「高山気候」の版間の差分

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[[Image:Alpine flora.png|right|thumb|200px|[[高山植物]]]]
 
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'''高山気候'''(こうざんきこう、{{lang-en-short|''alpine climate''}})とは気候区分のひとつである。[[ケッペンの気候区分]]には無い区分であり、後に[[グレン・トマス・トレワーサ|トレワーサ]]らによる修正版で加えられた。'''アルプス気候'''<ref>{{Kotobank|高山気候|2=日本大百科全書(ニッポニカ)}}</ref>とも呼ばれる。記号には'''H'''を用いる。[[アリソフの気候区分]]では、[[ヒマラヤ山脈]]などが高山気候地域に位置づけられている<ref>矢澤(1989):355ページ</ref>。
 
  
== 植生と垂直分布 ==
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'''高山気候'''(こうざんきこう、{{lang-en-short|''alpine climate''}}
高山気候は森林植生の高度分布から判断される。山地帯も同様に森林分布から判断し、[[照葉樹林帯]]を'''[[亜山地帯]]'''、[[落葉広葉樹林体]]を'''[[山地帯]]'''、[[常緑針葉樹林帯]]を'''[[亜高山帯]]'''とし、それ以上を'''高山帯'''とする<ref>{{Kotobank|森林|2=世界大百科事典}}</ref>が、気候においては概ね高山帯の[[森林限界]]以上の高高度の気候を'''高山気候'''とし、それ以下を'''[[山岳気候]]'''として区別している<ref>{{Kotobank|高山気候|2=世界大百科事典 第2版}}</ref>。
 
  
== 植生におよぼす性質 ==
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山地気候のうち、とくに高山に現れる特殊な気候。アルプス気候ともいう。通常、森林限界付近から上の気候をさし、温帯地方では普通海抜2000メートル以上に出現する。高度とともに気温と気圧は低下し、日射は強くなる。高緯度地方の寒帯気候に似ているが、日射が弱いために生じるのとは本質的に異なっている。緯度によって温帯高山気候と熱帯高山気候とに区分される。前者はチベット高原、ヨーロッパ・アルプス、アメリカのロッキーなどに分布し、日本でも日本アルプスなどにみられる。後者はボルネオ島、ニューギニア島の高地、東アフリカの山地、エチオピア高原、メキシコ高原、アンデスに分布する。温帯高山気候では気温の年較差が大きく、夏と冬が明瞭(めいりょう)に現れるのに対して、熱帯高山気候では気温の年較差が日較差より小さく、生物の活動にも気温による周期性がない。温帯高山は寒冷で降雪も多く、気候条件はよくないが、熱帯高山では年中冷涼で、人々の生活に適し、集落が発達している。気圧が地上気圧の約半分になる5500メートルが人類の永住限界といわれているが、2000メートル以上になると高山病がみられるようになる。
通常、標高が100m高くなるごとに気温は約0.6℃下がる。この気温の逓減率により、この高山気候に属する高地では同緯度の低地よりも気温が低くなる。
 
  
標高の上昇とともに[[気圧]]も低下し、標高約 5500mで 気圧は地上の半分にまで下がる。気圧が下がるほど[[水蒸気圧]]が下がって[[露点]]温度も下がるので、高山では[[湿度]]が高くても空気中の水分の絶対量が低地に比べ少ない。
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{{テンプレート:20180815sk}}
 
 
低緯度の高山では、日中の高温により乾燥しがちになり、概ね[[乾燥限界]]高度は低い。
 
高緯度の高山では、低温になるほど水の[[飽和水蒸気圧]]が下がるので、少ない水分でも湿度が高い。また凝結して霧や降雨となり、急峻な地形の山岳では流下してしまい土壌への水分が確保されにくい。
 
岩石土壌では一層厳しくなる。
 
 
 
{{See also|森林限界}}
 
 
 
== 代表的な高山気候 ==
 
高山気候は海抜の高い土地にしか現れないため、当然ながら[[水半球|海半球]]では分布が見られない。海抜が 2,000m 以上となる土地は地球上の全陸地の約3割にあたるが、そのさらに3割は南極大陸にあるため高地気候ではない。
 
 
 
位置する緯度の違いによって気候に違いが見られる。
 
* 熱帯高山気候 - 南北の[[回帰線]]に挟まれた低緯度地域は、気温の年較差が小さく日較差のほうが大きい。植生については、十分な日射により太陽光は確保できるため、水分が確保できる条件では森林限界高度が高くなる。[[熱帯果樹]]で耐寒性の高いものはこのような地域からの原産が多い。
 
* 温帯高山気候 - 気温が日較差よりも年較差のほうが大きいため、年間を通じた[[積算温度]]の影響が大きくなる。植生は[[寒帯]]気候に似るが、日射が多い点で本質的には異なる。温帯では概ね標高 2000m 以上の高地に分布するとされる。
 
 
 
なお、[[日本]]にも[[富士山]]をはじめ標高 2000m 以上の高山は多数存在し、山頂付近などごく一部に高山気候の特色が現れる。しかし、気候区として区分できるほどには広範囲でなく、また小さなテリトリーでは緯度による気温帯以外の要因で森林限界を生じていることがあるため、通常はこれらの山々を高山気候には分類しない。
 
 
 
世界においても森林限界の要因が標高基準だけによっているとは限らず、また地域は山岳気候とも重なっていて基準は明確でない。現在の主な分布は概ね[[新生代]]以降の[[造山運動]]で生じた山脈中の高山地域に重なる。以下は代表的な分布地である。
 
* 熱帯高山気候 - [[ボルネオ島]]、[[ニューギニア島]]、[[アフリカ]]東部、[[アビシニア]](現在の[[エチオピア]])、[[メキシコ]]、[[アンデス]]中部の、いずれも高原や山岳地帯。
 
* 温帯山岳気候 - [[チベット高原]]、[[ヒマラヤ山脈]]、[[ヨーロッパ・アルプス]]、[[ローキー山脈]]、[[アンデス山脈]]中部の、いずれも山岳地帯。同様の気候条件は日本の日本アルプスの山頂付近などにみられる。
 
 
 
高山では浸蝕による地形が気候に及ぼす影響が無視できないほど大きい。山体の陽斜面で植生が発達していても陰斜面や深い長谷の底では全く異なっているということも少なくない。[[盆地]]地形では気温の年較差日較差とも大きくなり、乾燥化がより進む。また、[[卓越風]]の影響が大きくなるため一般には風が強い。
 
 
 
== 人間の居住 ==
 
熱帯高山気候では、低地特有の高温多湿とは異なり、「常春」と呼ぶべき適度な恒温と、低湿度により比較的快適となる。例えば[[エクアドル]]の首都[[キト]]は[[赤道]]直下に位置するにも関わらず、標高2800mを超える高地に位置しているため、月平均気温は1年中13.5℃前後でほとんど変化が無い。一方、中・高緯度地域では同緯度の低地が[[温帯]]・[[亜寒帯]]気候であり、低緯度地方とは異なり年較差が大きいために[[寒帯]]に似た気候を示す。なお、いずれの場合も気温の日較差は大きい。
 
 
 
=== 代表的な都市 ===
 
同緯度の低地に比べて涼しいため低緯度地域では古くより高山都市が発達し、[[マヤ文明]]、[[アステカ文明]]や[[インカ文明]]が栄えた。一方、中緯度以上の地域でもその数は多くはないもののやはり高山都市が存在する。以下はこの気候区に属する都市のうち代表的なものである。
 
 
 
*[[ラパス]]([[ボリビア]]、標高4071m)
 
*[[キト]]([[エクアドル]]、標高2812m)
 
*[[メキシコシティ]]([[メキシコ|メキシコ合衆国]]、標高2306m)
 
*[[アディスアベバ]]([[エチオピア]]、標高2324m)
 
*[[ラサ]]([[中華人民共和国]][[チベット自治区]]、標高3650m)
 
*[[サンタフェ (ニューメキシコ州)|サンタフェ]]([[アメリカ合衆国]][[ニューメキシコ州]]、標高2130m)
 
*[[クスコ]]([[ペルー]]、標高3400m)
 
 
 
なお[[ケッペンの気候区分]]にはこの高山気候は無く、後にトレワーサらによる修正版で加えられたものである。オリジナルのケッペンの気候区分ではラパスは[[温帯夏雨気候|Cwc]]、キト・メキシコシティ・アディスアベバ・ラサは[[温帯夏雨気候|Cwb]]、サンタフェは[[ステップ気候|BSk]]に、それぞれ分類されている。
 
 
 
== 植生 ==
 
[[キリマンジャロ山]]など低緯度地域に位置する高山では低地の[[熱帯雨林]]や[[サバナ (地理)|サバナ]]から標高が上がるにつれて温帯の[[落葉広葉樹]]林、亜寒帯の[[針葉樹]]林、寒帯の[[ツンドラ]]、頂上近くの永久氷雪地帯へと高度別に段階的な植生の変化が見られる。一方中・高緯度地域でも広葉樹林・針葉樹林から始まる高度別の植生の変化は見られるが、[[森林限界]]、植物限界ともにその標高は低緯度地域に比べて低くなる。なお、高山に見られるツンドラを寒帯のツンドラと区別して[[ツンドラ#高山ツンドラ|高山ツンドラ]]という。
 
 
 
[[乾燥帯]]においては標高に伴って気温が下がることによって[[乾燥限界]]が下がり、また冬季の降雪によって降水量が増えることもある。そのため同緯度の低地で砂漠であっても、高地では背丈の低い草が生育する[[ステップ (植生)|ステップ]]になる。さらに標高が上がると乾燥限界がさらに下がり、乾燥地帯から湿潤地帯へと変化する。[[アメリカ合衆国]][[アリゾナ州]]北部、[[フラッグスタッフ (アリゾナ州)|フラッグスタッフ]]市付近にそびえる独立峰、ハンフリーズ・ピーク([[:en:Humphreys Peak|Humphreys Peak]]、標高3,850m)ではその植生は山麓の高地砂漠(実際はステップ)から山岳森林、高山ツンドラへと変化する。
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{Reflist}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
* [[矢沢大二|矢澤大二]]『気候地域論考―その思潮と展開―』古今書院、1989年11月20日、738pp. ISBN 4-7722-1113-6
 
 
 
==外部リンク==
 
*[http://www.azeta.jp/tiri/4-3/high.html 世界の気候区(高山気候)]
 
  
 
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高山気候(こうざんきこう、: alpine climate

山地気候のうち、とくに高山に現れる特殊な気候。アルプス気候ともいう。通常、森林限界付近から上の気候をさし、温帯地方では普通海抜2000メートル以上に出現する。高度とともに気温と気圧は低下し、日射は強くなる。高緯度地方の寒帯気候に似ているが、日射が弱いために生じるのとは本質的に異なっている。緯度によって温帯高山気候と熱帯高山気候とに区分される。前者はチベット高原、ヨーロッパ・アルプス、アメリカのロッキーなどに分布し、日本でも日本アルプスなどにみられる。後者はボルネオ島、ニューギニア島の高地、東アフリカの山地、エチオピア高原、メキシコ高原、アンデスに分布する。温帯高山気候では気温の年較差が大きく、夏と冬が明瞭(めいりょう)に現れるのに対して、熱帯高山気候では気温の年較差が日較差より小さく、生物の活動にも気温による周期性がない。温帯高山は寒冷で降雪も多く、気候条件はよくないが、熱帯高山では年中冷涼で、人々の生活に適し、集落が発達している。気圧が地上気圧の約半分になる5500メートルが人類の永住限界といわれているが、2000メートル以上になると高山病がみられるようになる。



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