に耐えうる耐弾性能を有しているとされる<ref>http://eaglet.skr.jp/MILITARY/90.htm</ref>。
 
 
 
この耐弾試験の映像の一部はマスメディアに公開されており、実際に耐弾試験映像を視聴した軍事ライターの雑誌記事<ref name="gunji0711">『世界のハイパワー戦車&新技術』(Japan Military Review『軍事研究』2007年12月号別冊)</ref>によると「バンカー内に納められた90式戦車の正面に対し別の90式戦車の[[主砲]]により射撃を実施(射距離250メートル程度と推測)試験終了後にバンカー内から被弾した90式戦車が自走を行い、被弾車の車体正面の複合装甲に4発(被弾痕からHEAT-MP 3発、APFSDS 1発と推定)、砲塔正面右側の複合装甲に少なくとも1発(被弾痕からAPFSDSと推定)の被弾痕が確認でき、砲塔側も車体側と同等の防護力を持つと推察できる」としている。その他に「[[89式装甲戦闘車]]らしき車輌から35mm[[機関砲]]により90式戦車の砲塔側面を射撃」する場面や、「横向きに吊るした155mm榴弾を90式戦車の上空約10メートルで爆発([[曳火]]射撃を想定した静爆試験と推測される)」させる場面、「[[無限軌道|履帯]]下で[[地雷]]を爆発(地雷による静爆試験)」させる場面が試験映像中にあると紹介している。
 
 
 
砲塔後部にある即用弾収納部分の上面は、被弾などによって搭載する[[砲弾]]が誘爆した際にパネルが吹き飛び、[[エネルギー]]を上に逃がす「ブローオフパネル構造」であり、乗員の安全性向上が図られている。
 
 
 
=== 車体 ===
 
[[ファイル:Sohkaen type90.jpg|thumb|250px|稜線射撃を行うため車体を前傾させた様子。]]
 
[[ファイル:JGSDF type90 tank.JPG|thumb|250px|車体を前傾させた様子。]]
 
車体の[[砲塔]]左下側に[[運転者|操縦士]]が乗車する。操縦席には位置可変T字型操向ハンドル、電気式アクセルペダルや常用[[ブレーキ]]、アシストシリンダー付の駐車ブレーキなどの操縦装置、57個のボタンや計器類がある。{{Sfn |丸|2002|p=77}}<ref group="注">後継の[[10式戦車]]では情報モニターの設置など、操作計器の簡素化も行われている</ref>。
 
 
 
[[潜望鏡|ペリスコープ]]には[[ワイパー]]が備わる。車体底部に[[燃料タンク]]、後部に冷却ファンとそれを挟む形で潜水用逆流防止弁が付いた排気管がある。その上部に変速操行機オイルクーラーとラジエーターがある。操縦席の右側が予備[[火薬庫|弾薬庫]]となっている。また、先々代の[[61式戦車]]、先代の[[74式戦車]]と、伝統的に踏襲されてきたヘッドライトの位置(左右フェンダー先端の上方)が、本車からは車体正面[[装甲|装甲板]]の左右両側となった。
 
 
 
懸架装置は、前側の第1転輪と第2転輪、後側の第5転輪と第6転輪が[[ハイドロニューマチック・サスペンション|油気圧式]]、中央の第3転輪と第4転輪はトーションバー式というハイブリッド式サスペンションとなっている。車体を前後に傾斜させる機能と、車高を昇降させる機能により、丘などの稜線を利用した射撃において効率的に車体を隠すのに役立つ。74式のように左右に傾斜させることはできない。
 
 
 
制動能力は高く、全制動時では時速50キロの速度から2メートル以内で停止可能である<ref>テレビ朝日 『[[カーグラフィックTV]]』 1996年8月24日放映 No.564「陸上自衛隊の働くクルマ逹」より</ref>。配備当初は不用意に制動を行った際に上半身を車外に出していた[[指揮官|車長]]が胸部を打撲したこともあり「殺人ブレーキ」などと呼ばれていた。
 
 
 
ストレートドーザを装着した車両も存在し、待ち伏せなどでの陣地構築の際に用いられる。また、専用の装備を持つ一部の車両は車体前面に[[92式地雷原処理ローラ]]が装着できる。
 
 
 
制式化当初から[[レオパルト2]]との形状の類似が指摘されており、防衛庁(当時)の担当官が「このような(レオパルト2のような)のが欲しい」と発言したとの談話が、[[ワールドタンクミュージアム]]の解説書などにも掲載された。実際には、90式戦車の複合装甲はレオパルト2の分割配置複合装甲とは異なり、[[ルクレール]]と同様に複合装甲の着脱が容易な内装式[[装甲#増加装甲|モジュール装甲]]だと考えられている<ref>[http://web.archive.org/web/20070928122102/http://www.sakamotogoji.com/pic/pic_227.jpg](2007年9月28日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])、[http://web.archive.org/web/20120612135534/http://kago-ai-chan.net/uploader/img/naver7930.jpg](2012年6月12日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。また、形状以外では、90式では前面投影面積や砲塔容積の削減で、主要国の[[主力戦車]]と比較してコンパクトに設計されており、新素材の採用などにより防御力を犠牲にせずとも軽量化が実現されている。
 
{{-}}
 
 
 
=== 動力・機動性 ===
 
[[内燃機関|エンジン]]には三菱10ZG32WT[[水冷エンジン|水冷]][[2ストローク機関|2ストローク]][[V型10気筒]][[ターボチャージャー|ターボチャージド]]・[[ディーゼルエンジン]]、変速機には三菱MT1500[[オートマチックトランスミッション]](前進4段 後進2段)が採用されている。これらはパワーパック化され、[[土浦駐屯地]]での公開実演では20分以内での交換が実施されている。
 
 
 
[[1972年]]に技術研究本部で10ZG32WTの原型となる単筒型の実機の試作が行われ、[[1977年]]-[[1978年]]にかけて10ZG32WTの8気筒型である8ZG(シリンダー内径135mm行径150mm)の試作が行われた。1978年-[[1979年]]にかけて所内試験が行われ、最大出力1,196ps/2,600rpm を達成した。これらの研究成果を元に[[1982年]]に1,500psを達成した10ZG32WTが完成した。
 
 
 
10ZG32WTは1,500ps級ディーゼルエンジンとしては排気量21,500ccと小型で、また、耐久性に関しても15分間における定格最大出力1,500psを達成しており、諸外国のディーゼルエンジンとの比較においても10ZG32WTは過酷な高出力下での高い耐久性を達成している。
 
 
 
90式戦車の加速性能0-200mまで20秒という数値であるが、諸外国の[[戦車#戦後第3世代主力戦車|第3世代戦車]]と同一条件で比較した場合、[[レオパルト2|レオパルト2A4]]が推定23.5秒、[[M1エイブラムス]]の試作車XM1が推定29秒<ref>『世界のハイパワー戦車&新技術』(Japan Military Review『軍事研究』2007年12月号別冊p135、一戸崇雄)</ref>であることから、90式の加速性能は諸外国の第3世代戦車と比較して大幅に優れていると言える。
 
 
 
=== 燃料消費性能 ===
 
[[ファイル:敵方を警戒する第4戦車中隊90式戦車(撮影者 不明) 教育訓練等 192.jpg|thumb|250px|普通科部隊の前進を援護する90式戦車。]]
 
10ZGの燃費性能は定格[[燃料消費率]]234g/kWh(約172.1g/PSh)、最低燃料消費率226g/kWh(約166.2g/PSh)と技術研究本部の元研究官による雑誌記事<ref name="gunji0711" />において公表されている。
 
 
 
同雑誌記事では、10ZGの燃費性能を他の新型1,500馬力級[[ディーゼルエンジン]]と同一条件下にて比較した場合、[[1990年代]]初期に技術研究本部が研究試作した[[ターボコンパウンド]]搭載の[[4ストローク機関|4ストローク]]多気筒ディーゼルエンジン(定格燃料消費率200g/kWh、最低燃料消費率198g/kWh)や、1990年代前半に登場した[[ドイツ]]のMTU社製のMTU MT883 ka-500 4ストロークディーゼルエンジン(定格燃料消費率209g/kWh、最低燃料消費率198g/kWh)などより10ZGの燃費性能(前述の数値)はやや劣るとしている。
 
 
 
なおMTU社の公開資料によると、[[レオパルト2]]に搭載されているMTU社製[[機関 (機械)|エンジン]]の一つであるMB873の燃料消費率は約250g/kWh(1,500PS/2,600rpm時)<ref>{{PDFlink|http://www.mtu-online-shop.de/fileadmin/dam/download_media/import_print/D_23054E_0601.pdf MTU社MB873エンジン公式資料}}</ref>、MT883の燃料消費率は220g/kWh(1,500PS/2,700rpm時。なお、燃料消費率の数値は±5%の誤差があるとしている)<ref>{{PDFlink|http://www.mtu-online-shop.de/fileadmin/dam/download_media/import_print/D_23112E_0601.pdf MTU社MT883エンジン公式資料}}</ref>となっている。
 
 
 
よって10ZGの燃料消費率はMB873に対してやや優れ、MT883にはやや劣ると考えられる。
 
 
 
8気筒型である8ZGの燃費性能は、全負荷最低燃料消費率191g/PSh(約259.7g/kWh)と公表されている<ref name="giken50" />。
 
 
 
90式戦車は諸外国の[[戦車#戦後第3世代主力戦車|第3世代戦車]]と比較して航続距離が低いとされることから10ZGエンジンの燃料消費性能が悪いという指摘があるが、同一条件下におけるエンジン単体の燃料消費量は前述の数値の差程度である。
 
 
 
また、戦車の種類によって車体重量、燃料搭載量などの条件が異なることに加えてメーカー、国、軍事機関などにより燃料消費率の測定基準が異なると考えられる以上、一概に航続距離の数値をもってエンジンの燃料消費性能を論ずるのは適切ではない<ref group="注">各国の軍事機関を例に挙げても米軍の[[MIL規格]]、日本の防衛省規格NDSなど様々な基準・仕様・規格が存在する</ref>。
 
 
 
=== C4I ===
 
{{See also|陸上自衛隊のC4Iシステム}}
 
平成13年度時点で開発から10年以上が経過した90式戦車は、諸外国の技術水準から取り残されつつあり、早急に国際的な技術進歩の趨勢に対応していくことが必要不可欠である、と指摘されており<ref name="heisei13_seisaku">{{PDFlink|http://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/13/jizen/honbun/17.pdf 平成13年度政策評価書 事前の事業評価(本文)}}</ref>、諸外国[[戦車]]との比較では90式が装備していない[[C4Iシステム|C4I]]機能が[[M1エイブラムス#形式|M1A2]]、[[レオパルト2]]<ref group="注">自己位置評定のみ</ref>、[[ルクレール]]には装備されていることが示されていた<ref name="heisei13_seisaku" />。
 
 
 
これを是正する措置として、現在、[[第2戦車連隊]]の配備車両には[[陸上自衛隊のC4Iシステム#基幹連隊指揮統制システム|戦車連隊指揮統制システム(T-ReCs)]]端末の搭載が開始されている<ref>{{Cite journal|和書|author=柘植優介|year=2010|month=9|title=陸自期待のルーキー、10式戦車の姿|journal=PANZER|issue=第470集|pages=22-33|publisher=アルゴノート社}}</ref>。このT-ReCs搭載型は[[2010年]][[8月23日]]-[[9月22日]]まで[[北部方面隊]]で行われた総合戦闘力演習「玄武2010」に、C4ISR部隊として参加している<ref>{{cite news |title=「イーグル・アイ」 「玄武2010」で2師団 C4ISRで継戦能力保持 |newspaper=朝雲新聞 |date=2010-11-04 |url=http://www.asagumo-news.com/news/201011/101108/10110901.html |accessdate=2010-11-17 }}</ref>。
 
 
 
ただし、90式の内部スペースや給電能力の制約により、これ以上に高度なC4I機能の付加は困難であるとされている。このことから、より充実したC4I機能などが付与された後継の新[[主力戦車]]として[[10式戦車]]が開発された<ref name="heisei21_seisaku">{{PDFlink|http://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/21/jizen/honbun/02.pdf 平成21年度政策評価書 事前の事業評価(本文)}}</ref>。
 
 
 
=== 主力戦車としての評価 ===
 
[[File:90式戦車20.8.23 -42 富士総合火力演習004 R 富士総合火力演習・そうかえん 67.jpg|thumb|250px|行進間射撃を行う90式戦車。]]
 
実戦での運用例は無く、秘匿情報も多いが、公開される性能から[[戦車#戦後第3世代主力戦車|第3世代型戦車]]としては[[M1エイブラムス#形式|M1A2エイブラムス]](アメリカ)や[[レオパルト2#改修による強化|レオパルト2A6]](ドイツ)などと並ぶ世界最高水準の戦車の一つとされ、[[2004年]]度のForecast International社による世界主力戦車ランキングではM1A2 SEP、[[メルカバ (戦車)|メルカバMk 4]]に続いて第3位に評されている<ref>[http://www.forecastinternational.com/press/release.cfm?article=17 Forecast International Re-evaluates Main Battle Tank Market]</ref>。
 
 
 
また、[[アメリカ陸軍]]雑誌『アーマー』ではアメリカ政府関係者の発言として90式戦車の高度な機能として移動目標照準時の自動追尾機能を挙げ、その他に敵目標の脅威度を認識・判定する機能の存在を推測する記述がある<ref>{{PDFlink|http://doc.danfahey.com/Tanks-ArmorMag.pdf ARMOR-July-August 1999}}</ref>。
 
{{-}}
 
 
 
== 現有戦車との比較 ==
 
{{日本の主力戦車}}
 
 
 
== 配備(平成25年度末現在) ==
 
北海道以外では、[[富士教導団]]などの教育部隊を除きほとんど配備されていない。これは戦車トランスポーターの少なさから来る平時の運用に加え、調達数が減少した中で一括運用を行うためである。
 
 
 
開発当時の運用構想では、北海道に着上陸侵攻するソ連軍の機甲師団を北海道の原野で迎え撃つことを想定しており、北海道の[[北部方面隊]]に優先的に配備された。この方針は[[ソ連崩壊]]後も変わらず、[[中期防衛力整備計画 (2005)|中期防衛力整備計画(平成17年度-21年度)]]以降では北部方面隊の[[74式戦車]]を更新して北海道の戦車部隊を90式戦車に統一する方針だったが、平成25年度に[[第2戦車連隊]]へ[[10式戦車]]が配備されており、変更された模様である。また、例外的に、第7師団隷下の[[第7偵察隊]]にも配備され、主に威力戦闘偵察に使用される。
 
 
 
[[ファイル:戦車教導隊.jpg|thumb|250px|戦車教導隊所属車輌。]]
 
[[ファイル:Japanese Type 90 Tank - 2.jpg|thumb|250px|[[土浦駐屯地]][[陸上自衛隊武器学校|武器学校]]での90式戦車。]]
 
[[画像:JGSDF Director Directly Controled Unit.svg|20px]][[陸上自衛隊富士学校]]
 
* 機甲科部
 
* [[富士教導団]]
 
** [[戦車教導隊]](2個中隊) - 幹部教育支援および戦術研究用
 
[[画像:JGSDF Director Directly Controled Unit.svg|20px]][[陸上自衛隊武器学校]] - 整備教育用
 
 
 
[[画像:JGSDF Eastern Army.svg|20px]][[東部方面隊]]
 
* [[東部方面混成団]]
 
** [[第1機甲教育隊]] - 教育訓練用:2019年3月廃止予定
 
[[画像:JGSDF Northern Army.svg|20px]][[北部方面隊]]
 
* [[画像:JGSDF 2nd Division.svg|20px]][[第2師団 (陸上自衛隊)|第2師団]]
 
** [[第2戦車連隊]](第1・2・3・5戦車中隊)
 
* [[画像:JGSDF 7th Division.svg|20px]][[第7師団 (陸上自衛隊)|第7師団]]
 
** [[第71戦車連隊]]
 
** [[第72戦車連隊]]
 
** [[第73戦車連隊]]
 
** [[第7偵察隊]]
 
* [[画像:JGSDF 5th Brigade.svg|20px]][[第5旅団 (陸上自衛隊)|第5旅団]]
 
** [[第5戦車大隊]]
 
* [[画像:JGSDF 11th Brigade.svg|20px]][[第11旅団 (陸上自衛隊)|第11旅団]]
 
** [[第11戦車大隊]]:2019年3月廃止予定
 
 
 
== 価格と調達 ==
 
[[1990年]](平成2年)度-[[2009年]](平成21年)度までの19年間で341輌が調達された。年平均の調達台数は約18輌。調達価格は整備用工具や予備消耗部品が含まれた総合価格となっている。[[バブル景気]]の真っ只中に採用が決定され、[[大量生産|量産効果]]による価格低下も見込まれて1輌約11億円という価格でも迅速に配備が可能という見通しだったが、制式化直前の[[バブル崩壊]]と翌年の[[ソ連崩壊]]に伴う防衛費の減少・削減、[[こんごう型護衛艦]]([[イージス艦]])など他の正面装備の拡充や[[戦車]]保有数の削減などと時期が重なったこともあって、予想通りの調達ペースは得られなかった。
 
 
 
調達当初の3年間は1輌約11億円前後であり、少数生産にとどまる以上は、開発費や設備投資の消化も考えると1輌当たりの価格が高騰する事情があるが、4年目以降は1輌約9.4億円となり、継続的な調達による量産効果で[[2001年]](平成13年)度以降は1輌約8億円(最低は約7億9,000万円)まで単価が減少した。
 
 
 
90式戦車は他国の[[戦車#戦後第3世代主力戦車|第3世代戦車]]に比べて高価であり、外国産戦車を輸入すべきだったと批判されることがあるが、他国戦車を輸入した際の価格に関しては軍事情報雑誌[http://www.janes.com/ Jane's]発行のレポートによれば、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[M1エイブラムス#形式|M1A2エイブラムス]]及び[[ドイツ]]の[[レオパルト2#改修による強化|レオパルト2A6]]は輸出実績でいずれも1輌あたり10億円を超えており、[[フランス]]の[[ルクレール]]は自国型でもそれに並ぶ価格となっている。
 
 
 
90式の調達は[[2009年]](平成21年)度で終了し、[[2010年]](平成22年)度からは[[10式戦車]]の調達が行われている。
 
 
 
{|class="wikitable" style="text-align:right"
 
|+90式戦車の調達数<ref>[http://www.japandefense.com/ JapanDefense.com]</ref><ref>[http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_web/ 防衛白書の検索]</ref>
 
! 予算計上年度 !! 調達数 !!予算計上年度 !! 調達数 !!予算計上年度 !! 調達数
 
|-
 
|| 平成2年度(1990年) || 30輌 || 平成9年度(1997年) || 18輌 || 平成16年度(2004年) || 15輌
 
|-
 
|| 平成3年度(1991年) || 26輌 || 平成10年度(1998年)|| 17輌 || 平成17年度(2005年) || 12輌
 
|-
 
|| 平成4年度(1992年) || 20輌 || 平成11年度(1999年)|| 17輌 || 平成18年度(2006年) || 11輌
 
|-
 
|| 平成5年度(1993年) || 20輌 || 平成12年度(2000年) || 18輌 || 平成19年度(2007年)|| 9輌
 
|-
 
|| 平成6年度(1994年) || 20輌 || 平成13年度(2001年) || 18輌 || 平成20年度(2008年)|| 9輌
 
|-
 
|| 平成7年度(1995年) || 20輌 || 平成14年度(2002年) || 18輌 || 平成21年度(2009年) || 8輌
 
|-
 
|| 平成8年度(1996年) || 18輌 || 平成15年度(2003年) || 17輌 || 合計 || 341輌 
 
|}
 
 
 
== 戦略機動性 ==
 
90式戦車は[[北海道]]の地形や道路条件を想定して開発されたものであり、他地域でのより柔軟な運用を行うには更なる小型軽量化が望ましいとされた。このため、後継の[[10式戦車]]は40トン級の[[戦車]]として開発されている。
 
 
 
=== 道路を使った移動と輸送 ===
 
90式戦車の重量は[[74式戦車]]を約12トン上回るため、[[北海道]]以外では通行可能な場所が限られ運用上の困難が多いとして、戦車不要論の補強や自衛隊批判<ref group="注">特に[[日本共産党]]や[[社会民主党 (日本 1996-)|社民党]]などの一部護憲・革新系政党や革新系政治団体及び中核派等の過激派団体に関しては支持者向けイベント([[赤旗まつり]])などで戦車不要論の証明として引き合いに出されることが多い</ref>の引き合いに出されることがある。実際には全国の主要国道の橋梁17,920ヶ所のうち65%は90式の通行が可能であり、より軽量化された約44トンの[[10式戦車]]ではこれが84%に向上したとされるのに対して、約62-65トンの海外[[主力戦車]]が通行可能な橋梁は約40%と想定されている<ref>{{PDFlink|[http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shin-ampobouei2010/dai5/siryou1.pdf 新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会 - 第5回配布資料 「防衛生産・技術基盤」平成22年(2010年)4月(防衛省)]}}</ref>。
 
 
 
各国の主力戦車と90式戦車の重量を比較してみた場合、
 
{|class="wikitable"
 
|-
 
| 90式戦車 || 50.2トン
 
|-
 
| [[ルクレール]] || 56.5トン
 
|-
 
| [[M1エイブラムス#形式|M1A2エイブラムス]] || 62.1トン
 
|-
 
| [[チャレンジャー2]] || 62.5トン
 
|-
 
| [[レオパルト2#改修による強化|レオパルト2A5]]<br />[[スウェーデン]]仕様 || 62.5トン
 
|}
 
であり、90式の50トンという重量は60トン以上ある旧西側の先進各国の[[戦車#戦後第3世代主力戦車|第3世代戦車]]などと比較すれば10トン以上軽量となる。大型車両の走行を前提としていない小型の橋は除いて、主要道路などの[[ダンプカー|ダンプ]]や[[貨物自動車|トラック]]が通行できる橋はすべて通行可能になっている。
 
 
 
; 自走による移動
 
[[ファイル:JGSDF MBT Type 90 at JGSDF PI center front.jpg|thumb|250px|試作車の車体前部の方向指示器及び前照灯。]]
 
実際に[[北海道]]では、90式が[[駐屯地]]と演習場の間の公道を自走で移動することがある。また、[[第5旅団 (陸上自衛隊)|第5旅団]]の旅団創立記念行事への参加・撤収の際に[[鹿追駐屯地]]から[[帯広駐屯地]]までの約45kmの一般公道を自走で移動することもある<ref>2005年の9月12日・9月19日に90式戦車と[[74式戦車]]が、2006年の8月31日・9月13日と2007年の8月31日・9月12日と2008年の9月2日・9月10日と2009年9月1日・9月9日に90式戦車が移動</ref>。
 
 
 
90式が舗装路上を走行する際は、路面を傷つけないよう[[無限軌道|履帯]](履板)に路面保護用のゴムパッドを装着して走行する<ref>90式より5トンから10トン以上重い[[主力戦車]]を保有する欧米でもゴムパッド付きの履帯で、一般公道を自走しての移動が行われている</ref>。これは平時に無用に道路を傷めないための配慮であり、[[有事]]の際にはゴムパッド無しの履帯でそのまま走行する場合もある。[[欧米]]では実際の市街地で行われる訓練や式典などでも戦車が一般公道を自走する。
 
 
 
駐屯地から演習場までを繋ぐ道路が通常の履帯に対応した[[コンクリート]][[舗装]]で補強されている場合や、スリップの恐れがある冬期の積雪時には、ゴム履帯を装着せずに道路を自走する例もある<ref>[[上富良野駐屯地]]から[[上富良野演習場]]、鹿追駐屯地から[[然別演習場]]、[[北千歳駐屯地]]または北恵庭駐屯地から[[北海道大演習場]]といった各駐屯地から演習場までの国道や道道・市道にはアスファルトでは無くコンクリート補強された道路が設置されており、当該路面を戦車が通常の履帯で走行する状態を確認する事ができる</ref>。
 
 
   
 
   
90式は[[方向指示器]](ウインカー)を装備しているが、これは平時の公道走行用でレオパルト2、ルクレール、チャレンジャー2などといった[[ヨーロッパ|欧州]]の[[主力戦車]]も方向指示器や[[前照灯]]を備える<ref>[[:Image:Leopard 2 A6M.JPG|レオパルト2の方向指示器(後部)が見える写真]]/[[:Image:Leclerc-IMG 1763.jpg|ルクレールの方向指示器(前部)が見える写真]]</ref>。これは戦車以外の[[装甲戦闘車両]]においても同様。また、一般公道を自走で移動する際はサイドミラーを取り付けるが、欧米の車両も同様に取り付けて走行する。
 
{{-}}
 
 
; トランスポーターによる輸送
 
[[戦車運搬車|トランスポーター]]で運搬される場合は、積載量と安全面の問題から[[砲塔]]と車体を分離して夜間に運搬される。最大積載量が50トンの[[特大型運搬車]]では砲塔と車体を一体化させた状態で運搬することが可能だが、最大積載量が40トンの[[73式特大型セミトレーラ]]の場合は砲塔と車体を分離して運搬する必要がある。複雑な電子装備や油圧系統を持ちながら、車体と砲塔は比較的容易に分離できる。
 
 
=== 航空機による輸送 ===
 
重量50トン以上の戦車を空輸するには[[C-5 (航空機)|C-5 ギャラクシー]](米)や[[C-17 (航空機)|C-17 グローブマスターIII]](米)、[[An-124 (航空機)|An-124 ルスラーン]]([[ウクライナ]]の[[O・K・アントーノウ記念航空科学技術複合体|アントノフ]]製)といった最大級の[[輸送機]]が必要とされる。[[航空自衛隊]]はその種の大型輸送機は保有しておらず、また、航空自衛隊の次輸送機である[[C-2 (航空機・日本)|C-2]]は大型の手術車や[[装輪装甲車]]の搭載は想定しているが、戦車の搭載を想定しているという情報はない。
 
 
[[2006年]](平成18年)度から導入された[[KC-767 (航空機)#日本|KC-767]][[空中給油機|空中給油・輸送機]]のペイロード(積載量)はC-2より大きく、[[貨物自動車|トラック]]などを搭載できるが、戦車は搭載できない。
 
 
=== 輸送艦による輸送 ===
 
[[ファイル:7D南転出発01 R 装備 68.jpg|thumb|250px|[[津軽海峡フェリー]]「[[ナッチャンWorld]]」への積み込みの様子。]]
 
[[海上自衛隊]]の保有する[[おおすみ型輸送艦 (2代)|おおすみ型輸送艦]]では最大10数輌程度を輸送可能。
 
 
また、おおすみ型輸送艦に各2艇ずつ搭載されている[[エア・クッション型揚陸艇]]([[LCAC-1級エア・クッション型揚陸艇|LCAC]])は、積載能力が70トンあるため、90式戦車を1輌ずつ運搬し、海岸に直接上陸させることが可能である。ただし、90式の大規模な部隊をまとめて輸送するのに必要なだけの[[輸送艦]]を、[[自衛隊]]は保有していない。
 
 
民間船舶による輸送の例としては[[2011年]]11月、民間船「[[ナッチャンWorld]]」によって、訓練のため[[北海道]]の苫小牧港から[[大分県]]の大分港まで90式戦車4両と[[89式装甲戦闘車]]10両などが輸送された例がある<ref>{{cite news |title=戦車、民間フェリーで移動…北海道から大分へ |newspaper=読売新聞 |date=2011-10-26 |url=http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111026-OYT1T00596.htm }}</ref><ref>{{cite news |title=自衛隊、南西シフト鮮明=九州・沖縄で相次ぎ演習-鉄道、民間船で列島縦断 |newspaper=時事通信 |date=2011-11-03 |url=http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011103100019&google_editors_picks=true }}</ref>。
 
{{-}}
 
 
=== 鉄道輸送 ===
 
74式戦車以降、自衛隊では鉄道輸送を考慮した戦車を開発・採用していないことから、それを輸送するのに必要な車両や機材の開発や調達も行われていない<ref group="注">JR・旧国鉄の在来線は横幅3メートル弱の車両を前提に設計されているが、74式以降はいずれも車幅が3メートルを超えている。なお、戦車以外では、在来線で施設科などの小規模な輸送が行われている</ref>。
 
 
== その他 ==
 
[[ピョートル・チャイコフスキー|チャイコフスキー]]作曲の[[1812年 (序曲)|1812年(序曲)]]は、大砲(cannon)を演奏で使うことで有名であるが、2017年の第11旅団創隊9周年・真駒内駐屯地開庁記念式典において、90式戦車6両(第11戦車大隊)による空砲を利用した演奏が実施された<ref>[https://www.youtube.com/watch?v=ZdPIvoSFQwQ 20170604 90式戦車と音楽隊の共同演奏@真駒内駐屯地] - Youtube</ref>。
 
 
2017年06月21日、北海道大演習場千歳・恵庭地区で、訓練中に横転し、乗っていた30代の男性隊員が戦車の下敷きになり死亡した。
 
 
== 派生型 ==
 
* [[90式戦車回収車]]
 
 
== 登場作品 ==
 
{{main|90式戦車に関連する作品の一覧}}
 
 
== 脚注 ==
 
=== 注釈 ===
 
{{Reflist|group=注}}
 
=== 出典 ===
 
{{Reflist|2}}
 
 
== 参考文献 ==
 
* {{cite journal |和書
 
| journal = [[丸 (雑誌)|丸MARU]]
 
| publisher = 潮書房
 
| title = 体験的機甲史 自衛隊の戦車
 
| date = 2002-01
 
| ref = {{sfnRef|丸|2002}}
 
}}
 
* {{cite journal |和書
 
| journal = PANZER
 
| publisher = アルゴノート社
 
| date = 2009-01
 
| ref = harv
 
}}
 
* {{cite book |和書
 
| year = 2009
 
| author = 古是三春
 
| author2 = 一戸崇雄
 
| title = ストライクアンドタクティカルマガジン2009年9月号別冊 戦後の日本戦車
 
| asin = B002LG7978
 
| ref = harv
 
}}
 
* {{cite book |和書
 
| year = 2011
 
| title = 自衛隊新戦車パーフェクトガイド
 
| publisher = [[イカロス出版]]
 
| isbn = 978-4-86320-390-7
 
| ref = harv
 
}}
 
 
== 関連項目 ==
 
* [[主力戦車]]
 
* [[陸上自衛隊の装備品一覧]]
 
 
 
== 外部リンク ==
 
== 外部リンク ==
{{Commonscat|JGSDF Type 90 tanks}}
 
 
* [http://www.mod.go.jp/gsdf/ 陸上自衛隊]
 
* [http://www.mod.go.jp/gsdf/ 陸上自衛隊]
* [http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/ 第2師団]
 
* [http://www.mhi.co.jp/ 三菱重工] - [http://www.mhi.co.jp/products/detail/type-90_tank.html 90式戦車]
 
* [http://www.jsw.co.jp/ 日本製鋼所] - [http://www.jsw.co.jp/product/defense/ 製品情報:防衛機器]
 
* [http://www.channelj.co.jp/politics/security/movies/anpobo_sensha_j_113006.html Channel J - 90式戦車紹介動画]
 
  
{{現代戦車}}
+
{{テンプレート:20180815sk}}
{{自衛隊の装甲戦闘車両}}
 
{{三菱重工業}}
 
 
{{DEFAULTSORT:90しきせんしや}}
 
{{DEFAULTSORT:90しきせんしや}}
 
[[Category:陸上自衛隊の戦車]]
 
[[Category:陸上自衛隊の戦車]]
 
[[Category:主力戦車]]
 
[[Category:主力戦車]]
 
[[Category:三菱重工業の製品]]
 
[[Category:三菱重工業の製品]]

2018/10/9/ (火) 11:09時点における最新版

90式戦車(きゅうまるしきせんしゃ)

防衛庁が 1977年から 10年あまりの歳月をかけて開発し,90年に採用が決った陸上自衛隊の主力戦車。ハイテク技術を駆使,日本の戦車で初めて滑腔砲複合装甲を取入れ,自動装填装置も導入している。反面,重量が 74式戦車の 38tから 50tに増加しており,移動に制約を受ける面もある。主要目は,乗員3,全備重量 50t,全長 9.8m,最高時速 70km,行動距離 340km,武装 120mm滑腔砲1,12.7mm重機関銃1,7.62mm機関銃1。

外部リンク



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